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ADHDの特性を活かす!本当に向いている仕事の見つけ方

仕事において、 ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性を持つことで、さまざまな困難に直面する方が多くいらっしゃいます。
不注意によるミスが多い、集中力が続かない、衝動的に行動してしまう、物事の計画や整理が苦手など、これらの特性は仕事のパフォーマンスに影響を与え、「仕事ができない」「仕事が続かない」といった悩みに繋がることがあります。
しかし、ADHDの特性は必ずしも仕事におけるマイナス面ばかりではありません。特定の環境や職種においては、その特性が強みとなり、能力を最大限に発揮できる可能性も秘めています。

この記事では、ADHDの特性が仕事に与える影響や具体的な困りごとを掘り下げながら、自分に合った仕事を見つけるためのヒント、そして日々の業務で使える具体的な対策や働き方の工夫について詳しく解説します。
さらに、仕事探しや転職活動の進め方、困ったときに相談できる専門機関についてもご紹介します。「ADHDのせいで仕事がうまくいかない」と悩んでいる方が、自分らしい働き方を見つけ、仕事への前向きな一歩を踏み出すための情報を提供します。

adhdの代表的な特性と仕事上の困難

ADHDは、主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの主要な特性を持ちます。これらの特性は、子どもの頃だけでなく、大人になっても続き、仕事の様々な場面で影響を与えることがあります。これらの特性がどのような仕事上の困難に繋がるのかを具体的に見ていきましょう。

不注意・集中力の維持の難しさ

ADHDの特性としてよく挙げられるのが「不注意」です。これは、単に集中力がないということではなく、特定の情報やタスクに注意を向け続けることや、不要な情報に注意を奪われないようにすることが難しい、という状態です。仕事においては、以下のような困難に繋がることがあります。

  • ミスが多い: 指示を聞き逃したり、書類の誤字脱字、計算間違い、必要な手続きを忘れるなど、細かいミスが発生しやすい。
  • 集中が続かない: 長時間一つの作業に集中するのが難しく、すぐに飽きてしまったり、他のことに気が散ってしまったりする。締め切りが迫っているにも関わらず、他の関係ない作業をしてしまうことも。
  • ケアレスミス: 確認作業が疎かになり、単純なミスを繰り返しやすい。
  • 忘れ物や紛失: 必要な書類や道具、情報を置き忘れたり失くしたりしやすい。
  • 話を聞き漏らす: 会議や指示の重要な部分を聞き逃し、後で困ることがある。

これらの不注意傾向は、正確性や継続的な集中力を求められる仕事で特に大きな困難となります。

多動性・衝動性

大人のADHDでは、子どもの頃のような体を常に動かしているといった多動性は目立たなくなることもありますが、心の落ち着きのなさや、じっとしていることへの苦手さとして現れることがあります。また、衝動性も仕事に影響を与えます。

  • 落ち着いて座っていられない: 長時間のデスクワークや会議で、体を動かしたくなったり、席を立ったりしたくなる。
  • 順番を待つのが苦手: 複数人が関わる作業や会議で、発言の順番を待てずに話し始めてしまう。
  • 衝動的な発言や行動: 物事を深く考えずに発言したり、後先考えずに行動に移してしまったりする。これにより、人間関係のトラブルや、計画外の行動による問題を引き起こすことがある。
  • 感情のコントロール: 自分の感情(怒りや不満など)を抑えるのが難しく、突然感情的になってしまうことがある。
  • 衝動的な決断: 重要な決定を熟考せず、その場の勢いで決めてしまい、後で後悔することがある。

これらの多動性や衝動性は、チームでの協調性や、冷静な判断、長期的な視点が必要な業務で困難を生じさせやすいです。

実行機能の弱さ(計画、整理、時間管理)

ADHDの特性として、特に仕事において影響が大きいのが「実行機能」の弱さです。実行機能とは、目標を設定し、計画を立て、段取りを組み、実行し、結果を評価するといった一連の認知プロセスのことです。この機能が弱いと、以下のような仕事上の困難に繋がることがあります。

  • 計画を立てるのが苦手: 複数のタスクがある場合、何から手をつければ良いか分からず、効率的な手順を考えるのが難しい。
  • 物事の優先順位付けができない: 重要なタスクとそうでないタスクを見分けるのが難しく、緊急度の低いことから始めてしまいがち。
  • 時間管理が苦手: 作業にかかる時間を正確に見積もれず、締め切りに間に合わない、あるいは必要以上に時間がかかってしまう。時間を守る意識が薄いことも。
  • 整理整頓ができない: デスク周りやパソコン内のファイルなどが雑然としてしまい、必要なものを見つけ出すのに時間がかかる。
  • 複数のタスクを同時にこなすのが難しい: マルチタスクが苦手で、一つのことに集中すると他のことを忘れてしまう。

これらの実行機能の弱さは、プロジェクト管理や事務処理能力、期日厳守が求められる仕事で特に大きな壁となります。

adhdで「仕事ができない」「仕事が続かない」と感じる理由

ADHDのこれらの特性が複合的に影響し合うことで、多くの人が「自分は仕事ができない」「どんな仕事をしても続かないのではないか」と感じてしまう状況が生まれます。

  • 成功体験の不足: 特性からくるミスや遅延が重なることで、達成感を得にくく、自信を失ってしまう。
  • 周囲からの評価: 特性を理解されないまま、周囲から「やる気がない」「だらしない」「能力が低い」といったネガティブな評価を受けることがあり、精神的に追い詰められる。
  • 自己肯定感の低下: 仕事での失敗や困難が続くことで、「自分はダメな人間だ」と思い込み、自己肯定感が著しく低下する。
  • モチベーションの維持困難: ネガティブな状況が続くと、仕事へのモチベーションを保つのが難しくなり、さらにパフォーマンスが低下するという悪循環に陥る。
  • 環境とのミスマッチ: 自分の特性に合わない仕事内容や職場環境を選んでしまっている場合、どんなに努力しても特性による困難を克服できず、結果的に長続きしない。
  • 二次障害の併発: 仕事上のストレスや悩みが原因で、うつ病や不安障害などの二次的な精神的な問題を抱えてしまうことがある。

このように、「仕事ができない」「仕事が続かない」という感覚は、ADHDの特性そのものに加えて、周囲の理解不足や環境とのミスマッチ、そしてそれに伴う心理的な負担が大きく影響しています。しかし、これはあなたの能力や人間性の問題ではなく、ADHDという特性と、現在の仕事や環境との間にズレが生じている可能性が高いことを示しています。

adhdの強みになりうる特性

ADHDの特性は、一見すると仕事で不利に働く側面が多いように感じられるかもしれません。しかし、視点を変え、その特性を適切に理解し、活かせる環境に身を置くことで、大きな強みとなり得ます。ここでは、ADHDのポジティブな側面や、それを活かせる仕事を見つけるための考え方、具体的な職種の例をご紹介します。

興味関心への過集中

ADHDの人は、自分が強く興味を持ったことに対して、驚くほどの集中力を発揮することがあります。これは「過集中」と呼ばれ、周囲の音が聞こえなくなるほど没頭し、高いパフォーマンスを上げることが可能です。仕事においても、自分の興味や関心に深く合致する分野であれば、長時間の集中や複雑な課題への取り組みが可能となり、専門性を高める上で有利に働くことがあります。

発想力・瞬発力

不注意や衝動性は、時にユニークな発想や、状況に応じた素早い判断・行動に繋がることがあります。既存の枠にとらわれず、新しいアイデアを生み出したり、変化に対して柔軟に対応したりするのが得意な人もいます。ルーチンワークよりも、突発的な出来事への対応や、創造性が求められる場面で強みを発揮しやすいです。

行動力・フットワークの軽さ

多動性は、単に落ち着きがないだけでなく、エネルギッシュで行動力があるという側面もあります。新しいことに挑戦する意欲が高く、じっとしているよりも動き回っている方が調子が良い、という人もいます。指示を受けたらすぐに実行に移したり、様々な場所にフットワーク軽く出向いたりすることが求められる仕事で活躍できる可能性があります。

これらの強みは、ADHDでない人にはない独特な才能として、仕事で大きなアドバンテージとなることがあります。自分の特性のポジティブな側面に目を向け、それを活かせる道を探すことが重要です。

adhdに向いてる仕事の選び方のポイント

ADHDの特性を活かし、自分に合った仕事を見つけるためには、いくつかのポイントがあります。

  • 興味・関心を重視する: 過集中を発揮するためには、何よりも自分が心から興味を持てる分野や仕事を選ぶことが重要です。好きなことや得意なことに関わる仕事であれば、困難も乗り越えやすくなります。
  • 特性に合った環境を選ぶ:
    • 変化が多いか、ルーチンワークか: ルーチンワークが苦手な場合は、常に新しい課題がある、変化の多い仕事が良いかもしれません。逆に、過集中を活かせる単調でも深い掘り下げが必要な仕事が合う場合もあります。
    • 自由度が高いか、厳格なルールがあるか: 衝動性や時間管理の苦手さがある場合、ある程度自分のペースで進められる自由度の高い環境の方が働きやすいことがあります。一方で、明確なルールや指示があった方が迷わず進められるという人もいます。
    • 一人で完結できるか、チームワークが必要か: コミュニケーションや多動性が課題となる場合は、一人で集中して取り組める仕事の方が向いていることがあります。
  • 具体的な作業内容を確認する: 抽象的な職種名だけでなく、日々の具体的な業務内容が自分の特性と合っているかを確認することが大切です。どんなタスクがどれくらいの頻度で発生するのか、必要なスキルや能力は何かを詳しく調べましょう。
  • 物理的な環境も考慮する: 騒がしい場所では集中できない、人の目が気になるといった場合は、個室で作業できるか、在宅勤務が可能かなども考慮に入れると良いでしょう。

adhdに向いてる仕事・職業の例一覧

ADHDの特性は多様であり、すべてのADHDの人に共通して向いている仕事があるわけではありません。しかし、特定の特性が活かされやすい、あるいは困難を軽減しやすいと考えられる仕事の例をいくつかご紹介します。

仕事のタイプ 具体的な職種例 ADHDの特性との相性・理由
クリエイティブ・専門性の高い仕事 Webデザイナー、グラフィックデザイナー、ライター、プログラマー、研究者、芸術家 興味関心への過集中を活かしやすい。新しい発想や独自の視点が求められるため、発想力が強みになる可能性がある。一人で集中して取り組める作業も多い。
変化が多く刺激のある仕事 イベントプランナー、コンサルタント(特定の分野)、ジャーナリスト、営業(新規開拓) ルーチンワークが苦手で、常に新しい刺激や課題がある環境が向いている。衝動性や行動力が、迅速な対応やフットワークの軽さとして活かされる場合がある。
一人で完結しやすい仕事 データ入力、校正・校閲、翻訳家、フリーランスのWebライター、清掃員、軽作業員 煩雑な人間関係やマルチタスクが苦手な場合に、自分のペースで作業を進めやすい。特定のタスクに集中しやすい環境。
体を動かす仕事 配送ドライバー、調理師、スポーツインストラクター、介護士(身体介護中心)、警備員 多動性やじっとしていることへの苦手さを解消しやすい。体を動かすことで集中力が高まる人もいる。段取りよりも、状況に応じた臨機応変な対応が求められる場面も。

これらの例はあくまで一例であり、個々の特性や興味、経験によって最適な仕事は異なります。重要なのは、自分の特性を理解し、「これなら過集中できそうだ」「この環境なら多動性が気になりにくいかも」といった視点で仕事を探すことです。

adhdに向いてる仕事が「ない」と感じる場合の考え方

「自分には上記のどれも向いていない気がする」「興味を持てる仕事が全く見つからない」と感じることもあるかもしれません。そのような場合でも、諦める必要はありません。

  • 既存の仕事での工夫: 今の仕事や以前経験した仕事で、比較的スムーズに取り組めた業務や、楽しかった経験を思い出してみましょう。たとえ職種全体が合わなくても、特定の作業なら力を発揮できる可能性があります。その部分を増やせないか、業務内容を調整できないか職場に相談することも考えられます。
  • 働き方の多様性: 正社員だけでなく、パートタイム、アルバイト、契約社員、フリーランス、在宅ワークなど、様々な働き方があります。拘束時間が短い、働く場所を選べるなど、柔軟な働き方を選ぶことで、特性による困難を軽減できる場合があります。
  • スキルの習得: 特定のスキルを習得することで、特性を活かせる仕事に就ける可能性が広がります。プログラミング、デザイン、ライティングなど、オンラインで学べるスキルも多くあります。
  • 専門家への相談: 一人で悩まず、後述する就労移行支援事業所やハローワークの専門窓口、ADHDに詳しいキャリアカウンセラーなどに相談することで、客観的な視点からのアドバイスや、自分では気づかなかった可能性を見つけられることがあります。

「向いてる仕事がない」と感じるのは、理想が高すぎたり、自分の特性をネガティブに捉えすぎたりしている可能性もあります。専門家のサポートを受けながら、現実的な視点で、自分にとって「比較的働きやすい仕事」や「挑戦してみたいこと」を探していくのが良いでしょう。

職場での具体的な工夫

自分の特性に合わせて、仕事の進め方や環境を意識的に変えていくことが重要です。

集中しやすい環境作り

  • 物理的な環境の調整: デスクの周りを整理整頓し、視覚的な刺激を減らす。可能であれば、パーテーションで区切られた席や、静かな場所で作業できるスペースを確保する。
  • デジタル環境の整備: パソコンのデスクトップを整理し、不要な通知をオフにする。集中を助けるためのアプリ(特定のウェブサイトをブロックするなど)を活用する。
  • ノイズ対策: 集中力を妨げる周囲の音に対しては、ノイズキャンセリングヘッドホンや耳栓を使用する。
  • 休憩の取り方: 長時間の集中が難しい場合は、短い休憩をこまめに挟む(例:ポモドーロテクニックなど)。集中力が途切れる前に意識的に休憩を取ることで、全体の効率を維持する。

タスク・スケジュール管理方法の改善

  • タスクの細分化: 大きなタスクは、具体的な小さなステップに分解する。最初の一歩が明確になることで、取り組みやすくなる。
  • To-Doリストの活用: 紙やアプリ、デジタルツールなど、自分に合った方法でTo-Doリストを作成し、完了したらチェックを入れる。達成感を視覚化することでモチベーション維持に繋がる。
  • 視覚的なスケジュール管理: カレンダーアプリやガントチャートなど、全体のスケジュールやタスクの進捗を視覚的に把握できるツールを活用する。色分けなども有効。
  • 時間を見積もる練習: 各タスクにかかる時間を実際に見積もり、結果と照らし合わせる練習をする。徐々に時間管理の精度が向上する。
  • リマインダーの設定: 重要な締め切りや会議、タスクの開始時間などをアラームや通知で知らせるように設定する。

ミスや抜け漏れを防ぐ対策

  • チェックリストの作成: 繰り返し行う作業や、ミスのしやすい作業には、手順や確認事項をまとめたチェックリストを作成し、毎回確認する。
  • 口頭指示のメモ: 指示は必ずメモを取るか、可能であれば録音する。後で聞き直したり、内容を確認したりできるようにする。
  • ダブルチェック体制: 重要な書類やデータは、可能な範囲で第三者(同僚など)にチェックしてもらう。あるいは、時間を置いてから自分で見直すなどの工夫をする。
  • ツールの活用: 入力規則を設定したスプレッドシート、自動保存機能のある文書作成ツールなど、ミスの発生を防ぐ、あるいはリカバリーを助けるツールを活用する。

コミュニケーションの調整

  • 指示の明確化: 指示を受ける際は、内容を復唱したり、分からない点を質問したりして、誤解がないように努める。曖Gaiな指示の場合は、具体的に何をすれば良いかを確認する。
  • 報連相の徹底: 業務の進捗状況や問題点などを、定期的に上司や関係者に報告・連絡・相談する。遅れやミスが発生した場合でも、早期に共有することで大きな問題になるのを防げる。
  • 感情的な反応のコントロール: 衝動的な発言や感情的な反応が出やすい場合は、一度深呼吸する、すぐに返答せず少し時間を置くなどの工夫をする。必要に応じて、自分の特性を周囲に伝えることも検討する。

周囲に理解や協力を求める方法

職場の理解や協力が得られると、働きやすさは大きく向上します。

  • 自分の特性について伝える: 信頼できる上司や同僚に、ADHDの特性について正直に話してみることを検討します。診断を受けている場合は、診断名を伝えるかどうかは慎重に判断する必要がありますが、具体的な困りごとや、どうすれば改善できるか(例:「私は口頭での指示よりも、メールで文章にしてもらえると助かります」「締め切り前に一度リマインドをいただけるとありがたいです」など)を具体的に伝えることが重要です。
  • 合理的配慮の相談: 診断を受けている場合や、障害者手帳を持っている場合は、会社に対して合理的配慮の提供を求めることができます。産業医や人事担当者に相談し、働きやすい環境整備(例:静かな席への配置、タスク管理ツールの導入、業務内容の調整など)について話し合います。
  • 相談しやすい関係を作る: 普段から周囲との良好なコミュニケーションを心がけ、困ったときに相談しやすい関係を築いておくことも大切です。

ただし、特性をオープンにすることにはメリットとデメリットがあり、職場の雰囲気や個々の関係性によって対応は異なります。慎重に進めることが重要です。

自分の特性を受け入れ、強みを活かす意識

ADHDの特性は、生まれつきのものであり、自分自身を責める必要はありません。特性を否定するのではなく、まずはそのままの自分を受け入れることから始めましょう。

  • ポジティブな側面に注目する: 自分が仕事で成功した経験や、特性がプラスに働いた場面を振り返ってみましょう。過集中して短時間で素晴らしい成果を出せた、新しいアイデアで状況を打開できたなど、あなたの強みは必ずあります。
  • 自己肯定感を高める: 小さな目標を設定し、達成するたびに自分を褒める。趣味や得意なことなど、仕事以外の場所で成功体験を積むことも、自己肯定感を高めるのに役立ちます。
  • 休息とリフレッシュ: 集中力が続かない、疲労を感じやすい場合は、無理せずに休息を取ることも重要です。趣味の時間や運動など、自分なりのリフレッシュ方法を見つけましょう。
  • 完璧を目指さない: ADHDの特性がある中で、すべてを完璧にこなすのは困難な場合もあります。完璧主義を手放し、必要なレベルで完了させることを目指すことも大切です。

自分の特性を理解し、受け入れ、それをコントロールしたり活かしたりするための工夫を続けることで、「仕事ができない」という感覚から解放され、自信を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

障害者雇用枠と一般雇用枠(クローズ/オープン)

ADHDの診断を受けている場合、障害者手帳を取得していれば、「障害者雇用枠」での就職・転職という選択肢があります。一方、診断を受けていても手帳がなくても、あるいは診断を受けていない場合でも、「一般雇用枠」で働くことができます。一般雇用枠の中でも、自分の障害や特性を企業に伝えない「クローズ就労」と、伝える「オープン就労」があります。

雇用枠 特徴 メリット デメリット
障害者雇用枠 障害者手帳を持っている人が対象。障害に対する配慮が前提となる。法定雇用率の対象。 企業側が障害について理解しており、特性に合わせた合理的配慮(業務内容の調整、勤務時間、環境整備など)を得やすい。同じような特性を持つ同僚がいる場合もある。安心して長く働きやすい環境が見つかりやすい。 求人数が一般雇用枠に比べて少ない場合がある。給与水準やキャリアアップの機会が一般雇用枠と異なる場合がある。応募には障害者手帳が必要。
一般雇用枠(オープン) 障害や特性を企業に伝えて応募する。障害者手帳の有無は必須ではない場合があるが、合理的配慮を求める場合は診断や手帳があるとスムーズなことが多い。 障害者雇用枠よりも多くの求人から選べる可能性がある。企業によっては障害への理解があり、配慮を得られる場合もある。自分の特性を伝えた上で働くため、ミスマッチを防ぎやすい。 障害者雇用枠ほど障害への理解や配慮が保証されているわけではない。配慮を得るためには、自分から伝え、交渉する必要がある場合が多い。
一般雇用枠(クローズ) 障害や特性を企業に伝えないで応募・就職する。 求人数が最も多く、選択肢が豊富。企業に障害について知られることなく、評価される可能性がある。 障害や特性に対する配慮は基本的に得られない。特性からくる困難を一人で乗り越える必要がある。困難が生じた場合に、誰にも相談できず孤立しやすい。体調を崩したり、仕事が続かなくなったりするリスクが高い。

ADHDの特性による困難が大きい場合や、安定して長く働きたい場合は、障害者雇用枠や一般雇用枠(オープン)を検討することが、自分らしく働くための重要な選択肢となります。

adhdの特性を踏まえた求人の探し方

求人情報を探す際に、ADHDの特性に合った仕事や環境を見つけるためのポイントがあります。

  • 具体的な業務内容を重視: 職種名だけで判断せず、具体的な業務内容や一日の流れ、どのようなスキルや能力が求められるのかを詳細に確認する。ルーチンワークが多いか、変化が多いか、一人で作業するか、チームで協力するかなどをイメージする。
  • 職場環境の情報収集: 職場の雰囲気、社員のタイプ、オフィス環境(静かか、賑やかか)、服装や働き方の自由度など、可能な範囲で情報収集する。企業のウェブサイトや口コミサイト、説明会などを活用する。
  • 柔軟な働き方が可能か: フレックスタイム制度、在宅勤務制度、時短勤務など、柔軟な働き方が認められているかも確認する。
  • 企業の障害理解度: 障害者雇用枠であれば理解は進んでいるが、一般雇用枠でも障害者採用に積極的だったり、ダイバーシティ&インクルージョンを推進している企業は、特性への理解がある可能性が高い。
  • 「未経験歓迎」「研修制度充実」の求人: 実行機能の弱さや不注意によるミスが不安な場合、教育体制が整っている企業や、未経験からでも安心して始められる求人を選ぶのも一つの手。

転職エージェントなど専門機関の活用

一人で仕事探しや転職活動を進めるのが難しい場合や、ADHDの特性に合った求人を見つけたい場合は、専門機関のサポートを活用しましょう。

  • 障害者専門の転職エージェント: ADHDなどの発達障害に理解のある専門エージェントは、特性に合った求人の紹介、応募書類の添削、面接対策、企業への特性の伝え方のアドバイス、入社後のフォローなど、手厚いサポートを提供してくれます。企業側との橋渡しも行ってくれるため、合理的配慮の交渉などもスムーズに進みやすいです。
  • ハローワーク(専門窓口): ハローワークには障害のある方向けの専門窓口があります。求人紹介だけでなく、就職に関する相談や、後述する就労移行支援などの情報提供も受けられます。
  • 就労移行支援事業所: 障害のある方向が一般企業への就職を目指すための訓練やサポートを行う事業所です。自己分析、職業スキルの習得、職場体験、面接練習など、総合的な就職支援を受けられます。自分の特性に合った働き方や、必要なスキルを見つけるのに役立ちます。

これらの専門機関を活用することで、自分の特性を理解した上で、より効率的かつ安心して仕事探しを進めることができます。

大人のadhd診断プロセス

大人のADHDの診断は、精神科や心療内科で行われます。診断は、問診、心理検査、生育歴の確認など、複数の情報に基づいて総合的に判断されます。

  • 問診: 現在困っていること(仕事、生活、人間関係など)、子供の頃からの特性(通知表の記述など)、家族歴などを詳しく聞き取ります。
  • 心理検査: 知的能力や注意力、衝動性などを測る検査(例:WAIS-IV、Conners’ Adult ADHD Rating Scales (CAARS)など)を行う場合があります。
  • 生育歴の確認: 可能であれば、子供の頃の様子がわかる情報(母子手帳、通知表、親への聞き取りなど)も参考にします。ADHDは発達障害であり、子供の頃からの特性が継続していることが診断基準の一つとなるためです。

これらのプロセスを経て、医師がADHDの診断基準(DSM-5など)に照らし合わせて診断を行います。診断には時間がかかる場合もあります。

診断を受けるメリット・デメリット(仕事関連)

ADHDの診断を受けることは、仕事に関してメリットとデメリットの両方があります。

メリット デメリット
自己理解が深まる: 自分の仕事上の困難がADHDの特性によるものだと理解でき、自分自身を責める気持ちが軽減される。対策方法も明確になる。 告知のハードル: 診断名を職場に伝えることに抵抗を感じる可能性がある。
適切な対策や支援に繋がりやすい: 診断に基づいた医学的なアプローチ(服薬など)や、特性に合った具体的な対策(例:認知行動療法)を検討できる。専門機関のサポートも受けやすくなる。 偏見の可能性: 職場や周囲からの理解が得られず、偏見を持たれる可能性もゼロではない。
合理的配慮を求めやすい: 診断名があることで、企業に対して合理的配慮(仕事内容や環境の調整)を相談しやすくなる。障害者雇用枠での就職・転職も視野に入れられる。 精神障害者保健福祉手帳の取得検討: 手帳取得には診断が必要だが、取得自体に抵抗を感じる人もいる。
服薬による症状改善: 医師の判断のもと、ADHDの特性による不注意や衝動性などを軽減する薬物療法を検討できる場合がある。これにより、仕事のパフォーマンスが向上する可能性もある。 自分自身の受け止め: 診断名が付くことにショックを受けたり、病気として認識することに抵抗を感じたりする人もいる。

診断を受けるかどうかは個人の判断ですが、「仕事でどうしても困っている」「自分の特性を理解し、対策を立てたい」と考えている場合は、一度専門医に相談してみる価値は大きいと言えます。

精神障害者保健福祉手帳と仕事

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患(ADHDを含む)により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方が取得できる手帳です。仕事においては、この手帳を持っていることで、障害者雇用枠に応募できる、公共職業訓練で優遇措置を受けられる、就職活動で企業に障害への理解を求めやすい、などのメリットがあります。

手帳の取得には、ADHDの診断を受けていること、その障害の状態が一定の基準を満たしていること、初診日から6ヶ月以上経過していることなどが条件となります。手帳を取得するかどうかも本人の意思によりますが、仕事上の困難が大きく、障害者雇用枠を検討したい場合は、取得を検討する価値があります。手帳取得に関する詳細は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や精神保健福祉センターに相談できます。

adhdの仕事に関する悩み、どこに相談できる?

ADHDの特性による仕事の悩みは、一人で抱え込まずに専門家や支援機関に相談することが非常に重要です。様々な相談先がありますので、自分に合った場所を選んで利用しましょう。

相談先 相談内容・できること
医療機関・専門医 ADHDの診断、特性に関する医学的な説明、服薬治療の検討、仕事上の困難に対する医学的なアドバイス。診断書の発行(合理的配慮の依頼や手帳申請に必要となる場合がある)。必要に応じて、他の専門機関(カウンセラー、リハビリテーション施設など)を紹介してくれることも。
就労移行支援事業所 一般企業への就職を目指すための訓練(ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーションなど)やサポート。自己分析、適職探し、求人紹介、応募書類作成支援、面接練習、職場体験、就職後の定着支援など。ADHDなど発達障害に特化したプログラムを持つ事業所もある。
障害者就業・生活支援センター 障害のある方の仕事と生活の両面をサポートする機関。就職に関する相談、就職後の職場定着に関する相談、仕事と生活のバランスに関する相談、利用できる支援制度の情報提供など。地域の様々な支援機関との連携も行っている。
転職エージェント(障害者専門含む) 求人紹介、応募書類添削、面接対策など、一般的な転職支援。特に障害者専門のエージェントは、ADHDの特性に理解があり、特性に合った求人紹介や企業への配慮の交渉などをサポートしてくれる。
ハローワーク(専門窓口) 求人紹介、就職に関する相談、障害者雇用枠の求人情報提供、就労移行支援など関連機関の情報提供。
地域若者サポートステーション 15歳〜49歳までの、働くことに踏み出したい若者を対象に、様々な相談や支援を行う機関。キャリアコンセリング、コミュニケーション訓練、職場体験など。発達障害などによる生きづらさを抱える若者も利用できる。
ADHD当事者会・家族会 同じような特性を持つ仲間と悩みを共有したり、具体的な工夫や体験談を聞いたりできる場。精神的な安心感を得られる。

adhdの特性を理解し、自分に合った働き方を目指そう

ADHDの特性は、仕事において不注意によるミス、集中困難、衝動的な行動、計画性のなさなど、様々な困難を引き起こす可能性があります。これにより、「仕事ができない」「仕事が続かない」と悩み、自信を失ってしまう方も少なくありません。

しかし、ADHDの特性は、興味関心への過集中、発想力、行動力といった、仕事で強みになりうる側面も持ち合わせています。重要なのは、自分の特性を正しく理解し、その特性が活かせる仕事や環境を見つけること、そして特性による困難を軽減するための具体的な対策や働き方の工夫を取り入れることです。

自分に合った仕事を見つけるためには、単に職種名で判断するのではなく、具体的な業務内容や職場環境が自分の特性に合っているかを吟味することが大切です。クリエイティブな仕事、変化の多い仕事、一人で集中できる仕事、体を動かす仕事など、様々な選択肢があります。また、現在の職場で働き続ける場合でも、集中できる環境作り、タスク・スケジュール管理方法の改善、ミスを防ぐ工夫、コミュニケーションの調整など、実践できる対策は多くあります。

もし、仕事の悩みが行き詰まったり、自分に合った働き方が見つけられなかったりする場合は、一人で抱え込まずに専門機関に相談してください。医療機関、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、障害者専門の転職エージェントなど、あなたの特性や状況に合わせて、仕事探しや働き方の工夫、必要なサポートについて具体的なアドバイスを受けることができます。診断を受けることや、障害者雇用枠を検討することも、自分らしく働くための大切な選択肢となり得ます。

ADHDの特性はあなたの一部であり、決してネガティブなものだけではありません。自分の特性を理解し、向き合い、適切なサポートや工夫を取り入れることで、仕事における困難を乗り越え、あなたの強みを活かせる働き方を実現することは十分に可能です。この記事が、ADHDと共に働くあなたが、前向きに仕事と向き合い、自分に合った道を見つけるための一助となれば幸いです。

免責事項: 本記事はADHDの特性と仕事に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の状況に関しては、必ず専門の医療機関にご相談ください。また、紹介している対策や支援機関は、すべての個人に同様の効果や利用を保証するものではありません。

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