発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の特性は、近年広く知られるようになりました。
しかし、その特性の現れ方は人それぞれ異なり、特に成人女性の場合は、幼少期や学生時代には気づかれにくく、社会に出てからの人間関係や仕事、結婚、子育てといったライフイベントをきっかけに「生きづらさ」として顕在化することが少なくありません。
なぜ女性の発達障害は見過ごされやすいのでしょうか?
それは、社会的な期待や自身の特性を隠そうとする無意識の努力(カモフラージュ、あるいは擬態と呼ばれることもあります)が影響していると考えられています。
この記事では、「発達障害 特徴 大人 女性」に焦点を当て、ASDやADHDの主な特徴、女性ならではの気づかれにくいサイン、「あるある」な体験、そして生きづらさと向き合い、自分らしく生きるためのヒントや相談先について詳しく解説します。
もしかして自分も?と感じている方、周囲の女性を理解したいと考えている方の助けになれば幸いです。
大人の発達障害とは、発達期に生じる脳機能の発達の偏りにより、社会生活において困難を抱える状態を指します。これは病気ではなく、その人が持つ特性として理解されています。
主に「神経発達症」という言葉が使われることも増えてきました。
発達障害は一つの疾患ではなく、いくつかのタイプに分けられます。代表的なものに、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)があります。これらの特性は重複して現れることもあります。
発達障害の種類(ASDとADHD)
自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)
ASDは、主に以下の3つの領域における特性が特徴とされます(診断基準DSM-5では2つの領域に統合されています)。
- 社会的コミュニケーションと相互作用の困難:
- 言葉や非言語的なコミュニケーションの理解や使用が難しい。
- 対人関係の構築や維持が苦手。
- 社会的・感情的なやり取りの困難さ。
- 限定された興味や反復行動:
- 特定の物事への強いこだわりや反復的な行動。
- 感覚の過敏さや鈍麻さ。
- 変化に対する強い抵抗。
ASDの特性は連続体(スペクトラム)として捉えられ、その現れ方や程度は人によって大きく異なります。
注意欠如・多動症(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)
ADHDは、主に以下の2つの領域における特性が特徴とされます。
- 不注意(Attention Deficit):
- 集中力の維持が難しい。
- 忘れっぽい、物をなくしやすい。
- 気が散りやすい。
- 物事を順序立てて行うのが苦手。
- 多動性・衝動性(Hyperactivity/Impulsivity):
- 落ち着きがない、そわそわしている。
- じっとしているのが難しい。
- 思ったことをすぐ口に出してしまう。
- 衝動的な行動を取りやすい。
ADHDも、不注意優勢型、多動・衝動性優勢型、混合型といったタイプに分けられ、特性のバランスは人によって異なります。大人になると多動性は目立たなくなる傾向がありますが、内的な落ち着きのなさとして残ることがあります。
男女での特性の違いについて
発達障害の特性は、男性と女性で異なる現れ方をすることがあります。特に女性の場合、以下のような傾向が見られることがあります。
- ASD女性:
- 男性に比べて、対人関係に強い関心を持ち、コミュニケーションの「型」を学んで表面上はスムーズに見えるように努力する(カモフラージュ/擬態)。
- 興味の対象がアニメやゲームなど、男性で典型的とされるものだけでなく、人間関係や心理学など、より社会的な側面に向かうことがある。
- 感覚過敏が、特定のファッションや食べ物の選り好みとして現れることがある。
- ADHD女性:
- 男性に比べて多動性が目立ちにくく、不注意の特性が優勢なことが多い。
- 「おしゃべり」として衝動性が現れたり、感情のコントロールが難しいという形で現れることがある。
- 女性特有のホルモンバランスの変化(思春期、生理前、更年期など)によって特性が強く出たり、感情の調整が難しくなることがある。
これらの男女差に加え、幼少期からの社会化の過程で女性は「協調性」「場の調和」を求められることが多いため、特性を隠すのが上手になり、周囲からも本人からも気づかれにくいという側面があります。
大人の自閉スペクトラム症(ASD)女性の特徴
ここでは、ASDの特性が成人女性においてどのように現れやすいか、より具体的に掘り下げて解説します。
コミュニケーション・対人関係の特性
ASDの特性を持つ女性は、表面上は友人がいたり、社交的に見えたりすることもありますが、内面ではコミュニケーションに大きなエネルギーを使っていたり、深い部分での相互理解に難しさを感じていたりすることがあります。
空気を読むことや行間理解の難しさ
言葉の表面的な意味だけでなく、その場の雰囲気や相手の意図、暗黙のルールなどを察することが難しい場合があります。「普通はこうするだろう」「言わなくてもわかるだろう」といった前提でのやり取りが苦手です。
- 比喩や皮肉、遠回しな表現が文字通りの意味にしか受け取れず、相手を怒らせてしまうことがある。
- 社交辞令や建前が理解できず、真に受けてしまう。
- 会議などで、誰がどの立場から話しているのか、その発言の真意は何なのかを理解するのが難しい。
- 複数人が同時に話している状況で、会話についていくのが困難。
一方的な話し方や会話のキャッチボール
自分の興味のあることや知っていることについては、相手の反応に関わらず一方的に話し続けてしまうことがあります。逆に、興味のない話題や知らない話題には全く反応できず、会話が途切れてしまうことも。相手の話を聞き続けるのが苦痛に感じたり、適切に相槌を打ったり質問したりするのが難しかったりします。
- 自分の話したい話題になると、相手の状況を考えずに話し始める。
- 相手が話題を変えようとしても気づかない、あるいは抵抗を感じる。
- 会話の途中で、全く別の関連性のない話題を唐突に振ってしまう。
- 相手の質問の意図が分からず、的外れな回答をしてしまう。
非言語コミュニケーション(表情・声色)の苦手さ
相手の表情や声のトーン、ジェスチャーなどから感情や真意を読み取るのが苦手なことがあります。また、自分の感情を表情や声色で適切に表現することも難しい場合があります。
- 相手が困っているのに気づかない、あるいは怒っているのに笑ってしまうなど、状況にそぐわない反応をしてしまう。
- 自分の感情が高ぶっても、表情や声色は平坦なままだったり、逆に大げさすぎたりする。
- アイコンタクトを適切に取るのが難しい(目を合わせすぎたり、全く合わせられなかったり)。
対人関係のパターン(積極奇異型・受動型・孤立型)
ASDの特性を持つ人の対人関係スタイルはいくつかのパターンに分けられることがあります(正式な診断名ではありません)。女性では、男性に比べて受動型や孤立型が多く見られる傾向があると言われています。
- 積極奇異型: 積極的に人に話しかけるが、相手の都合や気持ちを考慮せず、一方的だったり変わった言動で距離を置かれてしまったりする。
- 受動型: 自分から積極的に関わることはないが、誘われれば応じる。しかし、どのように関われば良いか分からず、相手に言われるがままになってしまう。
- 孤立型: 人との関わり自体に興味がないか、関わりたい気持ちはあっても方法が分からず、人との接触を避ける。
女性の場合、積極奇異型であっても、男性ほど攻撃的に見えないこともあります。また、受動型や孤立型であっても、「おとなしい」「内向的」として見過ごされやすいことがあります。周囲に合わせようと努力する「擬態」は、どのタイプでも見られる可能性があります。
こだわりや興味の偏り
ASDの特性の一つに、特定の物事への強い関心や、独自のルール、変化への対応の困難さがあります。
特定の物事への強い関心
自分が興味を持ったことに対して、非常に深く掘り下げ、膨大な知識を持つことがあります。これは得意な分野として活かせることもありますが、周囲からは「マニアック」「話が合わない」と思われたり、その話題ばかり話してしまったりすることに繋がる場合もあります。
- 特定の趣味や収集に没頭し、他のことが手につかなくなる。
- 興味のある分野の情報収集に hours かけ、膨大な知識を得る。
- 人間関係や心理学、特定のキャラクターなどに強く惹かれ、研究するように分析する。
独自のルールや手順への固執
自分の中で決めたやり方や手順に強くこだわり、そこから外れることに強い抵抗を感じることがあります。効率的で合理的なルールであることも多いですが、融通が利かず、他者との協調が難しくなる原因になることもあります。
- 家事や仕事のやり方で、自分なりの完璧な手順があり、それ以外は受け入れがたい。
- 物の置き場所や並べ方にこだわりがあり、乱れると非常にストレスを感じる。
- 他者からやり方を変えるように言われると、強く反発してしまう。
変化や予定外の出来事への対応
予測できない変化や急な予定変更に対して、強い不安を感じたりパニックになったりすることがあります。ルーティンが崩れることに弱く、事前に計画を立てておくことで安心感を得ようとします。
- 急な出張や会議の予定変更に対応するのが難しい。
- 通勤ルートが工事で使えなくなると、代替ルートを見つけるのに苦労したり、不安になったりする。
- 旅行などで普段と違う環境に身を置くことに強い抵抗を感じる。
感覚の特性(感覚過敏・感覚鈍麻)
ASDの特性を持つ人は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、さらには平衡感覚や固有受容覚といった感覚刺激に対して、過敏であったり、逆に鈍麻であったりすることがあります。これは日常生活における「生きづらさ」に大きく影響します。
特定の音や光、触覚への過敏さ
特定の刺激が非常に不快に感じられ、集中を妨げられたり、強い苦痛を感じたりすることがあります。
- 特定の音(咀嚼音、タイピング音、時計の針の音など)が耳障りで耐えられない。
- 蛍光灯のちらつきや特定の色の光がまぶしく感じられる。
- 衣服の素材やタグ、縫い目が肌に触れるのが耐えられない。
- 満員電車など、人と密着する状況が非常に苦痛。
- 特定の匂いや味が苦手で、食べられるものが限られる。
空腹や痛みなどに気づきにくい鈍麻さ
感覚が鈍麻な場合、自身の体調の変化に気づきにくかったり、危険を察知しにくかったりすることがあります。
- 空腹や喉の渇きに気づかず、体調を崩しやすい。
- 怪我や病気の痛みに気づきにくく、受診が遅れることがある。
- 暑さや寒さを感じにくく、体調管理が難しい。
- 疲労困憊になるまで無理をしてしまい、突然動けなくなる。
大人の注意欠如・多動症(ADHD)女性の特徴
次に、ADHDの特性が成人女性においてどのように現れやすいかを見ていきましょう。不注意の特性が目立ちやすく、多動性や衝動性は内的な形で現れることが多いのが特徴です。
不注意の傾向
ADHDの不注意の特性は、日常生活の様々な場面で困難を引き起こします。特に家事や育児、仕事など、マルチタスクや計画性が求められる場面で顕著になることがあります。
忘れ物や物をなくしやすい
毎日のように鍵や財布、スマホ、定期券などを探している、約束を忘れる、書類をどこに置いたか分からなくなる、といったことが頻繁に起こります。これは記憶力そのものに問題があるのではなく、注意を向け続けることが難しいことや、整理整頓が苦手なことが原因と考えられます。
- 学校や職場に忘れ物をする。
- 大事な書類をどこかにしまい込んでしまい見つからない。
- 支払いや手続きの締め切りをうっかり忘れてしまう。
集中力の持続が難しい
興味のないことや退屈に感じる作業に集中し続けることが困難です。すぐに気が散ってしまい、一つのタスクを最後までやり遂げるのに苦労します。
- 会議中に他のことを考えてしまう。
- 書類作成中に他の作業を始めてしまい、元の作業に戻れない。
- 読書や勉強を始めても、すぐに飽きてしまう。
- YouTubeやSNSなどをだらだら見てしまい、やるべきことに取りかかれない。
細かいミスやケアレスミスが多い
注意力散漫さから、うっかりミスや見落としが多くなります。簡単な計算間違いを繰り返したり、指示を聞き間違えたり、書類の誤字脱字が多かったりします。
- メールの宛名を間違える。
- 簡単な計算ミスをする。
- 手順を飛ばしてしまう。
- 相手の話を聞きながら、他のことを考えていて内容を聞き漏らす。
片付けや整理整頓が苦手
物の定位置が決まっていなかったり、整理整頓の方法が分からなかったりするため、部屋やデスク周りが cluttered になりやすいです。どこから手をつけていいか分からず、途中で投げ出してしまうこともあります。
- 「後でやろう」と思って物を置きっぱなしにする。
- 収納場所を決めても、すぐに元の状態に戻ってしまう。
- 必要な物を探し出すのに時間がかかる。
- 冷蔵庫の中が賞味期限切れのものでいっぱいになる。
多動性・衝動性の傾向
ADHDの多動性や衝動性は、成人女性では overt な行動として現れるより、内的な落ち着きのなさや衝動的な言動として現れることが多いです。
落ち着きのなさやソワソワ感
男性のように走り回ったり授業中に立ち歩いたりといった行動は減りますが、会議中に貧乏ゆすりをする、髪を触る、ペンをカチカチ鳴らすなど、手足や体を細かく動かしてしまうことがあります。内面では常に思考が駆け巡り、落ち着かない感覚を抱えていることもあります。
- 長時間同じ姿勢でいるのが苦痛。
- 待ち時間が耐えられない。
- 退屈だと感じると、すぐに何か他のことをしたくなる。
じっとしているのが苦手
会議や講演など、長時間座って話を聞く状況が苦手です。体を動かしたい、立ち上がりたいといった衝動に駆られます。
- 電車やバスで長時間座っているのが辛い。
- 映画館や劇場でじっとしていられない。
思いついたことをすぐに口にする
頭の中で考えたことを filtering せずにそのまま言葉にしてしまい、相手を傷つけたり、失言してしまったりすることがあります。相手の話を遮って話し始めることもあります。
- 会議中に無関係な発言をしてしまう。
- 相手の話し終える前に、自分の言いたいことを話してしまう。
- 思ったことを straight に言いすぎて、きつい印象を与えてしまう。
衝動的な行動や発言
計画性なく、思いつきで行動してしまうことがあります。これは買い物だけでなく、人間関係や仕事の場面でも見られます。
- 衝動買いを繰り返してしまい、 later 後悔する。
- 感情的に職場を辞めてしまう。
- 人間関係で、一時の感情で関係を切ってしまう。
感情の調整が難しい
ADHDの特性を持つ女性は、感情のコントロールに困難を抱えることが多いと言われています。これは、感情を抑制したり、切り替えたりする脳機能の偏りが関係していると考えられます。
気分の波が大きい
些細なことでひどく落ち込んだり、急にイライラしたりと、感情の振れ幅が大きいことがあります。特に月経前は、ホルモンバランスの変化も加わり、感情の不安定さが intensified することがあります(PMS/PMDDとの関連も指摘されています)。
- 小さな失敗で立ち直れないほど落ち込む。
- 予定通りに進まないと extreme にイライラする。
- 理由もなく不安になったり、悲しくなったりする。
イライラしやすい、感情的に反応しやすい
自分の思い通りにならないときや、ストレスがかかる状況で、すぐにイライラしたり、怒りや悲しみを感情的に表現してしまったりすることがあります。後で「なぜあんなに感情的になってしまったのだろう」と後悔することも少なくありません。
- パートナーや家族に対して、些細なことで感情的に怒ってしまう。
- 職場で理不尽なことがあると、感情を抑えられず涙が出そうになる。
- 自分のミスに対して、過度に自分を責めてしまう。
女性の発達障害で気づかれにくい特徴・「あるある」
ここまでASDとADHDの主な特徴を見てきましたが、これらの特性が女性特有の形で現れたり、社会的な期待の中で見過ごされやすかったりする「あるある」な特徴があります。
周囲に合わせようとする「擬態」(カモフラージュ)
多くのASDやADHDの女性は、「普通」に溶け込もうと、幼い頃から周囲の人々を観察し、コミュニケーションの方法や社会的なルールを後天的に学習し、真似る努力を重ねてきました。これが「擬態」と呼ばれるものです。
- 会話中に、相手が期待しているであろう反応を瞬時に予測し、演じるように相槌や表情を作る。
- 集団行動のルールを必死に守ろうとする。
- 苦手な「ガールズトーク」でも、相槌を打ったり、事前に話題を仕入れておいたりして participate しようとする。
この擬態は、表面上は社会に適応できているように見せる一方で、内面では enormous なエネルギーを消耗します。常に気を張っている状態が続くため、燃え尽き症候群になったり、家に帰るとぐったりと疲れて何もできなくなったりすることがあります。周囲からは「真面目」「努力家」と評価されることもありますが、本人は enormous な疲労感や「本当の自分ではない」という感覚に苦しむことがあります。
家事や育児・子育ての困難さ
家庭に入ると、家事や育児といったマルチタスクや計画性が求められる場面が増えます。これはADHDの不注意や整理整頓の苦手さ、計画性の困難さ、ASDの変化への対応の難しさなどが顕在化しやすい領域です。
- 献立を立てるのが苦手で、毎日何を食べるか悩む。
- 買い物の計画が立てられず、買い忘れや無駄が多くなる。
- 部屋が散らかっていても、どこから手をつけていいか分からず途方に暮れる。
- 子供の持ち物の準備や、学校からのプリント管理が苦手。
- 子供の癇癪や感覚過敏への対応に、自分自身もパニックになったり疲弊したりする。
- 授乳やおむつ替え、寝かしつけといった定型的な作業が苦痛に感じられることがある。
いわゆる「ガールズトーク」や雑談が苦手
ASDの特性を持つ女性にとって、共感や感情の共有を中心とした「ガールズトーク」や、特に目的のない雑談は非常にdifficult な場合があります。
- 興味のない話題(芸能人のゴシップ、ファッションなど)にどう反応していいか分からない。
- 会話の目的が見えず、何のために話しているのか疑問に感じてしまう。
- 共感を求められても、論理的に考えてしまい適切な反応ができない。
- 深い話はできても、light な雑談が続かない。
極端な思考になりやすい
物事を白か黒か、0か100かで考えてしまう「白黒思考」になりやすい傾向があります。これはASDの特定のルールへの固執や、ADHDの感情の調整の難しさなどが影響している可能性があります。
- 少しでもミスをすると「自分は全くダメな人間だ」と考えてしまう。
- 「完璧にできないなら、全くやらない方がマシ」と考えて、途中で投げ出してしまう。
- 人間関係で、少し嫌なことがあると「もうこの人とは absolute に関わらない」と考えてしまう。
疲れやすさやエネルギー切れ
擬態による消耗だけでなく、感覚過敏による刺激からの疲労、感情の調整に使うエネルギーの大きさなどから、非常に疲れやすいと感じることが多いです。週末は寝込んでしまう、特定の活動の後は完全に shut down してしまう、といった経験をすることがあります。
- 仕事や人との関わりの後、強い疲労感で何もできなくなる。
- 特定の場所(騒がしい場所、人混みなど)に行った後、ぐったりする。
- 集中していると、空腹や疲労に気づかず倒れそうになることがある。
他の精神疾患(二次障害)を併発しやすい
長年の生きづらさや、周囲との違いからくる孤立感、自己肯定感の低下などにより、うつ病、不安障害(社交不安障害、全般性不安障害など)、摂食障害、適応障害などの精神疾患を併発しやすいと言われています。これは発達障害そのものではなく、特性による困難が引き起こす secondary な問題であり、「二次障害」と呼ばれます。
- 「どうして自分はこんなにできないのだろう」と自己肯定感が下がり、 depression になる。
- 人との関わりが怖くなり、引きこもりがちになる。
- ストレスから過食や拒食に走る。
- 仕事のプレッシャーに耐えられず、 Burnout する。
発達障害の傾向があるか確認するには?簡易チェックと診断
これらの特徴に多く当てはまるからといって、それが即ち発達障害であるというわけではありません。あくまで傾向があるかどうかを確認するためのものであり、正式な診断は専門家によって行われます。
大人女性のための簡易チェックリスト(※診断ではありません)
以下のチェックリストは、ご自身の傾向を知るための手がかりとしてご利用ください。これだけで診断はできませんし、全ての項目に当てはまる必要はありません。強く当てはまる項目が多い場合、専門家への相談を検討してみることをお勧めします。
<コミュニケーション・対人関係>
- □ 集団での会話で、何を話したらいいか分からなくなることがある。
- □ 相手の話を聞きながら、適切に相槌を打ったり質問したりするのが難しいと感じる。
- □ 言葉の裏にある意味や、場の空気を読むのが苦手だ。
- □ 自分の興味のあることについて、相手の反応を気にせず一方的に話してしまうことがある。
- □ 社交辞令や冗談が分からず、真に受けてしまうことがある。
- □ 相手の表情や声色から感情を読み取るのが苦手だ。
- □ 人との距離感が分からず、近すぎたり遠すぎたりしてしまうことがある。
- □ いわゆる「ガールズトーク」や目的のない雑談が苦手だ。
- □ 集団で過ごすよりも、一人や少人数で過ごす方が気楽だ。
<こだわり・興味・感覚>
- □ 自分が決めたやり方や手順に強くこだわり、それ以外の方法だと不安になる。
- □ 予定外の出来事や急な変更に弱い。
- □ 特定の物事や趣味に異常なほど集中し、他のことが手につかなくなることがある。
- □ 特定の音や匂い、肌触りなどが非常に不快に感じられる。
- □ 暑さや寒さ、空腹や痛みといった体の感覚に気づきにくいことがある。
- □ 特定の食べ物しか食べられない、あるいは extreme に偏食だ。
<不注意>
- □ 忘れ物や物をなくしやすい。
- □ 人の話を最後まで聞くのが苦手で、ぼーっとしてしまうことがある。
- □ 細かいミスやケアレスミスが多い。
- □ 物事を順序立てて考えたり、計画通りに進めたりするのが苦手だ。
- □ 片付けや整理整頓が苦手で、部屋が散らかりやすい。
- □ 締め切りや約束事をうっかり忘れてしまうことがある。
- □ 同時に複数のことをするのが苦手だ。
<多動性・衝動性・感情>
- □ じっとしているのが苦手で、ソワソワしたり体を動かしたりしてしまう。
- □ 思いついたことを filtering せずに口に出してしまい、後で後悔する。
- □ 衝動買いをしやすい。
- □ 感情の波が大きく、些細なことでひどく落ち込んだりイライラしたりする。
- □ ストレスがかかると、感情的に反応してしまうことがある。
- □ 感情の切り替えが苦手で、一度落ち込むとなかなか立ち直れない。
(※これはあくまで簡易的なチェックリストであり、専門家による診断に代わるものではありません。)
診断を受けるまでの流れと専門機関
もし、上記のチェックリストで多くの項目に当てはまり、日常生活や社会生活での困難を強く感じている場合は、専門機関に相談することを検討しましょう。
相談先
- 精神科医/心療内科医: 発達障害の診断や、二次障害(うつ病、不安障害など)の治療を行います。発達障害に詳しい医師を選ぶことが重要です。
- 発達障害者支援センター: 発達障害に関する様々な相談に応じ、必要な情報提供や助言、関係機関との連携支援を行います。診断の有無に関わらず利用できます。
- 精神保健福祉センター: 地域住民の精神的な健康に関する相談窓口です。発達障害に関する相談も可能です。
- 大学病院や大きな医療機関の発達外来: より専門的な診断や評価が必要な場合に適しています。予約が取りにくいことがあります。
診断を受けるまでの一般的な流れ
- 情報収集と相談: まずは発達障害者支援センターや精神保健福祉センターなどに電話やメールで相談し、受診先に関する情報やアドバイスを得るのがスムーズです。かかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。
- 医療機関への予約: 発達障害の診断が可能な精神科や心療内科に予約を入れます。初診まで時間がかかることが多いです。
- 予診票や問診票の記入: これまでの生育歴、学歴、職歴、対人関係、困っていることなどを詳しく記入します。幼少期の様子が分かる情報(母子手帳、連絡帳、通知表など)や、家族からの情報があると診断に役立ちます。
- 医師による診察: 医師との面談を通して、現在の困りごとやこれまでの経過について詳しく話します。
- 心理検査(必要に応じて): 知能検査(WAISなど)、発達特性に関する検査(AQ、ADOSなど)が行われることがあります。これらの検査結果は診断の補助となります。
- 診断と説明: 診察や検査の結果を踏まえ、医師が診断を行い、特性や今後のことについて説明してくれます。
- 診断後の対応: 診断が下りた場合、必要に応じて服薬(ADHDの場合など)、カウンセリング、生活上のアドバイスなどが行われます。診断書が必要な場合は発行してもらいます。
診断のメリット・デメリット
- メリット:
- 自身の特性を客観的に理解できる(自己理解の深化)。
- 「なぜ自分は他の人と同じようにできないんだろう」という疑問や自責の念が和らぐ。
- 適切な支援やサービス(障害者手帳、障害年金、就労移行支援など)に繋がる可能性がある。
- 職場や学校で合理的配慮を求める際の根拠となる。
- デメリット:
- 診断名を受け入れることに抵抗を感じる人もいる。
- 社会的な偏見や誤解を受ける可能性がある。
- 診断名によって、必要以上に自分を制限してしまう可能性がある。
診断を受けるかどうかはご自身の判断ですが、生きづらさを感じているのであれば、まずは専門機関に相談してみることをお勧めします。診断の有無に関わらず、自身の特性を理解し、適切な対処法を知ることは、生きづらさを軽減する上で非常に重要です。
大人の発達障害を持つ女性が生きづらさとの向き合うヒント
自身の特性に気づき、理解することは、生きづらさを軽減するための第一歩です。ここでは、発達障害を持つ成人女性が、自身の特性と上手に付き合い、より快適に、自分らしく生きるためのヒントをいくつかご紹介します。
自分の特性を理解し受け入れること
まずは、自分自身の特性を知り、それを良い悪いではなく「自分はこういう特性を持っているんだ」と客観的に理解し、受け入れることが重要です。
- 自分を責めない: これまで「努力が足りない」「怠けている」などと思って自分を責めてきたかもしれませんが、それは特性によるものである可能性が高いです。自分を責めるのをやめましょう。
- 特性について学ぶ: 書籍、インターネット上の信頼できる情報サイト、当事者のブログや体験談などを参考に、ASDやADHDについて学びましょう。同じような特性を持つ人の経験談は、共感や対処法のヒントに繋がります。
- 得意なこと・苦手なことを整理する: 自分がどんな状況で difficulties を感じやすいか、逆にどんな状況で力を発揮できるかを具体的に書き出してみましょう。これは自己理解を深める上で非常に役立ちます。例えば、計画を立てるのは苦手だが、一度集中すると驚くほどdetailed に作業ができる、といったように、苦手さの裏には得意なことがあることも多いです。
周囲との良好な関係を築くための工夫
コミュニケーションや対人関係に困難を感じやすいからこそ、周囲の人と上手に付き合っていくための工夫が大切です。
- 特性を信頼できる相手に伝える: パートナーや家族、親しい友人、職場の理解のある上司など、信頼できる相手には、自分の特性や苦手なことを正直に伝えてみましょう。理解を得られることで、助けを求めやすくなったり、誤解が減ったりします。伝える際は、「~が苦手なので、~のようにしてもらえると助かります」といったように、具体的なお願いの形で伝えるのが効果的です。
- 苦手なことをカバーしてもらう・得意なことを活かす: 苦手なことは無理に克服しようとせず、誰かに頼ったり、ツールやサービスを利用したりすることを検討しましょう。そして、自分の得意なことや強みを活かせる場所や役割を見つけることに力を注ぎましょう。
- コミュニケーションのパターンを学ぶ: アサーティブコミュニケーション(自分も相手も大切にする表現方法)など、コミュニケーションのスキルを学ぶことも有効です。ロールプレイングなどで練習するのも良いでしょう。
- 物理的な工夫: 感覚過敏がある場合は、ノイズキャンセリングイヤホンを使う、照明を調整する、肌触りの良い服を選ぶ、休憩場所を確保するなど、環境を調整する工夫をしましょう。
- 予定やタスクの可視化: 不注意や計画性の困難さに対しては、カレンダーアプリやタスク管理ツールを活用する、To-Doリストを作成する、重要なことは付箋に書いて貼るなど、視覚的に確認できる工夫を取り入れましょう。
活用できる支援やサービス、相談先
一人で抱え込まず、外部の支援やサービスを積極的に活用しましょう。
- 発達障害者支援センター: 各都道府県に設置されており、発達障害に関する総合的な支援を行っています。本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。
- 精神保健福祉センター: 地域の精神保健に関する相談窓口です。
- 就労移行支援事業所: 就職を目指す発達障害者などに対し、ビジネススキルやコミュニケーションスキルのトレーニング、就職活動のサポートなどを行います。
- ピアサポートグループ: 同じ発達障害の特性を持つ当事者同士が集まり、経験や悩みを共有したり、情報交換したりする場です。共感を得られたり、具体的な対処法を知ることができたりします。
- オンラインコミュニティ: SNSや専門サイトなどに、発達障害を持つ女性向けのオンラインコミュニティがあります。気軽に情報交換や相談ができます。
- 公的な相談窓口: 市町村の障害福祉窓口、ハローワークの専門窓口(障害者専門の相談員がいる場合がある)などでも相談が可能です。
- カウンセリング/精神療法: 専門家によるカウンセリングや認知行動療法などは、自身の特性への理解を深めたり、ネガティブな思考パターンを修正したり、ストレス対処法を身につけたりするのに役立ちます。
- 合理的配慮: 診断を受けた場合、職場や学校に対して、自身の特性による困難を軽減するための配慮(指示の出し方を工夫してもらう、静かな場所で作業する機会を設けてもらうなど)を求めることができる場合があります。
これらの支援を上手に活用することで、一人で抱え込んでいた生きづらさが軽減され、より自分らしく、 comfortable に生活できるようになる可能性があります。
困難を感じやすい場面 | 考えられる発達特性(例) | 対処法のヒント(例) | 活用できる支援(例) |
---|---|---|---|
人とのコミュニケーション | 空気が読めない、一方的な話し方、非言語理解の困難 | 信頼できる人に特性を伝える、アサーティブコミュニケーションを学ぶ、聞き役に回る練習をする | 発達障害者支援センター、カウンセリング、ピアサポート |
物忘れ、うっかりミス | 不注意 | To-Doリストを作成する、リマインダーを設定する、物の定位置を決める、重要なことはメモを取る、ダブルチェックを習慣にする | カウンセリング、ADHD向けのワークショップ |
片付け、整理整頓 | 不注意、実行機能の困難 | 物の量を減らす、物の住所を決める、一度に完璧を目指さない、片付けの専門家やヘルパーに頼むことを検討する | 市町村の相談窓口、家事代行サービス |
スケジュール管理、計画性 | 不注意、実行機能の困難 | カレンダーアプリで予定を管理する、タスクを細分化して取り組む、ルーティンを決める、誰かに予定を確認してもらう | 発達障害者支援センター、カウンセリング |
感情の波、イライラしやすさ | 感情調整の困難(ADHD)、感覚過敏(ASD) | ストレスの原因を特定する、リラックスできる方法を見つける、気持ちを書き出す、信頼できる人に話を聞いてもらう、専門医に相談する | 精神科/心療内科、カウンセリング、ピアサポート |
特定の刺激が苦手(音、光など) | 感覚過敏(ASD) | ノイズキャンセリングイヤホンを使う、サングラスを使う、苦手な場所を避ける、休憩スペースを確保する、服装の素材を選ぶ | 発達障害者支援センター |
仕事での困難 | コミュニケーション、不注意、実行機能、疲れやすさ | 業務内容や指示の明確化をお願いする、苦手な業務を相談する、得意な業務で貢献する、合理的配慮を相談する | 就労移行支援事業所、ハローワーク、産業医 |
まとめ:大人の発達障害を持つ女性が知っておきたいこと
大人の発達障害、特に女性のASDやADHDは、その特性が見過ごされやすく、ご本人が長年にわたり「生きづらさ」を抱えているケースが多く見られます。周囲に合わせようとする「擬態」は、適応努力である一方で、ご本人にとっては大きな消耗となり、二次障害に繋がりかねません。
もし、この記事で紹介した特徴や「あるある」に強く共感し、日常生活や社会生活で困難を感じているのであれば、それはあなたが「ダメ」なのではなく、脳機能の特性によるものである可能性を考えてみてください。
自身の特性を理解し、受け入れることは、生きづらさから liberation されるための第一歩です。そして、一人で抱え込まず、専門機関や支援サービス、信頼できる人に相談することが非常に重要です。診断を受けることも、自己理解を深め、適切な支援に繋がるための一つの選択肢です。
発達障害は治るものではありませんが、自身の特性に合った対処法や環境調整、周囲との協力によって、生きづらさを軽減し、自分らしく充実した人生を送ることは十分に可能です。この記事が、あなたの自己理解の一助となり、希望を見出すきっかけとなれば幸いです。
【免責事項】
この記事は情報提供のみを目的としており、医療的なアドバイスや診断に代わるものではありません。ご自身の状態について不安を感じている場合や、診断や治療をご希望の場合は、必ず医療機関や専門機関にご相談ください。この記事の情報に基づいて行う判断や行動については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
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