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診断書をあとから書いてもらうのは可能?|いつまで?費用・手順を解説

診断書が必要になったとき、その場で医師にお願いするのを忘れてしまったり、後になって急遽必要になったりすることは少なくありません。
特に、体調がすぐれなかったり、予期せぬ事態が発生したりした際には、診断書の手配まで気が回らないこともあるでしょう。
「あとから書いてもらえるのだろうか?」「どれくらい時間がかかるの?」といった疑問や不安を抱える方は多いはずです。

この記事では、診断書を後日、あるいは過去の受診内容に基づいてあとから書いてもらうことが可能なのか、その際の手続き方法や知っておきたい注意点について、医療機関の視点から詳しく解説します。
診断書が必要になった場合に慌てないためにも、ぜひ参考にしてください。

後日発行が可能な理由(カルテ保存期間など)

診断書の後日発行が可能な根拠の一つに、医師法によって医師に義務付けられているカルテ(診療録)の作成・保存義務があります。

記録義務の対象 保存期間
カルテ(診療録) 診療日から5年間
処方せん 交付の日から3年間
手術記録 手術の日から5年間
看護記録 記録した日から5年間
検査記録 診療日から5年間

医師は、患者さんを診察したら、その内容をカルテに詳細に記載する義務があります。
このカルテには、患者さんの氏名、性別、年齢、住所といった基本情報のほか、受診日、主訴(主な症状)、現病歴、既往歴、診察所見、検査結果、診断、治療内容、処方内容などが記録されます。

医療機関は、このカルテを診療が終了した日から法律で定められた期間(通常5年間)保存する義務があります。
つまり、患者さんの受診時の状況や診断、治療内容は、カルテという形で記録として残されているため、後日であっても、その記録に基づいて医師が診断書を作成することが可能なのです。

カルテが適切に保存されていれば、医師は後日依頼があったとしても、診察時の正確な情報を参照しながら診断書を作成できます。
これが、診断書を後日発行してもらえる基本的な理由となります。

後日発行を依頼する一般的な方法

診断書の後日発行を依頼する最も一般的な方法は、受診した医療機関の受付窓口に直接問い合わせるか、電話で連絡することです。

  • 電話で問い合わせる: 受診した医療機関の代表電話番号に連絡し、「診断書を後日発行していただきたいのですが」と伝えましょう。
    その際、以下の情報がスムーズな対応につながります。
    • 患者さんの氏名(フルネーム)
    • 受診した時期や年月日
    • 受診した診療科(複数の科にかかっている場合)
    • 診断書の提出先(会社、学校、保険会社など)
    • 診断書の具体的な内容(例:「〇月〇日から△月△日まで就労不能であることの証明」「〇〇病と診断されたことの証明」など)

    病院の担当者がカルテの有無や医師の指示を確認し、手続きについて案内してくれます。

  • 直接来院して受付に依頼する: 受付時間内に医療機関を訪れ、窓口で診断書の後日発行を依頼します。
    この場合も、電話での依頼と同様に上記の情報を伝える必要があります。
    来院前に電話で一度問い合わせておくと、必要な持ち物(本人確認書類など)や手続きの流れを確認できるためスムーズです。
  • オンラインまたは文書申込書: 一部の医療機関では、ウェブサイト上で診断書発行の申し込みを受け付けていたり、専用の申込書に記入して提出する必要があったりします。
    これは医療機関によって異なるため、事前にウェブサイトを確認するか、電話で問い合わせて確認しましょう。

いずれの方法でも、依頼時には具体的な診断書の用途や、記載してほしい期間など、可能な限り詳細を伝えることが重要です。
これにより、医療機関側も適切な書式や内容で診断書を作成しやすくなります。

目次

診断書をさかのぼって書いてもらうのは難しい理由

診断書は後日発行が可能であると説明しましたが、「さかのぼって書いてもらう」という点には注意が必要です。
ここで言う「さかのぼって」とは、主に「初診日よりも前の期間について、病状などを証明してほしい」といったケースを指します。
このような依頼は、原則として非常に難しい、あるいは不可能な場合が多いです。

医師が証明できるのは「診察した時点」

医師が診断書で証明できるのは、あくまで「医師が実際に患者さんを診察し、医学的な根拠に基づいて判断した時点」での患者さんの状態や診断、治療内容に限られます。
診断書は、医師が専門家としての責任において作成する公的な書類であり、記載内容の正確性が極めて重要だからです。

例えば、「〇月〇日の診察の結果、〇〇病と診断し、××の治療を行った」といった内容は、その日の診察に基づいてカルテに記録されているため、後日でも証明できます。
しかし、「〇月〇日の診察よりも前から、〇〇の症状があったことを証明してほしい」といった依頼は、医師がその期間に実際に診察していないため、正確な病状の把握や診断の根拠がありません。

初診日より前の期間は原則不可となる理由

初診日より前の期間について診断書を発行することが原則としてできないのは、以下の理由によります。

  • 診察の記録がない: 当たり前のことですが、患者さんが医療機関を受診していない期間には、医師による診察の記録(カルテ)が存在しません。
  • 医学的な根拠の欠如: 診断や病状の評価は、医師の診察、問診、身体所見、検査結果など、医学的な根拠に基づいて行われます。
    診察を受けていない期間については、これらの根拠が全くないため、医師が責任を持って病状を証明することは不可能です。
  • 証明義務の範囲外: 医師の証明義務は、自らが関与した診療行為の範囲に限られます。
    過去に他の医療機関で受けた診療内容や、医師が直接診察していない期間の病状について、診断書を作成することはできません。

ただし、全くさかのぼれないわけではありません。
例えば、初診時に患者さんから詳細な問診を行い、「症状は〇日前から始まった」といった内容がカルテに記録されている場合は、その記録に基づいて「〇月〇日の診察時、患者さんの訴えによれば、症状は〇日前から出現していた」といった形で記載することは可能な場合があります。
しかし、これも患者さんの「訴え」を記載するにとどまり、医師がその期間の病状を医学的に保証するものではありません。

したがって、「診断書をあとから書いてもらう」というのは、主に「過去に受診した日の診療内容や病状について、後日改めて診断書として発行してもらう」という意味合いであり、「過去の未受診期間の病状を証明してもらう」こととは根本的に異なる点に注意が必要です。

診断書をあとから書いてもらう際の手順と注意点

診断書をあとから書いてもらうためには、いくつかの手順を踏む必要があります。
また、円滑に手続きを進めるためには、いくつかの注意点も押さえておくことが大切です。

受診した医療機関へ問い合わせる

診断書が必要になったら、まずは受診した医療機関に連絡を取りましょう。

  • 連絡手段の確認: 電話、医療機関のウェブサイトにある問い合わせフォーム、または直接来院など、医療機関が推奨する連絡手段を確認します。
    多くの場合、電話での問い合わせが最も一般的で、スムーズな対応が期待できます。
  • 必要事項を伝える: 問い合わせ時には、以下の情報を正確に伝えます。
    • 患者さんの氏名、生年月日(本人確認のため)
    • いつ頃(年月日)、どの診療科を受診したか
    • どのような目的で診断書が必要か(例:会社への提出、保険金の請求、学校への提出など)
    • 診断書に記載してほしい具体的な内容や期間(もし指定がある場合)
    • 希望する診断書の書式(提出先から指定の書式があるかなど)
  • 手続き方法の確認: 医療機関の担当者から、診断書発行の手続き方法、必要書類、費用、完成までの期間などについて説明を受けます。
    • 来院が必要か、郵送でのやり取りが可能か
    • 必要な本人確認書類(保険証、運転免許証など)
    • 診断書発行申込書の有無
    • 代理人が受け取る場合の委任状の必要性

    不明な点があれば、遠慮なく質問しましょう。

再診が必要となる主なケース

診断書の発行は、必ずしも再診が必要となるわけではありません。
過去のカルテ記録に基づいて作成できる場合は、来院せずに書類作成のみで対応してもらえることもあります。
しかし、以下のような場合には、診断書作成のために再診が必要となることがあります。

  • 病状が変化している場合: 診断書に現在の病状や今後の見通しを含めて記載する必要があるが、前回の受診から時間が経過しており、病状が変化している可能性がある場合。
  • 診断書の内容が複雑な場合: 詳細な身体所見や機能評価が必要な場合、あるいは障害認定など、特定の基準に基づいた記載が求められる場合。
  • 診断書作成のための情報が不足している場合: カルテ記録だけでは診断書の目的に沿った情報が十分に得られない場合や、医師が書類作成にあたって改めて患者さんの状況を確認する必要があると判断した場合。
  • 特定の診断書書式に対応するため: 提出先から指定された特別な書式があり、その項目を埋めるために最新の診察や検査が必要となる場合。
  • 医師の判断: 担当医が医学的な判断として、診断書発行前に患者さんの状態を再確認することが適切だと判断した場合。

再診が必要かどうかは、依頼内容や医師の判断によります。
医療機関からの案内に従って対応しましょう。

発行にかかる費用と期間の目安

診断書の発行は、多くの場合、健康保険が適用されない自費診療扱いとなります。
費用は医療機関によって異なり、診断書の種類(簡単なものか、詳細なものか)によっても変動します。

診断書の種類(例) 費用の目安(自費) 発行期間の目安
就労・通学許可書、簡単な証明書 3,000円~5,000円 数日~1週間程度
傷病手当金・休業損害証明書 5,000円~10,000円 1週間~2週間程度
障害認定診断書 5,000円~10,000円 2週間~1ヶ月程度
その他の詳細な診断書 5,000円~10,000円以上 1週間~数週間

上記はあくまで一般的な目安であり、医療機関や地域によって大きく異なります。
必ず依頼時に直接確認してください。

発行にかかる期間も、医療機関の体制、医師の業務状況、診断書の内容の複雑さによって異なります。
通常は数日から数週間程度を見ておくと良いでしょう。
医師は通常の診療業務の合間に書類作成を行うため、依頼が集中している時期や、内容を慎重に検討する必要がある場合は、さらに時間がかかることもあります。
提出期限がある場合は、十分に余裕を持って依頼することが重要です。

診断書をもらい忘れた場合の具体的な対処法

もし診断書をその場で医師にお願いするのを忘れてしまった場合は、以下の手順で対処しましょう。

  • 受診した医療機関に速やかに連絡: 自宅に戻ってからでも構いませんので、できるだけ早く受診した医療機関に電話で連絡します。
    「〇月〇日に診察を受けた者ですが、診断書をいただき忘れてしまいました」と伝え、発行をお願いしたい旨を伝えます。
  • 必要事項を伝える: 上記「受診した医療機関へ問い合わせる」で説明した必要事項(氏名、受診日、目的など)を正確に伝えます。
  • 医療機関の案内に従う: 医療機関から、来院が必要か、郵送で対応可能か、費用はいくらかかるか、いつ頃完成するかなどの案内があります。
    その案内に従って手続きを進めます。
    診断書作成申込書の提出が必要な場合もあります。
  • 診断書の受け取りと支払い: 完成したら、医療機関の指示に従って診断書を受け取ります。
    受け取り時に費用を支払う場合が多いです。
    郵送の場合は、診断書と一緒に請求書が送られてくることもあります。

もらい忘れた場合でも、焦らず落ち着いて医療機関に連絡することが大切です。
受診の事実と診療内容がカルテに残っていれば、原則として後日発行してもらえます。

医療保険請求のための診断書は後日発行できる?

生命保険や医療保険の入院給付金や手術給付金などを請求する際には、保険会社指定の診断書(または医療機関所定の診断書)の提出を求められるのが一般的です。
これらの診断書も、原則として後日発行を依頼することが可能です。

保険会社への請求期限を確認する

保険金の請求には、保険会社によって「請求期限」が設けられています。
通常、入院や手術が終わってから〇年以内などと定められています。
この請求期限内に保険会社に必要書類を提出しないと、保険金を受け取れなくなる可能性があります。

診断書の発行には時間がかかる場合があるため、保険会社への請求期限を確認した上で、余裕を持って医療機関に診断書の発行を依頼することが非常に重要です。
保険会社に連絡し、必要な診断書の種類や請求期限を事前に確認しておきましょう。

カルテ保存期間内であれば発行依頼可能

医療保険請求のための診断書も、医療機関に保存されているカルテ記録に基づいて作成されます。
前述の通り、カルテは法律で診療終了日から5年間保存が義務付けられています。

したがって、保険金を請求したい入院や手術、通院などの診療が、医療機関のカルテ保存期間内(通常5年以内)であれば、診断書の発行を依頼することは可能です。
ただし、保存期間を過ぎた古いカルテについては、医療機関によっては既に破棄されており、診療の事実や内容を確認できないため、診断書の発行ができなくなる可能性があります。

保険金請求のための診断書が必要になった場合は、まずは保険会社に連絡して必要書類と請求期限を確認し、次に医療機関に連絡して診断書の発行が可能かどうか、費用や期間はどのくらいかかるかを確認するという流れで進めるのがスムーズです。

診断書をあとから書いてもらえないケースとは

原則として後日発行が可能な診断書ですが、残念ながら、例外的に発行してもらえないケースも存在します。

診断や治療の事実が確認できない場合

最も典型的なのは、診断書を作成する元となる「診断や治療の事実」が、医療機関で確認できない場合です。

  • カルテ保存期間の経過: 診療から長期間(通常5年以上)が経過し、既にカルテが法律に基づき破棄されている場合。
    この場合、診療の記録が存在しないため、診断書を作成することはできません。
  • そもそもその医療機関を受診していない: 他の医療機関で受けた診療について、別の医療機関に診断書の発行を依頼しても、当然ながら発行は不可能です。
  • 自費診療で記録が不十分: 非常に稀なケースですが、保険診療外の特殊なケースで、通常のカルテ記録とは異なる形で記録されており、後日診断書の作成に必要な情報が十分に確認できない場合など。(ただし、多くの医療機関では自費診療でも適切な記録を行っています)

医師の専門外の内容である場合

診断書は、医師が自身の専門的な知識と、実際に患者さんを診察した結果に基づいて作成するものです。
そのため、以下のような内容は診断書の対象外となる場合が多く、発行してもらえません。

  • 医師の専門外の疾患や状態に関する証明: 例えば、精神科医に内科的な病状の詳細な診断書作成を依頼するなど、医師の専門分野ではない内容。
  • 他の医療機関で行われた診療内容の評価や証明: 他の病院で受けた手術の適切性について証明するなど、自らが関与していない診療行為に関する内容。
  • 医学的な判断を超えた内容: 「〇〇社のサービスを利用した方が良い」といった、医学とは関係のない特定の行為やサービスの推奨、あるいは将来の不確実な出来事についての断定的な証明など。
  • 不正な内容や虚偽の内容: 事実に反する内容や、患者さんの自己申告のみに基づいた医学的根拠のない病状の証明など。
    医師は虚偽の診断書を作成することはできませんし、依頼すべきでもありません。

医療機関の内部規程や方針による場合

多くの医療機関は、診断書等の文書作成に関する内部規程を定めています。
以下のような場合、その規程や医療機関の方針により、後日発行が難しい、あるいは特定の条件がつくことがあります。

  • 文書作成の対象期間や書式に制限がある: 非常に古い受診に関する診断書発行には応じない、あるいは医療機関所定の書式以外での作成には応じない、といった規程がある場合。
  • 担当医が不在または退職: 担当医が既に退職している場合など、カルテの内容について詳細な確認が必要な際に、対応が難しくなるケースがあります。
    ただし、多くの場合は他の医師がカルテに基づいて対応しますが、医療機関によっては対応できないこともあり得ます。
  • 依頼内容が医療機関の対応範囲を超える: 非常に複雑な内容の診断書や、作成に膨大な時間を要する診断書など、医療機関の通常の業務範囲を超えると判断される場合。

これらのケースに該当するかどうかは、個別の状況や医療機関の方針によります。
診断書の発行を依頼する前に、可能性として「発行してもらえないケースもある」ということを理解しておき、早めに医療機関に相談することが重要です。

まとめ:診断書をあとから書いてもらうためにすべきこと

診断書をその場で受け取るのを忘れてしまったり、後になって必要になったりした場合でも、受診した医療機関に依頼すれば、原則としてあとから発行してもらうことは可能です。
これは、医療機関がカルテを一定期間保存しているため、過去の診療記録に基づいて診断書を作成できるからです。

しかし、「さかのぼって」という場合に、初診日より前の期間の病状を証明してもらうことは、医師がその期間に診察していないため、医学的な根拠がなく原則として不可能です。
医師が証明できるのは、あくまで実際に診察した時点での患者さんの状態や診断、治療内容に限られます。

診断書をあとからスムーズに書いてもらうために、以下の点を心がけましょう。

  • 速やかに医療機関に連絡する: 診断書が必要になったら、できるだけ早く受診した医療機関に電話などで連絡しましょう。
    時間が経ちすぎると、カルテの確認などに時間がかかったり、場合によってはカルテ保存期間を過ぎてしまう可能性もあります。
  • 正確な情報を伝える: 患者さんの氏名、受診日、受診した診療科、診断書の提出先、必要な内容や期間など、依頼に必要な情報を正確に伝えましょう。
  • 医療機関の案内に従う: 再診が必要となる場合や、費用、完成までの期間などは医療機関によって異なります。
    医療機関からの案内に従って、必要な手続き(来院、書類提出、支払いなど)を行いましょう。
    特に提出期限がある場合は、期間に余裕を持って依頼することが非常に重要です。
  • 費用がかかることを理解しておく: 診断書の発行は多くの場合、健康保険適用外の自費診療となります。
    費用は医療機関や診断書の種類によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
  • 発行してもらえないケースがあることを認識する: カルテ保存期間の経過や、医師の専門外の内容、医療機関の内部規程などにより、診断書を発行してもらえないケースも存在します。

診断書は、様々な手続きや証明に必要な大切な書類です。
後日発行が必要になった際には、この記事を参考に、落ち着いて適切な手続きを進めてください。

【免責事項】

この記事は、一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為や医療機関の対応を保証するものではありません。
診断書の発行に関する具体的な手続きや費用、対応の可否については、必ず実際に受診された医療機関に直接お問い合わせください。
また、法律や制度は変更される可能性があります。
最新の情報は、関係省庁や専門機関にご確認ください。

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