ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つ方にとって、日々のスケジュール管理やタスク消化は大きな課題となることがあります。「やらなければいけないことは分かっているのに、つい忘れてしまう」
「複数の予定が頭の中でごちゃごちゃになってしまう」
「気がつくと締め切り直前になっている」
といった経験はありませんか?これらの困りごとの解決策の一つとして、「adhd 手帳」の活用が注目されています。この記事では、ADHDの特性に寄り添った手帳の選び方、具体的な使い方、そして何よりも大切な「続けるためのコツ」について、詳しく解説します。あなたにとって最適な手帳を見つけ、日々の困りごとを少しでも軽減させるヒントを見つけましょう。
ADHDの特性は、時間管理やタスク管理に特有の困難さをもたらすことがあります。手帳は、これらの特性による困りごとを軽減するための強力なツールとなり得ます。
adhd の主な特性とは
ADHDは発達障害の一つであり、主に以下の3つの行動特性が組み合わさって現れます。その現れ方や程度は人によって大きく異なります。
- 不注意: 集中力が持続しにくい、気が散りやすい、忘れ物やなくし物が多い、細部に注意を払うのが難しい、整理整頓が苦手、指示を聞き漏らす、といった特徴があります。
- 多動性: 落ち着きがない、じっとしているのが苦手、貧乏ゆすりをする、過度に話しすぎる、といった体の動きに関する特徴です。(成長と共に目立たなくなることもあります)
- 衝動性: 思いつきで行動してしまう、順番を待つのが苦手、他人の話を遮る、感情をコントロールしにくい、といった言動に関する特徴です。
これらの特性は、日常生活や仕事、学業において、スケジュール管理やタスク実行の妨げとなることがあります。
adhd にとって手帳が必要な理由
ADHDの特性により、脳内の情報処理や管理機能が効率的に働きにくい場合があります。これは、脳の実行機能(計画、整理、開始、維持、自己制御などに関わる機能)に関連していると考えられています。手帳は、この働きを補完する「外部記憶ツール」として機能します。
- 情報の整理・可視化: 頭の中だけで管理しきれない膨大な情報(予定、タスク、アイデア)を書き出すことで、整理し、目に見える形にできます。これにより、「何をいつまでにやるべきか」が明確になります。
- 時間感覚のサポート: ADHDの特性として、時間の経過を捉えにくい「時間盲」と呼ばれる状態になることがあります。手帳に時間を書き込むことで、視覚的に時間の流れや残り時間を意識しやすくなります。
- 忘れ物・抜け漏れの防止: 予定や必要な持ち物を書き出すことで、うっかり忘れてしまうリスクを減らせます。チェックリスト機能を使えば、抜け漏れを防ぐことができます。
- 注意の転換サポート: 一つのことに集中しすぎて他のことを忘れてしまったり、逆に注意が次々と移ってしまったりする場合でも、手帳を見返すことで、今やるべきことや次の予定に意識を戻しやすくなります。
- 自己管理能力の向上: 手帳を活用するプロセス(書き出す、見返す、チェックする)を通じて、計画力や実行力といった自己管理スキルを養うことにつながります。
adhd の困りごとと手帳で解決できること
ADHDの特性による具体的な困りごとと、手帳を活用することで期待できる解決策の例を表にまとめました。
ADHDの特性による困りごと | 手帳での解決策 |
---|---|
約束や締め切りを忘れてしまう、ダブルブッキング | 全ての予定を手帳に書き込む(一元管理)、リマインダーとして活用する |
やるべきタスクが多すぎて何から手をつければ良いか分からない、タスクの抜け漏れ | ToDoリストを作成し、全て書き出す。優先順位をつけたり、ステップに分解して書く。 |
時間の見積もりが苦手で、いつも時間が足りなくなる | 各タスクにかかる時間を予測して書き込む、休憩時間や移動時間も考慮してスケジュールを組む |
マルチタスクが苦手で、同時に複数のことをこなせない | 一度に一つか二つのタスクに絞り、完了したらチェックして次へ移る |
必要な持ち物や準備を忘れてしまう | 予定の近くに持ち物リストを書き出す、チェックリストを作成する |
衝動的に行動してしまい、後で後悔する | 衝動的な行動の前に一度手帳を見て、今日の予定やタスクを確認する時間を持つ |
部屋やデスクの整理整頓が苦手で、物が見つからない | 手帳を「情報の定位置」として活用し、重要なメモやアイデアを書き留める |
手帳はあくまでツールですが、適切に活用することで、ADHDの特性からくる様々な困難に対処し、より円滑な日常生活や活動を送ることが期待できます。
ADHDの特性は人それぞれ異なるため、「これが唯一の正解」という手帳はありません。自分に合った一冊を見つけるためには、いくつかのポイントを踏まえて選ぶことが大切です。
adhd 向け手帳選びの基本的な考え方
手帳選びの最初のステップは、あなたの「最も困っていること」や「手帳で何を解決したいか」を明確にすることです。
- 目的の明確化: スケジュール管理が苦手なのか?タスクの抜け漏れが多いのか?時間の見積もりができないのか?それとも、アイデアを整理したいのか?目的に合わせて必要な機能やレイアウトが変わってきます。
- トライ&エラーを恐れない: 最初から完璧な手帳を見つけようとせず、いくつか試してみるつもりで選びましょう。使ってみて合わないと感じたら、別のタイプに切り替える柔軟さも大切です。
- カスタマイズの可能性: 後から機能を追加したり、自分なりの使い方にアレンジしやすいかどうかも考慮しましょう。付箋やクリップ、色ペンなどを活用しやすいシンプルな構造の手帳も人気があります。
- 「継続できるか」を重視: 機能が豊富すぎたり、書くスペースが広すぎたりすると、かえって負担になり、挫折の原因になることがあります。無理なく続けられる量と形式を選びましょう。
adhd 向け手帳のサイズとレイアウト
サイズとレイアウトは、使いやすさに直結する重要な要素です。
- サイズ:
- 携帯性重視(A6、B6など小さめ): 外出先でこまめに確認・記入したい方、荷物を最小限にしたい方におすすめです。ただし、書き込めるスペースは限られます。
- 書き込み重視(A5、B5など大きめ): デスクワークが多い方、詳細な情報や多くのタスクを書き込みたい方におすすめです。一覧性が高まりますが、持ち運びには不便を感じるかもしれません。
- 判断基準: どこで手帳を使うことが多いか(自宅、職場、外出先)、どれくらいの情報を書き込みたいかで選びましょう。
- レイアウト:
- マンスリー: 月全体の予定を俯瞰するのに適しています。シンプルなため、書き込むのが苦手な方や、まずは大まかな予定だけ管理したい方に向いています。詳細なタスク管理には不向きです。
- ウィークリー(横罫線タイプ): 1週間を見開きで見られます。各曜日に予定や簡単なタスクを書き込めます。バランス型で、多くの手帳で採用されています。
- ウィークリー(バーチカルタイプ): 1日を時間軸で縦に分割したレイアウト。時間の流れを視覚的に把握しやすく、「時間盲」を感じやすい方におすすめです。会議やアポイントなど、開始時間が決まっている予定が多い方に向いています。空き時間も把握しやすいです。
- デイリー: 1日1ページ(または見開き2ページ)を使うレイアウト。詳細なタスクリストやメモ、その日の出来事などをたっぷり書き込めます。タスク管理を徹底したい方、日々の記録をつけたい方に向いていますが、厚みが出やすく、持ち運びには不便な場合があります。
- その他のレイアウト(ブロック、セパレートなど):
- ブロックタイプ: 週間予定を時間軸ではなくブロックで区切ったもの。比較的自由度が高く、タスクと予定を分けて書くなどアレンジしやすいです。
- セパレートタイプ: バーチカルとフリースペースが組み合わされているものなど、複数の要素が分かれて配置されているもの。情報を整理しやすいですが、複雑に感じてしまう場合もあります。
レイアウトを選ぶ際は、普段あなたがどのように情報を整理し、時間を使っているかを振り返ってみましょう。時間軸を意識したいか、タスクをリストアップしたいか、自由にメモを書きたいか、などがヒントになります。
adhd 向け手帳の機能とデザイン
手帳の機能やデザインも、継続して使う上でモチベーションや使いやすさに影響します。
- 機能:
- To Doリスト欄: あらかじめTo Doリストを書くスペースがあると、タスク管理がしやすくなります。チェックボックス付きだと達成感が得やすいです。
- フリースペース/メモ欄: 思いついたこと、アイデア、重要な情報などを書き留めるスペースがあると便利です。
- インデックス/しおり紐: 見たいページをすぐに開けるように、インデックス(月や週の境目)やしおり紐があると便利です。複数本あると、現在週としおりたいページを分けておけます。
- ポケット: 名刺やレシート、切符などを一時的に挟んでおけるポケットがあると、なくし物を防げます。
- ペンホルダー: ペンを常に手帳と一緒に持ち運べるため、いつでも書き込める状態にしておけます。
- 用紙の質: 裏写りしにくいか、書き心地が良いか、インクが滲まないかなど、紙の質も使い心地に影響します。
- デザイン:
- シンプル or カラフル: 情報量が多いデザインやカラフルすぎるものは、気が散りやすい方には向かない場合があります。シンプルなデザインの方が集中できるかもしれません。逆に、視覚的な刺激があった方がモチベーションが上がる方もいます。
- カバー: 触り心地や見た目の好み、耐久性などで選びましょう。
- フォント/罫線: 見やすいフォントサイズか、罫線が濃すぎないかなども、日々の使いやすさに関わります。
機能やデザインは、自分の特性や好みに合わせて選びましょう。
adhd 大人向けの手帳選びのポイント
社会生活を送るADHDの大人の方が手帳を選ぶ際には、仕事とプライベートの両立、多様な情報管理などを考慮する必要があります。
- 複数の役割に対応できるか: 仕事のタスク、家庭の用事、プライベートの予定など、複数の種類の情報を一元管理できるか、あるいは情報を分けて書き込めるスペースがあるか。
- フォーマルな場面での使用: 職場などで使う場合、周囲から見て違和感のない、ある程度フォーマルなデザインやサイズを選ぶ必要もあるかもしれません。
- 他のツールとの連携: スマートフォンやPCのカレンダー、タスク管理アプリなど、既に使っているデジタルツールとの連携を前提とするか、手帳だけで完結させたいか。手帳で大まかに管理し、詳細はデジタルツールで補完するなど、使い分けを検討するのも良いでしょう。
- 長期的な視点: 短期的な予定だけでなく、長期的なプロジェクトや目標を管理できるページ(年間カレンダー、プロジェクト管理ページなど)があるかどうかも役立ちます。
adhd 子供向けの手帳選びのポイント
ADHDのお子さんが手帳を使う場合、親や周囲の大人のサポートが不可欠です。手帳選びも、子供が無理なく、そして楽しく使えるものが望ましいです。
- シンプルで分かりやすい構造: 複雑なレイアウトよりも、1日の流れや簡単なタスクが視覚的に把握しやすいシンプルなものが良いでしょう。
- 書き込むスペースの確保: まだ文字を書くのが得意でなくても、絵や記号で表現したり、親が代筆したりすることも想定し、ある程度書き込めるスペースが必要です。
- 視覚的な楽しさ: キャラクターものや、好きな色、シールなどでデコレーションしやすいデザインなど、子供の興味を引く工夫があると、使うモチベーションにつながります。
- 親子や先生との連携: 親や先生が一緒に手帳を見て、励ましたり、一緒に書き込んだりする機会を持つためにも、コミュニケーションツールとしての側面も考慮しましょう。
- 成功体験を積めるデザイン: チェックボックスなど、できたことが分かりやすい仕組みがあると、達成感を感じやすくなります。
お子さんの発達段階や興味に合わせて、一緒に手帳を選んでみましょう。
手帳を選んだら、次は実際に使ってみることが大切です。ADHDの特性を考慮した具体的な使い方や活用術を知ることで、より効果的に手帳を役立てることができます。
adhd のためのスケジュール管理
スケジュール管理は、手帳の最も基本的な機能の一つです。ADHDの方が時間を効率的に使うための工夫を紹介します。
- 全ての予定を書き込む(一元管理): どんな小さな予定でも、思いついたことはすぐに手帳に書き込みましょう。仕事の会議、病院の予約、友人との約束、子供の学校行事など、全ての情報を一つの手帳に集約することで、「あれ?この予定どこに書いたっけ?」という混乱を防ぎます。
- 具体的な情報を書き添える: 予定のタイトルだけでなく、「誰と?」「どこで?」「何を持っていく?」など、必要な情報を具体的に書き添えましょう。特に場所や持ち物は忘れやすいため、セットで書き込む習慣をつけると良いです。
- 色分けやマーカーを活用する: 予定の種類(仕事、プライベート、家族)や重要度に応じて色分けをすることで、視覚的に分かりやすくなります。重要な予定にはマーカーを引くなど、目立たせる工夫も有効です。
- 移動時間や準備時間も考慮する: 予定と予定の間には、移動時間や次の準備をするための時間を忘れずに確保しましょう。「時間盲」の特性があると、これらの時間を見積もるのが苦手な場合があります。実際にかかる時間よりも少し長めにバッファを取っておくと安心です。
- 定期的に見返す習慣をつける: 書くだけでなく、定期的に(朝起きたら、寝る前、週の初め、週の終わりなど)手帳を見返す時間を持ちましょう。これにより、直近の予定や、迫っている締め切りを意識できます。
- デジタルツールとの連携: 手帳に書いた重要な予定は、スマートフォンのカレンダーアプリにも入力し、リマインダー機能を活用すると、さらに忘れ物を防げます。手帳は全体像や詳細なメモ、デジタルはリマインダーというように使い分けることも可能です。
adhd のためのタスク管理(todoリスト)
やるべきことを整理し、実行するためには、効果的なタスク管理が欠かせません。手帳のTo Doリスト機能を最大限に活用しましょう。
- タスクを全て書き出す: 頭の中で「やらなきゃ」と思っていることを、まずは全て手帳のTo Doリストやメモ欄に書き出しましょう。これにより、頭の中が整理され、漠然とした不安が軽減されます。
- タスクを細かく分解する: 一つの大きなタスクを、実行可能な小さなステップに分解しましょう。例えば、「企画書作成」なら「情報収集」「構成を考える」「本文を書く」「資料を集める」「見直し」のように分解します。小さくすることで、どこから手をつければ良いかが明確になり、取り掛かりやすくなります。
- 優先順位をつける: 書き出したタスクに、重要度や緊急度に応じて優先順位をつけましょう。「今日中にやるべきこと」「今週中にやるべきこと」「いつかやりたいこと」のようにリストを分けたり、記号や色で優先順位を示したりするのも効果的です。
- 完了したら「見える化」する: タスクが完了したら、リストにチェックを入れたり、線を引いたり、マーカーで塗りつぶしたりして、「できた!」を視覚的に示しましょう。この「完了」の見える化は、達成感につながり、次のタスクへのモチベーションになります。
- 未完了タスクの扱い: 全てをこなせなくても落ち込まないことが大切です。未完了のタスクは、次の日や次の週のリストに移動させましょう。定期的にリストを見直し、不要になったタスクは削除する整理も必要です。
- タスクにかかる時間を予測して書く: 各タスクの横に、完了までにかかる時間を予測して書き込んでみましょう。これにより、1日にどれくらいのタスクをこなせるかの目安が立ち、無理のない計画を立てやすくなります。(予測が難しくても、練習することで精度が上がってきます)
adhd のための時間管理
「時間盲」の特性がある場合、時間管理は特に難しいと感じるかもしれません。手帳を活用して、時間感覚を養い、意識的に時間を使う練習をしましょう。
- バーチカル式で時間の流れを意識する: バーチカル式の手帳は、1日の時間軸が目で見て分かりやすいため、時間の使い方を計画したり、振り返ったりするのに役立ちます。予定だけでなく、タスクに取り組む時間や休憩時間もブロックで書き込んでみましょう。
- 「タイムボックス」で区切る: 「このタスクは〇時~〇時まで」のように、時間で区切って取り組む「タイムボックス」という手法を手帳に取り入れてみましょう。集中力が持続しにくい場合でも、「この時間だけ頑張る」という意識で取り掛かりやすくなります。
- 実際にかかった時間を記録する: 予定やタスクにかかった時間を手帳に記録してみましょう。これにより、時間の見積もり能力を高めることができます。「思っていたより時間がかかった」「意外と早く終わった」といった気づきは、今後の計画に活かせます。
- デッドラインを視覚的に強調する: 締め切りがあるタスクは、手帳の該当日に大きく書き込んだり、派手な色のマーカーで囲んだりして、デッドラインを強く意識できるようにしましょう。
- 休憩時間もスケジュールに組み込む: 集中力を維持するためには、適切な休憩が必要です。休憩時間もあらかじめ手帳に組み込んでおきましょう。
adhd 向け手帳を使った情報の整理・記録
スケジュールやタスクだけでなく、様々な情報を手帳にまとめておくことで、頭の中を整理し、必要な時にすぐに情報を取り出せるようになります。
- 重要な情報のリスト化: よく使うパスワードのヒント、連絡先、健康診断の結果、保険の情報など、必要な時にすぐに見たい情報を手帳の巻末のメモページや、別途ノートを挟むなどしてまとめておきましょう。
- アイデアやひらめきの記録: ふと思いついたアイデアや、調べたいこと、行きたい場所などをすぐに書き留められるように、常に手帳を開ける状態にしておきましょう。衝動性で色々なことに興味が移りやすい特性を、アイデア収集に活かすことができます。
- 感情や体調の記録: 日々の感情や体調を簡単に記録することで、自分のパターン(どんな時に調子が良いか、どんな時に集中できるかなど)を把握するヒントになります。
- 達成リストの作成: 完了した大きなタスクや、成功したことなどをリストアップするページを作りましょう。振り返った時に「こんなにできた!」と自信につながり、モチベーションを維持するのに役立ちます。
- 読んだ本や見た映画の記録: 興味を持ったことを忘れないように、読書リストや映画リストを作成するのも良いでしょう。
手帳を「外部の脳」として活用し、頭の中で抱え込みがちな情報を全て書き出すことで、脳の負担を減らし、今やるべきことに集中しやすくなります。
様々なレイアウトがある手帳の中から、ADHDの特性に比較的合いやすいとされる代表的なタイプをいくつかご紹介します。ただし、これもあくまで「合う人が多い傾向がある」というものであり、最終的にはご自身の特性やライフスタイルに合わせて試してみることが重要です。
バーチカル式手帳
特徴: 1日の時間軸が縦に並んでおり、時間を区切って予定やタスクを書き込む形式です。多くは見開き1週間タイプです。
ADHD特性との関連:
- メリット: 時間の流れが視覚的に分かりやすいため、「時間盲」を感じやすい方にとって、時間の使い方を把握しやすいという大きなメリットがあります。予定と予定の間の空き時間や、特定の時間帯に何をしていたか(またはする予定か)が一目で確認できます。
- デメリット: 時間に縛られているように感じたり、計画通りに進まなかった場合に空白や修正が多くなって嫌になってしまったりする可能性があります。また、時間軸以外のフリースペースが少ない場合もあります。
向いている方: アポイントや会議など、時間が決まっている予定が多い方、時間の流れを意識的に把握したい方、計画通りに進める練習をしたい方。
デイリー式手帳
特徴: 1日あたり1ページ、または見開き2ページを使って、詳細な予定やタスク、メモなどをたっぷり書き込めます。
ADHD特性との関連:
- メリット: 1日のタスクを細かく分解して書き込めるスペースが十分にあるため、タスク管理を徹底したい方に向いています。また、その日にあった出来事や気づきなどを自由に書き留めるメモ帳としての機能も高いです。完了したタスクにチェックを入れるなど、「できたこと」を視覚的に積み重ねやすい形式です。
- デメリット: 手帳が厚く、重くなりがちで、持ち運びには不便を感じることがあります。また、毎日書く量が多いため、負担に感じて挫折しやすいという側面もあります。月や週全体の予定を俯瞰するには、別途マンスリーページなどが必要になります。
向いている方: 詳細なタスク管理や日々の記録を重視したい方、書く量が多い方、主に自宅や職場で手帳を使う方。
その他のレイアウト(ブロック、セパレートなど)
上記以外にも、様々な工夫が凝らされた手帳があります。
- マンスリー式手帳:
- 特徴: 見開き1ヶ月で、日付がブロック状に並んでいます。
- ADHD特性との関連: 全体像を掴むのは得意ですが、詳細な時間管理やタスク管理には不向きです。まずは大まかな予定だけ把握したいという方にはシンプルで使いやすいかもしれません。
- ブロック式手帳:
- 特徴: 週間予定が時間軸ではなく、フリースペースに近いブロックで構成されています。
- ADHD特性との関連: 使い方にある程度の自由度があるため、自分なりに情報を整理しやすいというメリットがあります。タスクリストと簡単な予定を分けて書くなど、アレンジが可能です。
- セパレート式手帳:
- 特徴: バーチカルと横罫線、To Doリスト欄とメモ欄などが独立して配置されているなど、複数の情報が分かれて書けるよう工夫されています。
- ADHD特性との関連: 情報を整理して書き込めるため、頭の中が混乱しやすい方には向いている場合があります。ただし、レイアウトが複雑すぎると、かえって分かりにくく感じてしまうこともあります。
デジタルツールとの併用
手帳(アナログツール)とデジタルツール(スマートフォン、PC)を組み合わせて活用するのも非常に効果的です。
- 手帳の役割: 全体像の把握、詳細なメモ、手書きによる思考整理、アイデア出し、振り返りなど、アナログならではの良さを活かします。
- デジタルツールの役割: リマインダー設定、繰り返しの予定登録、情報の検索、共有、自動バックアップなど、デジタルならではの機能で手帳を補完します。
- 使い分けの例:
- 大まかな予定は手帳のマンスリーに書き、確定した予定はスマホのカレンダーにも入れてリマインダーを設定する。
- 手帳のバーチカルで1日の時間配分を計画し、個別のタスク管理はTo Doリストアプリで行う。
- 手帳にアイデアやメモを書き、後から重要な情報だけデジタルで整理・保存する。
アナログとデジタルの良いところを組み合わせることで、より柔軟で強力な自己管理システムを構築できます。どちらか一方にこだわる必要はありません。
ADHDの特性として、新しい習慣を始めるのは得意でも、それを継続するのが難しいと感じる方が多くいらっしゃいます。「手帳を買ったものの、結局使わなくなってしまった…」という経験がある方もいるかもしれません。手帳を継続して活用するための具体的な工夫やコツを紹介します。
adhd で手帳が続かない原因
まずは、なぜ手帳が続かないのか、その原因を探ってみましょう。原因が分かれば、対策を立てやすくなります。
- 完璧主義になってしまう: 綺麗に書こうとしすぎる、毎日完璧に埋めようとする、失敗した箇所を気にしてしまうなど、完璧を目指すあまり、少しうまくいかないと「もうダメだ」と諦めてしまう。
- 飽きやすい、興味が移りやすい: 新しい手帳には興味を持っても、しばらくすると飽きてしまい、他のことに気が移ってしまう。
- 書くこと自体が面倒に感じる: 予定やタスクを書き出すプロセスが億劫に感じてしまい、後回しにしてしまう。
- 手帳を見返す習慣がない: 予定やタスクを書き込んだだけで満足してしまい、実際に手帳を開いて確認することを忘れてしまう。
- 手帳が自分の特性に合っていない: 選んだ手帳のレイアウトや機能が、自分の困りごとや使い方にフィットしていない。
- ネガティブな感情と結びついてしまう: 手帳を見ることで「これもできてない」「あんなに書いたのに終わらない」といったネガティブな気持ちになり、手帳から距離を置くようになる。
- 外からのサポートがない: 手帳を使うことの重要性や使い方について、家族や友人、専門家など、周囲からのサポートや理解が得られない。
これらの原因を踏まえて、続けるための具体的な対策を講じましょう。
adhd 向け手帳を習慣化するコツ
手帳を日々の習慣として定着させるための具体的なステップや工夫です。
- 「スモールステップ」で始める: 最初から全ての予定やタスクを手帳で管理しようとせず、まずは「今日の最も重要なタスクを3つだけ書く」「夜寝る前に明日の午前中の予定だけ確認する」など、小さなことから始めましょう。
- 特定の「時間」や「場所」と紐づける: 「朝食を食べたら手帳を開く」「会社に着いたらデスクで手帳を見る」「寝る前にベッドサイドでその日を振り返る」など、既に習慣になっている行動と手帳を開くことをセットにすると、忘れにくくなります。
- 手帳を常に「視界に入る場所」に置く: デスクの上やリビングテーブルの上など、自然と目に入る場所に手帳を置いておきましょう。しまってしまうと、存在を忘れてしまう可能性があります。
- 書くことを「ご褒美」と結びつける: 手帳に書き込んだら好きなお茶を飲む、To Doリストを3つクリアしたら休憩するなど、書くことや手帳を活用することに小さな報酬を設定するのも効果的です。
- 楽しむ工夫を取り入れる: 好きなデザインの手帳を選ぶだけでなく、お気に入りのペンを使う、シールやスタンプでデコレーションするなど、手帳を使うプロセスそのものを楽しいものにする工夫をしてみましょう。
- 「見える化」で達成感を得る: To Doリストの完了にチェックを入れる、終わった予定にマーカーを引くなど、「できたこと」を視覚的に確認することで、達成感を感じやすくなります。
- 他人(信頼できる人)に宣言する・見せる: 家族や親しい友人など、信頼できる人に「手帳を使うことにしたよ!」「今日のタスク、これだけできた!」などと話したり、手帳を見せたりすることで、モチベーションを維持できる場合があります。(抵抗がある場合は無理にする必要はありません)
- 使う目的を定期的に見直す: なぜ手帳を使うのか、当初の目的を定期的に思い出しましょう。「困りごとを減らしたい」「もっと時間を有効に使いたい」といった目的を意識することで、続ける意義を感じられます。
完璧を目指さない重要性
手帳活用において、最も重要な心構えの一つが「完璧を目指さない」ことです。
- 空白があっても気にしない: 手帳に何も書き込めない日があっても、計画通りに進まなくても、それは悪いことではありません。空白があっても、修正テープや二重線で消すことになっても、「まあ、こんな日もあるよね」と受け流しましょう。
- 「書かなきゃ」というプレッシャーを減らす: 全ての予定やタスクを詳細に書く必要はありません。まずは最も重要なことだけ、簡単なメモだけでも構いません。書くこと自体のハードルを下げましょう。
- 失敗しても「また明日から始めよう」: 手帳を数日間開けなかったり、全く書けなかったりしても、「もうダメだ」と諦めるのではなく、「また明日から少しずつ始めよう」と気持ちを切り替えることが大切です。挫折は誰にでもあります。そこからどう立ち直るかが重要です。
- 手帳は「支援ツール」と捉える: 手帳はあなたを縛るものではなく、あなたの困りごとをサポートしてくれるツールです。完璧に使いこなすこと自体が目的ではなく、手帳を使って日々の困りごとが少しでも軽減されることが目的です。
- 自分に合った使い方を見つけるプロセスを楽しむ: 最初から理想的な使い方は見つからないかもしれません。色々な書き方やレイアウトを試しながら、自分にとって最も使いやすく、続けやすい方法を探すプロセスそのものを楽しむくらいの気持ちで取り組みましょう。
完璧主義を手放し、「まあ、いっか」という気持ちで手帳に向き合うことが、長期的な継続には不可欠です。
ADHDの特性によるスケジュール管理やタスク管理の困難さは、日々の生活において大きなストレスとなることがあります。しかし、「adhd 手帳」は、これらの困りごとを軽減するための有効なツールとなり得ます。
この記事では、ADHDの特性を踏まえた上で、なぜ手帳が必要なのか、自分に合った手帳をどのように選ぶのか、具体的な使い方や活用術、そして何よりも手帳を継続して使うための工夫やコツについて解説しました。
重要なのは、手帳はあくまであなたの困りごとをサポートするための「ツール」であるということです。完璧に使いこなすこと自体が目的ではありません。ご自身の特性やライフスタイルに合わせて、色々な手帳や使い方を試しながら、あなたにとって最も心地よく、そして効果的な方法を見つけていくプロセスそのものが大切です。
もし、手帳を活用しても困りごとがなかなか解決しない場合や、日々の生活に大きな支障が出ている場合は、一人で抱え込まず、医療機関や専門機関に相談することも検討してみてください。ADHDの診断や、より専門的な支援を受けることで、困りごとへの対処法が見つかることもあります。
手帳が、あなたの毎日を少しでもスムーズにし、自信を持って過ごすための一助となることを願っています。今日から小さな一歩を踏み出してみましょう。
免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。ADHDの診断や治療については、必ず医療機関にご相談ください。手帳はあくまで自己管理をサポートするツールであり、医療行為や治療代替となるものではありません。手帳の効果には個人差があります。
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