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大人のADHD診断とは?セルフチェック、病院、流れを解説

「もしかしたら自分はADHD(注意欠陥・多動性障害)かもしれない」と感じながら、日々の生活や仕事で困難を抱えている大人は少なくありません。子どもの頃に見過ごされがちなADHDの特性は、大人になってから人間関係やキャリアに大きな影響を及ぼすことがあります。自身の生きづらさの原因を知り、適切なサポートを受けるためには、専門機関での診断が重要な一歩となります。この大人のADHD診断について、その特徴から診断を受ける方法、診断後の支援までを詳しく解説します。気になる症状がある方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

大人のADHDの主な特徴

ADHDは発達障害の一つで、「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの主な特性があります。子どもの頃は多動性や衝動性が目立つことが多いですが、大人になるとそれらの症状が目立たなくなるか、あるいは内面化して分かりにくくなることがあります。一方、不注意の特性は大人になっても継続しやすく、日常生活や仕事で困難を引き起こす主な要因となることがあります。

大人のADHDの特性は非常に多様で、人によって現れ方が大きく異なります。また、これらの特性はADHDの診断基準を満たさない「グレーゾーン」と呼ばれる状態の人にも見られることがあります。

不注意の症状

大人のADHDにおける不注意の症状は、以下のような形で現れることが多いです。

  • 集中力の持続が難しい: 一つの作業に長く集中することが難しく、すぐに気が散ってしまう。会議中に他のことを考えてしまったり、本や書類を読むのに時間がかかったりします。
  • 忘れ物やなくし物が多い: 鍵、財布、携帯電話など、日常的に使うものを頻繁になくしたり置き忘れたりします。待ち合わせの時間や約束を忘れてしまうこともあります。
  • 片付けや整理整頓が苦手: 机の上や部屋が散らかっていることが多く、どこに何があるか分からなくなります。書類の整理や期限の管理も苦手で、タスクが滞りがちになります。
  • ケアレスミスが多い: 細かい指示を聞き漏らしたり、書類の記入ミスを繰り返したりします。重要な詳細を見落としやすく、確認作業を怠りがちです。
  • 指示に従うことや作業を順序立てて行うのが難しい: 複数の指示を同時に理解するのが難しかったり、計画を立てて実行することが苦手だったりします。複雑なタスクを最後までやり遂げることが困難な場合があります。
  • 時間を管理するのが苦手: 納期や締め切りを守ることが難しく、常に時間に追われています。休憩時間が長すぎたり、逆に作業に没頭しすぎて時間を忘れてしまったりすることもあります。

これらの不注意症状は、仕事での評価に影響したり、家事や育児などの日常生活でストレスの原因になったりすることがあります。

多動性・衝動性の症状

大人になると、子どものような落ち着きのなさ(多動性)は目立たなくなることが多いですが、内面的な落ち着きのなさや衝動性は残ることがあります。

  • 落ち着きのなさ: 会議中や授業中にじっと座っているのが苦痛に感じたり、貧乏ゆすりをしたり、体の一部を動かしたりすることがあります。心の中で様々な考えが駆け巡り、リラックスできない感覚を持つ人もいます。
  • しゃべりすぎる: 相手の話を遮って一方的に話してしまったり、話が止まらなくなったりすることがあります。
  • 順番を待つのが苦手: 列に並んだり、順番が回ってくるのを待ったりすることが苦痛に感じられます。
  • 衝動的な行動: 計画を立てずに行動したり、衝動買いをしたり、後先考えずに重要な決断を下したりすることがあります。怒りや不満を衝動的に爆発させてしまうこともあります。
  • 危険を顧みない行動: スリルを求めるあまり、無謀な運転をしたり、ギャンブルにのめり込んだりするなど、リスクの高い行動をとることがあります。

これらの多動性・衝動性の症状は、人間関係でのトラブルや金銭的な問題、法的な問題に発展するリスクを高める可能性があります。

女性に多いADHDの特徴

ADHDの診断は男性に多いとされてきましたが、これは多動性や衝動性が目立ちやすく、子どもの頃から問題行動として認識されやすいためと考えられています。一方、女性の場合は、不注意の特性が優勢であることが多く、目立った問題行動を起こしにくいため、ADHDが見過ごされやすい傾向があります。

女性のADHDの主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 不注意が中心: 忘れ物が多い、整理整頓が苦手、期限管理ができないなど、不注意症状が前面に出やすく、多動性や衝動性は目立ちにくい、あるいは内面的な落ち着きのなさとして現れることが多いです。
  • 過集中: 興味のあることには驚くほどの集中力を発揮する一方で、興味のないことには全く集中できないという極端な集中力のムラがあります。この過集中により、他のやるべきことがおろそかになることがあります。
  • 人間関係の難しさ: コミュニケーションの行き違いや衝動的な発言、感情のコントロールの難しさから、人間関係でトラブルを抱えやすいことがあります。共感性の欠如と見られる言動をとってしまうこともあります。
  • 抱え込みやすい: 自分の困難を周囲に相談できず、一人で抱え込んでしまう傾向があります。完璧主義な一面を持ち、できない自分を責めてしまうこともあります。
  • 二次障害のリスク: 自身のADHDの特性に気づかずに生きづらさを感じ続けることで、うつ病、不安障害、摂食障害、アルコール依存症などの二次障害を発症するリスクが高いと言われています。

これらの特徴から、女性は「だらしない」「自己管理ができない」「感情的」などと誤解されやすく、自身の困難がADHDによるものだと気づきにくい場合があります。

ADHDグレーゾーンの特性

ADHDの診断基準は満たさないものの、ADHDの特性をいくつか持っており、日常生活や社会生活で困難を感じている状態を「ADHDグレーゾーン」と呼ぶことがあります。これは正式な医学的診断名ではありませんが、多くの人がこの状態に当てはまると考えられています。

ADHDグレーゾーンの人は、以下のような特性を持つことがあります。

  • 不注意、多動性、衝動性の特性が一部見られる: 診断基準で定められた数や重さの症状には満たないが、いくつかの特性があり、それによってある程度の困難を感じています。
  • 特定の状況でのみ困難が生じる: 子どもの頃は問題なかったが、大人になって仕事の責任が増えたり、複雑な人間関係に対処する必要が生じたりすることで、困難が顕在化することがあります。特定の環境(例: 決まった手順がなく、マルチタスクが求められる仕事)では特性による影響が大きく出やすい一方、別の環境(例: マニュアルが明確で、集中できる個別作業が多い仕事)では問題なく過ごせることもあります。
  • 自分で工夫して対処している: 特性による困難を認識しており、自分なりに工夫して対処しているため、表面上は問題なく見えている場合があります。しかし、その裏で大きな努力やストレスを抱えていることがあります。
  • 二次障害を発症しやすい: グレーゾーンであっても、特性による生きづらさが続くと、うつ病や不安障害などの二次障害を発症するリスクがあります。

ADHDグレーゾーンの場合、診断には至らないため医療的なサポートが限定的になることもありますが、自身の特性を理解し、適切な対処法を学ぶことで、生きづらさを軽減することは可能です。

大人のADHD診断を受ける方法

「もしかしたらADHDかも?」と感じ、自身の特性について深く知りたいと思った場合、専門機関で大人のADHD診断を受けるという選択肢があります。診断を受けることで、自身の困難がどこから来ているのかを理解し、適切なサポートや治療に繋げることができます。

診断プロセスと流れ

大人のADHDの診断は、一度の受診で確定するものではなく、いくつかの段階を経て行われるのが一般的です。医療機関によって多少異なりますが、基本的な流れは以下のようになります。

  1. 初診・問診:
    • まず、症状や困りごとについて医師が詳しく聞き取ります。いつ頃から症状が現れているか、どのような状況で困るか、仕事や日常生活にどのような影響が出ているかなどを具体的に伝えます。
    • 自身の生育歴(子どもの頃の様子、学校での成績や対人関係など)や家族歴(家族にADHDなどの発達障害や精神疾患の人がいるかなど)についても聞かれます。
    • 併存疾患(うつ病、不安障害など)の有無や、現在服用している薬についても確認があります。
  2. 心理検査・生理検査:
    • ADHDの診断を補助するために、様々な検査が行われることがあります。
    • 知能検査(WAIS-IVなど): 全体的な知的能力や、特定の認知機能(言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度など)の得意不得意を把握します。ADHDの特性に伴う認知の偏りが見られることがあります。
    • ADHD評価尺度: ADHDの症状の頻度や重症度を評価するための質問紙(CAARS、ASRSなど)に回答します。自己評価だけでなく、家族など第三者からの評価も参考にする場合があります。
    • その他の質問紙: うつ症状や不安症状、強迫性、パーソナリティ特性などを評価するための質問紙が行われることもあります。これはADHDと併存しやすい疾患の有無を確認するためです。
    • 脳波検査やMRI: ADHDそのものを診断するものではありませんが、てんかんや脳腫瘍など、ADHDと似た症状を引き起こす他の病気を除外するために行われることがあります。
  3. 情報収集:
    • 可能であれば、子どもの頃の通知表、母子手帳、卒業文集など、生育歴が分かる資料を持参すると診断の参考になります。
    • 両親など、子どもの頃の様子を知っている家族に同席してもらったり、事前に問診票を記入してもらったりすることも有効な場合があります。
  4. 診断:
    • 問診、検査結果、生育歴などの情報を総合的に判断し、医師がADHDであるかどうかの診断を下します。
    • 診断は、世界的に広く使われている診断基準(DSM-5など)に基づいて行われます。
  5. 診断結果の説明と治療方針の相談:
    • 医師から診断結果の説明があります。診断基準のどの項目に当てはまったか、検査結果からどのような特性が考えられるかなどを丁寧に説明してもらえます。
    • 診断が確定した場合、今後の治療方針やサポートについて話し合います。薬物療法の必要性、カウンセリングやペアレントトレーニングなどの精神療法、利用できる社会資源などが提案されます。

診断プロセスは、個々の状況や医療機関の方針によって異なります。検査に時間がかかったり、予約が取りにくかったりする場合もあるため、診断確定までに数週間から数ヶ月かかることもあります。

自分で試せるADHDセルフチェックテスト

専門機関を受診する前に、「まずは自分自身でADHDの傾向があるか確認してみたい」と考える方もいるでしょう。インターネット上には、無料でできるADHDのセルフチェックテストが数多く存在します。

無料のチェックリストとは

無料のセルフチェックリストの多くは、ADHDの代表的な症状に関する質問項目に、「ほとんどない」「ときどきある」「よくある」「非常によくある」などの段階で回答する形式をとっています。例えば、以下のような質問項目が含まれていることが多いです。

  • 約束の時間に遅れることが多いか?
  • 物事を順序立てて行うのが苦手か?
  • 会話中に上の空になることが多いか?
  • 頼まれたことを最後までやり遂げられないことが多いか?
  • 衝動的に発言したり行動したりすることが多いか?
  • 座っている時に手足をそわそわと動かすことが多いか?
  • すぐに退屈を感じやすいか?

これらの質問項目は、実際に医療機関で使用される評価尺度(ASRSなど)の一部を参考にしている場合もあります。回答結果に基づいて、「ADHDの傾向がある可能性が高い」「低い」などが示されます。

チェックテスト利用時の注意点

セルフチェックテストは、あくまで自身にADHDの傾向があるかどうかを知るための簡易的なツールであり、医学的な診断ではありません。セルフチェックテストの結果だけで自己判断することは非常に危険です。

セルフチェックテストを利用する際は、以下の点に注意が必要です。

  • 診断とは異なる: チェックテストで「可能性が高い」という結果が出ても、それはADHDであると確定したわけではありません。正式な診断は医師のみが行えます。
  • 他の要因の可能性: ADHDと似た症状は、他の精神疾患(うつ病、不安障害、双極性障害など)や身体的な問題(睡眠不足、甲状腺機能異常など)、環境要因(ストレス、生活習慣など)によっても引き起こされる可能性があります。セルフチェックの結果だけでADHDだと決めつけるのは早計です。
  • 正確性の限界: 無料のチェックテストは、診断基準の全てを網羅しているわけではありません。また、回答者の主観に依存するため、結果が正確でない可能性もあります。
  • 不安を煽る可能性: チェックテストの結果を見て、過度に不安になったり、自己肯定感が低下したりする可能性があります。

セルフチェックテストは、あくまで「専門機関への受診を検討するきっかけ」として捉えましょう。もしチェックテストの結果を見て気になるようであれば、一人で悩まず、必ず専門機関を受診して医師に相談することが重要です。

専門機関での診断基準(DSM-5)

大人のADHD診断は、世界保健機関(WHO)が定めるICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)や、アメリカ精神医学会(APA)が定めるDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)といった国際的な診断基準に基づいて行われます。日本では、主にDSMの最新版であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)が参照されます。

DSM-5におけるADHDの診断基準は、以下の3つの主症状(不注意、多動性、衝動性)について、一定の項目数以上が、一定期間(通常6ヶ月以上)にわたって持続し、かつ、その症状によって家庭、学校、職場など複数の環境で機能や発達に著しい支障が生じていることが求められます。

DSM-5では、17歳以上の診断基準として、不注意の9項目のうち5つ以上、または多動性・衝動性の9項目のうち5つ以上が存在し、かつ、それらの症状が12歳になる前から存在しており、いくつかの症状によって現在の生活に否定的な影響が出ていることが必要とされています。(小児の場合は6項目以上が必要)

診断基準のポイント:

  • 症状の種類と数: 不注意または多動性/衝動性の具体的な症状がリスト化されており、そのうちいくつ以上が該当するかを見ます。
  • 症状の持続期間: 症状が一時的なものではなく、ある程度の期間(通常6ヶ月以上)にわたって続いていることが重要です。
  • 発症年齢: いくつかの症状が12歳になる前から存在していたことが求められます。これはADHDが発達期に始まる障害であることを示しています。
  • 生活への影響: 症状によって、学業、仕事、社会生活、人間関係など、複数の領域で支障が生じていることが診断には不可欠です。単に「忘れっぽい」といった特性があるだけでは診断には繋がりません。
  • 他の疾患の除外: ADHDと似た症状を引き起こす他の精神疾患や身体疾患、薬物の影響などではないことを確認します。

医師は、これらの診断基準に照らし合わせながら、問診や検査結果、生育歴などの情報を総合的に判断して診断を下します。自己申告だけでなく、家族からの情報や、子どもの頃の記録なども重要な判断材料となります。

診断前に準備すること

専門機関で大人のADHD診断を受けることを決めたら、診断プロセスをスムーズに進めるために、いくつか事前に準備しておくと良いことがあります。

  1. 自身の困りごとや症状を整理する:
    • 具体的にどのような状況で困っているのか(例: 仕事で期日を守れない、会議中に集中できない、部屋が片付けられない、衝動的に買い物をしすぎるなど)を書き出しておきましょう。
    • いつ頃からそのような困りごとを感じるようになったか、子どもの頃はどうだったかなども思い返してみましょう。
    • 可能であれば、具体的なエピソード(例: 「〇〇という仕事で、△△なミスを□回繰り返した」)を記録しておくと、医師に症状を伝える際に役立ちます。
  2. 生育歴に関する情報を集める:
    • 子どもの頃の様子は、ADHD診断において非常に重要な情報です。
    • 両親や家族へのヒアリング: 子どもの頃の多動性、不注意、衝動性について、両親や兄弟に尋ねてみましょう。「落ち着きがなかったか?」「忘れ物が多かったか?」「衝動的な行動があったか?」など、具体的な質問をしてみると良いでしょう。
    • 学校の成績表や通知表: 通知表に書かれた担任の先生からのコメント(「落ち着きがない」「忘れ物が多い」「提出物をなかなか出さない」など)が、子どもの頃の特性を示す有力な手がかりになることがあります。
    • 母子健康手帳や保育園・幼稚園・小学校の頃の記録: 保育士さんや先生からのコメントが記載されている場合があります。
  3. 問診票や検査に関する情報を確認する:
    • 受診する医療機関のウェブサイトなどで、事前にダウンロードできる問診票がないか確認しましょう。事前に記入しておくことで、受診当日に落ち着いて情報を提供できます。
    • どのような検査が行われる可能性があるか(知能検査、心理検査など)についても、可能であれば確認しておくと心の準備ができます。
  4. 聞きたいことをリストアップする:
    • 医師に聞きたいこと(例: 診断基準について、治療法について、利用できる支援サービスについて、家族への影響についてなど)を事前にリストにしておくと、診察時間内に効率的に質問できます。
  5. 保険証、紹介状(もしあれば)などを準備する:
    • 健康保険証を忘れずに持参しましょう。
    • 他の医療機関から紹介された場合は、紹介状を持参してください。
  6. 診察時間や予約の取り方を確認する:
    • 医療機関によって、初診は予約が必須であったり、診察に時間がかかったりします。事前にウェブサイトなどで確認し、時間に余裕を持って受診しましょう。

これらの準備をすることで、自身の状況を正確に医師に伝えることができ、診断プロセスを円滑に進めることに繋がります。

大人のADHD診断ができる医療機関

大人のADHD診断を受けたいと思ったとき、どのような医療機関を受診すれば良いのでしょうか。主な選択肢は、精神科、心療内科、発達障害専門クリニックなどです。

精神科・心療内科・発達障害専門クリニック

  1. 精神科
    • 特徴: 精神科医は精神疾患に関する幅広い知識と経験を持っています。ADHDと併存しやすい他の精神疾患(うつ病、不安障害、双極性障害、依存症など)がある場合も、専門的な視点から総合的に診察・治療が可能です。
    • 注意点: 精神科によっては発達障害の診療に特化していない場合もあります。事前にウェブサイトを確認したり、電話で問い合わせたりして、大人の発達障害(ADHD、ASDなど)の診療を行っているか確認することをおすすめします。
  2. 心療内科
    • 特徴: 主に心身症(ストレスが原因で身体に症状が現れる病気)を扱う診療科ですが、精神的な不調全般を診るクリニックも多いです。心理的な要因が強いADHDの症状や、ADHDに起因するストレス性の身体症状、うつ状態などを相談するのに適しています。
    • 注意点: 心療内科も精神科と同様に、発達障害の専門的な診療を行っていない場合があります。事前に確認が必要です。また、重度の精神症状や複雑なケースの場合は、精神科の方が専門性が高いことがあります。
  3. 発達障害専門クリニック
    • 特徴: 大人の発達障害(ADHD、ASD、LDなど)の診断や治療、サポートに特化したクリニックです。
    • 注意点: 専門性が高いため、予約が取りにくい、初診までに時間がかかるなどの場合があります。また、専門クリニックは数が限られていることもあります。

どの医療機関を選ぶかは、自身の症状の状況や困りごとの内容、アクセスなどを考慮して決めると良いでしょう。迷う場合は、まずかかりつけ医に相談したり、地域の相談窓口に問い合わせてみたりするのも良い方法です。

病院選びのポイント

大人のADHD診断を受ける医療機関を選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮すると良いでしょう。

病院選びのチェックリスト

チェック項目 詳細
大人のADHD診療に対応しているか 事前にウェブサイトを確認するか、電話で問い合わせて、大人の発達障害(特にADHD)の診断・治療を行っているか確認する。
発達障害の専門医がいるか 発達障害の専門医や、ADHDの診療経験が豊富な医師がいるか確認する。
必要な検査に対応しているか 知能検査(WAIS-IVなど)やADHDの評価尺度などの心理検査に対応しているか確認する。診断に必要な検査が可能か問い合わせてみる。
予約の取りやすさ 初診の予約がどのくらい先になるか、再診の予約は取りやすいか確認する。診断までにある程度通院が必要になることが多い。
費用 保険適用となるか、検査費用はどのくらいかかるか確認する。自費診療の場合もある。
アクセス・通いやすさ 自宅や職場から無理なく通える場所にあるか。診断後も継続的に通院したり、サポートを利用したりする場合がある。
医師やスタッフとの相性 可能であれば、初診で医師との話しやすさや、スタッフの対応なども確認する。診断後も信頼関係を築けるかが重要。
診断後のサポート体制 診断後の治療(薬物療法、カウンセリングなど)や、日常生活・仕事に関する具体的なアドバイス、利用できる社会資源の情報提供があるか確認する。
口コミや評判 実際に受診した人の口コミや評判(良い点、悪い点)を参考にしてみる。(ただし、情報は主観的なものなので鵜呑みにせず、参考程度にする)
プライバシーへの配慮 個室での診察が可能か、待合室のプライバシーは確保されているかなども確認する。

これらのポイントを参考に、いくつかの医療機関を比較検討してみることをお勧めします。多くの医療機関では、ウェブサイトに診療内容や医師の紹介、予約方法などが詳しく記載されています。

診断にかかる費用と期間

大人のADHD診断にかかる費用と期間は、医療機関や個々の状況によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

費用:

  • 保険適用: ADHDの診断や治療は、多くの精神科や心療内科で健康保険が適用されます。その場合、診察料や検査料の3割(または1割)負担となります。
  • 自費診療: 一部の医療機関や、特定の高度な検査を受ける場合、自費診療となることがあります。その場合、費用は全額自己負担となります。事前に保険適用となるか確認しましょう。
  • 診察料: 初診料、再診料がかかります。初診は時間をかけて詳しく話を聞くため、再診よりも費用が高くなることがあります。
  • 検査料: 知能検査や心理検査など、診断のために行う検査には別途費用がかかります。これらの検査は数千円から1万円以上かかることもあります。
  • 薬代: 診断後に薬物療法が処方された場合、薬代がかかります。薬の種類や量によって費用は異なります。

一般的な費用の目安(保険適用3割負担の場合):

項目 目安費用 備考
初診料 数千円 医療機関によって異なる
再診料 千円~数千円
検査料 数千円~数万円(合計) 検査内容や数によって大きく変動する
薬代(1ヶ月分) 数千円~1万円以上 薬の種類によって異なる

診断確定までには複数回の診察や検査が必要になることが多いです。そのため、診断確定までの総額としては、数万円程度を見ておくと良いかもしれません。医療機関に事前に問い合わせて、費用について確認することをおすすめします。

期間:

  • 初診予約まで: 予約が取りにくい医療機関では、初診までに数週間から数ヶ月待つことがあります。
  • 診断確定まで: 初診から診断が確定するまでには、通常、複数回の診察や検査が必要となります。早い場合で数週間、検査結果が出るまでに時間がかかったり、他の可能性を慎重に検討したりする場合は、数ヶ月かかることもあります。

特に発達障害の専門クリニックは予約が集中しやすいため、早めに予約を入れることが重要です。診断までの期間は、焦らず、医師とコミュニケーションを取りながら進めていきましょう。

ADHDと診断された後

専門機関で大人のADHD診断が確定した場合、それはあなたの人生にとって重要なターニングポイントとなります。診断を受けることにはメリットもデメリットもあり、診断を受けた後も様々な選択肢があります。

診断のメリット・デメリット

診断のメリット:

  • 自己理解の深化: 長年感じていた生きづらさや困難の原因がADHDの特性によるものだと分かり、自分を責めることから解放されることがあります。自分の得意なこと、苦手なことを客観的に理解できるようになります。
  • 適切な治療やサポートに繋がる: 診断を受けることで、薬物療法、精神療法、環境調整など、自身の特性に合った具体的な対処法や支援を受ける道が開けます。
  • 周囲の理解を得やすくなる: 診断名があることで、家族や職場、学校などに自身の特性について説明しやすくなり、理解や配慮を得られやすくなる場合があります。(ただし、診断名を伝えるかどうかは個人の判断です)
  • 同じ特性を持つ人との繋がり: 診断をきっかけに、自助グループなどに参加し、同じ悩みを持つ人たちと情報交換したり、支え合ったりすることができます。
  • 利用できる社会資源が増える: 診断名があることで、障害者手帳の取得や、就労移行支援事業所など、行政や民間の様々な支援サービスを利用できる場合があります。

診断のデメリット:

  • ラベリング(レッテル貼り): 診断名が付くことで、「ADHDだから〇〇できない」といったネガティブな自己イメージを持ってしまったり、周囲からレッテルを貼られたりするのではないかという懸念があります。
  • 保険加入への影響: 精神疾患の既往があるとして、生命保険や医療保険の新規加入が難しくなったり、加入できても条件が付いたりする場合があります。
  • 家族への影響: 診断を受けたことを家族に伝える際、家族が戸惑ったり、受け入れに時間がかかったりする場合があります。
  • 診断結果への戸惑い: 診断結果が予想と異なったり、診断名を受け入れることに抵抗を感じたりすることがあります。
  • 根本的な解決ではない: 診断はあくまでスタートラインであり、診断を受けただけで特性そのものがなくなるわけではありません。特性と向き合い、対処法を学び、工夫していく努力が必要です。

診断を受けるかどうかは、これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自身の状況や価値観に照らして慎重に判断することが重要です。医師とよく相談し、納得した上で決めることをお勧めします。

診断を受けないという選択肢について

「生きづらさは感じているけれど、診断を受けることには抵抗がある」という方もいるかもしれません。大人のADHD診断は必須のものではなく、診断を受けないという選択肢も十分にあります。

診断を受けない場合でも、自身の困りごとを軽減し、より良く生きるための方法はあります。

  • 自己理解と情報収集: 診断を受けなくても、ADHDの特性に関する本を読んだり、信頼できるウェブサイトから情報を集めたりすることで、自身の困りごとがどのような特性によるものか理解を深めることができます。
  • 自身の特性に合わせた工夫: 自己理解に基づき、具体的な対処法や工夫を試してみることができます。例えば、忘れ物が多いならリマインダーを活用する、片付けが苦手なら物の定位置を決める、衝動買いが多いならキャッシュレス決済を避けるなど、様々な方法があります。
  • カウンセリングや相談窓口の利用: 診断がなくても、心理士やカウンセラーに相談したり、地域の精神保健福祉センターや発達障害者支援センターに相談したりすることができます。困りごとを整理したり、対処法を一緒に考えたりするサポートを受けられます。(ただし、診断がないと利用できない支援もあります)
  • 自助グループへの参加: 診断の有無に関わらず、ADHDや発達障害に関する自助グループに参加できる場合があります。同じ悩みを持つ人たちと交流することで、安心感を得たり、有用な情報や対処法を学んだりすることができます。

診断を受けないという選択は、ラベリングのリスクを避けたい場合や、保険加入への影響が気になる場合などに検討されることがあります。しかし、診断がないことで、利用できる医療的な治療法(薬物療法など)や公的な支援が限られる可能性もあります。

どちらの選択肢にもメリット・デメリットがあることを理解し、自身の状況や今後の希望(例: 特性に合った治療を受けたいか、公的な支援を利用したいかなど)を踏まえて検討することが大切です。一人で抱え込まず、信頼できる人に相談したり、まずは専門機関に相談に行き、診断の必要性やメリット・デメリットについて医師の説明を聞いてみたりすることも有効です。

主な治療法とサポート体制

大人のADHD診断が確定した場合、特性からくる困難を軽減し、生活の質を向上させるために、様々な治療法やサポートが提供されます。主なものとして、薬物療法、精神療法、環境調整、社会資源の活用などがあります。

主な治療法とサポート体制

種類 目的・概要 具体的な内容
薬物療法 ADHDの脳機能の偏りを調整し、不注意や多動性・衝動性といった中核症状を軽減する。 中枢神経刺激薬: ドーパミンやノルアドレナリンの働きを調整する。効果は比較的早く現れることが多い。(例: メチルフェニデート徐放製剤)
非刺激性薬: ノルアドレナリンなどの働きを調整する。効果が現れるまでに時間がかかることがある。(例: アトモキセチン、グアンファシン)
※薬の効果や副作用には個人差があり、医師との相談の上で選択・調整が行われます。
精神療法 自身のADHDの特性を理解し、困難への対処スキルを身につけ、二次障害を予防・改善する。 認知行動療法(CBT): 思考パターンや行動パターンを修正し、問題解決能力を高める。
ADHDに特化した心理教育: ADHDの特性や対処法について学び、自己理解を深める。
ペアレントトレーニング(家族向け): 家族がADHDの特性を理解し、本人への接し方やサポート方法を学ぶ。
SST(ソーシャルスキルトレーニング): 対人関係を円滑にするためのコミュニケーションスキルなどを学ぶ。
環境調整 生活や仕事の環境を、自身の特性に合わせて調整し、困難を軽減する。 仕事での指示方法の変更依頼、集中できる作業スペースの確保、整理整頓しやすい仕組みづくり、リマインダーアプリやタスク管理ツールの活用、休憩の取り方の工夫など。
社会資源の活用 行政や民間の様々な支援サービスを利用し、生活や就労をサポートする。 発達障害者支援センター: 相談支援、情報提供、関係機関との連携など。
精神保健福祉センター: 精神的な問題に関する相談や情報提供。
ハローワークの専門窓口: 発達障害のある人の就職活動支援。
就労移行支援事業所: 働くためのスキル訓練や就職支援。
障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など): 税金の控除や公共料金の割引、障害者雇用枠での就職などが可能になる場合がある。
自助グループ: 同じ特性を持つ人同士の交流や情報交換。

これらの治療法やサポートを単独で行うだけでなく、組み合わせて行うことで、より効果的にADHDの特性と向き合い、困難を乗り越えていくことが期待できます。どの方法が自身に合っているかは個人差が大きいため、医師や専門家と相談しながら、最適なプランを見つけていくことが重要です。

日常生活や仕事での工夫

大人のADHD診断を受けた人も、診断を受けていないグレーゾーンの人も、日常生活や仕事における困難を軽減するために、様々な工夫や対処法を取り入れることができます。

日常生活・仕事での主な困りごとと工夫

困りごと(例) 特性との関連 具体的な工夫・対処法(例)
忘れ物が多い、約束を忘れる 不注意 リマインダーツールの活用: スマホのリマインダー、カレンダーアプリ、スマートスピーカーなどを活用し、予定ややることを通知させる。
チェックリスト: 外出前に持ち物を確認するチェックリストを作る。
物の定位置: 鍵や財布など、よく使う物の置き場所を固定する。
玄関での準備: 前日の夜に翌日必要なものを玄関にまとめて置いておく。
片付けられない、部屋が散らかっている 不注意、多動性(衝動性) 物の量を減らす(断捨離): 物が少なければ片付けやすい。
収納場所を決める: 「これはここに入れる」という定位置を決め、ラベリングする。
「とりあえず箱」: 一時的に物を入れておく箱を用意し、後でまとめて片付ける。
時間を区切って片付ける: 「15分だけ」など、短時間で集中して片付ける。
外部サービス: ハウスキーパーや片付け代行サービスを利用する。
仕事や勉強に集中できない、気が散る 不注意、多動性 集中できる環境: 静かな場所、パーテーションで区切られた場所を選ぶ。ノイズキャンセリングイヤホンを使用する。
マルチタスクを避ける: 一度に一つの作業に集中する。
休憩を挟む: ポモドーロテクニック(短い作業と休憩を繰り返す)など、時間を区切って作業する。
スマートフォンの通知オフ: 作業中は通知をオフにする。
興味を引く要素を取り入れる: 好きな音楽を聴きながら作業するなど(ただし、集中を妨げない範囲で)。
計画通りに進められない、期日を守れない 不注意、衝動性 タスクを細分化: 大きなタスクを小さく分解し、一つずつクリアしていく。
優先順位をつける: 重要度や緊急度に応じてタスクに優先順位をつける。
視覚的な管理: ToDoリスト、カレンダー、カンバンボードなどを使って、やるべきことを「見える化」する。
締め切りを設ける: 自分自身で中間目標や締め切りを設定する。
誰かに見てもらう: 家族や同僚に協力してもらい、進捗をチェックしてもらう。
衝動買いをしてしまう、衝動的な発言 衝動性 お金の管理方法の見直し: 現金払いを基本にする、クレジットカードやネットショッピングの利用を制限する、家計簿をつける。
感情のコントロール: 怒りや不満を感じた時に、即座に反応せず、一呼吸置く習慣をつける。
アサーション: 自分の気持ちや意見を適切に伝えるスキルを学ぶ(SSTなど)。
衝動的な行動のトリガーを特定し避ける: 例: ストレスが溜まると衝動買いをするなら、ストレス解消法を見つける。
会議中にじっとしていられない 多動性 休憩を挟む: 長時間の会議の場合は、適度に休憩を入れるよう提案する。
手元でできること: メモを取る、小さなボールを握るなど、目立たない形で手元を動かす。
発表者になる: 自分が話す立場になれば、自然と集中力が高まる。
コミュニケーションの行き違い 不注意、衝動性、ASD併存 聞き取りを意識する: 相手の話を最後まで聞く、相槌を打つ、内容を復唱して確認する。
簡潔に話す: 要点をまとめて分かりやすく話すことを心がける。
非言語コミュニケーションに注意する: 相手の表情や声のトーンにも意識を向ける。
アサーション: 自分の意見や感情を正直かつ相手を尊重する形で伝える。

これらの工夫は、あくまで対処法であり、ADHDの特性そのものをなくすものではありません。しかし、これらの工夫を取り入れることで、特性による困難を軽減し、日常生活や仕事におけるストレスを減らすことに繋がります。

大切なのは、「できないこと」に焦点を当てるのではなく、「どうすればできるか」「どのような工夫が自分には合うか」という視点を持つことです。自分一人で抱え込まず、家族や友人、職場の同僚、専門家など、周囲のサポートも積極的に活用しましょう。様々な方法を試してみて、自分にとって最も効果的な対処法を見つけていくことが重要です。

まとめ

この記事では、大人のADHD診断について、その主な特徴、診断を受ける方法、診断が確定した場合の対応など、幅広い情報を提供しました。

大人のADHDの特性は、不注意、多動性、衝動性として現れ、日々の生活や仕事で様々な困難を引き起こすことがあります。特に女性やADHDグレーゾーンの人では、その特性が見過ごされやすく、生きづらさを感じやすい場合があります。

「もしかしたら自分はADHDかも?」と感じたら、まずは自身の困りごとや生育歴を整理し、セルフチェックテストなどを参考にしながら、専門機関への受診を検討することが重要です。正式な診断は、精神科、心療内科、発達障害専門クリニックなどで、問診や心理検査、生育歴などの情報を総合的に判断して行われます。診断基準(DSM-5など)に基づいた適切な診断を受けることで、自身の特性を客観的に理解し、生きづらさの原因を知ることができます。

診断を受けることには、適切な治療やサポートに繋がるという大きなメリットがある一方で、ラベリングや保険加入への影響といったデメリットも存在します。診断を受けるかどうかは個人の自由な選択であり、診断を受けない場合でも、様々な工夫や相談窓口を利用して困難に対処していくことは可能です。

ADHDと診断された後は、薬物療法や精神療法といった治療に加え、環境調整や社会資源の活用など、多様なサポートを受けることができます。日常生活や仕事においても、自身の特性に合わせた具体的な工夫を取り入れることで、困難を軽減し、より快適に過ごすことが可能になります。

大人のADHD診断は、自身の特性を理解し、より良い人生を送るための「スタートライン」です。一人で悩まず、まずは専門家(医師や心理士、相談員など)に相談してみましょう。あなたの困りごとに寄り添い、適切なサポートを見つけるお手伝いをしてくれるはずです。

免責事項: この記事の情報は一般的な知識を提供するためのものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や状況については、必ず医療機関を受診し、専門医の判断と指導を仰いでください。この記事の情報に基づいて行った行為の結果については、当方では一切の責任を負いかねます。

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