生命保険に加入する際、健康状態について正しく告知する義務があります。
もし過去にうつ病の治療を受けたり、心療内科に通院した経験があったりする場合、「正直に申告したら保険に入れないのでは?」と不安に感じ、告知しない方が良いのではと考えてしまうかもしれません。
しかし、告知義務に違反すると、将来保険が必要になったときに大きな不利益を被る可能性があります。
「うつ病の通院歴は保険会社にバレるのか?」「もしバレたらどうなるのか?」といった疑問について、ここでは詳しく解説していきます。
生命保険の告知義務とは?うつ病・心療内科の申告について
生命保険に加入する際には、契約者や被保険者には「告知義務」というものが課せられます。
これは、現在の健康状態や過去の傷病歴、職業、告知項目に該当する収入などを保険会社に正確に申告する義務のことです。
保険会社は、この告知内容に基づいて、加入の可否や保険料、保障内容などを決定します。
この告知義務の対象となる傷病歴には、うつ病やその他の精神疾患、心療内科への通院歴なども含まれます。
保険会社が用意する告知書には、一般的に過去数年以内(例えば過去2年以内や過去5年以内など、保険会社や商品によって異なります)の病歴や手術、入院、通院、投薬の状況などを尋ねる項目があります。
うつ病で通院したり、処方された薬を服用したりしていた場合は、原則としてこの告知項目に該当するため、正直に申告する必要があります。
告知を求められるのは、保険会社が加入者のリスクを正しく評価するためです。
特定の病気や治療歴があると、将来保険金や給付金の支払いが発生する可能性が高まると判断されることがあります。
そのため、告知内容によっては、標準的な条件では加入が難しくなったり、特定の病気については保障の対象外とする「部位不担保」などの特別条件が付いたりする場合があります。
告知書は、あくまでも加入者の自己申告に基づいて作成されます。
しかし、だからといって事実と異なる内容を告知したり、告知すべき事項を意図的に申告しなかったりする「告知義務違反」は絶対に避けるべきです。
うつ病や心療内科の通院歴はなぜ保険会社にバレるのか?
「心療内科に少し通っただけ」「もう治っているから大丈夫だろう」と考えて、うつ病や心療内科の通院歴を告知しなかった場合、保険会社にその事実がバレる可能性は十分にあります。
では、具体的にどのようなタイミングで、どのような情報から保険会社はその事実を把握するのでしょうか。
生命保険会社が病歴を調査するタイミング
保険会社が告知内容の真偽を確認したり、被保険者の正確な健康状態を把握したりする主なタイミングは以下の通りです。
- 保険契約の申込時: 告知書の内容や診査(健康診断、医師の診察など)の結果に基づいて、保険会社はリスクを評価します。ここで疑義が生じたり、告知内容だけでは判断が難しかったりする場合に、追加の確認が行われることがあります。ただし、この時点では全ての申込者について詳細な過去の病歴を徹底的に調べるわけではありません。
- 保険金・給付金の請求時: これが最も多く、かつ詳細な調査が行われるタイミングです。被保険者が病気やケガで保険金や給付金を請求すると、保険会社はその原因となった病気やケガが、加入時の告知内容と矛盾しないかを確認します。特に、契約から短い期間で請求が発生した場合や、告知していなかった病気が原因で請求している場合などは、詳細な調査が行われる可能性が高まります。
- 契約内容の変更時: 保障内容の増額など、契約内容を変更する際にも改めて健康状態の告知や確認が必要になることがあります。
告知義務違反が発覚するのは、多くの場合、この「保険金・給付金の請求時」です。
保険金や給付金を受け取るために、医師の診断書などを保険会社に提出しますが、その診断書の内容と加入時に提出した告知書の内容に矛盾があると、保険会社は疑念を抱き、調査を開始します。
医療機関への照会(医師への確認)について
保険会社が告知内容の確認や保険金・給付金の支払審査のために、医療機関に被保険者の診療記録や治療内容について照会(確認)することはよく行われます。
ただし、保険会社が医療機関に無断で照会することはなく、必ず被保険者本人の同意書が必要になります。
生命保険の申込時や保険金・給付金の請求時には、通常、「保険会社が指定する医師または医療機関に対して、私の健康状態や傷病歴、治療内容などについて照会し、その記録の開示を受けることに同意します」といった内容の同意書への署名を求められます。
この同意書に署名することで、保険会社は、保険の審査や支払いに必要な範囲で、被保険者が受診した医療機関(病院、クリニックなど)から診療記録(カルテなど)や診断書の情報を取得できるようになります。
心療内科や精神科への通院歴を告知していなかった場合でも、例えばうつ病が原因で別の病気(例えば胃潰瘍など、精神的なストレスが関連する病気)になり入院して給付金を請求した際などに、医療機関からの情報提供によって過去の心療内科への通院やうつ病の治療歴が明らかになることがあります。
また、請求原因となった病気とは直接関係なくても、過去の重要な病歴として診療記録に残っている情報が保険会社に伝わる可能性もあります。
同意書は、保険会社が保険契約を適正に運営し、保険金・給付金の支払いを公正に行うために必要な手続きです。
告知義務違反を隠すために同意書の提出を拒否することはできませんし、提出を拒否すれば保険契約の締結や保険金・給付金の支払いが滞る、あるいは拒否される原因となります。
傷病手当金などの公的制度の利用履歴
うつ病などの精神疾患により休職した場合に、健康保険から支払われる「傷病手当金」などの公的制度を利用することがあります。
これらの公的制度の利用履歴が、間接的に保険会社に伝わる可能性もゼロではありません。
例えば、生命保険で「就業不能特約」などを契約しており、うつ病による休職で給付金を請求する場合、傷病手当金の受給証明書などの提出を求められることがあります。
その際に、傷病手当金の支給期間や理由から、うつ病による休職であったことが明らかになることがあります。
また、傷病手当金の申請には医師の診断書が必要であり、その診断書に記載された傷病名や期間が、保険会社が医療機関から取得する情報と照合されることで、告知内容の不備が発覚するきっかけとなることも考えられます。
過去の保険契約・給付金請求履歴
過去に他の保険会社で生命保険や医療保険に加入していた経験がある場合、その契約履歴や給付金請求履歴から病歴が明らかになることもあります。
保険会社は、保険業界内で共有されている情報システムを通じて、過去の保険契約や保険金・給付金の支払いに関する情報を一定の範囲で共有することがあります(ただし、個人情報保護には厳重な配慮がされています)。
特に、過去に告知義務違反で契約を解除された経験がある場合などは、他の保険会社での加入審査にも影響する可能性があります。
また、過去に加入していた医療保険やがん保険などで、うつ病や精神疾患に関連する症状で給付金を請求した履歴がある場合、それが新たな生命保険加入時の告知内容と矛盾することで、告知義務違反が発覚する可能性も考えられます。
これらの様々な経路を通じて、保険会社は告知内容の真偽を確認することができます。
「バレないだろう」と安易に考え、告知義務違反をすることは非常に危険な行為です。
生命保険加入後にうつ病になった場合は?
生命保険に加入する前にうつ病であったり、心療内科に通院していたりした場合は、原則として告知義務の対象となります。
しかし、生命保険に加入した後にうつ病を発症したり、治療を開始したりした場合は、告知義務違反にはなりません。
保険契約は、契約締結時点での被保険者の健康状態に基づいてリスクが評価され、成立します。
契約が有効に成立した後であれば、その後に病気になったり、事故に遭ったりしても、原則として保険金や給付金の支払いの対象となります(責任開始日前の原因によるものや、免責事由に該当する場合などを除く)。
したがって、保険加入後にうつ病になったとしても、告知義務違反として契約を解除されたり、保険金や給付金が支払われなかったりする心配はありません。
ただし、そのうつ病が原因で保険金や給付金を請求する際には、加入後の発症であることを証明するために、医師の診断書などが必要になります。
重要なのは、告知義務は「契約締結時点での事実」について問われるということです。
保険加入後に健康状態が変化しても、それを遡って告知する必要はありません(ただし、特定の特約の追加や保険金額の増額など、契約内容を変更する場合には、その時点での健康状態について改めて告知が必要となる場合があります)。
告知義務違反をするとどうなる?バレた際のリスク
うつ病や心療内科の通院歴など、告知すべき重要な事実を意図的に告知しなかったり、事実と異なる内容を告知したりする「告知義務違反」が発覚した場合、保険契約者や被保険者は非常に重いペナルティを受けることになります。
契約が解除される可能性がある
告知義務違反が発覚した場合、保険会社は保険契約を解除することができます。
これは、保険法によって保険会社に認められている正当な権利です。
契約が解除されると、その保険は最初から存在しなかったかのように無効となります。
契約が解除された場合、以下のような不利益が生じます。
- 支払った保険料が無駄になる: 契約解除の場合、これまで支払ってきた保険料は基本的に返還されません(一部、ごくわずかな解約返戻金が発生する場合もありますが、多くの場合、支払った保険料の総額よりもはるかに少なくなります)。
- 保障が受けられなくなる: 契約は無効となるため、当然ながらその後の保険金や給付金の保障は一切受けられなくなります。
- 新たな保険加入が難しくなる: 告知義務違反で契約を解除された履歴は、他の保険会社での新規加入審査にも影響します。特に、告知義務違反の内容が悪質な場合は、他の保険会社でも加入を断られる可能性が高くなります。
契約解除は、保険会社が告知義務違反の事実を知った時点から、例えば2年以内などの一定期間内に行使されることが一般的です。
また、保険契約から一定期間(例えば2年や3年など、保険会社や商品によって異なります)が経過すると、原則として保険会社は告知義務違反を理由に契約を解除できなくなるという「告知義務違反による解除権の消滅」に関する規定もあります(ただし、詐欺行為など、悪質な場合はこの限りではありません)。
しかし、その期間内であっても、告知義務違反が発覚すれば契約解除のリスクは常に存在します。
保険金や給付金が支払われない
告知義務違反があったことが発覚した場合、たとえ保険事故(病気やケガなど)が発生し、保険金や給付金を請求したとしても、保険会社はその保険金や給付金の支払いを拒否することができます。
特に、告知義務違反をした事実(例えばうつ病の通院歴)と、請求原因となった保険事故(例えばうつ病の悪化による入院)との間に因果関係がある場合は、保険金の支払いはまず行われません。
保険会社は「もし正しく告知されていれば、契約をお引き受けできなかったか、または特別条件をつけてお引き受けしていた」と判断するためです。
因果関係がないと判断された場合でも、告知義務違反の事実が重大であれば、保険契約自体が解除されるため、結果として保険金や給付金は支払われません。
告知義務違反が発覚した場合に保険金が支払われるケースは、告知義務違反の事実がごく軽微であり、かつ請求原因との間に全く因果関係がないと保険会社が判断した場合など、非常に限定的です。
せっかく保険料を払い続けてきたのに、いざという時に最も必要となる保険金や給付金が支払われないという事態は、契約者にとってこれ以上ない不利益と言えるでしょう。
悪質な場合は詐欺罪に問われることも
告知義務違反の内容が悪質、例えば、多額の保険金を得る目的で健康状態を偽って告知し、すぐに病気で入院・手術をして保険金請求を行ったようなケースでは、単なる契約解除にとどまらず、詐欺罪などの刑事罰の対象となる可能性もゼロではありません。
これは非常に稀なケースではありますが、告知義務違反が故意によるものであり、保険会社を騙して不当な利益を得ようとしたとみなされるような場合は、法的な責任を問われるリスクも存在することを認識しておくべきです。
これらのリスクを考えると、「バレないだろう」という期待や、「保険料が高くなるのが嫌だ」という理由で告知義務違反をすることは、あまりにも大きな代償を伴う行為と言えます。
告知義務違反がバレやすいケースとは?
「なぜバレる?」の項目で述べたように、告知義務違反が発覚する主なタイミングは保険金・給付金の請求時です。
特に以下のようなケースでは、告知義務違反が発覚しやすい傾向があります。
契約から短期間での保険金・給付金請求
保険に加入してから比較的短い期間(例えば、数ヶ月〜1年程度)で病気やケガにより入院・手術などをして、保険金や給付金を請求した場合、保険会社は告知内容についてより慎重に調査を行う傾向があります。
これは、「加入前からすでに兆候があった病気やケガではないか?」「健康状態を偽って加入したのではないか?」といった疑念を抱きやすいためです。
特に、告知義務違反をした事実(例:告知しなかったうつ病)が原因で保険金請求に至った場合は、発覚の可能性は非常に高くなります。
例えば、加入直後にうつ病が悪化して入院し、その入院給付金を請求した場合などがこれに該当します。
症状と告知内容の整合性がない場合
保険金・給付金の請求時、提出された医師の診断書や診療報酬明細書に記載されている傷病名、治療内容、発症時期などの情報が、加入時に提出した告知書の内容と明らかに矛盾している場合、告知義務違反が強く疑われます。
例えば、告知書では「過去5年以内に精神疾患で医師の診察、検査、治療、投薬を受けたことはない」と申告しているにも関わらず、提出された診断書には「数年前からうつ病の治療を受けている」といった記載がある場合などがこれに当たります。
また、現在請求している病気の原因が、過去に告知しなかった病気と深く関連している場合も、整合性が疑われます。
保険会社は、請求された病気やケガの治療経過を確認する中で、過去の病歴や通院歴に関する情報も把握することがあります。
その際に、告知書の記載との間に大きな乖離があれば、詳細な調査が行われ、告知義務違反が発覚する可能性が高まります。
心療内科に1回だけ行った場合でも告知は必要?
心療内科や精神科に一度だけ相談に行ったことがあるという場合でも、告知は必要なのでしょうか。
これは告知書の質問内容によりますが、原則として告知が必要となる可能性が高いです。
多くの保険会社の告知書では、「過去〇年以内に医師の診察、検査、治療、投薬を受けたことがあるか」といった質問があります。
心療内科に1回だけでも受診し、医師の診察を受けていれば、この質問に該当する可能性が高いです。
また、たとえ処方箋が出されなくても、医師から簡単なアドバイスや診断を受けただけでも、「診察を受けた」とみなされることが一般的です。
もちろん、ごく軽微な相談だけで、病名がつかず、薬も一切処方されず、その後の通院も全くないようなケースであれば、告知は不要と判断される可能性もあります。
しかし、告知すべきかどうか迷うような場合は、自己判断せずに、必ず保険会社の担当者や保険のプロに相談することをおすすめします。
告知書の質問内容は保険会社や商品によって異なります。
自分が過去に受けた受診や治療が告知対象となるかどうか、告知書の具体的な質問項目を確認し、不明な点は保険会社に確認することが最も確実な方法です。
「たった1回だから大丈夫だろう」と安易に自己判断して告知しなかった結果、それが告知義務違反となるリスクを避けるためです。
適応障害など、うつ病以外の精神疾患は告知が必要か?
告知義務の対象となる精神疾患は、うつ病だけではありません。
適応障害、不安障害、パニック障害、双極性障害、統合失調症、睡眠障害など、告知書の質問項目に該当するすべての精神疾患や、それに関連する心療内科・精神科への通院、治療、投薬歴は告知が必要です。
告知書の質問は、特定の病名だけでなく、「精神及び行動の障害」といった broad(広範)な分類で問われることもあります。
また、「過去〇年以内に、原因を問わず、以下の病気で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがありますか?」といった形で、具体的な疾患名を列挙している場合もあります。
そこに挙げられている疾患はもちろん、それ以外の精神疾患であっても、告知書の質問項目に該当すれば正直に告知する必要があります。
ご自身が診断された病名が告知対象となるかどうか、告知書をよく確認し、不明な場合は保険会社に確認することが重要です。
告知義務違反は、病名の種類ではなく、告知すべき事項を告知しなかったという事実に対して問われるため、病名がうつ病以外であっても、告知義務が生じる可能性は十分にあり得ます。
過去の病歴・通院歴はいつまで告知が必要?期間の目安
生命保険の告知書で問われる過去の病歴・通院歴の期間は、保険会社や保険商品の種類によって異なります。
一般的な目安としては、以下の期間が問われることが多いです。
- 直近3ヶ月以内: 現在の健康状態、既往症、入院や手術の予定などが問われることが多いです。
- 過去1年以内: 告知書で指定された特定の病気や症状での通院、検査、投薬などが問われることがあります。
- 過去2年以内: 告知書で指定された特定の病気や症状での入院や手術などが問われることがあります。
- 過去5年以内: 告知書で指定された特定の病気や症状での診察、検査、治療、投薬、入院、手術などが包括的に問われることが多いです。
うつ病や心療内科の通院歴に関する質問は、「過去〇年以内の精神疾患による診察・治療・投薬」といった形で、過去5年以内を対象としているケースが比較的多いです。
ただし、保険会社によっては過去2年以内や、より長い期間を対象としている場合もあります。
正確な告知期間を知るためには、加入を検討している保険商品の告知書を取り寄せて、具体的な質問項目を確認することが最も重要です。
例えば、5年以上前にうつ病の治療を終えており、告知書の質問期間が「過去5年以内」であれば、告知は不要となる可能性が高いです。
しかし、治療期間が長期にわたっていたり、再発の可能性があると診断されていたりする場合は、たとえ告知期間外であっても、念のため保険会社に相談した方が安心な場合もあります。
告知期間はあくまで一般的な目安です。
ご自身の状況と告知書の質問項目を照らし合わせ、迷う場合は必ず保険会社や保険のプロに確認しましょう。
うつ病や精神疾患でも入れる生命保険の種類
うつ病や精神疾患の既往歴や治療歴があると、標準的な生命保険への加入は難しくなるケースが多いのが現状です。
しかし、そのような方でも加入しやすいように設計された生命保険も存在します。
主な種類は以下の2つです。
引受基準緩和型保険
引受基準緩和型保険は、「限定告知型保険」とも呼ばれ、通常の生命保険に比べて告知項目が少なく設定されているのが特徴です。
健康状態に関する告知が3〜5項目程度に絞られており、「最近3ヶ月以内に入院・手術・特定の検査を勧められたか」「過去〇年以内(例えば2年や5年)に、告知書に記載されている特定の病気で入院・手術をしたか」といった比較的重い病気や最近の治療に関する質問が中心となります。
うつ病や心療内科の通院歴があっても、これらの告知項目に該当しなければ、加入できる可能性があります。
例えば、「過去2年以内の特定の病気での入院・手術」という告知項目であれば、通院のみの場合は該当しないため、加入できる可能性があります。
ただし、告知項目に「過去〇年以内の精神疾患による治療・投薬」といった項目が含まれている場合は、うつ病の治療歴があると該当する可能性があります。
引受基準緩和型保険のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
告知項目が少なく、持病があっても加入しやすい | 保険料が通常の保険より割増しになっている |
医師の診査が不要な場合が多い | 加入後一定期間は保障額が削減される場合がある(例:最初の1年間は保障額の50%のみ) |
健康状態に不安がある方も選択肢が増える | 保障内容が通常の保険より限定的な場合がある |
特定疾病不担保などの特別条件が付くことがある |
引受基準緩和型保険は、通常の保険に加入できない場合の有力な選択肢となりますが、保険料は割高になる傾向があります。
また、加入後一定期間(例えば1年間など)は支払われる保険金や給付金が削減される仕組みになっている商品もあるため、契約内容はよく確認する必要があります。
無選択型保険
無選択型保険は、健康状態に関する告知や医師の診査が一切不要で、誰でも加入できることが最大の特徴です。
「誰でも入れる保険」といったキャッチフレーズで販売されていることがあります。
告知が全く不要なため、うつ病だけでなく、どのような持病や治療歴があっても加入できます。
健康状態に非常に大きな不安がある方にとっては、唯一加入できる保険となる可能性もあります。
無選択型保険のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
健康状態に関わらず、誰でも加入できる | 保険料が引受基準緩和型保険よりもさらに高額 |
告知や医師の診査が不要 | 保障額が通常の保険や引受基準緩和型保険よりも低い |
保障内容が死亡保障のみなど、非常に限定的 | |
加入後一定期間は全く保障されない期間がある(例:最初の数ヶ月は免責期間) |
無選択型保険は、告知項目が少ない引受基準緩和型保険でも加入が難しい場合に検討される保険ですが、保険料は非常に高額になり、保障内容も限定的です。
貯蓄性もほとんどありません。
加入を検討する際は、保険料に見合う保障が得られるのか、他の選択肢はないのかを慎重に検討する必要があります。
どちらのタイプの保険も、通常の生命保険と比べて保険料が割高であったり、保障内容が限定的であったりする点に注意が必要です。
しかし、健康状態に不安がある方にとっては、全く保険に入れないよりはこれらの保険で最低限の保障を確保しておくことが重要となる場合もあります。
ご自身の健康状態、必要な保障内容、保険料負担などを総合的に考慮して検討しましょう。
正直に告知することの重要性
うつ病や心療内科の通院歴があると、標準的な生命保険への加入が難しくなる可能性があるため、告知を躊躇してしまう気持ちは理解できます。
しかし、ここまで解説してきたように、告知すべき事項を告知しない「告知義務違反」は、将来大きなリスクを伴います。
正直に告知した場合のメリットは、「告知義務違反のリスクを完全に回避できる」こと、そして「ご自身の健康状態に合った適切な保険に加入できる」ことです。
- 告知義務違反のリスク回避: 正直に告知していれば、後から告知義務違反を問われて契約を解除されたり、保険金が支払われなかったりする心配は一切ありません。保険が必要になった時に、安心して保険金や給付金を受け取ることができます。
- 適切な保険への加入: 告知内容に基づいて、保険会社は加入を認めるか(無条件承諾)、特別条件(特定部位不担保、保険料割増しなど)をつけて承諾するか、残念ながら加入を断るか(謝絶)を判断します。特別条件が付いたとしても、それは保険会社がリスクを評価した上での条件であり、その条件を受け入れて加入すれば、原則としてその後の保障は受けられます。また、標準的な保険が難しい場合でも、引受基準緩和型保険や無選択型保険など、他の選択肢を検討することができます。ご自身の健康状態を正確に伝え、加入できる保険の中から最適なものを選ぶことが、将来の安心につながります。
一方、告知を偽った場合、一時的に希望通りの保険に加入できるかもしれませんが、それは常に告知義務違反が発覚するリスクと隣り合わせです。
特に保険が必要になった時にバレる可能性が高く、最も困る状況で保険が役に立たないという最悪のシナリオになりかねません。
保険は、万が一の事態に備えるためのものです。
その「万が一」が訪れた時に、保険が機能しないという事態は絶対に避けなければなりません。
そのためにも、生命保険加入時には、告知書の内容をよく確認し、ご自身の健康状態や病歴、通院歴について、正直かつ正確に告知することが極めて重要です。
生命保険と精神疾患に関するよくある質問
生命保険加入と精神疾患について、よくある質問とその回答をまとめました。
精神科に行ったら生命保険会社にバレますか?
精神科や心療内科に受診しただけでは、その情報が自動的に生命保険会社に伝わることはありません。
医療機関には守秘義務があるため、患者の同意なしに第三者(生命保険会社を含む)に診療情報を開示することはありません。
ただし、「うつ病や心療内科の通院歴はなぜ保険会社にバレるのか?」の項目で解説したように、生命保険の申込時や保険金・給付金請求時に本人の同意を得た上で、保険会社が医療機関に診療記録の照会を行うことはあります。
この照会によって、過去の受診歴や治療歴が保険会社に把握されることになります。
したがって、精神科や心療内科を受診した事実そのものが自動的にバレるのではなく、保険契約に関する手続きの中で、本人の同意に基づいて行われる調査によって明らかになる可能性があるということです。
告知書の質問項目に該当する受診や治療については、正直に告知する必要があります。
精神科の受診歴はバレますか?
精神科や心療内科の受診歴が、告知書の質問期間内にあり、かつ質問項目に該当する内容(診断、治療、投薬など)であれば、告知義務違反がないかを確認する保険会社の調査によってバレる可能性があります。
特に保険金・給付金の請求時、医療機関から提出される診断書や診療報酬明細書、あるいは本人の同意を得て保険会社が取得する診療記録(カルテ)などには、過去の受診日、診断名、治療内容、処方された薬などが詳細に記載されています。
これらの情報と告知書の内容を照合することで、受診歴や治療歴の不備が明らかになることがあります。
例えば、過去5年以内に精神科でうつ病と診断され、薬を処方されていたにも関わらず、告知書で「過去5年以内に精神疾患の治療・投薬はない」と告知した場合、保険金請求時の調査でこの受診歴が発覚する可能性は非常に高いです。
生命保険の告知、どこまで調べる?
生命保険会社が告知内容についてどこまで調べるかは、ケースによって異なります。
全ての契約者について詳細な調査を行うわけではありません。
主に調査が行われるのは、以下のようなケースです。
- 告知内容に疑義や不明点がある場合: 告知書の内容だけではリスク評価が難しい場合や、他の情報源(診査結果など)と矛盾がある場合。
- 高額な保険金・給付金の請求: 特に死亡保険金など、高額な保険金が請求された場合。
- 契約から短期間での保険金・給付金の請求: 加入直後の請求は、加入前から原因があった可能性を疑われるため、詳細な調査が行われることが多いです。
- 告知義務違反が疑われる情報がある場合: 医療機関からの情報提供や他の保険契約情報などから、告知内容の不備が疑われる場合。
調査の内容としては、前述のように、被保険者の同意を得た上での医療機関への診療記録の照会が一般的です。
これにより、過去の病歴、治療内容、投薬状況などを詳細に把握します。
また、公的制度の利用履歴や、他の保険会社での契約・請求履歴を照会することもあります。
しかし、告知書の質問期間外の病歴や、質問項目に該当しない軽微な症状や通院については、原則として告知義務がなく、保険会社がそれを積極的に調査することもありません。
調査は、あくまで保険契約の適正な引受と保険金・給付金の公正な支払いのために必要な範囲で行われます。
鬱病だと生命保険に入れないのはなぜ?
うつ病やその他の精神疾患の既往歴があると、標準的な生命保険への加入が難しくなる傾向があるのは、主に以下の理由によります。
- 将来の疾病リスク: うつ病は再発する可能性のある病気であり、また、うつ病が原因で他の身体的な病気(例えば、胃潰瘍、糖尿病、心血管疾患など)を併発したり、生活習慣病のリスクを高めたりする可能性があります。これにより、将来的に保険金や給付金の支払いが発生するリスクが、健康な人に比べて高まると保険会社は判断します。
- 治療期間の長期化: うつ病の治療は長期にわたる場合があります。通院や投薬が続くことで、その間の医療費負担や就業不能リスクが高まります。
- 死亡リスクへの影響: 重症のうつ病は自殺リスクを高める可能性があり、これが死亡保険の引受においてはリスク要因となります。
これらの理由から、保険会社はうつ病の既往歴がある方を標準体(リスクが標準的な人)として引き受けることが難しくなります。
告知内容(病状、治療期間、完治からの期間、再発の有無、投薬の状況など)によっては、特別条件(保険料の割増し、特定疾病不担保など)を付けて引き受けられたり、引受基準緩和型保険や無選択型保険といった別タイプの保険を案内されたりします。
ただし、うつ病と診断された全ての方が標準的な保険に一切入れないわけではありません。
症状が軽度である場合、既に治療が終了し一定期間(例えば5年以上)が経過しており再発がない場合などは、告知内容によっては標準体として加入できる可能性もあります。
重要なのは、正直に告知し、保険会社の判断を仰ぐことです。
まとめ:うつ病でも入れる保険はある?保険のプロに相談しよう
生命保険加入時における告知義務は、契約者にとって非常に重要な義務です。
うつ病や心療内科の通院歴は、多くの場合、この告知義務の対象となります。
告知すべき事実を正直に申告しない「告知義務違反」は、後々保険金・給付金が支払われなかったり、保険契約が解除されたりするなどの大きなリスクを伴います。
保険会社は、保険金請求時などに医療機関への照会や公的制度の利用履歴、過去の保険契約情報などから、告知内容の真偽を調査することが可能です。
うつ病や精神疾患の既往歴があっても、告知内容によっては標準的な生命保険に加入できる可能性はあります。
しかし、標準的な保険が難しい場合でも、告知項目が少ない引受基準緩和型保険や、告知不要の無選択型保険といった選択肢も存在します。
これらの保険は、通常の保険よりも保険料が割高であったり、保障内容が限定的であったりしますが、健康状態に不安がある方にとっては有効な備えとなり得ます。
「自分のうつ病の状況でどの保険に入れるのか」「告知書にどう書けばいいのか」「告知すべきか判断に迷う」といった場合は、一人で悩まず、必ず生命保険会社の担当者や、複数の保険会社の商品を扱える保険代理店の担当者など、保険のプロに相談することをおすすめします。
プロであれば、ご自身の健康状態や状況をヒアリングした上で、告知書の正しい記載方法を教えてくれたり、加入できる可能性のある保険商品を複数提案してくれたりします。
生命保険は長期にわたる契約であり、万が一の際に家族を守るための大切な備えです。
将来の安心のために、正直な告知を心がけ、ご自身の状況に合った最適な保険を見つけましょう。
免責事項: 本記事は、生命保険における告知義務とうつ病・精神疾患に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の保険商品の推奨や保険契約の勧誘を目的とするものではありません。
個別の保険加入の判断にあたっては、必ずご自身の健康状態、保険会社の約款、重要事項説明書などを十分にご確認の上、ご自身の判断で行ってください。
また、具体的な告知内容や加入に関するご質問は、必ず保険会社または保険の専門家にご相談ください。
医療に関する内容はあくまで一般的な解説であり、個別の病状や治療については医師にご相談ください。
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