夜中に何度も目が覚めてしまい、「朝までぐっすり眠りたいのに…」と悩んでいませんか?あるいは、一度目が覚めるとなかなか寝付けず、翌日の日中に強い眠気やだるさを感じて困っている方もいるかもしれません。
その症状は、「中途覚醒」と呼ばれる睡眠障害の一種かもしれません。中途覚醒は、年齢や性別を問わず多くの人が経験する可能性のある悩みです。
この記事では、中途覚醒が起こる原因から、自分でできる具体的な治し方、そして専門医による治療法までを詳しく解説します。睡眠の質を改善し、すっきりとした朝を迎えるためのヒントがきっと見つかるはずです。
夜中に目が覚める「中途覚醒」の定義
中途覚醒とは、睡眠の途中で意図せず目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けなくなる状態を指します。誰でも夜中に一度や二度、トイレなどで目が覚めることはありますが、それが頻繁に起こり、本人が苦痛に感じている場合に問題となります。
主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 夜中に何度も目が覚める
- 一度目が覚めると、再入眠に時間がかかる
- 熟睡できた感じがせず、朝起きても疲れが取れていない
- 日中に強い眠気や集中力の低下を感じる
中途覚醒は何回以上で問題?他の睡眠障害との違い
「夜中に何回目が覚めたら中途覚醒なの?」と疑問に思うかもしれませんが、医学的に明確な回数の定義はありません。重要なのは、目が覚める回数よりも、それによって本人が日中の活動に支障を感じているかどうかです。
また、睡眠障害には中途覚醒以外にもいくつか種類があります。
睡眠障害の種類 | 主な症状 |
---|---|
中途覚醒 | 睡眠の途中で目が覚めてしまい、再入眠が困難 |
入眠障害 | 布団に入っても30分~1時間以上寝付けない |
早朝覚醒 | 本来起きる時間より2時間以上早く目が覚め、その後眠れない |
熟眠障害 | 睡眠時間は十分なのに、ぐっすり眠れた満足感がない |
レム睡眠とノンレム睡眠:なぜ夜中に目が覚めるのか?
私たちの睡眠は、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」という2つの状態が、約90分のサイクルで繰り返されています。
- ノンレム睡眠: 脳を休ませる深い眠り。睡眠の前半に多く現れる。
- レム睡眠: 体を休ませる浅い眠り。夢を見ることが多い。睡眠の後半になるにつれて長くなる。
中途覚醒は、この睡眠が浅くなるレム睡眠のタイミングで起こりやすいと考えられています。また、加齢やストレスなどによって深いノンレム睡眠が減少し、全体的に睡眠が浅くなることも、夜中に目が覚める原因の一つです。
中途覚醒の主な原因
中途覚醒は、生活習慣や心理的な要因、身体的な病気など、様々な原因が複雑に絡み合って起こります。
生活習慣が招く中途覚醒
何気ない毎日の習慣が、睡眠の質を低下させている可能性があります。
寝る前のスマホやカフェイン、アルコール
- スマートフォンやPC: 画面から発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌を抑制し、脳を覚醒させてしまいます。
- カフェイン: コーヒーやお茶、エナジードリンクに含まれるカフェインには強い覚醒作用があり、その効果は3~4時間持続すると言われています。
- アルコール: 寝酒をすると寝つきが良くなるように感じますが、アルコールが体内で分解される過程で発生するアセトアルデヒドが交感神経を刺激し、眠りを浅くしてしまいます。結果として、夜中に目が覚めやすくなります。
不規則な睡眠時間
平日と休日で起床・就寝時間がバラバラだと、体温やホルモン分泌のリズムを司る「体内時計」が乱れてしまいます。体内時計の乱れは、寝つきの悪さや中途覚醒の直接的な原因となります。
日中の運動不足
日中に適度な運動を行うと、心地よい疲労感から夜の寝つきが良くなり、深い睡眠が得られやすくなります。逆に運動不足だと、体温のメリハリがつかず、睡眠が浅くなる傾向があります。
ストレスや不安などの心理的要因
仕事や人間関係の悩み、将来への不安といった精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱します。ストレスを感じると、体を活動的にする交感神経が優位になり、心身が緊張・興奮状態になるため、眠りが浅くなり夜中に目が覚めやすくなります。
加齢による睡眠の変化
年齢を重ねると、深いノンレム睡眠が減少し、浅いレム睡眠の割合が増える傾向があります。また、体内時計のリズムも前倒しになりがちです。これは自然な生理的変化であり、若い頃と同じように眠れなくなるのはある程度仕方のないことですが、中途覚醒の要因の一つとなります。
身体的な病気や症状
特定の病気が原因で中途覚醒が引き起こされているケースもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に気道が塞がって呼吸が何度も止まってしまう病気です。呼吸が止まるたびに、脳が危険を察知して覚醒するため、本人は気づかなくても睡眠が断続的になります。大きないびきや日中の激しい眠気が特徴です。
むずむず脚症候群
夕方から夜にかけて、脚に「むずむずする」「虫が這うような」と表現される不快感が生じ、じっとしていられなくなる病気です。この不快感のために寝付けなかったり、夜中に目が覚めたりします。
夜間頻尿
加齢や疾患によって、夜間に何度もトイレに行きたくなり目が覚める状態です。高血圧や糖尿病、心臓病、前立腺肥大症などが背景にある場合もあります。
その他(痛み、かゆみなど)
関節リウマチなどの慢性的な痛みや、アトピー性皮膚炎によるかゆみ、喘息の発作なども、安眠を妨げ中途覚醒の原因となります。
中途覚醒の治し方・自分でできる対策
中途覚醒を改善するためには、まず生活習慣や睡眠環境を見直すことが大切です。今日からでも始められる対策を紹介します。
睡眠環境の改善(寝室の温度・湿度、照明、寝具)
快適な睡眠のためには、寝室の環境づくりが非常に重要です。
- 温度・湿度: 夏は25~26℃、冬は22~23℃、湿度は通年で50~60%が快適とされています。エアコンや加湿器を上手に使いましょう。
- 光: 寝室はできるだけ真っ暗にするのが理想です。遮光カーテンを利用したり、豆電球も消したりするのがおすすめです。
- 音: 外の騒音などが気になる場合は、耳栓やホワイトノイズマシンなどを活用するのも良いでしょう。
- 寝具: 体に合ったマットレスや枕を選ぶことも大切です。寝返りが打ちやすく、体に負担のかからないものを選びましょう。
生活習慣の見直し
毎日同じ時間に寝起きする
体内時計を整えるため、休日も平日と同じ時刻に起きることを心がけましょう。もし寝坊するとしても、1~2時間以内にとどめるのが理想です。
寝る前にリラックスする習慣を取り入れる
就寝1~2時間前から、心身をリラックスモードに切り替える時間を作りましょう。
- ぬるめのお湯(38~40℃)に15~20分ほど浸かる
- ヒーリングミュージックを聴く
- アロマオイルを香らせる
- 軽いストレッチをする
- カフェインの入っていないハーブティーを飲む
- 穏やかな内容の本を読む
日中の適度な運動
日中に体を動かすことで、夜の自然な眠気を誘います。特に、夕方ごろにウォーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動を30分程度行うのが効果的です。
寝る前のカフェイン・アルコール・喫煙を控える
- カフェイン: 覚醒作用があるため、就寝の4時間前からは摂取を控えましょう。
- アルコール: 寝酒は睡眠の質を著しく低下させるため避けましょう。
- 喫煙: ニコチンにも覚醒作用があるため、就寝前の喫煙は控えるのが賢明です。
寝る前の食事や激しい運動を避ける
就寝直前に食事をすると、消化活動のために体が休まりません。夕食は就寝の3時間前までには済ませましょう。また、激しい運動は交感神経を興奮させてしまうため、就寝直前は避けてください。
ストレスマネジメント
ストレスが原因だと感じている場合は、自分なりの解消法を見つけることが大切です。趣味に没頭する時間を作ったり、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらったりするだけでも、心は軽くなります。
夜中に目が覚めてしまったときの対処法(気にしない方法)
夜中に目が覚めてしまったとき、「早く眠らないと」と焦ると、かえって脳が覚醒してしまいます。そんな時は、以下の対処法を試してみてください。
- 時計を見ない: 時間を確認すると焦りにつながるため、時計は視界に入らない場所に置きましょう。
- 一度布団から出る: 15~20分経っても眠れない場合は、思い切って寝室を出てみましょう。リビングなどでリラックスできる音楽を聴いたり、温かい飲み物(カフェインレス)を飲んだりして、眠気を感じてから再び布団に戻ります。
- 考え事をしない: 悩み事が頭に浮かんできたら、一度紙に書き出してみるのも一つの手です。
病院での治療法と受診の目安
セルフケアを試しても改善が見られない場合は、専門医への相談を検討しましょう。
専門医に相談すべきケース
以下のような状況が続く場合は、一人で抱え込まずに医療機関を受診してください。
- セルフケアを2週間~1ヶ月以上試しても、中途覚醒が改善しない
- 日中の強い眠気で、仕事や学業、運転などに支障が出ている
- 気分の落ち込みや不安感が強い
- 家族から、いびきや睡眠中の無呼吸を指摘された
- 脚のむずむず感で眠れない
受診先としては、精神科、心療内科、あるいは睡眠を専門とする「睡眠外来」などがあります。
薬物療法(睡眠薬について)
医師の診断により、睡眠薬(睡眠導入剤)が処方されることがあります。現在の睡眠薬は、作用時間や効果によって様々な種類があり、医師が症状に合わせて適切なものを選択します。
依存性や副作用を心配される方もいますが、医師の指導のもとで用法・用量を守って正しく使用すれば、安全に睡眠を改善する助けとなります。自己判断で量を増やしたり、急に中断したりするのは危険ですので絶対にやめましょう。
認知行動療法
認知行動療法(CBT-I)は、薬を使わない治療法の一つです。睡眠に関する誤った思い込みや不適切な行動パターン(例:「8時間眠らなければならない」「夜中に目が覚めるのは異常だ」など)を専門家との対話を通じて修正し、正しい睡眠習慣を身につけていくことを目指します。
中途覚醒に役立つ可能性のあるサプリメント
睡眠の質をサポートする成分を含んだサプリメントも市販されています。ただし、これらはあくまで補助的なものであり、医薬品ではありません。
サプリメントの種類と効果
- テアニン: 緑茶に含まれるアミノ酸の一種で、リラックス効果や睡眠の質を高める効果が報告されています。
- GABA(ギャバ): 興奮を鎮め、リラックス状態をもたらす神経伝達物質です。
- グリシン: アミノ酸の一種で、深部体温を下げてスムーズな入眠と深い眠りをサポートすると言われています。
- カモミール: リラックス効果があるハーブとして知られ、ハーブティーなどで利用されます。
サプリメント使用上の注意点
サプリメントを利用する際は、必ずパッケージに記載された摂取目安量を守ってください。また、持病がある方や他の薬を服用中の方は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してから使用するようにしましょう。
中途覚醒が「治った」事例や改善のヒント
<Aさん(40代・男性・デスクワーク)の改善例>
最近、夜中に2~3回目が覚めてしまい、日中の会議中に眠気を感じることが増えて悩んでいました。原因を考えてみると、コロナ禍で在宅勤務が増え、通勤がなくなり運動量が激減。さらに、寝る直前までスマホで仕事のメールをチェックする癖がついていました。
【試したこと】
- 寝る1時間前はスマホを見ないと決め、代わりにストレッチをするようにした。
- 平日の夕食後、30分のウォーキングを日課にした。
- 週末の寝だめをやめ、毎日同じ時間に起きるようにした。
これらを2週間ほど続けたところ、夜中に目が覚める回数が減り、ぐっすり眠れる日が増えてきました。日中の眠気も改善され、仕事に集中できるようになったそうです。
このように、原因に合わせた生活習慣の小さな見直しが、改善の大きな一歩になることがあります。
まとめ:中途覚醒に悩んだら専門家へ相談を
夜中に目が覚める中途覚醒は、生活習慣の乱れ、ストレス、加齢、病気など様々な原因によって引き起こされます。
まずは、睡眠環境や生活習慣を見直すことから始めてみましょう。寝る前のリラックスタイムを設けたり、日中に適度な運動を取り入れたりするだけでも、睡眠の質は大きく改善する可能性があります。
それでも症状が改善しない場合や、日中の活動に深刻な影響が出ている場合は、決して一人で悩まず、精神科や心療内科、睡眠外来などの専門医に相談してください。適切な診断と治療を受けることが、快適な睡眠を取り戻すための最も確実な道です。
本記事は、睡眠に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。睡眠に関する悩みや症状が続く場合は、必ず医療機関を受診してください。
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