自閉症とは何か、自閉スペクトラム症(ASD)と呼ばれるようになった背景、その多様な特徴、そして原因や診断方法について、分かりやすく解説します。自閉症に関する正しい知識は、当事者の方やそのご家族だけでなく、周囲の人々にとっても非常に重要です。この記事を通して、自閉症スペクトラムへの理解を深め、誰もが安心して暮らせる社会の実現に繋がる一助となれば幸いです。
自閉症は、現在では「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)」と呼ばれることが一般的です。この「スペクトラム」という言葉には、「連続体」や「範囲」という意味があり、自閉症の特性が一人ひとり異なり、その現れ方や程度がグラデーションのように多様であることを示しています。
ASDは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって起こる発達障害の一つです。以前は、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害といった異なる診断名が使われていましたが、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル』の第5版(DSM-5)からは、これらの診断名が「自閉スペクトラム症」という一つの診断名に統合されました。
ASDを持つ人々は、主に「対人関係や社会的なコミュニケーションにおける持続的な困難」と「限定された興味や反復的な行動、感覚の特性」という二つの領域において特徴的な特性を示します。ただし、これらの特性の現れ方は、個人の発達段階、知的レベル、言語能力、環境などによって大きく異なります。そのため、一概に「自閉症の人はこうだ」と決めつけることはできません。まさに「スペクトラム」という言葉が表すように、非常に多様な人々が含まれる概念です。
自閉症の主な特徴
自閉症スペクトラム(ASD)の主な特徴は、前述の通り、「対人関係やコミュニケーションの特性」と「限定された興味や反復的な行動、感覚の特性」という二つの領域に現れます。これらの特性は、乳幼児期から見られることもあれば、成長してから、あるいは大人になってから社会生活で困難を経験することで気づかれることもあります。
コミュニケーションや対人関係の特性
ASDを持つ人々は、言葉によるコミュニケーションだけでなく、非言語的なコミュニケーション(視線、表情、声のトーン、身振り手振りなど)の理解や使用に難しさを感じることがあります。また、社会的な状況を読み取るのが苦手だったり、他者の気持ちや意図を推測することが難しかったりすることもあります。
具体的な例としては、以下のような特性が見られることがあります。
- 視線が合いにくい、あるいは不自然な視線:会話中に相手の目を見続けるのが難しい、あるいは全く視線を向けないことがあります。逆に、じっと見つめすぎてしまうこともあります。
- 表情や声のトーンから感情を読み取るのが苦手:相手が怒っているのか、喜んでいるのか、皮肉を言っているのかなどを、表情や声のトーンだけで判断するのが難しいことがあります。
- 身振り手振りやジェスチャーの理解や使用が少ない、あるいは独特:話す際に自然な身振り手振りが伴わない、あるいは相手のジェスチャーの意味が理解しにくいことがあります。
- 会話のキャッチボールが苦手:自分の話したいことだけ一方的に話し続けたり、相手の話にどう応答すれば良いか分からなかったりすることがあります。唐突に話題を変えることもあります。
- 言葉を文字通りに受け止める:比喩、皮肉、冗談などを文字通りに解釈してしまい、真意が伝わりにくいことがあります。「猫の額」と聞いて、本当に猫のおでこを想像してしまうようなケースです。
- 場の空気を読むのが難しい:その場にふさわしい言動が分からなかったり、周囲の人の感情や雰囲気に気づきにくかったりすることがあります。
- 興味のあることについて一方的に話す:自分が強い興味を持っていることについては、相手の関心に関わらず、長時間話し続けることがあります。
- 人間関係を築くことへの関心の低さ、あるいは方法が分からない:友達を作りたい気持ちはあるものの、どのように関係性をスタートさせ、維持すれば良いかが分からずに孤立してしまうことがあります。
これらの特性は、単に「人付き合いが苦手」ということではなく、脳の情報処理の仕方の違いから生じる、コミュニケーションや社会性の根本的なメカニズムに関する困難であると理解することが重要です。
限定された興味、反復的な行動(こだわり)
ASDを持つ人々は、特定の物事に対する強い興味や関心、あるいは特定の行動を繰り返す傾向(こだわり)が見られることがあります。これらの特性は、本人の生活や学習、社会参加に大きな影響を与えることがあります。
具体的な例としては、以下のような特性が見られることがあります。
- 特定の対象への強い興味や執着:電車、恐竜、特定のキャラクター、特定の分野の歴史など、特定の物事に対して異常なほど強い興味を持ち、そのことばかり考えたり調べたりすることがあります。その知識は、専門家顔負けのレベルに達することもあります。
- 反復的な行動(常同行動、こだわり行動):体を揺らす、手をひらひらさせる(フラッピング)、指をくるくる回す、特定の音を出すといった反復的な動作を繰り返すことがあります。また、物を一列に並べたり、特定の順序や方法に強くこだわったりすることもあります。
- ルーチンや特定の順序への強いこだわり、変化への抵抗:毎日の生活で決まった手順やルートに強くこだわり、それが崩れることを極端に嫌がることがあります。予定の変更や予期せぬ出来事に対して、強い不安を感じたりパニックになったりすることがあります。
- 特定の感覚刺激への反応(過敏・鈍麻):後述する感覚の特性とも関連しますが、特定の音、光、匂い、手触りなどに極端に反応する(過敏)か、あるいはほとんど反応しない(鈍麻)ことがあります。
- 物事の一部分や特定の情報に固執する傾向:全体像よりも細部に目がいきやすかったり、特定の情報やルールに固執したりすることがあります。
これらの「こだわり」は、本人にとっては安心感を得たり、予測可能な状況を保ったりするために重要な役割を果たしていることがあります。しかし、そのこだわりが強すぎると、新しい状況への適応が難しくなったり、周囲との軋轢を生じたりすることもあります。
感覚の特性
自閉症スペクトラムの人々には、感覚の過敏さや鈍麻といった、独特の感覚特性が見られることがよくあります。これは、脳が五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)やその他の感覚(平衡感覚、固有受容覚など)から入ってくる情報を処理する方法が定型発達の人とは異なるために起こると考えられています。
感覚の特性の例としては、以下のようなものがあります。
- 聴覚過敏:特定の音(掃除機の音、ドライヤーの音、子供の泣き声など)が非常に大きく、不快に聞こえたり、耳を塞ぎたくなったりします。たくさんの音が同時に聞こえる場所(賑やかなお店、駅など)では、どれに注意を向けたら良いか分からず混乱することもあります。
- 視覚過敏:蛍光灯の flickering が気になったり、特定の色の光が眩しく感じられたり、視界に入る物の動きや情報量が多すぎると疲れてしまったりします。
- 触覚過敏:特定の素材の衣服や下着のタグが肌に触れるのが耐えられない、抱きしめられるのが苦手、特定の食べ物の舌触りが気持ち悪いと感じるなどがあります。
- 嗅覚・味覚過敏/鈍麻:特定の匂いが強く感じられて苦痛だったり、逆に強い匂いに気づかなかったりします。食べ物の好き嫌いが非常に激しい、特定の食感や味しか受け付けないといった偏食に繋がることもあります。
- 感覚鈍麻:痛みや暑さ・寒さに気づきにくい、空腹を感じにくい、特定の感覚刺激がないと落ち着かない(常に体を動かしていないと不安、特定の物を触っていないと落ち着かない)などがあります。
- 平衡感覚・固有受容覚の特性:体の位置や動きを把握するのが苦手で不器用に見えたり、バランスをとるのが難しかったりします。一方で、常に体を揺らしたり、強い圧力を求めたり(抱きしめられたい、体を締め付ける服を着たいなど)することもあります。
これらの感覚特性は、日常生活の様々な場面で困難を引き起こす可能性があります。例えば、聴覚過敏があるために教室や職場の騒音が苦痛だったり、触覚過敏のために特定の制服や作業着を着ることが難しかったりします。逆に感覚鈍麻があると、怪我や病気のサインに気づきにくいこともあります。これらの特性を理解し、環境調整や感覚への配慮を行うことが、本人にとって暮らしやすさにつながります。
【PAA】自閉症の三大特徴は?
かつて自閉症の診断基準として用いられていたDSM-IVでは、「社会的相互作用の質的な障害」「コミュニケーションの質的な障害」「限定され反復的で常同的な様式の行動、興味および活動」という3つの領域が自閉症の主要な特徴とされていました。これがいわゆる「自閉症の三大特徴」と呼ばれていました。
しかし、現在の診断基準であるDSM-5では、この3つの領域がより広い概念として整理統合され、「対人関係や社会的なコミュニケーションにおける持続的な困難」と「限定された興味や反復的な行動、感覚の特性」という2つの主要な領域で定義されています。
現在では、単に「三大特徴」と呼ぶよりも、DSM-5で示されている2つの主要な領域における多様な特性の現れ方として理解することが、より正確です。ただし、現在でも「対人関係・コミュニケーションの困難」「こだわり・反復行動」といった形で説明される際に、過去の三大特徴の考え方が参考にされることもあります。重要なのは、これらの特性が複合的に現れ、個人の生活に影響を与えているという点です。
【PAA】自閉症の子の特徴は?
自閉症スペクトラム(ASD)の特性は、年齢によって現れ方が異なります。特に小さいうちは、言葉の発達や遊び方、人との関わり方などにサインが見られることがあります。自閉症の子の特徴として、乳幼児期から学童期にかけて以下のような例が挙げられます。
乳幼児期(0歳〜3歳頃)
- 言葉の発達の遅れや独特な言葉遣い:言葉が出てくるのが遅い、喃語(まんま、ぶーぶーなど)が少ない、オウム返しが多い(エコラリア)、特定の単語やフレーズを繰り返し言う、指示が入りにくいなど。
- 対人への関心の少なさ:抱っこを嫌がる、あやしてもあまり笑わない、目が合いにくい、人見知りをしない、他者と一緒に遊ぶより一人で遊ぶのを好む、名前を呼んでも振り向かないなど。
- 遊び方の偏りや常同性:ミニカーを走らせるのではなくタイヤだけを回して眺める、物を一列に並べる、特定の積み木だけを積み続けるなど、遊び方が限定的で反復的。ごっこ遊びや模倣遊びが少ない。
- 指さしの少なさ:興味のあるものを指さして共有することが少ない。
- 特定の物や場所に強いこだわり:いつも同じタオルを持っていないと不安、特定の道順でないと嫌がるなど。
- 感覚への過敏・鈍麻:大きな音で泣き叫ぶ、特定の洋服を嫌がる、抱きつくのを好むなど。
学童期(小学校以降)
- 集団行動への適応の難しさ:みんなと同じ行動が苦手、ルールを守るのが難しい、場の雰囲気を読めないなど。
- 友達作りや維持の困難:遊びのルールを理解できない、一方的なコミュニケーションになる、トラブルになりやすいなど。
- 学習面での得意・不得意のばらつき:特定の科目や分野には強い興味と優れた能力を発揮する一方、他の分野では困難を抱えることがあります。
- 融通がきかない、変化を嫌がる:予定変更に強い抵抗を示す、新しい環境に馴染むのが難しいなど。
- 感覚過敏による学校生活の困難:教室の音、体育館の響き、特定の給食の匂いや食感などが辛い。
これらの特徴は、あくまで例であり、すべての子に当てはまるわけではありません。また、これらの特徴が見られたからといって、必ずしも自閉症スペクトラムと診断されるわけでもありません。気になることがある場合は、専門家(医師、保健師、心理士など)に相談することが大切です。早期に気づき、適切なサポートを受けることが、本人の成長や社会適応にとって非常に有効です。
【PAA】自閉症の人はどんな行動をとりますか?
自閉症スペクトラム(ASD)を持つ人の行動は、前述の特性が基盤となって現れます。行動の現れ方は一人ひとり異なりますが、特性に関連した具体的な行動例をいくつか挙げます。これらの行動は、意図的に行っているわけではなく、脳の情報処理の仕方の違いや、特性による困難への対処行動として現れることが多いです。
- 繰り返しの行動:
- 体を揺らす、手をひらひらさせる(フラッピング)、ジャンプするなど、同じ動作を繰り返し行う。
- 意味のない言葉やフレーズを繰り返し言う(エコラリア)。
- 物を特定の順序に並べ替えたり、同じ方法で遊んだりする。
- 特定の音や光、動きをじっと見つめたり、繰り返し聞いたりする。
- コミュニケーションに関連する行動:
- 質問に対して、相手が言った言葉をそのまま返す(オウム返し)。
- 自分の興味のあることについて、相手の反応に関わらず話し続ける。
- 会話中に相手の目を見ない、あるいは逆に凝視しすぎる。
- 唐突に話題を変える。
- 表情や声のトーンと感情が一致しない(嬉しいはずなのに無表情、など)。
- 比喩や皮肉が分からず、文字通りに受け取ってしまう。
- こだわりに関連する行動:
- 毎日の日課や手順に強くこだわり、少しでも変わると混乱したり怒ったりする。
- 特定の場所やルートでないと落ち着かない。
- 特定の物(おもちゃ、タオルなど)に強く執着し、手放せない。
- 新しい環境や予定外の出来事に対して、強い不安や抵抗を示す。
- 感覚に関連する行動:
- 大きな音や不快な音から逃れるように耳を塞ぐ。
- 特定の食べ物しか食べない(偏食)。
- 特定の肌触りや素材の服を嫌がる、あるいは特定の服しか着られない。
- 強い圧迫感(抱きしめられる、体を締め付ける服)を好む。
- 痛みに気づきにくく、怪我をしても気にしないことがある。
- 特定の匂いを嗅ぎ続けたり、逆に特定の匂いを極端に嫌がったりする。
- その他:
- 集団の中では、一人で過ごすことを好む。
- 自分の気持ちを言葉で表現するのが苦手で、パニックや癇癪を起こすことがある。
- 特定の分野には驚異的な記憶力や知識を示すことがある。
これらの行動は、ASDの特性に起因するものであり、本人の困り感や外界との関わり方を示しています。これらの行動の背景にある特性を理解し、必要に応じて環境調整やサポートを行うことが、本人とその周囲の人々にとってより良い関係性を築くために重要です。
自閉症の原因は?【PAA】
自閉症スペクトラム(ASD)の原因は、残念ながら現在の医学でも完全に解明されているわけではありません。しかし、様々な研究によって、有力な説や要因が明らかになってきています。最も重要視されているのは、遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合った結果、生まれつき脳機能の発達に偏りが生じるという考え方です。
生まれつきの脳機能の偏り
最新の研究では、ASDは特定の単一の原因で起こるのではなく、複数の遺伝子や環境要因が相互に影響し合い、脳の発達の仕方に違いが生じることで起こると考えられています。つまり、神経発達の多様性の一つとして捉えられています。
- 遺伝的要因:特定の遺伝子の変異や、複数の遺伝子の組み合わせがASDの発症に関与していることが分かっています。しかし、ASDに関連する遺伝子は非常に多数あり、特定の遺伝子異常が原因でASDを発症するのは一部のケースに過ぎません。多くの場合は、複数の遺伝子が少しずつ影響していると考えられています。家族の中にASDや他の発達障害、あるいはASDに関連する特性を持つ人がいる場合、いない場合に比べてASDと診断される可能性が統計的にやや高くなることが知られています。
- 環境要因:遺伝的要因だけでなく、妊娠中の母親の健康状態(感染症、特定の薬剤の使用)、周産期の問題(低出生体重、早産、難産による脳への影響)など、妊娠中や出生前後の様々な環境要因も、脳の発達に影響を与え、ASDのリスクを高める可能性が研究されています。ただし、これらの環境要因も単独でASDを引き起こす決定的な原因となるわけではなく、遺伝的要因と複合的に作用すると考えられています。
これらの要因が複雑に絡み合い、脳の特定の領域(社会性の認知に関わる領域、情報処理に関わる領域など)の発達に偏りが生じることで、ASDの特性が現れると考えられています。これは病気というよりは、脳の機能が定型発達の人とは異なる「タイプ」であると理解する方が適切かもしれません。
親の育て方が原因ではありません
自閉症スペクトラムの原因について、過去には様々な誤解がありました。特に、「親の育て方、愛情不足、母親が冷たかったこと(冷蔵庫マザー説)」などが原因ではないかと考えられた時期もありました。
しかし、現在の科学的な知見からは、親の育て方が自閉症スペクトラムの直接的な原因ではないことが明確に否定されています。ASDは、遺伝や妊娠・出産前後の環境要因など、本人の意志や親の努力ではどうすることもできない、生まれつきの脳機能の偏りによるものです。
この点は、ASDの子供を持つ保護者の方々が不必要に自分を責めてしまうことのないよう、非常に重要です。親御さんの愛情や育て方に関わらず、ASDの特性は現れます。親御さんにできることは、お子さんの特性を理解し、適切なサポートや療育を提供すること、そしてお子さんが成長しやすい環境を整えることです。もし原因について不安を感じている方がいれば、専門家から正しい情報を受け取ることを強くお勧めします。
自閉症(ASD)の診断と分類
自閉症スペクトラム(ASD)の診断は、専門家(医師、心理士など)が、対象者の行動や発達の様子を詳しく観察し、保護者や本人からの聞き取り、様々な検査などを総合的に評価して行われます。診断は、国際的な診断基準に基づいて行われることが一般的です。
診断基準について(DSM-5)
現在、世界的に広く使われている精神疾患の診断基準は、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル』の最新版、DSM-5です。日本でも、このDSM-5が診断のガイドラインとして用いられています。
DSM-5における自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準の主なポイントは以下の通りです。
- 複数の状況における、対人関係や社会的コミュニケーションにおける持続的な困難:以下のような項目が含まれます。(例:感情の相互性の欠如、非言語コミュニケーション行動の理解・使用の困難さ、対人関係の発展・維持・理解における困難さなど)
- 限定された反復的な様式の行動、興味、活動:以下の項目の中から複数が見られます。(例:常同的・反復的な運動動作・物体の使用・会話、同一性への固執・ルーチンへの強いこだわり、極めて限定され固執する興味、感覚刺激に対する過敏さ・鈍麻さなど)
- 特性が発達早期(通常12歳まで)に明らかになっていること
- これらの特性が社会、学業、職業その他の重要な機能領域において、臨床的に意味のある障害を引き起こしていること
- これらの障害が、知的発達症(知的障害)や全般性発達遅延によってはより良く説明されないこと(ただし、ASDと知的障害は併存することがあります)
これらの基準に基づいて、医師が総合的に判断します。診断は一度の短い診察で下されるものではなく、複数回にわたる丁寧な観察や検査が必要となるのが一般的です。特に幼い子供の場合、発達は常に変化するため、時間をかけて様子を見ることもあります。
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自閉症スペクトラム(ASD)の診断において、DSM-5では「重症度レベル」という概念が導入されています。これは、「必要なサポートの度合い」を示すものであり、一般的に「レベル表」と呼ばれることがあります。このレベルは、個人の能力そのものではなく、ASDの特性によって日常生活や社会生活でどれだけサポートが必要かを示しています。
DSM-5におけるASDの重症度レベルは、診断基準の2つの主要な領域(対人関係・コミュニケーション、限定された興味・反復行動など)それぞれについて、以下の3段階で示されます。
レベル | 対人関係・社会的コミュニケーション | 限定された興味・反復的な行動など | 必要なサポートの度合い |
---|---|---|---|
レベル1 | サポートなしでは、社会的なコミュニケーションで顕著な困難がある。対人交流への関心が低いように見える。社会的な交流を始めたり、維持したりするのに困難がある。 | ルーチンやこだわりに対する固執によって、機能に柔軟性のなさが顕著に現れる。変化を乗り越えるのが困難。 | サポートが必要 |
レベル2 | サポートがあっても、社会的コミュニケーションで顕著な困難がある。限定的または異常な対人交流。他者からの社会的合図にほとんど、または全く反応しない。 | ルーチンやこだわりに対する固執、反復行動によって、機能に柔軟性のなさが顕著に現れる。変化に乗り越えるのが著しく困難。特定の興味・対象に強く固執。 | 実質的なサポートが必要 |
レベル3 | ごく限られた対人交流を開始・維持できるのみ。他者からの社会的合図に最小限しか反応しない。話すことがほとんどない、あるいは非常に限られている。 | ルーチンやこだわりに対する固執、反復行動によって、機能に柔軟性のなさが著しく現れる。変化に乗り越えるのが極めて困難。特定の興味・対象に極端に固執し、そのことばかり行う。 | 非常に実質的なサポートが必要 |
このレベルは、あくまで現時点でのサポートニーズを示すものであり、療育や支援によって変化する可能性もあります。診断時にこのレベルが示されることで、どのようなサポートがどの程度必要かの目安となります。
診断を受けるには
自閉症スペクトラム(ASD)かもしれないと感じたり、特性について専門家の意見を聞きたいと思ったりした場合、まずは相談できる窓口を見つけることから始まります。診断を受けるには、専門の医療機関を受診する必要があります。
診断までの一般的な流れは以下のようになります。
- 最初の相談:
- 子どもの場合:市町村の保健センターでの乳幼児健診や就学前健診で相談したり、かかりつけの小児科医に相談したりするのが一般的です。保育園や幼稚園、学校の先生に相談し、教育委員会やスクールカウンセラー、通級指導教室などに繋がってもらうこともあります。
- 大人の場合:精神科、心療内科、神経科などの医療機関を受診します。できれば、発達障害の診療に詳しい医師(専門医)がいる医療機関を選ぶのが望ましいです。会社の産業医や地域の相談窓口(発達障害者支援センターなど)に相談してみることも可能です。
- 専門機関の紹介・受診:最初の相談で必要性が認められた場合、発達障害の診断や詳しい検査ができる専門の医療機関(大学病院の精神科、児童精神科、発達外来など)を紹介されることがあります。受診には予約が必要で、数ヶ月待ちとなることも少なくありません。
- 詳細な検査・評価:受診後、医師や心理士による詳細な評価が行われます。
- 問診:本人や家族から、幼少期からの発達の様子、現在の困りごと、社会生活の状況などを詳しく聞き取ります。
- 行動観察:診察室での本人の様子を観察したり、プレイセラピーのような形で遊びの中での対人交流や行動特性を観察したりします。
- 心理検査:知的な発達や特性の傾向を把握するための心理検査(WISC、WAIS、ADOS-2、PARSなど)が行われることがあります。
- 情報収集:可能であれば、母子手帳の記録、保育園・幼稚園・学校の記録、生育歴などが診断の参考になります。
- 診断:これらの情報や評価を総合して、医師がASDであるかどうかの診断を下します。診断名だけでなく、どのような特性があるか、どのようなサポートが必要かなどについても説明が行われます。
診断を受けることには、自身の特性を正しく理解できる、周囲の人にも理解してもらいやすくなる、行政や就労などの支援サービスを利用できるようになる、といったメリットがあります。一方で、「診断を受けること自体への抵抗感」や「ラベリング(レッテル貼り)されることへの懸念」を感じる方もいらっしゃいます。診断を受けるかどうかは、本人や家族がよく話し合い、メリット・デメリットを理解した上で決定することが重要です。診断はゴールではなく、より良い生活を送るためのスタートであると捉えるのが建設的です。
自閉症と発達障害・ASD以外の違い
自閉症スペクトラム(ASD)は発達障害の一つですが、他の発達障害や関連する概念と混同されやすいことがあります。ここでは、ASDと他の発達障害、特にアスペルガー症候群やADHDなどとの違いについて整理します。
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「発達障害」とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって、幼児期から特性が現れ、日常生活や社会生活に困難を生じる様々な状態の総称です。自閉症スペクトラム(ASD)は、この「発達障害」という大きな枠組みに含まれる多様な特性の一つです。
つまり、発達障害は広い概念であり、自閉症スペクトラム(ASD)はその中に含まれる具体的な診断名です。
発達障害には、ASDの他にも以下のような診断名が含まれます(DSM-5に基づく主な分類)。
- 自閉スペクトラム症(ASD):対人関係やコミュニケーションの困難、限定された興味・こだわり、感覚の特性を主な特徴とする。
- 注意欠如・多動症(ADHD):不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする。
- 限局性学習症(LD、学習障害):読み書き、計算など、特定の学習能力の習得に著しい困難がある。
- 知的能力障害(知的障害):全般的な知的機能(学習、問題解決、判断など)と社会生活への適応能力に遅れがある。
- コミュニケーション症群:言語症、語音症、小児期発症流暢症(吃音)、社会的(語用論的)コミュニケーション症など、コミュニケーション能力に特異的な困難がある。
- 限局性運動症群:発達性協調運動症、常同運動症、チック症群など、運動機能に困難がある。
このように、発達障害という言葉は、脳機能の偏りによる様々な特性を含む広い概念であり、ASDはその中の一分類であると理解してください。
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結論から言うと、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」が正式な診断名であり、一般的に「自閉症」という言葉もASDを指すことが多くなっています。厳密な診断名としては「自閉スペクトラム症」が使われます。
DSM-5が導入される以前は、自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などが別々の診断名として使われていました。これらの診断名は、言葉の遅れの有無や知的な遅れの有無などによって区別されていましたが、実際には境界が曖昧で、診断によって受けられる支援に違いが出てしまうなどの問題がありました。
DSM-5では、これらの状態を連続したもの(スペクトラム)として捉え、「自閉スペクトラム症」という一つの診断名に統合しました。これには、診断のばらつきを減らし、自閉症の多様性をより適切に表す「スペクトラム」という言葉を用いることで、個々の特性に応じた支援に繋げやすくするという目的があります。
したがって、「自閉症」という言葉を使う場合でも、多くの場合、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」が指す概念と同じように、多様な特性を含む連続体として理解されるべきです。
アスペルガー症候群との関係
アスペルガー症候群は、DSM-5導入以前に使われていた診断名であり、現在は自閉スペクトラム症(ASD)の中に含まれるものと位置づけられています。
アスペルガー症候群は、主に以下のような特徴を持つとされていました。
- 自閉症と同様の、対人関係やコミュニケーションの困難、限定された興味やこだわりがある。
- 言葉の発達の遅れがなく、知的発達に遅れがない。
つまり、言葉や知的発達に遅れがないタイプの自閉症が、アスペルガー症候群と呼ばれていたと理解できます。DSM-5でASDに統合されたのは、アスペルガー症候群と従来の自閉症との間に明確な境界線を引くのが難しかったこと、そして「スペクトラム」という考え方が、これらの状態の多様性をより適切に表すと考えられたからです。
現在、過去にアスペルガー症候群と診断された方も、改めてASDと診断されることが多いです。DSM-5では、過去の診断名が現在の診断名にどのように対応するかについてのガイダンスも示されています。
ADHDなど他の発達障害との違い
自閉症スペクトラム(ASD)と、注意欠如・多動症(ADHD)や限局性学習症(LD)などの他の発達障害は、それぞれ異なる主な特性を持ちますが、併存する(同時に診断される)ことが非常に多いという特徴があります。
ASDとADHDの主な違いを表で整理すると、以下のようになります。
特性の種類 | 自閉スペクトラム症 (ASD) | 注意欠如・多動症 (ADHD) |
---|---|---|
主な困難 | 対人関係・コミュニケーション、限定された興味・こだわり、感覚 | 不注意、多動性、衝動性 |
対人関係 | 関係構築や維持が難しい、場の空気を読むのが苦手、相互性が低い | 衝動的な言動でトラブルを起こしやすい、順番を待てない |
コミュニケーション | 文字通りに受け取る、一方的、非言語的な理解困難、独特の言葉遣い | 会話中に落ち着きがない、人の話を最後まで聞けない、遮る |
興味・行動 | 限定された強い興味、反復的な行動、変化への強い抵抗、こだわり | 注意が散漫、衝動的な行動、飽きっぽい、新しいもの好き |
感覚 | 過敏さ・鈍麻さが見られることが多い | 特に関係ない |
ルール | 融通がきかない、ルールに固執することがある | ルールを理解していても守ることが難しい(衝動性) |
ただし、これは典型的な違いであり、必ずしもすべてのケースに当てはまるわけではありません。また、ASDとADHDの特性が両方現れる「ASDとADHDの併存」は珍しくありません。例えば、ASDによるコミュニケーションの困難と、ADHDによる衝動性が組み合わさることで、人間関係のトラブルがより複雑になることもあります。
LD(限局性学習症)は、ASDやADHDとは異なり、読み書きや計算といった特定の学習領域に困難が生じる発達障害です。ASDやADHDとLDが併存することもあります。
これらの発達障害は、個々の特性が複雑に絡み合って現れることが多く、診断や支援には専門家による丁寧な評価が必要です。安易に自己判断せず、専門機関に相談することが重要です。
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自閉症スペクトラム(ASD)は生まれつきの特性ですが、大人になってから診断を受ける方も増えています。これは、ASDの特性が思春期以降の環境の変化(受験、就職、結婚、子育てなど)によって顕在化したり、本人や周囲が特性に気づいたりするためです。
大人の自閉症の特徴
大人のASDの特性は、子供の頃からの特性が続いている場合と、子供の頃は目立たなかった特性が大人になってから困難として現れる場合があります。また、長年の経験から特性をカバーするための工夫(カモフラージュ)を身につけていることもあります。
大人のASDの主な特徴としては、以下のような例が挙げられます。
- 仕事や人間関係での困難:
- 職場の暗黙のルールが理解できない、報連相が苦手。
- 同僚との雑談や飲み会が苦痛、対人関係がうまくいかない。
- 複数の指示を同時に処理するのが難しい、優先順位をつけるのが苦手。
- 予定外の変更や臨機応変な対応が苦手でパニックになることがある。
- 特定の業務には驚異的な集中力と能力を発揮するが、他の業務は苦手。
- 自分の興味のあることばかり話してしまい、相手を飽きさせてしまう。
- 日常生活での困難:
- 新しい場所に行くのが不安、初めてのことが苦手。
- 部屋を片付けられない、整理整頓が苦手。
- お金の管理が苦手。
- 感覚過敏により、公共交通機関の混雑、騒音、特定の素材の服などが苦痛。
- 顔の表情や声のトーンから相手の感情や意図を読み取るのが難しい。
- こだわりやルーチン:
- 決まった手順ややり方に強くこだわり、譲れない。
- 特定の趣味や関心事に対する没頭が非常に深い。
- 同じ場所にばかり行ってしまう、同じものばかり食べてしまう。
- 二次障害:特性による困難が続くと、うつ病、不安障害、適応障害などの精神的な不調(二次障害)を発症しやすくなります。
一方で、大人のASDの方の中には、自身の特性を理解し、強みを活かせる仕事や環境を見つけ、社会で活躍されている方もたくさんいらっしゃいます。特定の分野への深い興味や集中力、真面目さ、細部への注意力などが、仕事や趣味で大きな強みとなることもあります。
大人になってから診断されるケース
大人になってから自閉症スペクトラム(ASD)と診断されるケースが増えている背景には、以下のような理由が考えられます。
- 社会生活での困難の顕在化:子供の頃は家族や学校のサポートで乗り越えられていた特性が、社会人になり人間関係や仕事の要求レベルが上がったことで、困難として認識されるようになる。
- ASDの認知度の向上:発達障害全般に関する社会的な認知度が向上し、「もしかしたら自分も?」と気づく人が増えた。インターネットや書籍などの情報も増えている。
- うつ病などの二次障害での受診:特性によるストレスや社会適応の困難から、うつ病や不安障害などの精神的な不調を抱え、医療機関を受診した際に、その背景にASDの特性があることが明らかになる。
- 子供の診断をきっかけに親が気づく:自分の子供がASDと診断されたことをきっかけに、自身の子供の頃や現在の状況を振り返り、「自分も同じような特性があるかもしれない」と気づくケース。
- 診断基準の変化:前述のように、アスペルガー症候群など言葉の遅れがないタイプもASDに統合されたことで、比較的知的な遅れがない方が診断に繋がりやすくなった。
大人になってから診断を受けることの意義は、「自分の抱えている生きづらさの正体を知り、自分自身を深く理解できる」「特性に合わせた対処法や工夫を学ぶことができる」「周囲の人(家族、職場など)にも特性を理解してもらいやすくなる」「障害者手帳の取得や、就労移行支援事業所など、利用できる公的な支援やサービスがあることを知り、実際に利用できる」といった点にあります。一方で、「診断を受けることへの抵抗感」や「ラベリングへの懸念」などから、診断を受けないという選択をされる方もいらっしゃいます。診断を受けるかどうかは個人の自由であり、ご自身の状況や考えに基づいて慎重に検討することが大切です。もし診断を検討したい場合は、発達障害に詳しい精神科医や心療内科医に相談してみることをお勧めします。
自閉症に関するその他の疑問
自閉症スペクトラム(ASD)については、様々な情報が飛び交っており、中には誤解や偏見に基づいたものもあります。ここでは、ASDに関するよくある疑問や検索されることについて、正しい情報に基づいて回答します。
【関連検索】自閉症スペクトラム 顔つきについて
結論から申し上げると、自閉症スペクトラムに特有の顔つきというものは存在しません。
「自閉症の人は〇〇のような顔つきをしている」といった情報を見聞きすることがあるかもしれませんが、これは科学的根拠のない情報や、特定の個人を見た印象に基づいたものであり、大きな誤解です。
ASDは、脳機能の発達の偏りによって生じるものであり、外見上の特徴(顔立ち)とは直接的な関連はありません。ASDを持つ人々の顔つきは、定型発達の人々と同様に非常に多様であり、見た目でASDかどうかを判断することは絶対にできません。
見た目で人を判断したり、外見に基づいてASDであるかのように決めつけたりすることは、深刻な偏見や差別に繋がります。ASDの診断は、専門家が行動観察や聞き取り、検査などを総合的に行って行われるものであり、顔つきで診断されることはありません。
もし、このような誤った情報に触れた場合は、鵜呑みにせず、正しい知識を持つことが大切です。
【関連検索】自閉症スペクトラム 有名人
自閉症スペクトラム(ASD)や、かつてのアスペルガー症候群などと診断されている、あるいはそうではないかと推測されている有名人について関心を持つ人もいるかもしれません。
実際に、ASDであることを公表されている有名人や著名な方もいらっしゃいます。例えば、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんはアスペルガー症候群であることを公表しており、「私の異なっている部分が、私の超能力(スーパーパワー)だ」と語っています。また、特定の分野で歴史的な偉業を成し遂げた人物の中にも、伝記などを通してASDの特性(強いこだわり、卓越した集中力、対人関係の困難など)が見られると指摘されることがあります(アインシュタインやモーツァルトなどが例として挙げられることがありますが、これはあくまで後世からの推測であり、生前に診断されたわけではありません)。
特定の分野への強い興味や驚異的な集中力、型にはまらない発想などは、ASDの特性として見られることがあり、これらが才能として花開くこともあります。しかし、それはASDを持つ人すべてに当てはまるわけではなく、また、彼らが成功しているのはASDであることそのものによるものではなく、その特性を活かす環境や努力、他の能力などが複合的に作用した結果です。
有名人を例に挙げることで、ASDの特性について具体的にイメージしやすくなる側面はあるかもしれませんが、個人のプライバシーに配慮し、診断が確定していない人物についてASDであるかのように語ることは避けるべきです。また、ASDを持つすべての人が有名人や天才になるわけではないことを理解し、個々の多様性を尊重することが最も重要です。
専門機関での相談・支援
自閉症スペクトラム(ASD)は、診断を受けて終わりではなく、その特性を理解し、本人とその家族がより良く社会生活を送るためのサポートや支援が重要になります。乳幼児期から高齢期まで、それぞれのライフステージに応じた様々な相談機関や支援サービスがあります。
医療機関(病院・クリニック)
自閉症スペクトラムの診断は、専門の医療機関で行われます。主に、児童精神科、精神科、神経科、発達外来などです。診断だけでなく、ASDに併存しやすい二次障害(うつ病、不安障害、不眠など)に対して、服薬治療などの医療的なサポートを受けることも可能です。
医療機関は、診断や医学的な観点からの助言を得る上で重要な役割を果たします。信頼できる医師を見つけ、定期的に相談できる関係を築くことが大切です。
発達障害者支援センターなど
発達障害者支援センターは、発達障害に関する専門的な相談支援を行う公的な機関です。診断の有無に関わらず、発達障害の可能性がある本人、家族、関係機関からの様々な相談に応じ、情報提供、助言、関係機関との連携・調整などを行います。
- 相談支援:困りごとを聞き、解決に向けた情報提供や専門機関の紹介を行います。
- 発達支援:子供の発達に応じた支援(療育)に関する情報提供や助言を行います。
- 就労支援:働く上での困りごとや、就職・職場定着に向けた情報提供や関係機関との連携を行います。
- 普及啓発:発達障害に関する正しい知識の普及や啓発活動を行います。
各都道府県・指定都市に設置されており、地域における発達障害支援の中核的な役割を担っています。まずは近くの支援センターに連絡してみるのが、様々な支援に繋がる第一歩となることが多いです。
その他にも、地域の保健センター、子育て支援センター、精神保健福祉センター、教育センター、障害者就業・生活支援センターなど、様々な相談窓口があります。
療育や就労移行支援について
自閉症スペクトラムの特性による困難を軽減し、社会生活への適応力を高めるための具体的な支援として、療育や就労移行支援などがあります。
- 療育(発達支援):主に子供を対象とした、発達を促し社会性を育むための様々なプログラムです。ソーシャルスキルトレーニング(SST)、応用行動分析(ABA)、ペアレントトレーニング(保護者向けの支援方法の習得)などがあります。集団でのプログラムや個別でのプログラムがあり、専門の療育施設や放課後等デイサービスなどで提供されています。早期に開始することで、その後の社会適応に良い影響があると考えられています。
- 就労移行支援:主に大人の発達障害のある方を対象とした、一般企業への就職を目指すための福祉サービスです。働くために必要な知識やスキルを習得する訓練(PCスキル、コミュニケーションスキル、ビジネスマナーなど)、自己理解を深めるプログラム、求職活動のサポート、就職後の職場定着支援などを行います。お住まいの地域の障害福祉窓口で相談し、利用申請を行います。
- その他の支援:障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など)を取得することで、様々な福祉サービスや割引制度が利用できる場合があります。障害年金の受給対象となることもあります。ピアサポート(当事者同士の交流や支え合い)のグループに参加することも、孤独感を軽減し、経験を共有する上で有効です。
どのような支援が利用できるか、どのような支援が本人に適しているかは、個々の年齢、特性、困りごと、希望などによって異なります。まずは専門機関に相談し、情報収集やアセスメントを受け、本人にとって最も適切な支援プランを一緒に考えてもらうことが重要です。
自閉症スペクトラムは多様な特性を持つ発達障害であり、その理解と適切なサポートが本人とその周囲の人々にとってより良い生活を送るために不可欠です。この記事で提供した情報が、ASDに関する正しい理解の一助となり、必要な支援に繋がるきっかけとなれば幸いです。
【免責事項】
この記事の内容は、自閉症スペクトラムに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスや診断、治療を保証するものではありません。個々の状況に関する診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。また、ここに記載された情報は、執筆時点での一般的な知見に基づくものであり、最新の研究や個別のケースには当てはまらない可能性もあります。
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