部活や塾、友達との時間、そしてスマートフォン。やることがいっぱいで、ついつい夜更かししてしまう中学生は多いのではないでしょうか。
しかし、「もう少し寝たいな」と感じながら毎日を過ごしているなら、それは心と体が発している大切なサインかもしれません。
中学生の睡眠時間は、日中の眠気を解消するだけでなく、心身の成長や学習能力にも深く関わっています。この記事では、中学生にとって理想的な睡眠時間や日本の平均データ、睡眠不足がもたらす影響、そして今日からできる睡眠の質を高めるための具体的な方法を詳しく解説します。
中学生に必要な睡眠時間とは?理想・推奨時間
一体、中学生はどれくらい眠るのが良いのでしょうか。まずは公的な機関が示す推奨時間や、理想とされる睡眠時間について見ていきましょう。
厚生労働省が推奨する中高生の睡眠時間
厚生労働省が発表している「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、中高生(13歳〜18歳頃)に推奨される睡眠時間は8時間から10時間とされています。これは、心身の健康維持、学習能力の向上、そして健全な成長のために必要な時間として示されているものです。
中学生にとって理想的な睡眠時間
推奨時間である8〜10時間の中でも、特に成長期真っただ中である中学生にとっては、9時間程度が理想的と言えるでしょう。この時期は、身長が伸びたり、体つきが変化したりと、第二次性徴期の大切な時期です。睡眠中に多く分泌される成長ホルモンは、骨や筋肉の発達に欠かせません。理想的な睡眠時間を確保することは、将来の健康な体を作るための重要な投資なのです。
最低限これだけは確保したい睡眠時間
「毎日9時間なんて無理…」と感じるかもしれません。塾や部活で忙しい中学生にとって、理想的な睡眠時間を確保するのは難しい現実もあります。
しかし、健康へのリスクを考えると、最低でも7時間は確保したいところです。これを下回る日が続くと、日中の強い眠気や集中力の低下だけでなく、心身の不調につながる可能性が高まるため、生活習慣を見直すサインと捉えることが大切です。
中学生の平均的な睡眠時間・就寝時刻
では、実際の中学生はどのくらい眠っているのでしょうか。日本のデータを見てみましょう。
最新の調査データから見る平均睡眠時間
総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」によると、10歳から14歳の平均睡眠時間は8時間29分、15歳から19歳では7時間41分となっています。
中学生は、この10歳〜14歳と15歳〜19歳の両方の年齢層にまたがりますが、学年が上がるにつれて睡眠時間が短くなる傾向が見られます。推奨されている8〜10時間と比較すると、多くの中学生が睡眠不足の傾向にあることがわかります。
中学生の平均的な就寝時刻は何時?
睡眠時間が短くなる背景には、就寝時刻の遅さがあります。ある調査では、中学生の約半数が午後11時以降に就寝しているというデータもあります。スマートフォンやゲーム、動画視聴などが主な原因として挙げられ、夜更かしが習慣化している生徒が少なくありません。
もし朝6時半に起きる場合、9時間の睡眠を確保するには夜9時半に寝る必要があります。11時に寝ると睡眠時間は7時間半となり、理想には届かない計算になります。
小学生や他の年代との睡眠時間の比較
年代別の平均睡眠時間を比較すると、中学生の時期に睡眠時間が大きく減少することがよく分かります。
年代 | 平均睡眠時間(平日) |
---|---|
小学生(10〜14歳) | 8時間29分 |
中高生(15〜19歳) | 7時間41分 |
20代 | 7時間30分 |
30代 | 7時間34分 |
40代 | 7時間25分 |
※総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」より作成
小学生の時期と比べ、中学生・高校生になると1時間近く睡眠時間が短くなります。これは学業や部活動の負担増加、生活の夜型化などが影響していると考えられます。
中学生の睡眠不足が心身や学習に与える影響
「少し眠いだけ」と軽く考えてしまいがちな睡眠不足ですが、実は心身や学習面にさまざまな悪影響を及ぼします。
体への影響(成長、健康リスク)
- 成長の妨げ: 骨や筋肉の成長を促す「成長ホルモン」は、深い睡眠中に最も多く分泌されます。睡眠不足はこのホルモンの分泌を妨げ、健全な体の成長を阻害する可能性があります。
- 肥満リスクの増加: 睡眠不足は、食欲を増進させるホルモン(グレリン)を増やし、食欲を抑制するホルモン(レプチン)を減らすことがわかっています。これにより、太りやすい体質になるリスクが高まります。
- 免疫力の低下: 睡眠は、体の免疫システムを正常に保つためにも重要です。睡眠不足が続くと免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
心への影響(精神状態、ストレス)
- イライラしやすくなる: 睡眠不足は、感情をコントロールする脳の前頭前野の働きを鈍らせます。そのため、些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりします。
- 気分の落ち込み・不安: 精神を安定させる神経伝達物質「セロトニン」は、睡眠中に生成・調整されます。睡眠が足りないと、気分の落ち込みや不安感を感じやすくなることがあります。
- ストレスへの耐性低下: 十分な睡眠は、日中に受けたストレスを解消する役割も担っています。睡眠不足ではストレスが解消されず、心に負担が蓄積しやすくなります。
学習への影響(集中力、記憶力、成績)
- 集中力の低下: 授業中に眠くなったり、ぼーっとしたりして、先生の話が頭に入ってこないのは、典型的な睡眠不足のサインです。
- 記憶力の低下: 睡眠には、日中に学んだ情報を整理し、記憶として定着させる重要な働きがあります。寝る間を惜しんで勉強しても、睡眠不足ではその努力が十分に実を結ばない可能性があります。
- 成績への影響: 集中力や記憶力が低下すれば、当然、学業成績にも影響が出ます。睡眠時間をしっかり確保することこそが、効率的な学習と成績アップへの近道です。
ある中学生の例
A君はバスケ部に所属する中学2年生。毎日の練習で疲れ果てて帰宅しますが、つい夜遅くまでスマホゲームをしてしまい、睡眠時間はいつも6時間ほど。最近、授業中に集中できず、得意だった数学のテストでもミスが目立つようになりました。顧問の先生に相談したところ、まずは睡眠時間を見直すようアドバイスされ、夜10時半には寝るように心がけた結果、日中の眠気がなくなり、部活にも勉強にも再び集中できるようになりました。
中学生が睡眠時間を確保し、質を高める方法
ただ長く寝るだけでなく、「睡眠の質」を高めることも非常に重要です。ここでは、今日から実践できる具体的な方法を紹介します。
毎日同じ就寝・起床時間を心がける
私たちの体には、約24時間周期の体内時計(サーカディアンリズム)が備わっています。毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きることで、このリズムが整い、自然な眠気が訪れやすくなります。
休日に寝だめをすると、かえって体内時計が乱れて月曜日の朝がつらくなる原因に。休日も平日との差を1〜2時間以内に抑えるのが理想です。
寝る前に避けるべき習慣(スマホ、カフェインなど)
- スマートフォンの使用: スマホやタブレット、ゲーム機が発するブルーライトは、脳を覚醒させ、眠りを促すホルモン「メラトニン」の分泌を抑制します。少なくとも就寝1〜2時間前には使用を終え、寝室に持ち込まないルールを作るのがおすすめです。
- カフェインの摂取: コーヒーや紅茶、緑茶、エナジードリンクに含まれるカフェインには強い覚醒作用があります。効果は数時間続くため、夕方以降は摂取を避けましょう。
- 激しい運動: 就寝直前の激しい運動は交感神経を刺激し、寝つきを悪くします。ストレッチなどの軽い運動はリラックス効果があるのでおすすめです。
快適な睡眠環境を整える
- 寝室の明るさ: 寝室はできるだけ暗くしましょう。遮光カーテンを利用するのも良い方法です。
- 温度と湿度: 快適だと感じる室温は人それぞれですが、一般的に夏は25〜26℃、冬は22〜23℃程度、湿度は50〜60%が目安とされています。
- 音: 静かな環境が理想です。外部の音が気になる場合は、耳栓などを活用するのも一つの手です。
規則正しい生活習慣(食事、運動)の重要性
- 朝食をしっかり摂る: 朝の光を浴び、朝食を食べることで、リセットされた体内時計が正確に動き始めます。
- 日中の適度な運動: 日中に適度な運動をすると、心地よい疲労感から夜の寝つきが良くなります。部活などで体を動かすことは、快眠にも繋がります。
- 入浴: 就寝1〜2時間前に、ぬるめのお湯(38〜40℃)にゆっくり浸かると、体の深部体温が一旦上がり、その後に下がる過程で自然な眠気が誘発されます。
必要な睡眠時間には個人差がある
これまで8〜10時間が推奨されていると解説してきましたが、これはあくまで目安です。必要な睡眠時間には個人差があります。短い睡眠時間でも平気な「ショートスリーパー」や、長く寝る必要がある「ロングスリーパー」といった体質の人もいます。
自分に合った睡眠時間を見つけるには
自分にとって最適な睡眠時間を見つけるには、以下の点をチェックしてみましょう。
- 目覚まし時計なしで自然に起きられるか
- 日中に強い眠気を感じることなく、集中して活動できるか
- 起きた時に「すっきりした」と感じられるか
これらの条件を満たせる睡眠時間が、あなたにとってのベストな睡眠時間と言えるでしょう。週末などを利用して、さまざまな睡眠時間を試してみるのも良い方法です。
まとめ:中学生の睡眠時間は成長と学習の基盤
中学生にとって、適切な睡眠時間を確保することは、心と体の健康な成長、そして学習効率を高めるための土台となります。
- 理想の睡眠時間は8〜10時間。まずは7時間以上の確保を目指しましょう。
- 睡眠不足は、成長、メンタル、成績に悪影響を及ぼします。
- 寝る前のスマホをやめ、生活リズムを整えることが質の高い睡眠に繋がります。
忙しい毎日だからこそ、睡眠の重要性を見直し、自分に合った睡眠習慣を確立することが、充実した中学校生活を送るための鍵となります。今日からできることから、ぜひ始めてみてください。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。睡眠に関する悩みや心身の不調が続く場合は、専門の医療機関にご相談ください。
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