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精神科と心療内科の「違い」とは?あなたの悩みに合う選び方【2024年最新版】

「精神科」と「心療内科」。どちらも「心」に関わる診療科というイメージがありますが、その違いについて明確に理解している方は少ないかもしれません。

「眠れない」「気分が沈む」「人前に出るのが怖い」といった心の不調や、「ストレスでお腹が痛くなる」「緊張するとめまいがする」といった身体の不調を感じたとき、一体どちらの科を受診すれば良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。

適切な診療科を選ぶことは、症状の改善に向けた第一歩です。この記事では、精神科と心療内科の違いを分かりやすく解説し、それぞれの対象疾患や治療法、そしてご自身の症状に合わせてどちらを選ぶべきかの具体的な目安をご紹介します。受診に対する不安や、よくある疑問にもお答えしますので、ぜひ最後までお読みいただき、心身の健康を取り戻すための参考にしてください。

精神科と心療内科の違い

精神科と心療内科は、どちらも心の健康に関わる診療科ですが、診察の対象や治療のアプローチに違いがあります。一般的に、精神科は「心の病気そのもの」を専門とし、心療内科は「心理的な要因によって身体に症状が現れる病気(心身症)」を専門としています。

この根本的な違いを理解することが、ご自身の症状に合った診療科を選ぶ上で非常に重要になります。まずはそれぞれの診療科がどのようなものか、具体的に見ていきましょう。

目次

精神科とは?対象疾患と治療

精神科は、精神疾患全般を専門とする診療科です。うつ病や統合失調症、双極性障害、不安障害、発達障害など、思考や感情、行動の偏りや障害によって日常生活に支障をきたす様々な病気を扱います。

精神科医は、患者さんの心の状態、考え方、行動パターンなどを詳しく診察し、精神疾患の診断を行います。必要に応じて、心理検査や脳の画像検査などを行うこともあります。

精神科が診る主な精神疾患

精神科の対象となる疾患は非常に幅広いです。代表的なものには、以下のようなものがあります。

  • 気分障害(うつ病、双極性障害など)
  • 不安障害(パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害、強迫性障害など)
  • 統合失調症
  • 発達障害(ADHD、ASDなど)
  • 摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症など)
  • 睡眠障害
  • 依存症(アルコール依存症、薬物依存症など)
  • パーソナリティ障害
  • てんかん(精神症状を伴う場合)
  • 認知症に伴う精神症状
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 適応障害

これらの疾患は、脳の機能的な問題や、心理的・環境的な要因などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。精神科では、これらの精神疾患そのものの診断と治療を行います。

精神疾患の具体的な例

精神疾患の症状は人によって様々ですが、いくつか具体的な例を挙げます。

  • うつ病: 気分が落ち込み、何をしても楽しめない、眠れない、食欲がない、集中力が続かない、体がだるいといった症状が長く続く。
  • パニック障害: 突然強い不安に襲われ、動悸、息切れ、発汗、手足の震えなどの身体症状と共に、「このまま死んでしまうのではないか」といった恐怖を感じるパニック発作を繰り返す。
  • 統合失調症: 現実にはない声が聞こえたり(幻聴)、実際にはないことや存在しないものを信じ込んだり(妄想)する症状が現れることがある。考えがまとまらない、意欲が低下するといった症状も。
  • ADHD(注意欠如・多動症): 不注意(集中できない、忘れ物が多いなど)や多動性・衝動性(じっとしていられない、順番が待てないなど)といった特性が幼少期から見られ、学業や仕事、対人関係に影響が出ることがある。

これらの例は一部であり、精神疾患の症状は多岐にわたります。重要なのは、こうした症状によって日常生活や社会生活に困難が生じているかどうかです。

精神科で行われる治療法

精神科の治療は、主に以下のような方法を組み合わせて行われます。

  • 薬物療法: 精神症状の改善に効果的な薬剤(抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬など)を処方します。脳内の神経伝達物質のバランスを調整するなどして、症状を和らげることを目指します。
  • 精神療法(心理療法): 医師や専門のカウンセラーとの対話を通じて、患者さんの考え方や行動パターンを見直したり、ストレスへの対処法を学んだりします。認知行動療法、対人関係療法、森田療法など、様々な種類があります。
  • 環境調整: 患者さんの家庭や職場、学校などの環境が症状に影響を与えている場合、その環境を調整するためのサポートを行います。
  • リハビリテーション: 社会生活への復帰や維持を目指し、デイケアや作業療法などを通じて、生活リズムの確立や対人スキル、仕事スキルの向上などを図ります。

精神科では、これらの治療を患者さんの症状や状態に合わせて柔軟に組み合わせ、QOL(生活の質)の向上を目指します。

心療内科とは?対象疾患と治療

心療内科は、主に心身症を専門とする診療科です。心身症とは、心理的な要因(ストレスや悩みなど)が深く関与して身体に何らかの症状が現れる病気の総称です。

つまり、心療内科は「心が原因となって身体が病気になる状態」を診るのです。内科的な知識と精神医学的な知識の両方を持ち合わせている医師が、患者さんの身体症状と心の状態の両面からアプローチします。

心療内科が診る主な心身症

心療内科で扱われる心身症は、特定の臓器や器官に症状が現れることが多いです。以下に代表的な例を挙げます。

  • 消化器系の心身症(過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、胃・十二指腸潰瘍など)
  • 循環器系の心身症(本態性高血圧症、狭心症、不整脈など)
  • 呼吸器系の心身症(気管支喘息、過換気症候群など)
  • 神経・筋骨格系の心身症(緊張型頭痛、慢性疼痛、けいれんなど)
  • 皮膚科系の心身症(アトピー性皮膚炎、じんましん、円形脱毛症など)
  • 内分泌・代謝系の心身症(糖尿病、バセドウ病など)
  • 婦人科系の心身症(月経困難症、更年期障害など)
  • 泌尿器系の心身症(神経性頻尿など)

これらの病気は、通常はそれぞれの専門科(消化器内科、循環器内科など)で治療が行われますが、検査をしても異常が見られない場合や、ストレスや心理的な要因が強く関わっていると考えられる場合に、心療内科が専門的に診察・治療を行います。

心身症の具体的な例

心身症の症状は、ストレスを感じたときに特定の身体部位に現れやすい傾向があります。具体的な例を見てみましょう。

  • 過敏性腸症候群(IBS): ストレスや不安を感じると、腹痛と共に下痢や便秘を繰り返す。内視鏡検査などを受けても腸そのものには明らかな異常が見られないことが多い。
  • 緊張型頭痛: ストレスや肩こりなどが原因で、頭全体が締め付けられるような痛みが続く。
  • 過換気症候群: 強い不安や緊張を感じたときに、息が苦しくなり、過度に呼吸を繰り返してしまう。手足のしびれやけいれんを伴うこともある。
  • 円形脱毛症: 精神的なストレスが引き金となって、突然円形に髪の毛が抜ける。

これらの症状は、身体的な病気と間違われやすいため、他の診療科で検査をしても異常が見つからず、心療内科への受診を勧められるケースも少なくありません。

心療内科で行われる治療法

心療内科の治療は、身体症状と心理的要因の両方へのアプローチが特徴です。

  • 薬物療法: 身体症状(胃痛、頭痛など)を和らげるための薬に加え、症状の背景にある不安や抑うつなどの精神症状を改善するための薬(抗不安薬、抗うつ薬など)を併用することがあります。
  • 精神療法(心理療法): ストレスの原因や対処法を患者さんと一緒に考えたり、リラクセーション法(自律訓練法など)を指導したりします。認知行動療法も有効な場合があります。
  • 生活指導: ストレスマネジメントの方法、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、生活習慣の改善に関するアドバイスを行います。

心療内科では、患者さんの身体的な状態と心理的な状態を総合的に評価し、病気の原因となっている心理的要因にも働きかけながら、症状の軽減と再発予防を目指します。

精神科と心療内科の違いを比較

ここまで精神科と心療内科についてそれぞれ見てきましたが、ここで両者の違いを改めて整理してみましょう。

項目 精神科 心療内科
主な診察対象 精神疾患全般(心の病気そのもの) 心身症(心理的要因で身体に症状が現れる病気)
症状の現れ方 気分、思考、行動、意欲、認知などの精神症状が中心 身体症状が中心で、その背景に心理的要因が関与している
治療アプローチ 精神疾患そのものの診断と治療(薬物療法、精神療法) 身体症状と心理的要因の両方へのアプローチ(薬物療法、精神療法、生活指導)
医師の専門性 精神疾患の診断・治療の専門家 内科的知識と精神医学的知識を併せ持ち、心身症の専門家

診察対象の根本的な違い

最も大きな違いは、診察の対象です。精神科は、精神疾患そのもの、つまり脳の機能や心の働きに直接的に問題がある状態を診ます。例えば、統合失調症のように幻覚や妄想がある場合、うつ病のように強い抑うつ気分が続く場合など、精神症状が主である場合は精神科の対象となります。

一方、心療内科は、心理的なストレスや悩みが原因となって、胃痛、頭痛、動悸、発疹などの身体的な症状が現れている状態(心身症)を診ます。検査を受けても身体に明らかな異常が見つからないが、精神的な負担を感じると症状が悪化するといったケースが典型的です。

治療アプローチの違い

治療のアプローチも異なります。精神科では、精神症状をターゲットに薬物療法や精神療法を行います。例えば、うつ病であれば抗うつ薬を処方し、認知行動療法で考え方の癖を見直すといった治療が中心になります。

心療内科では、身体症状を和らげるための薬と同時に、その症状の背景にある心理的な問題(不安や抑うつなど)にもアプローチするための薬や精神療法を行います。身体症状と精神症状の両面から治療を進めるのが特徴です。

医師の専門性の違い

医師の専門性にも違いがあります。精神科医は精神医学を専門とし、精神疾患の診断と治療に特化しています。

心療内科医は、内科医としての知識と精神科医としての知識の両方を学んでいます。そのため、身体症状を診察する際に、内科的な視点も持ち合わせているのが強みです。ただし、すべての心療内科医が内科の専門医資格を持っているわけではありません。

心療内科という名称から、「軽い精神的な悩みなら心療内科へ」と思われがちですが、これは少し誤解です。心療内科はあくまで「心身症」を診る科であり、身体症状を伴わない純粋な精神症状(強い抑うつ感のみ、幻覚・妄想のみなど)の場合は、精神科の方が適している場合が多いです。

自分に合った診療科はどちら?ケース別の選び方

では、ご自身の症状を考えたときに、精神科と心療内科のどちらを選ぶべきか、具体的なケースを挙げて考えてみましょう。

精神科を受診すべき具体的な症状や状態

以下のような症状や状態が中心で、身体の病気ではないと考えられる場合は、精神科の受診を検討しましょう。

精神症状が中心の場合

  • 強い気分の落ち込みが続き、日常生活や仕事に支障が出ている(何もやる気が起きない、楽しいと感じない、将来に希望が持てないなど)
  • 過度に不安を感じやすく、心配事が頭から離れない(漠然とした不安が常にあり、落ち着かないなど)
  • 突然、強い不安や恐怖と共に、動悸、息苦しさ、めまい、発汗などの発作が繰り返し起こる(パニック発作)
  • 特定の考えや行動に異常にこだわり、やめようとしてもやめられない(手を何度も洗う、鍵を何度も確認するなど)
  • 現実にはないものが見えたり、聞こえたりする(幻視、幻聴)
  • 非現実的なことを信じ込んでしまう(妄想)
  • 眠れない日が続いている(寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなど)
  • 食欲不振や過食、極端な体重の増減など、食事に関する問題がある
  • 強いストレスを受けた後、フラッシュバックや悪夢、感情の麻痺などが続く

これらの症状は、精神疾患の可能性を示唆しています。特に、自分ではどうしようもできないような強い精神的な苦痛を感じる場合や、これらの症状によって仕事や学業、対人関係に大きな影響が出ている場合は、早期に精神科を受診することが重要です。

特定の精神疾患が疑われる場合

ご自身や周囲の人が、統合失調症、双極性障害、発達障害(ADHD、ASDなど)など、特定の精神疾患の特徴に強く当てはまると思われる場合も、精神科が専門となります。これらの疾患は専門的な診断と治療が必要となるため、最初から精神科を受診することをお勧めします。

心療内科を受診すべき具体的な症状や状態

以下のような、ストレスや心理的な要因が関わっていると思われる身体症状が中心の場合は、心療内科の受診を検討しましょう。

ストレスによる身体症状が強い場合(心身症)

  • ストレスを感じると胃が痛くなる、下痢や便秘を繰り返す
  • 緊張するとお腹がゴロゴロ鳴る、トイレに行きたくなる
  • 悩み事があると頭痛や肩こりがひどくなる
  • イライラすると動悸がしたり、息苦しくなったりする
  • ストレスで眠れない日が続き、そのせいで体調が悪化している
  • 試験前や発表前など、特定の状況で手足が震えたり、汗が止まらなくなったりする
  • 心理的な負担が大きい時期に、じんましんや円形脱毛症が現れた
  • 健康診断で高血圧や糖尿病を指摘されたが、医師からストレスとの関連を指摘された

これらの症状は、心理的なストレスが身体に影響を与えている心身症の可能性があります。特に、症状が出始めた時期や悪化するタイミングと、心理的なストレスがかかっている時期が一致している場合は、心療内科の専門的な視点での診察が有効です。

他の診療科で異常が見られない身体症状

内科や他の専門科で詳しい検査を受けたにも関わらず、身体に症状の原因となる明らかな異常が見つからない場合も、心療内科の対象となることがあります。

例えば、「胃カメラや大腸カメラで異常がなかったのに、ずっと胃の痛みや腹痛が続く」「心電図やエコーで異常がなかったのに、動悸や胸の痛みが続く」「MRIで異常がなかったのに、慢性的な頭痛やめまいが続く」といったケースです。

これらの症状の背景に、心理的なストレスや不安、抑うつなどが隠れている可能性があります。心療内科では、そうした心理的側面も含めて、症状の原因を探り、治療を行います。

どちらか判断に迷う場合

ご自身の症状が精神症状なのか、それとも心身症なのか判断に迷う場合もあるでしょう。例えば、「気分が落ち込んでいるけれど、同時に強い倦怠感や体の痛みもある」「ストレスで眠れないけれど、不安感も強い」といったケースです。

このように、精神的な症状と身体的な症状が混在している場合、どちらの診療科が良いか判断に迷うことがあります。

  • かかりつけ医に相談する: まずは普段から診てもらっているかかりつけ医に相談してみましょう。症状を伝えれば、適切な専門医を紹介してもらえる可能性があります。
  • 精神科・心療内科を両方標榜しているクリニックを選ぶ: 最近では、精神科と心療内科の両方を標榜しているクリニックも多くあります。こうしたクリニックであれば、どちらの症状にも対応できる体制が整っているため、安心して受診できます。医師が診察によって、どちらの要素が強いか判断し、適切な治療方針を示してくれるでしょう。
  • まずはどちらかの科を受診してみる: どうしても迷う場合は、まずはどちらかの科を受診してみるのも一つの方法です。診察の結果、必要であれば別の科への受診を勧められることもあります。例えば、心療内科を受診したが、医師の判断で精神疾患の要素が強いと診断された場合は、精神科への受診を勧められるといったケースです。

どちらの科を選ぶにしても、大切なのは一人で抱え込まず、専門家のサポートを求めることです。

精神科・心療内科を受診するサイン・目安

では具体的に、「どんな状態になったら精神科や心療内科を受診すべきか」というサインや目安について見ていきましょう。

こんな時は受診を検討しましょう

以下のような症状が、自分にとってつらい、または日常生活に支障が出ていると感じる場合は、我慢せずに専門家に相談することを検討してください。

  • 眠れない日が続いている: なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、全く眠れないなど、睡眠の問題が2週間以上続く場合。
  • 食欲がない、または過食してしまう: 食事が喉を通らない、何を食べても美味しく感じない、または逆に食べ過ぎてしまうなど、食欲や食事量が変化し、体重にも影響が出ている場合。
  • 気分が落ち込み、何もやる気が起きない: 以前楽しめていたことが楽しめない、誰とも会いたくない、一日中ベッドから出られないなど、強い抑うつ気分が続き、活動性が低下している場合。
  • 過度に不安を感じ、落ち着かない: 些細なことが気になって仕方がない、常にソワソワしている、理由もなく強い不安感に襲われる場合。
  • イライラしやすく、感情のコントロールが難しい: 些細なことで怒りが爆発する、気持ちの波が激しいと感じる場合。
  • 身体の不調が続くのに、検査では異常が見つからない: 胃痛、腹痛、頭痛、めまい、動悸、息苦しさ、倦怠感などが続き、内科などで診察を受けたが原因不明と言われた場合。
  • 人と会うのが怖く、引きこもりがちになる: 外出するのが怖い、人前で話すのが苦手で避けたい、友人や家族との交流を避けるようになるなど、対人関係に困難を感じる場合。
  • 集中力がなくなり、ミスが増える: 仕事や勉強に集中できない、注意散漫になる、以前はなかったようなミスを繰り返す場合。
  • お酒の量が増えたり、ギャンブルや買い物などがやめられなくなったりする: 特定の行為への依存が疑われる場合。
  • 死ぬことや、いなくなることを考えることがある: このような考えが頭をよぎる、または具体的に考えてしまう場合。

これらのサインは、心や体にSOSが出ている可能性を示しています。これらの症状が一時的ではなく、ある程度の期間(目安として2週間以上)続いていたり、症状によって自分らしい生活を送ることが難しくなっていると感じたりする場合は、受診を検討する時期かもしれません。

「これくらいで病院に行くのは大げさかな…」とためらってしまうかもしれませんが、早期に相談することで、症状が軽いうちに適切な対処ができる可能性が高まります。体の病気と同様に、心の不調も早めにケアすることが大切です。

精神科・心療内科受診の不安を解消(よくある疑問)

精神科や心療内科の受診に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、受診に関してよくある疑問や不安についてお答えします。

「行ったら終わり」は本当か?

「精神科や心療内科を受診したら、一生病気扱いされて社会生活ができなくなるのではないか」「周りに知られたらどうしよう」といった不安を感じる方は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。

精神科や心療内科は、他の診療科と同じように、病気や症状を診断し、治療を行う場所です。風邪をひいたら内科に行くように、心や体の不調があれば精神科や心療内科に行く、という認識で問題ありません。

現代では、精神疾患や心身症に対する理解も進んでおり、多くの人が適切な治療を受けながら社会生活を送っています。早期に受診し、適切な治療を受けることで、症状が改善し、以前のような生活を取り戻せる可能性が高まります。

また、医療機関には守秘義務がありますので、患者さんの同意なく病状や受診に関する情報が第三者に知られることはありません。プライバシーは厳重に保護されます。

むしろ、症状を我慢しすぎたり、間違った対処法を続けたりする方が、症状が悪化し、社会生活に支障が出るリスクを高めてしまう可能性があります。

受診の費用と保険適用

精神科や心療内科の受診には、健康保険が適用されます。他の一般的な医療機関を受診するのと同様に、診察料や検査料、薬代に対して、自己負担割合(通常3割)に応じた費用が発生します。

初診時は、問診に時間をかけることが多いため、再診時よりも費用が高くなる傾向があります。また、心理検査などを実施する場合は、別途費用がかかります。

精神疾患の治療には、医療費の自己負担額を軽減できる「自立支援医療(精神通院医療)」という制度があります。これは、指定された医療機関での通院医療費(診察料、薬代、デイケアなどの費用)の自己負担額が原則1割になる制度です。症状が改善し、一定期間治療が必要と医師が判断した場合に申請できる可能性がありますので、医療機関で相談してみると良いでしょう。

具体的な費用は、医療機関や治療内容によって異なりますので、事前にクリニックのウェブサイトを確認したり、受付に問い合わせたりすることをお勧めします。

心療内科に行ってはいけない人はいる?

基本的に、心療内科に行ってはいけない人というのはいません。心身の不調を感じている人であれば誰でも受診を検討できます。

ただし、心療内科は主に心身症を対象としているため、身体症状を全く伴わず、純粋に精神症状(幻覚、妄想、重度の抑うつ、激しい躁状態など)が中心の場合は、精神科の方がより専門的で適切な治療を受けられる可能性が高いです。

また、緊急性の高い精神症状(自殺企図がある、他害行為のリスクが高いなど)が見られる場合は、精神科救急を受け入れている医療機関や、より専門性の高い精神科病院への受診が必要となる場合があります。

このように、症状の種類や重症度によっては、心療内科よりも精神科の方が適しているケースがあります。ご自身の症状がどちらに当てはまるか判断が難しい場合は、前述のようにかかりつけ医に相談するか、精神科と心療内科の両方を標榜している医療機関を受診するのが良いでしょう。

まとめ:適切な診療科選びで心身の健康を

精神科と心療内科は、どちらも心の健康に関わる重要な診療科ですが、診察の対象やアプローチが異なります。精神科は精神疾患そのものを、心療内科は心理的な要因によって身体に症状が現れる心身症を主に扱います。

ご自身の症状が、気分の落ち込みや不安、幻覚、妄想などといった精神的な症状が中心の場合は精神科、ストレスや悩みによって胃痛、頭痛、動悸などの身体症状が現れている場合は心療内科が適している可能性が高いです。どちらか判断に迷う場合は、かかりつけ医に相談したり、精神科・心療内科の両方を標榜している医療機関を受診したりすることをお勧めします。

心や体の不調を感じたときに、「これくらいで…」と我慢せず、専門家のサポートを得ることは、健康を取り戻すための第一歩です。適切な診療科を選び、ご自身に合った治療を受けることで、心身の健康を維持し、より豊かな生活を送ることができるでしょう。

本記事が、精神科と心療内科の違いについて理解を深め、適切な受診先を選ぶための一助となれば幸いです。


免責事項: 本記事で提供される情報は一般的な医学的知識に基づくものであり、個別の症状や状態に関する診断や治療に関するアドバイスを提供するものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師にご相談ください。

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