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適応障害で傷病手当金をもらうデメリットとは?知っておくべき注意点

適応障害で心身ともに辛い状況のなか、仕事を休んで療養に専念したいと考えている方も多いでしょう。その際に経済的な支えとなるのが「傷病手当金」ですが、申請を考える上で「何かデメリットはないだろうか」「後で後悔しないか」といった不安を感じるかもしれません。

結論から言うと、傷病手当金は療養中の生活を支える非常に心強い制度ですが、いくつかのデメリットや注意点が存在します。しかし、それらを事前に正しく理解しておくことで、不安を解消し、安心して制度を活用することができます。

この記事では、適応障害で傷病手当金の受給を検討している方へ向けて、具体的なデメリット、申請や退職・転職時の注意点、そして知っておきたい「落とし穴」まで詳しく解説します。

適応障害でも傷病手当金はもらえるか

はい、適応障害も傷病手当金の対象となります。

傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けない場合に支給されるものです。精神疾患も対象に含まれており、ストレスの原因がはっきりしている適応障害は、医師が「労務不能(働けない状態)」と判断すれば、受給の対象となります。

実際に、適応障害の診断を受けて傷病手当金を受給しながら療養に専念している方は多くいます。大切なのは、専門家である医師の診断と指示に従うことです。

傷病手当金とは?基本的な受給条件と期間

傷病手当金は、健康保険の被保険者が利用できる制度です。受給するには、主に以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 業務外の病気やケガであること
    (業務上や通勤中の場合は労災保険の対象となります)
  • 療養のために働くことができない(労務不能)状態であること
    これは自己判断ではなく、医師の証明が必要です。
  • 連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいること
    最初の3日間を「待期期間」といい、この期間は傷病手当金が支給されません。
  • 休んでいる期間、会社から給与の支払いがないこと
    給与が支払われても、傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

受給期間と金額の目安

  • 期間: 支給が開始された日から、最長で1年6ヶ月です。
  • 金額: 1日あたり、直近12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3) が目安です。おおよそ、月給の3分の2程度とイメージしておくとよいでしょう。
目次

適応障害で傷病手当金を受け取るデメリットとは

心強い制度である一方、傷病手当金にはいくつかのデメリットや注意すべき点があります。事前に把握し、後悔のない選択をしましょう。

デメリット1:申請手続きや会社・医師との連携が必要

傷病手当金の申請は、自動的に行われるわけではありません。申請書を準備し、自分で記入する部分に加えて、会社と担当医師にそれぞれ記入を依頼する必要があります。

  • 本人: 申請書の記入、必要書類の準備
  • 会社: 勤務状況や給与支払いの有無を証明
  • 医師: 労務不能であることの医学的な証明

心身が辛い状況のなかで、これらの手続きを進めること自体が負担になる可能性があります。また、会社に休職を伝え、書類のやり取りをすることに心理的な抵抗を感じる方もいるでしょう。一般的に1ヶ月ごとに申請が必要なため、この手続きが継続的に発生します。

デメリット2:同じ病気で再び傷病手当金をもらう場合の注意点

傷病手当金の支給期間は「支給開始日から通算して1年6ヶ月」です。これは、一度復職しても、同じ適応障害で再び休職した場合、残りの期間しか受給できないことを意味します。

例: 適応障害で6ヶ月間傷病手当金を受給後、一度復職。その後、同じ適応障害が再発して再び休職した場合、受給できる残りの期間は1年となります。(1年6ヶ月 – 6ヶ月 = 1年)

期間がリセットされるわけではないため、無理な復職は避け、医師と相談しながら慎重に判断することが重要です。

デメリット3:生命保険の加入や更新に影響が出る可能性

傷病手当金の受給歴は、将来的に生命保険や医療保険、住宅ローンを組む際の団体信用生命保険(団信)などの審査に影響する可能性があります。

保険加入時の告知義務で、過去の病歴や服薬歴を申告する必要があるためです。傷病手当金の受給歴があると、

  • 新規加入が難しくなる
  • 特定の部位や疾病が保障対象外となる「部位不担保」などの条件が付く
  • 保険料が割増になる

といったケースが考えられます。これはあくまで可能性であり、必ずしも不利になるわけではありませんが、デメリットの一つとして知っておくべき点です。

デメリット4:傷病手当金と失業保険は同時受給できない

傷病手当金と失業保険(雇用保険の基本手当)は、目的が異なるため同時に受け取ることはできません。

制度 目的 対象者
傷病手当金 療養のため働けない人の生活保障 労務不能な人
失業保険 働けるが仕事がない人の生活保障 求職活動を行う人

療養中は傷病手当金を受給し、回復して働ける状態になったら失業保険に切り替える、という流れが一般的です。

その他:傷病手当金に関する知っておくべき「落とし穴」

上記以外にも、いくつか知っておきたい注意点があります。

  • 支給までに時間がかかる: 申請してから実際に振り込まれるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度かかる場合があります。その間の生活費は自分で賄う必要があるため、ある程度の貯蓄があると安心です。
  • 手取り額が減る: 支給額は給与の約3分の2であり、全額が補償されるわけではありません。
  • 税金・社会保険料の支払い: 傷病手当金自体は非課税ですが、住民税の支払いは必要です。また、休職中も社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は発生し、給与天引きがなくなるため、自分で納付する必要があります。

傷病手当金受給中の退職・転職に関する注意点

療養中に、退職や今後のキャリアについて考える方も少なくありません。ここでは、退職・転職に関する注意点を解説します。

退職後も傷病手当金はもらえる?継続給付の条件

在職中に傷病手当金を受給していた場合、以下の条件を満たせば退職後も引き続き受給できます。 これを「資格喪失後の継続給付」といいます。

  • 退職日(資格喪失日の前日)までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。
  • 退職日に傷病手当金を受給しているか、または受給できる状態(待期期間満了後)であること。
  • 退職日に出勤していないこと。

退職を考えている場合は、これらの条件を満たせるように、退職日を慎重に決定することが大切です。

傷病手当金から失業保険への切り替えタイミング

傷病手当金の受給が終了し、医師から「働ける状態になった」という許可が出たら、失業保険の受給手続きに移行できます。

ただし、失業保険の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間です。傷病手当金の受給が長引くと、失業保険を受け取れる期間が短くなったり、もらえなくなったりする可能性があります。

そうならないために、働けない状態が続く場合は、ハローワークで「受給期間の延長申請」を行いましょう。 これにより、本来の受給期間1年間に、働けなかった期間(最大3年間)を加えることができ、回復後に安心して失業保険を受け取ることができます。

傷病手当金を受け取りながら転職活動はできるか

原則として、傷病手当金を受け取りながらの転職活動はできません。

傷病手当金は「労務不能」な状態であることが受給の絶対条件です。転職活動(書類作成、面接など)は「働く意欲と能力がある」とみなされ、労務不能の状態とは矛盾するためです。

もし不正受給と判断された場合は、支給停止や返金を求められるリスクがあります。まずは焦らず療養に専念し、医師から就労許可が出てから、転職活動を始めるようにしましょう。

適応障害で傷病手当金「もらわない方がいい」と言われるケース

これまで解説したデメリットを踏まえると、以下のようなケースでは、あえて傷病手当金を申請しないという選択肢も考えられます。

  • 休職期間がごく短期間で済む見込みがある場合(待期期間3日+有給休暇で対応できるなど)
  • 申請手続きのストレスが、療養の妨げになると強く感じる場合
  • 経済的に十分な貯蓄があり、当面の生活に困らない場合
  • 近い将来、生命保険への加入や住宅ローンの契約を最優先で考えている場合

ただし、これらはあくまで一例です。多くの場合、傷病手当金は療養生活の大きな支えになります。一人で判断せず、家族や後述する相談先に相談してみましょう。

デメリットを踏まえた上で傷病手当金を賢く活用する

デメリットを理解した上で、制度をうまく活用して療養に専念することが大切です。

傷病手当金の申請方法と流れ

具体的な申請手順は以下の通りです。

  1. 申請書の入手: 加入している健康保険組合や協会けんぽのウェブサイトからダウンロードするか、会社の人事・総務担当者に依頼して入手します。
  2. 本人記入欄の作成: 自分の氏名や振込先口座などを記入します。
  3. 会社への依頼: 会社の担当部署に渡し、勤務状況などを証明する事業主記入欄を書いてもらいます。
  4. 医師への依頼: 通院している医療機関に持参し、労務不能であることの証明(療養担当者記入欄)を依頼します。
  5. 提出: すべての欄が記入された申請書を、加入している健康保険組合や協会けんぽに提出します。(会社経由で提出する場合もあります)

まずは会社の担当者や、かかりつけの医師に「傷病手当金の申請を考えている」と相談してみるのが第一歩です。

受給中に困った場合の相談先

申請や受給中に不安なことや疑問点が出てきたら、一人で抱え込まずに以下の窓口に相談しましょう。

  • 会社の総務・人事担当者: 手続きの流れや会社のルールについて教えてくれます。
  • 加入している健康保険組合・全国健康保険協会(協会けんぽ): 制度そのものに関する専門的な質問に答えてくれます。
  • 社会保険労務士(社労士): 手続きの代行を依頼したり、より専門的なアドバイスを受けたりすることができます(費用が発生します)。
  • かかりつけの医師やカウンセラー: 療養や復職のタイミングについて、医学的な観点から相談に乗ってくれます。

まとめ:適応障害での傷病手当金受給はデメリットを理解して判断しよう

適応障害で傷病手当金を受給することには、手続きの煩雑さや将来の保険審査への影響といったデメリットが存在します。しかし、これらは事前に知っておくことで対策を立てたり、心の準備をしたりすることができます。

何よりも大切なのは、経済的な不安を少しでも和らげ、心と体を休ませるための時間を確保することです。傷病手当金は、そのためのセーフティネットとして非常に有効な制度です。

この記事で解説したデメリットと注意点を踏まえ、ご自身の状況に合わせて、会社や医師、家族とよく相談しながら、後悔のない選択をしてください。


【免責事項】
本記事は、傷病手当金制度に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の状況に対するアドバイスを保証するものではありません。申請や手続きに関する詳細は、必ずご自身が加入している健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、または専門家にご確認ください。

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