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パニック障害の症状かも?動悸や息苦しさ…知っておきたいサイン徹底解説

パニック障害は、突然激しい不安や恐怖に襲われる「パニック発作」を特徴とする病気です。
この発作は非常に強く、心臓発作や窒息のような身体的な危機感を伴うことも少なくありません。
繰り返し発作を経験することで、「また発作が起きたらどうしよう」という不安(予期不安)が強くなり、特定の場所や状況を避けるようになる(広場恐怖)など、日常生活に大きな影響を及ぼします。
パニック障害の症状は多岐にわたり、人によって現れ方も異なります。
この記事では、パニック障害の主な症状、初期症状、原因、対処法、治療法について詳しく解説し、ご自身の症状について理解を深め、必要であれば専門医への相談を検討する手助けとなることを目指します。

パニック障害の症状

パニック障害は、不安症群に分類される精神疾患の一つです。
中核となるのは、予測不能なタイミングで突然出現する強い恐怖感である「パニック発作」ですが、それ以外にも様々な症状が複合的に現れるのが特徴です。

目次

パニック障害とは?パニック発作との違い

パニック障害を理解する上で重要なのが、「パニック障害」と「パニック発作」の違いです。
これらは密接に関連していますが、同じものではありません。

パニック障害の定義

パニック障害は、パニック発作が繰り返し起こり、かつ、その後に発作の再発やその影響について持続的な心配があったり、関連した行動の変化(発作を避けるための行動など)が見られる状態を指します。
一度パニック発作を経験した人が、「また発作が起きるのではないか」という不安(予期不安)に常に悩まされたり、発作が起こりやすい・逃げ出しにくいと感じる場所や状況を避けるようになる(広場恐怖)ことが、パニック障害の診断基準に含まれます。
つまり、パニック障害は、単にパニック発作が起こるだけでなく、発作によって引き起こされる二次的な不安や行動の変化を含めた病態全体を指します。

パニック発作の定義

パニック発作は、突然に強烈な恐怖や不快感がピークに達するエピソードです。
このエピソードは通常、数分以内にピークに達し、その間にさまざまな身体症状や精神症状が複数同時に出現します。
パニック発作は、パニック障害の中核的な症状ではありますが、パニック障害以外の不安症や他の精神疾患、さらには身体疾患でも起こりうる単一の現象としても定義されます。
パニック障害の診断には、このパニック発作が「予期しない形」で繰り返し起こることが必要条件の一つとなります。

パニック障害の主な症状

パニック発作時には、以下のような多様な症状が突然出現します。
これらの症状は、発作のピーク時に同時に複数(通常は4つ以上)認められます。

パニック発作の身体症状

パニック発作の身体症状は、自律神経系の過剰な反応によって引き起こされると考えられています。
心臓や呼吸器、消化器など、様々な身体部位に影響が現れます。

動悸、心拍数の増加

突然、心臓がドキドキと速く打ったり、胸がバクバクする感覚に襲われます。
まるで心臓が飛び出しそうだと感じる人もいます。
これは、体が危険を感じて「闘争または逃走」反応を起こす際に、血流を促進しようとして心拍数が急上昇するためです。

発汗、身震い、震え

急に大量の汗をかいたり、体が小刻みに震えたり、身震いしたりします。
これは、自律神経の乱れによる体温調節機能の異常や、筋肉の緊張によるものです。

息切れ感、息苦しさ、窒息感

空気が十分に吸えない、息が詰まる、喉が塞がるような感覚に陥ります。
過呼吸になることもあり、「このまま息ができなくなって死んでしまうのではないか」という強い恐怖感を伴うことがあります。

胸痛、胸部の不快感

胸が締め付けられるような痛みや、圧迫感、不快感を覚えることがあります。
心臓発作と間違えて救急車を呼んでしまうケースも少なくありません。

吐き気、腹部の不快感

胃がむかむかしたり、吐き気を催したり、お腹が痛くなったり、下痢をしたりすることもあります。
消化器系の働きが乱れることで生じます。

めまい、ふらつき、立ちくらみ

地面が揺れているように感じたり、体がぐらぐらしたり、今にも倒れそうだと感じたりします。
バランス感覚を失うような感覚は、強い不安をさらに煽ることがあります。

感覚異常(しびれ感、うずき感)

手足や体のあちこちがピリピリとしびれたり、チクチクとうずくような感覚が現れることがあります。
これは、血行の変化や自律神経の乱れによるものです。

熱感、悪寒

体がカーッと熱くなったり、逆に急に冷えを感じたり、ゾクゾクと悪寒がすることもあります。
体温調節機能の異常による症状です。

パニック発作の精神症状

身体症状と並行して、精神的な症状も強烈に現れます。

現実感の喪失、離人感

まるで自分が自分ではないかのように感じたり(離人感)、周りの世界が現実ではないかのように感じたり(現実感の喪失)することがあります。
夢の中にいるような、ぼんやりとした感覚を伴うこともあります。

恐れ(我を失う、狂う、死ぬのではないか)

パニック発作の最も特徴的な精神症状は、非常に強い恐怖感です。
「このまま自分をコントロールできなくなって気が狂ってしまうのではないか」「この体の症状で死んでしまうのではないか」といった、圧倒的な恐怖に襲われます。
この死への恐怖は、たとえ実際に生命の危険がない状況であっても強く感じられます。

パニック障害に特徴的な症状

パニック発作が繰り返し起こることによって、パニック障害に特有の症状が現れてきます。

予期不安

一度パニック発作を経験すると、「またいつあの恐ろしい発作が起こるのではないか」という不安に常に悩まされるようになります。
これが予期不安です。
予期不安は発作が起きていないときも持続し、日常生活の多くの場面で不安を感じるようになります。
この不安のために、外出をためらったり、人の多い場所を避けたりするようになります。

広場恐怖

パニック発作が起きた時に、「逃げ出すことが困難である」「助けを求めることができない」と感じる場所や状況に対して恐怖を感じ、避けるようになるのが広場恐怖です。
典型的な状況としては、電車やバスなどの公共交通機関、人混み、閉鎖された空間(映画館、会議室)、開けた場所(広場、橋)、一人で外出することなどがあります。
広場恐怖が悪化すると、自宅から一歩も出られなくなるなど、行動範囲が著しく制限され、社会生活や日常生活に大きな支障をきたすようになります。

パニック障害の初期症状とは?

パニック障害は突然発症するイメージがありますが、その前に自覚しにくい初期症状や前兆が現れることがあります。

発作の前兆となる可能性のある症状

パニック障害の最初のパニック発作は、多くの場合、突然、予期しない形で起こります。
しかし、最初の発作が起こる前に、あるいはパニック障害へと移行する過程で、以下のようなサインが見られることがあります。

  • 特定の状況での軽い不安や動悸: 電車に乗ると少しドキドキする、人混みで少し息苦しくなるなど、特定の場所や状況で一時的な軽い身体症状や不安を感じることが増える。
  • 体調不良の増加: 原因不明のめまい、吐き気、頭痛などが続く。
    自律神経失調症のような症状として現れることもあります。
  • 些細なことへの過敏さ: 音に敏感になる、体のちょっとした変化が気になって仕方なくなるなど、感覚が過敏になる。
  • 疲れやすさ、不眠: ストレスや不安が続いていることで、疲れが取れにくくなったり、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりする。
  • 漠然とした不安感: 何となく落ち着かない、理由もなく不安だという感覚が続く。

これらの初期症状はパニック障害に特有のものではなく、見過ごされがちです。
しかし、このようなサインに気づき、早い段階でストレスケアや生活習慣の見直しを行うことが、その後の症状悪化を防ぐ上で役立つ可能性があります。
本格的なパニック発作を経験した後、これらの前兆を振り返って気づく人もいます。

自分でできるパニック障害の症状チェックリスト

パニック障害の診断は医師が行いますが、ご自身の症状がパニック障害の可能性を示唆するかどうかを知るために、セルフチェックリストを活用することができます。
以下は、診断基準(DSM-5など)で示されているパニック発作やパニック障害の特徴に基づいたチェック項目です。

診断基準(DSM-5等)に基づくチェック項目

以下の項目のうち、ご自身に当てはまるものにチェックを入れてみてください。

A. パニック発作の経験

  • □ 突然、強い恐怖や不快感の波が押し寄せ、数分以内にピークに達したことがある。

B. パニック発作時の症状 (以下のうち4つ以上が同時に起こったことがある)

  • □ 動悸、心臓がドキドキする、または心拍数の増加
  • □ 発汗
  • □ 身震いまたは震え
  • □ 息切れ感、息苦しさ
  • □ 窒息感
  • □ 胸痛または胸部の不快感
  • □ 吐き気または腹部の不快感
  • □ めまい、ふらつき、立ちくらみ、または気が遠くなりそうな感じ
  • □ 現実感喪失(現実ではない感じ)または離人感(自分から離れている感じ)
  • □ 我を失うことへの恐れ、または狂ってしまうことへの恐れ
  • □ 死ぬことへの恐れ
  • □ 知覚異常(麻痺感またはピリピリ感)
  • □ 寒気または熱感

C. パニック発作の後に以下のいずれかが見られる

  • □ 少なくとも1ヶ月間、「また発作が起こるのではないか」という発作の再発に関する持続的な心配や不安がある(予期不安)。
  • □ 発作やその影響(我を失う、心臓発作を起こすなど)に関して、適応行動が著しく変化した(例:運動を避ける、慣れない場所に行かないなど)。

D. 広場恐怖 (以下のうち2つ以上に対して恐怖を感じ、回避する)

  • □ 公共交通機関を利用すること(電車、バス、飛行機など)
  • □ 開かれた場所(駐車場、市場、橋など)にいること
  • □ 閉鎖された場所(商店、劇場、映画館など)にいること
  • □ 列に並ぶこと、または群衆の中にいること
  • □ 一人で家の外にいること

これらの場所や状況に対して、パニック発作やそれに似た症状が起きた時に逃げ出すのが困難である、または助けが得られないことを恐れて恐怖を感じ、積極的に避けている、または強い苦痛や不安を感じながら耐えている。

E. その他の要因の除外

  • □ 上記のパニック発作や広場恐怖が、物質(薬物乱用、医薬品など)の生理学的作用や他の病状(例:甲状腺機能亢進症、心血管疾患など)によるものではない。
  • □ 上記のパニック発作や広場恐怖が、他の精神疾患(例:社交不安症での社交状況の回避、特定の恐怖症での特定の恐怖対象の回避、強迫症での強迫関連儀式の回避、心的外傷後ストレス障害での心的外傷関連刺激の回避、分離不安症での家や愛着のある人からの回避など)では、よりうまく説明されない。

【チェックリストの注意点】
このチェックリストは、医学的な診断に代わるものではありません。
あくまでご自身の症状を整理し、専門医に相談するかどうかの目安としてご利用ください。
上記の項目に多く当てはまる場合や、症状によって日常生活に支障が出ている場合は、精神科や心療内科などの専門医に相談することを強くお勧めします。

パニック障害の症状が現れる原因と誘因

パニック障害の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
生物学的要因、心理的要因、社会的要因が相互に影響し合います。

なりやすい人の特徴

パニック障害になりやすい人には、いくつかの特徴が見られる傾向があります。
ただし、これらの特徴があるからといって必ずパニック障害になるわけではありませんし、これらの特徴がない人でも発症することはあります。

  • 特定の性格傾向: 神経質、几帳面、心配性、完璧主義、感受性が強いといった性格傾向を持つ人は、ストレスを感じやすく、パニック障害を発症しやすいと言われることがあります。
  • 遺伝的要因: 家族にパニック障害や他の不安症、うつ病などの精神疾患を持つ人がいる場合、本人も発症しやすい傾向が見られます。
    遺伝的な体質が関与している可能性が指摘されています。
  • 脳内の神経伝達物質のバランス異常: 脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きに異常があることが、パニック障害の発症に関わっていると考えられています。
  • 過去のトラウマ体験: 小児期の虐待や喪失体験など、強いトラウマ体験がパニック障害の発症の引き金となることがあります。
  • 特定の身体疾患や薬剤の影響: 甲状腺機能亢進症、不整脈、喘息などの身体疾患や、カフェイン、ニコチン、一部の薬剤などがパニック発作を誘発する可能性も指摘されています。

ストレスや過労は、脳内の神経伝達物質のバランスを崩したり、自律神経系を乱したりすることで、パニック発作を引き起こしやすい状態を作り出すと考えられています。

ストレスや過労との関連

パニック障害の発症やパニック発作の誘因として、ストレスや過労は非常に重要な要因です。

  • 強い精神的ストレス: 職場や家庭での人間関係の問題、大切な人との死別、大きな環境の変化(引っ越し、転職)など、強いストレス体験がパニック発作の最初のきっかけとなることがあります。
  • 身体的ストレスや過労: 睡眠不足、過労、病気、手術なども体のバランスを崩し、パニック発作を起こしやすくすることがあります。
    特に、慢性的な疲労やストレスが蓄積している状態では、些細なことが引き金となって発作が誘発されることがあります。
  • 特定の状況への恐怖学習: 一度特定の場所や状況でパニック発作を経験すると、脳はその場所や状況と恐怖を関連付けて記憶してしまいます。
    次に同じ場所や状況に遭遇すると、体が危険を察知してしまい、再びパニック発作を起こしやすくなります(条件付け)。
    これが予期不安や広場恐怖の形成につながります。

パニック障害の症状への対処法と治療

パニック障害は治療可能な病気です。
適切な治療とセルフケアを組み合わせることで、多くの人が症状をコントロールし、回復に向かうことができます。

パニック発作が起きた時の対応

パニック発作は突然起こり、非常に苦しいものですが、発作が起きても生命に危険はないことを理解することが大切です。
発作が起きた時の対処法を事前に知っておくことで、冷静に対応できるようになります。

  1. 安全な場所に移動する: 可能であれば、静かで安心できる場所に移動しましょう。
    電車の中など、移動が難しい場合は、座るなどして体勢を落ち着かせます。
  2. 呼吸を整える: 過呼吸になりがちですが、無理に速く呼吸しようとせず、ゆっくりと腹式呼吸を試みましょう。
    鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹を膨らませ、口からゆっくりと時間をかけて(吸うときの倍くらいの時間で)息を吐き出します。
    呼吸に意識を集中することで、恐怖感から注意をそらすことができます。
  3. 「これはパニック発作だ」と認識する: 体の不快な症状は、パニック発作によるものであり、命に関わるものではないと自分に言い聞かせます。
    発作は通常数分から長くても20~30分でおさまります。
  4. 感覚に意識を向ける: 恐怖心に囚われそうになったら、周囲の物に触れてみたり、床に足がしっかりついている感覚に意識を向けたりするなど、体の感覚に注意を向けます。
  5. 安心できるものを持つ/触れる: お守りや写真など、自分が安心できるものを持っていると、それがあることで気持ちが落ち着くことがあります。

応急的に頓服薬として処方された抗不安薬があれば、医師の指示に従って服用することも有効です。

放置した場合のリスク(症状悪化、うつ病合併など)

パニック障害の症状を放置すると、以下のようなリスクが高まります。

  • 症状の慢性化・悪化: 適切な治療を受けないと、パニック発作の頻度が増えたり、症状が重くなったりすることがあります。
  • 広場恐怖の悪化: 発作への恐れから行動範囲が狭まり、外出や人との交流を避けるようになります。
    重症化すると、自宅に引きこもるなど、社会生活や職業生活が困難になることがあります。
  • うつ病の合併: 繰り返し起こる発作や、行動制限による孤立感、将来への不安などから、うつ病を合併することが少なくありません。
  • 他の不安症や精神疾患の合併: 全般性不安症、社交不安症、特定の恐怖症などを合併するリスクが高まります。
    アルコールや薬物への依存に陥るケースも見られます。
  • QOL(生活の質)の著しい低下: 仕事や学業を続けられなくなったり、友人や家族との関係が悪化したりするなど、生活全般の質が低下します。

パニック障害は自然に治ることもありますが、多くの場合は適切な治療が必要です。
早期に専門医に相談し、適切な治療を開始することが、これらのリスクを防ぎ、回復への近道となります。

医療機関での治療法(薬物療法、精神療法など)

パニック障害の治療には、主に薬物療法と精神療法があり、これらを組み合わせて行うのが最も効果的とされています。

1. 薬物療法

脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、パニック発作や予期不安を軽減します。

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): 現在、パニック障害の第一選択薬とされることが多い抗うつ薬です。
    脳内のセロトニンの働きを調整し、不安や抑うつ気分を軽減します。
    効果が出るまでに数週間かかりますが、予期不安やパニック発作の頻度を減らし、広場恐怖の改善にも効果が期待できます。
    副作用が比較的少なく、依存性も低いのが特徴です。
    一定期間(通常は数ヶ月から1年以上)継続して服用する必要があります。
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬: 即効性があり、パニック発作が起きた時の頓服薬として、あるいは治療初期の症状緩和のために用いられます。
    不安を素早く抑える効果がありますが、依存性や眠気などの副作用があるため、漫然と長期にわたって使用することは避け、医師の指示に従って慎重に使用する必要があります。
  • その他: 必要に応じて、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)や三環系抗うつ薬などが用いられることもあります。

薬物療法を開始する際は、副作用についても十分に説明を受け、医師と相談しながら治療を進めることが重要です。

2. 精神療法

パニック障害に対する精神療法として、特に認知行動療法(CBT)が有効であることが多くの研究で示されています。

  • 認知行動療法(CBT): パニック障害を維持している誤った「認知」(考え方)や「行動」パターンに焦点を当てて修正していく治療法です。
    • パニック発作への正しい理解: パニック発作の身体症状は危険なものではなく、不安による自律神経の反応であることを理解します。
    • 誤った認知の修正: 「動悸がするのは心臓病のサインだ」「めまいがするのは気が狂う前触れだ」といった破局的な考え方を、「これは不安による体の反応だ」「少し休めば落ち着く」といった現実的な考え方に変えていきます。
    • 曝露療法: 安全な環境下で、パニック発作に似た身体感覚(過呼吸を意図的に起こす、体を揺らすなど)や、恐怖を感じる状況(電車に乗る練習、人混みに行く練習など)にあえて身を置く練習をします。
      これにより、そのような状況でもパニック発作は起きない、あるいは起きても対処できることを体験し、恐怖心を克服することを目指します。
  • その他の精神療法: リラクゼーション法、マインドフルネスなども、不安の軽減やストレス対処に役立つことがあります。

薬物療法と精神療法を組み合わせることで、より効果的に症状を改善し、再発予防にもつながると考えられています。
治療期間は個人差がありますが、通常は数ヶ月から1年以上を要します。
根気強く治療に取り組むことが大切です。

パニック障害に似た病気との鑑別

パニック発作や広場恐怖の症状は、パニック障害以外の様々な病気でも見られることがあります。
そのため、正確な診断のためには、他の病気との鑑別が非常に重要です。

身体疾患との鑑別

パニック発作の身体症状は、特定の身体疾患と間違えられやすいことがあります。

  • 心血管疾患: 狭心症や不整脈は、胸痛や動悸といったパニック発作とよく似た症状を引き起こすことがあります。
    特に心臓に持病がある場合は、必ず循環器科での診察が必要です。
  • 呼吸器疾患: 喘息や過換気症候群は、息苦しさや呼吸困難といった症状が現れます。
    過換気症候群はパニック発作に伴って起こることもありますが、それ自体が独立して起こることもあります。
  • 内分泌疾患: 甲状腺機能亢進症は、動悸、発汗、手の震え、不安感などを引き起こし、パニック発作と類似した症状を呈することがあります。
  • 神経疾患: てんかんの発作や、めまいを伴う神経疾患も、パニック発作と似た症状を起こす可能性があります。
  • その他: 低血糖、褐色細胞腫(まれな病気ですが、高血圧や動悸などの発作を起こします)、特定の薬剤の副作用などもパニック発作に類似した症状を引き起こすことがあります。

パニック発作を初めて経験した場合は、まずは内科などで体の異常がないかを確認することが非常に重要です。
これらの身体疾患が除外された上で、精神科や心療内科での診察を受けるのが一般的な流れです。

他の精神疾患との鑑別

パニック障害は、他の精神疾患とも症状が重複したり、合併したりすることがあります。

  • 特定の恐怖症: 高所恐怖症、閉所恐怖症、特定の動物への恐怖など、特定の対象や状況に対してのみ強い恐怖やパニック発作が起こる病気です。
    パニック障害の広場恐怖は、特定の場所や状況ではなく、パニック発作が起こりやすいと感じる複数の状況を避けるという点で異なります。
  • 社交不安症: 人前での発表や他者からの評価を伴う社交的な状況に対して強い不安や恐怖を感じる病気です。
    社交状況でパニック発作が起こることもありますが、不安を感じる対象が社交的な状況に限定されている点がパニック障害とは異なります。
  • 全般性不安症: 特定の対象や状況だけでなく、様々なことに対して漠然とした不安や心配が持続する病気です。
    パニック発作は必須の症状ではありません。
  • うつ病: 気分が落ち込む、意欲がなくなるなどの症状が特徴ですが、パニック障害とうつ病は合併することが多く、うつ病の症状としてパニック発作が見られることもあります。
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD): 強いトラウマ体験の後に発症し、フラッシュバックや回避行動、過覚醒などの症状が見られます。
    トラウマに関連した刺激に触れるとパニック発作のような症状が起こることがありますが、原因がトラウマ体験に関連している点が異なります。

診断は、これらの様々な可能性を考慮し、専門医が症状の詳細な問診や必要に応じて検査を行った上で総合的に判断します。
自己判断で「パニック障害だろう」と決めつけず、必ず医療機関を受診することが重要です。

専門医への相談を検討しましょう

もし、あなたがこの記事を読んで、ご自身の症状がパニック障害の可能性に当てはまるかもしれないと感じたり、繰り返し起こる不安や体の不調に悩まされているのであれば、一人で抱え込まずに専門医に相談することを強くお勧めします。

パニック障害は、早期に適切な診断を受け、治療を開始することで、症状の改善や回復が十分に期待できる病気です。
逆に、放置しておくと、症状が慢性化したり、うつ病などの他の病気を合併したりして、回復に時間がかかる可能性があります。

専門医に相談するメリット

  • 正確な診断: 身体疾患や他の精神疾患との鑑別を含め、症状の原因を正確に診断してもらえます。
  • 適切な治療法の提案: 薬物療法や精神療法など、あなたの症状や状況に合った最適な治療計画を立ててもらえます。
  • 不安の軽減: 病気について正しく理解し、治療の見通しを持つことで、症状への不安を軽減できます。
  • 具体的な対処法の指導: 発作が起きた時の具体的な対処法や、日常生活でのセルフケアについて専門家から指導を受けることができます。
  • 回復へのサポート: 医師や医療スタッフのサポートを受けながら、安心して治療に取り組むことができます。

どこに相談すれば良いか?

パニック障害の相談や治療は、主に精神科や心療内科で行われます。
かかりつけの内科医に相談し、精神科や心療内科を紹介してもらうことも可能です。
最近では、オンライン診療で精神科医の診察を受けられるクリニックもありますので、対面での受診に抵抗がある場合や、忙しくて通院が難しい場合は検討してみるのも良いでしょう。

症状に気づいたら、まずは一歩踏み出して相談してみましょう。
それは、あなたが自分自身の心と体を大切にするための、前向きな行動です。
専門家の力を借りて、パニック障害を乗り越え、より穏やかな日常生活を取り戻しましょう。


免責事項
この記事で提供している情報は、パニック障害の症状に関する一般的な知識を目的としており、医学的な助言や診断に代わるものではありません。
ご自身の症状について疑問や不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
この記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当方は責任を負いかねます。

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