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「頭でわかっていても言葉が出ない」とき|病気?原因と対策

頭でわかっていても言葉が出ない。伝えたいことは明確なのに、適切な単語が思い浮かばず、会話がスムーズに進まない――。このような経験は、多くの人が一度は感じたことがあるのではないでしょうか。特に、緊張する場面や疲れている時に起こりやすいと感じるかもしれません。

しかし、こうした症状が頻繁に起こったり、以前よりも増えたと感じたりする場合、それは単なる「気のせい」ではないかもしれません。原因は、一時的な心身の状態から、注意が必要な病気に至るまでさまざまです。この記事では、「頭でわかっていても言葉が出ない」という悩みの原因を多角的に解説し、年代別の傾向や自分でできる改善策、そして医療機関を受診すべき目安について詳しくご紹介します。この情報が、あなたの不安を解消し、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。

目次

言葉が出てこない原因とは?一時的なもの?

言葉がすぐに思い浮かばない、いわゆる「舌先まで出かかっているのに」という状態は、誰にでも起こりうる現象です。これは多くの場合、病気ではなく一時的な要因によるものと考えられます。日常生活におけるさまざまな要素が、言葉の想起や思考のプロセスに影響を与えることがあります。

ストレスや疲労による影響

過度なストレスや慢性的な疲労は、脳の認知機能に大きな影響を及ぼします。脳は情報処理や記憶、思考、そして言語を司る重要な器官ですが、ストレスや疲労によってその働きが低下すると、言葉をスムーズに引き出す能力にも支障が出ることがあります。

具体的には、ストレスホルモンが増加することで、脳の記憶を司る海馬や、感情・思考を調整する前頭前野の機能が一時的に低下する可能性があります。これにより、過去の記憶から適切な単語を引っ張り出す作業がうまくいかなくなったり、思考が混乱して言葉にまとめられなくなったりすることが考えられます。

また、睡眠不足や疲労が蓄積すると、脳の処理速度が遅くなり、言葉を探すのに時間がかかったり、言い間違いが増えたりすることもあります。心身がリラックスしている状態であれば自然に出てくる言葉も、緊張や疲労があると途端に出てこなくなる、というのはよくあることです。

考えがまとまらない状態との関連性

言葉が出てこない原因として、そもそも頭の中で考えが整理されていない、まとまっていないという状況も挙げられます。思考が拡散していたり、複数の情報が同時に頭の中を駆け巡っていたりすると、それを一つの筋道だった言葉として表現するのが難しくなります。

例えば、複雑な事柄を説明しようとする際、伝えたい要素が多すぎたり、順序立てて考えるのが難しかったりすると、「えっと」「その、なんだっけ」といった言葉が増え、スムーズに話せなくなることがあります。これは、言葉の想起以前に、思考の構成段階でつまずいている状態と言えます。

特に、プレッシャーを感じる状況や、即座に回答を求められるような場面では、思考の整理が追いつかずに言葉が出てこなくなることがあります。これは、脳が「話す」という行動よりも、「考える」というプロセスに多くのリソースを使っているために起こると考えられます。

加齢による言葉の想起力の変化(20代・40代の傾向も含む)

年齢を重ねるにつれて、言葉の想起力に変化が現れることは、比較的自然な現象と考えられています。これは、脳の機能が徐々に変化することと関連しています。ただし、その変化の程度や現れ方には個人差が非常に大きく、一概に「何歳になったらこうなる」と言えるものではありません。

20代の傾向:
20代は一般的に、語彙力も高く、新しい言葉を覚える能力も旺盛な時期です。しかし、情報処理能力が高い反面、複数のタスクを同時にこなしたり、速さを求められたりする状況では、一時的に言葉が出てこなくなることがあります。これは、脳が高速で情報を処理しようとするあまり、言葉の検索プロセスが追いつかない「詰まり」のような状態に近いかもしれません。また、新しい環境での人間関係や仕事のストレスなども、一時的な言葉のつまずきにつながることがあります。

40代の傾向:
40代頃から、言葉の想起に時間がかかる、あるいは固有名詞などがすぐに出てこないといった経験をする人が増える傾向があります。これは、脳の機能的な変化の一部と考えられます。特に、多くの情報を脳内に蓄積しているため、その中から適切な言葉を探し出す「検索」のプロセスに、以前よりも時間がかかるようになることが考えられます。単語自体を忘れてしまったわけではなく、「知っているのに出てこない」という感覚が強くなるのが特徴かもしれません。これは「良性健忘」とも呼ばれ、加齢に伴う自然な変化の範囲内であることが多いです。ただし、ストレスや過労が重なると、その傾向がより顕著になることもあります。

このように、言葉が出てこない現象は、一時的な心身の状態や加齢といった、病気とは異なる要因によっても引き起こされることが多々あります。しかし、その症状が頻繁に起こるようになったり、日常生活に支障をきたすほどになったりする場合は、注意が必要なケースもあります。

頭でわかっていても言葉が出ない場合に考えられる病気

「頭でわかっていても言葉が出ない」という症状が、単なる一時的なものではなく、特定の病気に関連している可能性もゼロではありません。特に、症状が急に出現したり、以前よりも明らかに悪化したり、他の症状(体の麻痺、視覚障害、理解力の低下など)を伴う場合は、早期に医療機関を受診することが非常に重要です。ここでは、言葉の機能に関連する主な病気について解説します。

病気の可能性【医師監修】

言葉が出てこない、あるいは言葉を適切に使えないといった症状は、脳の言語に関わる領域に何らかの障害が起きているサインである可能性があります。脳は非常に複雑なネットワークで構成されており、言葉を理解し、考えをまとめ、それを音声や文字として表現するという一連のプロセスは、脳の様々な部分が連携して行っています。この連携がうまくいかなくなると、言葉に関するさまざまな問題が生じます。

考えられる病気としては、脳自体に問題が生じるもの(脳卒中、脳腫瘍、変性疾患など)や、神経系の伝達に問題が生じるものなどがあります。これらの病気は、原因や症状の現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。

重要なのは、これらの症状がすべて特定の病気を示すわけではないということですが、可能性を否定できないため、気になる症状がある場合は自己判断せず、専門家の診断を受けることが推奨されます。

喚語困難や失語症

言葉が出てこないという症状の代表的なものとして、「喚語困難(かんごこんなん)」や「失語症(しつごしょう)」があります。これらは、脳の言語野と呼ばれる領域の障害によって起こります。

  • 喚語困難:
    「喚語困難」とは、単語が思い出せない、あるいは適切な単語を選択できない状態を指します。頭の中では言いたいことが分かっているのに、それを表現するための言葉(名詞、動詞、形容詞など)がすぐに出てこないのが特徴です。これは、脳内に蓄えられた言葉のデータベースから目的の言葉を引き出すプロセス(喚語)に問題が生じていると考えられます。比較的軽度の場合から、会話が途切れがちになる重度の場合まであります。加齢に伴う良性健忘でも見られますが、脳の病気によって生じることもあります。
  • 失語症:
    「失語症」は、脳卒中(脳梗塞や脳出血)や頭部外傷、脳腫瘍などが原因で、一度獲得した言語能力が失われる状態を指します。単に言葉が出てこないだけでなく、「聞く」「話す」「読む」「書く」といった言語に関する能力全体に影響が出ることがあります。失語症にはいくつかのタイプがあり、障害された脳の部位によって症状が異なります。
    • ブローカ失語: 言葉を理解することは比較的できるが、話すのが困難になるタイプ。「てにをは」が抜けたり、単語を一つずつ絞り出すように話したりすることが多いです。
    • ウェルニッケ失語: スムーズに話せるが、言葉の選択や組み立てが不適切になり、話の内容が分かりにくくなるタイプ。相手の言葉の理解も難しくなることがあります。
    • 全失語: 聞く、話す、読む、書くといった全ての言語機能が重度に障害されるタイプ。
    • 健忘失語: 単語(特に名詞)が思い出せないことが顕著なタイプで、喚語困難が重度になった状態とも言えます。

    失語症は、急に発症することが多く、緊急性の高い脳の病気が原因であることが一般的です。

構語障害・構音障害

「構語障害(こうごしょうがい)」や「構音障害(こうおんしょうがい)」は、言葉を「発音する」プロセスに問題が生じる状態です。頭の中では言いたいことや言葉が分かっているのに、それを声に出して正確に発音することが難しくなります。

  • 構語障害:
    脳の運動野やそれを制御する神経系に障害が生じることで、話すために必要な口、舌、唇、声帯などの動きがスムーズに行えなくなる状態です。筋肉の麻痺や協調運動の障害などが原因となります。言葉自体は正しく認識できていますが、発音する際に不明瞭になったり、どもったり、声が小さくなったりします。脳卒中、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などが原因として考えられます。
  • 構音障害:
    これは構語障害とほぼ同じ意味合いで使われることが多いです。医学的には、発声、共鳴、調音といった発音に関わる機能の障害全般を指します。

構語障害・構音障害は、言葉が「出てこない」というよりは、言葉が「うまく発音できない」「不明瞭になる」という点で失語症や喚語困難とは異なります。しかし、症状によっては言葉を選ぶのに時間がかかる(二次的な喚語困難)ように見えることもあります。

その他の病気(脳卒中、認知症など)

言葉に関する問題は、上記以外にも様々な病気によって引き起こされることがあります。

  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血):
    脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳細胞が損傷を受ける病気です。脳のどの部分が損傷を受けたかによって、様々な症状が現れますが、言語野を含む領域が影響を受けると、失語症や構語障害が生じることがあります。特に、急に言葉が出なくなった、ろれつが回らなくなった、といった症状は脳卒中の可能性があり、一刻も早い医療機関への受診が必要です。時間経過とともに症状が悪化することもあります。
  • 認知症:
    認知症は、脳の機能が徐々に低下する病気で、記憶障害や判断力の低下、見当識障害など様々な症状が現れます。アルツハイマー型認知症など、認知症の種類によっては、初期の頃から言葉が出てこない、適切な単語が見つからないといった言語に関する症状が見られることがあります。進行とともに、会話の理解や意思疎通が難しくなることがあります。
  • 脳腫瘍:
    脳腫瘍が言語野やその周辺にできると、腫瘍が脳を圧迫したり破壊したりすることで、言葉に関する様々な症状を引き起こす可能性があります。症状は腫瘍の種類や大きさ、できる場所によって異なりますが、進行とともに言葉が出てこなくなる、失語症のような症状が現れることがあります。
  • 神経変性疾患:
    パーキンソン病や進行性核上性麻痺など、特定の神経細胞が徐々に死滅していく病気でも、言葉に関する問題(話し方が不明瞭になる、声が小さくなる、言葉の想起が難しくなるなど)が生じることがあります。
  • 精神疾患:
    うつ病や統合失調症などの精神疾患が、思考のまとまりにくさやコミュニケーション能力の低下を引き起こし、結果的に言葉が出てこないように見える場合があります。ただし、これは脳の器質的な損傷による失語症などとは異なります。
  • 薬剤の副作用:
    一部の薬剤の副作用として、一時的に思考能力や言語機能に影響が出ることがあります。

病気によって言葉の問題が生じている場合、早期に診断を受けて適切な治療を開始することが重要です。特に脳卒中の場合は、治療開始までの時間が予後を大きく左右します。

症状の種類 特徴 主な原因 病院で診断される用語
言葉が思い出せない 言いたいことは頭にあるが、適切な単語(特に名詞)が出てこない。 加齢、疲労、ストレス、脳卒中(健忘失語)、認知症、脳腫瘍 喚語困難、失語症(健忘失語)
言葉の理解・表現が困難 相手の話す内容が理解できない、自分の考えを言葉として組み立てて話せない。「聞く・話す・読む・書く」に影響。 脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍、認知症 失語症
発音が不明瞭・困難 言葉自体は分かっているが、口や舌がうまく動かず、正しく発音できない。ろれつが回らない。 脳卒中、パーキンソン病、ALS、脳腫瘍 構語障害、構音障害

このように、言葉が出てこないという症状一つをとっても、背景には様々な要因や病気が潜んでいる可能性があります。症状が気になる場合は、自己判断で済ませず、医療機関に相談することが大切です。

言葉が出てこない症状の改善策・トレーニング

「頭でわかっていても言葉が出てこない」という症状が、一時的なものや加齢に伴う変化である場合、日常生活での工夫や簡単なトレーニングによって改善が期待できることがあります。また、病気が原因の場合でも、リハビリテーションによって症状の改善を目指すことが可能です。ここでは、自分でできる改善策やトレーニングについてご紹介します。

日常で意識したいこと

  • 十分な休息と睡眠をとる: 脳の機能は休息によって回復します。慢性的な疲労や睡眠不足は、言葉の想起力を含む認知機能の低下を招きます。質の高い睡眠を十分にとることを意識しましょう。
  • ストレスを管理する: 過度なストレスは脳に負担をかけます。リラクゼーション法(深呼吸、瞑想など)、趣味の時間を持つ、適度な運動をするなど、自分に合った方法でストレスを解消・管理することが重要です。
  • バランスの取れた食事: 脳の健康には、ビタミンやミネラル、DHAなどの栄養素が不可欠です。野菜、果物、魚などをバランス良く摂取し、健康的な食生活を心がけましょう。
  • 適度な運動: ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、脳への血流を改善し、脳の機能を活性化させることが分かっています。日常生活に運動を取り入れましょう。
  • 脳を使う習慣: 新しいことを学んだり、普段使わない脳の領域を刺激したりすることも有効です。読書、パズル、ゲーム、楽器の演奏、語学学習など、楽しみながら脳を使う習慣をつけましょう。
  • 話す機会を増やす: 人と積極的に会話することは、言葉を選ぶ練習になり、脳の言語野を活性化させます。友人や家族との交流を大切にしましょう。
  • 言葉を書き出す習慣: 言葉が出てこないと感じる場合は、まず頭の中の考えを紙やメモアプリに書き出してみましょう。これにより、思考が整理され、言葉にまとめやすくなります。ジャーナリング(日記のようなもの)も効果的です。
  • 焦らない: 言葉が出てこない時に焦ると、さらに脳が緊張して言葉が出にくくなることがあります。「ゆっくり話そう」「まあいいか」と、リラックスすることを意識するのも大切です。

言語機能のための簡単なトレーニング

自宅で手軽にできる、言語機能、特に言葉の想起力を高めるための簡単なトレーニングをいくつかご紹介します。

  • 名称想起トレーニング:
    • 身の回りにある物の名前を声に出して言う練習です。「これは何?」と自分に問いかけながら、物の名前を次々に言ってみましょう。例えば、机の上にあるもの(ペン、本、コップ)、部屋にあるもの(椅子、カーテン、時計)など。
    • 写真や絵を見て、そこに写っているものの名前をできるだけ多く挙げる練習も効果的です。
    • 特定のカテゴリに属する言葉を制限時間内にできるだけ多く挙げる練習(例:「動物の名前を1分間にいくつ言えるか」「食べ物の名前」など)。
  • 音韻・意味カテゴリー訓練:
    • ある音(例:「あ」の音)で始まる言葉をできるだけ多く挙げる練習です。
    • ある意味のカテゴリー(例:「乗り物」)に属する言葉をできるだけ多く挙げる練習です。
  • 文章完成・生成トレーニング:
    • 文章の途中までが与えられ、それに続く言葉や文章を考える練習です(例:「昨日の夜、私は…」「もしも宝くじが当たったら…」)。
    • 与えられた単語を使って短い文章を作る練習です。
  • 読書と要約:
    • 新聞記事や本の文章を声に出して読み、その内容を自分の言葉で短く要約する練習です。これにより、内容の理解力と言葉の構成力を鍛えることができます。
  • クロスワードパズルやしりとり:
    • これらの言葉を使ったゲームも、楽しみながら語彙力や言葉の想起力を高めるのに役立ちます。

これらのトレーニングは、毎日少しずつでも継続することが大切です。無理なく、楽しみながら取り組めるものを選びましょう。

ストレスへの対処法

ストレスは言葉が出てこない症状と深く関わっています。効果的なストレス対処法を身につけることは、言語機能の改善にも繋がります。

  • リラクゼーション:
    • 深呼吸: ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口から長く吐き出す深呼吸を数回繰り返すことで、心身をリラックスさせることができます。
    • 筋弛緩法: 体の各部分の筋肉に力を入れ、一気に力を抜くという動作を繰り返すことで、体の緊張を和らげます。
    • 瞑想(マインドフルネス): 静かな場所で目を閉じ、呼吸に意識を集中するなど、今この瞬間に注意を向ける練習です。雑念にとらわれず、心を落ち着かせる効果があります。
  • 趣味や好きな活動:
    • 自分が心から楽しめる活動に時間を使うことは、ストレス解消に非常に効果的です。音楽鑑賞、映画鑑賞、ガーデニング、料理など、何でも構いません。
  • 適度な運動:
    • 運動はストレスホルモンを減少させ、気分を高揚させるエンドルフィンを分泌します。ウォーキング、ジョギング、ヨガ、ダンスなど、続けられる運動を見つけましょう。
  • 十分な休息:
    • 疲れているときは、無理せずに休息をとることが最も重要です。昼寝や短時間の休憩でも効果があります。
  • 問題解決スキルの向上:
    • ストレスの原因となっている問題に対して、建設的な解決策を考える練習をすることも有効です。問題を細分化し、一つずつクリアしていくことで、達成感を得られ、ストレスを軽減できます。
  • 人との交流:
    • 信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうだけで、気持ちが楽になることがあります。一人で抱え込まず、周囲の人に頼ることも大切です。
  • 専門家のサポート:
    • どうしても自分でストレスに対処できない場合は、カウンセラーや医師に相談することも検討しましょう。

これらの改善策やトレーニングは、すぐに劇的な効果が現れるものではありませんが、継続することで脳の機能維持や向上に繋がり、言葉が出てこないという悩みの軽減に役立つ可能性があります。ただし、症状が重い場合や、急に始まった場合は、まず医療機関を受診し、適切な診断を受けることが最優先です。

こんな時は要注意!病院を受診すべき目安

「頭でわかっていても言葉が出ない」という症状が、単なる一時的なものや加齢による変化ではなく、何らかの病気のサインである可能性も考慮しなくてはなりません。特に以下のような場合は、迅速な医療機関の受診が必要です。

すぐに受診が必要な危険な症状

以下のような症状が突然現れた場合、脳卒中などの重篤な病気の可能性が考えられます。一刻も早い受診が、命を守り、後遺症を最小限に抑えるために非常に重要です。救急車を呼ぶこともためらわないでください。

  • 突然、言葉が全く出てこなくなった、あるいは話そうとしても全く違う言葉が出てくる。
  • 突然、相手の話している内容が全く理解できなくなった。
  • 突然、ろれつが回らなくなり、しゃべり方が明らかに変わった。
  • 言葉が出ない症状に加え、体の片側の手足に力が入らない(麻痺)、しびれがある。
  • 言葉が出ない症状に加え、顔の片側がゆがむ。
  • 言葉が出ない症状に加え、急に片目あるいは両目の視力が低下したり、視野が狭くなったりした。
  • 言葉が出ない症状に加え、めまいやふらつき、歩行困難がある。
  • 言葉が出ない症状に加え、今まで経験したことのないような激しい頭痛がある。
  • 呼びかけへの反応が鈍くなった、意識がもうろうとしている。

これらの症状は、脳の血管に異常が起きたサインである可能性が高く、緊急性が非常に高いです。

急な症状ではないものの、以下のような症状が続いたり、徐々に悪化していると感じる場合も、医療機関への相談を検討すべきでしょう。

  • 言葉が出てこない頻度が明らかに増えた。
  • 単語を思い出すのにかかる時間が以前より長くなった。
  • 知っている人の名前や固有名詞が頻繁に出てこなくなった。
  • 簡単な言葉遣いや文章構成にもつまずくようになった。
  • 話す際に言い間違いやどもりが増えた。
  • 会話についていくのが難しくなった、人の話が理解しづらくなった。
  • 読む・書くことにも困難を感じるようになった。
  • これらの症状に加え、物忘れが増えた、判断力が鈍くなった、今までできていたことが難しくなったなどの症状がある。

これらの症状は、認知症や脳腫瘍、その他の神経疾患の初期症状である可能性も考えられます。早めに医療機関を受診することで、原因を特定し、適切な治療や対処を開始することができます。

どの診療科にかかるべきか

言葉が出てこない、話しにくいといった症状で医療機関を受診する場合、まずは以下の診療科を検討すると良いでしょう。

  • 脳神経内科:
    脳や神経系の病気(脳卒中、認知症、パーキンソン病、脳腫瘍など)を専門とする診療科です。言葉の問題が脳や神経の機能障害によるものかを診断し、治療を行います。言葉の症状だけでなく、体の麻痺やしびれ、頭痛、めまいなど、他の神経症状を伴う場合は特に適しています。
  • 神経内科:
    こちらも脳神経内科と同様に、脳や神経系の病気を専門とします。名称は医療機関によって異なる場合があります。
  • かかりつけ医:
    まずは日頃から自身の健康状態を把握しているかかりつけ医に相談するのも良い方法です。症状を聞いて、適切な専門医を紹介してくれます。
  • 精神科・心療内科:
    ストレスや精神的な要因が言葉の問題に大きく関わっていると考えられる場合や、うつ病などの精神疾患の可能性も否定できない場合は、これらの診療科が適しています。

症状が急性の場合は、救急外来を受診することも考慮してください。特に、脳卒中が疑われる前述の危険な症状が見られる場合は、迷わず救急車を呼びましょう。

専門家への相談の重要性

言葉が出てこないという症状について、一人で悩まず専門家(医師や言語聴覚士など)に相談することには、いくつかの重要な意味があります。

  • 正確な診断:
    症状の原因が一時的なものなのか、それとも病気によるものなのかを正確に診断してもらうことができます。自己判断で済ませるのではなく、専門家による診断を受けることで、適切な対応をとることが可能になります。
  • 適切な治療・リハビリテーション:
    病気が原因であると診断された場合、その病気に対する適切な治療を受けることができます。また、失語症や構語障害などに対しては、言語聴覚士による専門的なリハビリテーションが非常に有効です。言葉の機能回復を目指すだけでなく、残された能力を最大限に活かしてコミュニケーションを改善するための訓練を行います。
  • 不安の軽減:
    症状の原因が分からず漠然とした不安を抱えている状態は、それ自体がストレスとなり、症状を悪化させる可能性もあります。専門家に相談し、診断や治療方針について説明を受けることで、不安が軽減され、安心して症状と向き合うことができるようになります。
  • アドバイス:
    日常生活で気をつけるべきことや、自分でできる改善策、家族の関わり方などについて、専門家から具体的なアドバイスを得ることができます。

言葉の問題は、コミュニケーションに直接関わるため、日常生活や社会生活に大きな影響を与える可能性があります。しかし、原因を正しく理解し、適切なケアやリハビリテーションを受けることで、症状の改善やQOL(生活の質)の維持・向上を目指すことができます。症状が気になる場合は、勇気を出して専門家の扉を叩いてみましょう。

【まとめ】「頭でわかっていても言葉が出ない」と悩んだら

「頭でわかっていても言葉が出ない」という経験は、誰にでも起こりうる現象であり、多くの場合、疲労やストレス、加齢といった一時的な要因や自然な変化によるものです。これらの場合は、十分な休息やストレス管理、脳を活性化させる習慣、簡単な言語トレーニングなどが有効な改善策となります。

しかし、症状が急に現れた、頻繁に起こるようになった、以前よりも明らかに悪化した、あるいは体の麻痺や激しい頭痛などの他の症状を伴う場合は、脳卒中や認知症、脳腫瘍といった病気のサインである可能性も考えられます。このような場合は、自己判断せず、速やかに医療機関(脳神経内科や神経内科など)を受診することが非常に重要です。

専門家(医師や言語聴覚士)に相談することで、症状の正確な診断を受け、原因に応じた適切な治療やリハビリテーションを開始することができます。早期の対応は、病気の進行を抑えたり、言語機能の回復を高めたりする上で非常に大切です。

言葉の問題は、日々のコミュニケーションや生活の質に深く関わります。一人で悩まず、まずはご自身の症状を観察し、必要に応じて医療機関や専門家へ相談することを検討してください。正しい知識を持ち、適切な行動をとることが、不安を解消し、より良い状態を目指すための第一歩となるでしょう。

免責事項: 本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。個々の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。

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