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寝不足で動悸が起こるのはなぜ?原因を知って自分でできる改善策

寝不足は、私たちの心身にさまざまな影響を与えます。その中でも、多くの人が経験し、不安を感じやすい症状の一つに「動悸」があります。なぜ寝不足になると動悸がするのでしょうか?それは、体が休息を求めているサインかもしれませんし、自律神経のバランスが崩れていることが原因かもしれません。本記事では、寝不足による動悸のメカニズム、考えられる原因、動悸以外の関連症状、今日からできる対処法、そして「これは危険かも」と感じたときに病院に行くべき目安について、詳しく解説します。気になる動悸について正しく理解し、体の声に耳を傾けてみましょう。

目次

寝不足で動悸が起こる原因は?

私たちの体は、眠っている間に心身を修復し、エネルギーを蓄えています。しかし、十分な睡眠が取れない状態が続くと、体の機能が正常に働かなくなり、さまざまな不調が現れます。動悸もその一つです。寝不足によって動悸が引き起こされる主な原因は、自律神経の乱れ、ストレスや疲労の蓄積、そしてそれに伴う生理的な心拍数の増加(洞性頻脈)などが考えられます。

自律神経の乱れが大きく関与

自律神経は、私たちの意識とは関係なく、心臓の動き、呼吸、体温調節、消化といった生命維持に不可欠な機能をコントロールしています。この自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」という二つの神経があり、それぞれがアクセルとブレーキのように働き、体のバランスを保っています。

交感神経と副交感神経のバランス

健康な状態では、活動している昼間は交感神経が優位になり、心拍数や血圧を上げて体を活動モードにします。一方、休息している夜間やリラックスしている時は副交感神経が優位になり、心拍数や血圧を下げて体を休息モードにします。
しかし、寝不足が続くと、体は「休息できていない」「非常事態だ」と判断し、体を無理に活動させようとします。このとき、活動や興奮を司る交感神経が過剰に優位になってしまいます。通常であれば副交感神経が優位になるべき時間帯でも交感神経が活発に働き続けるため、自律神経全体のバランスが崩れてしまうのです。この交感神経の過活動が、心臓に刺激を与え、心拍数を速めたり、強く打たせたりすることで動悸として感じられるようになります。

ストレスや疲労の蓄積

寝不足は、それ自体が体にとって大きなストレスです。また、日中に受けた精神的なストレスや肉体的な疲労が十分に回復されないまま蓄積されていきます。ストレスを感じると、私たちの体は「コルチゾール」などのストレスホルモンを分泌し、心拍数や血圧を上げて体を戦闘態勢にします。

寝不足の状態では、これらのストレスや疲労から回復する機会が失われるため、ストレス反応が継続したり、より敏感になったりします。その結果、常に体が緊張状態に置かれ、交感神経が優位になりやすくなります。これも、寝不足による動悸を引き起こす重要な要因となります。疲労が蓄積すると、体は少しの刺激にも過敏に反応するようになり、軽い作業や階段の上り下りなど、普段なら何ともない状況でも心臓がドキドキしたり、息切れを感じやすくなったりすることがあります。これは、体が休息と回復を強く求めているサインと言えるでしょう。

洞性頻脈(どうせいひんみゃく)とは?

寝不足やストレス、疲労によって自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になると、心臓の拍動をコントロールしている洞結節(どうけっせつ)からの電気信号が速くなります。これにより、心臓の拍動が速くなる状態を「洞性頻脈」と呼びます。

洞性頻脈は、運動や興奮、発熱、貧血、カフェインの摂取など、生理的な反応としても起こるもので、多くの場合、病的なものではありません。安静時の心拍数が1分間に100回を超える状態を指すことが多いですが、個人差があります。寝不足による動悸の多くは、この洞性頻脈が原因であると考えられています。心臓自体に問題があるわけではなく、自律神経のバランスが崩れた結果として心臓が過剰に反応している状態と言えます。しかし、自分でこれが洞性頻脈かどうかを判断することは難しいため、気になる場合は医師に相談することが大切です。

寝不足による動悸以外の症状

寝不足が引き起こす不調は、動悸だけにとどまりません。自律神経の乱れは全身に影響するため、動悸と同時にさまざまな症状が現れることがあります。これらの症状は、体からの重要なサインである可能性があります。

胸痛や息苦しさを伴う場合

寝不足による自律神経の乱れからくる動悸に加えて、胸痛や息苦しさを感じることがあります。これらは、不安やストレスによる過換気症候群(過呼吸)の症状であることもありますが、心臓や肺に何らかの問題が隠れている可能性も否定できません。

例えば、自律神経の乱れによって胸部の筋肉が緊張したり、呼吸が浅くなったりすることで、息苦しさを感じることがあります。また、ストレスや不安が強いと、実際に胸の圧迫感や痛みを訴える方もいます。しかし、特に今まで経験したことのない強い胸痛や、安静にしていても続く息苦しさがある場合は、狭心症や心筋梗塞、肺塞栓症などの重篤な病気の可能性も考えられます。寝不足だからと自己判断せず、これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

吐き気やめまいを感じたら

寝不足による自律神経の乱れは、消化器系や平衡感覚にも影響を及ぼすことがあります。そのため、動悸と同時に吐き気やめまいを感じることも珍しくありません。

自律神経は胃腸の動きもコントロールしているため、バランスが崩れると吐き気や胃の不快感、食欲不振などが起こることがあります。また、血圧の調節にも関与しているため、立ち上がった時に血圧が急に下がる起立性調節障害のような症状が現れ、めまいや立ちくらみを感じることがあります。

ただし、吐き気やめまいも、脳の疾患や他の病気のサインである可能性もあります。特に、激しいめまいふらつきが強くまっすぐ歩けない頭痛を伴う手足のしびれや麻痺があるといった場合は、脳卒中など緊急性の高い病気の可能性も考えられます。これらの症状が動悸と同時に現れた場合は、単なる寝不足のせいだと軽視せず、注意が必要です。

寝不足動悸の対処法と解消法

寝不足による動悸の多くは、生活習慣の見直しによって改善が見込めます。心臓自体に病気がない場合は、根本的な原因である寝不足やストレス、疲労を解消することが最も効果的な対処法となります。今日から実践できる具体的な方法を見ていきましょう。

睡眠の質と時間を改善する

最も直接的な対処法は、十分な睡眠時間を取り、睡眠の質を高めることです。成人に必要な睡眠時間は個人差がありますが、一般的に7〜8時間程度と言われています。自分の体に合った睡眠時間を見つけることが大切です。

睡眠の質を高めるためには、以下の「睡眠衛生」と呼ばれる習慣を試してみましょう。

  • 規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。休日も平日との差を少なくするのが理想です。
  • 寝る前の習慣: 寝る前はリラックスできる時間を持ちましょう。ぬるめのお風呂に入る、軽い読書をする、ストレッチをするなどが効果的です。スマートフォンやパソコンの強い光(ブルーライト)は脳を覚醒させるため、寝る1時間前からは使用を控えましょう。
  • 寝室環境: 寝室は暗く、静かで、快適な温度・湿度に保ちましょう。寝具も自分に合ったものを選びます。
  • 日中の活動: 適度な運動は睡眠の質を高めますが、寝る直前の激しい運動は避けましょう。日中に日光を浴びることも、体内時計を整えるのに役立ちます。

ストレスマネジメントの実践

寝不足と相互に関連するストレスに対処することも重要です。自分に合ったストレス解消法を見つけ、日々の生活に取り入れましょう。

  • リラクゼーション: 深呼吸、瞑想、ヨガなど、心身をリラックスさせる時間を持つことで、交感神経の興奮を鎮める効果が期待できます。
  • 趣味や娯楽: 自分の好きなこと、楽しいと感じることに時間を使うことは、ストレス解消につながります。
  • 適度な運動: ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、ストレスホルモンの分泌を抑え、気分転換にもなります。
  • 休息: 忙しい日々の中でも、意識的に休息時間を作りましょう。短い休憩や昼寝(ただし、長すぎると夜の睡眠に影響します)も効果的です。
  • 人に話す: 悩みや不安を信頼できる家族や友人に話すことも、ストレスを軽減するのに役立ちます。

生活習慣の見直し

睡眠やストレスだけでなく、日々の生活習慣全体を見直すことも、動悸の改善につながります。

  • 食事: バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、カフェインやアルコールの摂りすぎは動悸を誘発しやすいので注意が必要です。寝る前の大量の飲食も避けましょう。マグネシウムやカリウムといったミネラルは心臓の働きに関わるため、意識して摂取するのも良いかもしれません。
  • 禁煙: 喫煙は血管を収縮させ、心臓に負担をかけます。禁煙は心臓の健康にとって非常に重要です。
  • 水分補給: 脱水も動悸を引き起こす原因となることがあります。特に暑い時期や運動後には、こまめに水分を補給しましょう。
対処法 具体的な行動 効果
睡眠改善 – 毎日同じ時間に就寝・起床
– 寝る前1時間スマホNG
– 寝室を快適な環境に
自律神経バランスの回復、心身の疲労回復
ストレス対策 – 深呼吸・瞑想
– 趣味の時間を作る
– 適度な運動
– 信頼できる人に相談
ストレスホルモンの抑制、交感神経の過活動沈静
生活習慣 – カフェイン・アルコールを控える
– バランスの取れた食事
– 禁煙
– 十分な水分補給
心臓への負担軽減、全身の健康増進

これらの対処法を継続することで、寝不足による自律神経の乱れが改善され、動悸の症状が軽減されることが期待できます。ただし、すぐに効果が出なくても焦らず、根気強く続けることが大切です。

寝不足動悸で病院に行く目安

寝不足による動悸の多くは、一時的なものであったり、生活習慣の改善で良くなったりします。しかし、動悸が続く場合や、特定の症状を伴う場合は、背景に別の病気が隠れている可能性もあります。どのような場合に病院に行くべきかを知っておくことは、早期発見・早期治療のために非常に重要です。

危険な症状チェックリスト

以下の症状が一つでも当てはまる場合は、単なる寝不足やストレスによるものと決めつけず、速やかに医療機関を受診することを強く推奨します。

  • 強い胸痛:締め付けられるような、圧迫されるような痛み。特に冷や汗を伴う場合。
  • 痛みが他の場所に広がる:左肩、腕、顎、背中などに痛みが放散する場合。
  • 安静にしていても動悸が強い、あるいは長く続く:数分以上続く、頻繁に起こる。
  • 息苦しさが強い:呼吸が困難に感じる、横になっても息がしにくい。
  • 意識が遠のく、あるいは意識を失う:失神やそれに近い感覚を伴う場合。
  • めまいや立ちくらみが持続する、あるいは強いふらつきがある
  • 発熱や体重減少を伴う動悸
  • 手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなど、脳卒中を疑わせる症状を伴う場合。
  • 動悸の感じ方が今までと明らかに違う:不規則な脈を感じる、脈が飛ぶ感じが頻繁にある。
  • 持病(心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺疾患など)がある方で動悸を感じた場合

これらの症状は、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気、不整脈(心房細動、期外収縮など)、肺の病気、甲状腺機能亢進症、貧血、パニック障害など、様々な病気のサインである可能性があります。寝不足がきっかけで症状が出たとしても、根本原因が他にあることも考えられます。

寝不足と心臓病リスクの関係性

慢性的な寝不足は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満といった生活習慣病のリスクを高めることが知られています。これらの生活習慣病は、動脈硬化を進行させ、将来的には狭心症や心筋梗塞、脳卒中といった重篤な心血管疾患につながる可能性があります。

また、寝不足は心臓の電気的な安定性にも影響を与える可能性が指摘されており、不整脈のリスクを高めることも示唆されています。寝不足自体が直接的に心臓病を引き起こすわけではありませんが、心臓病のリスク因子を増やしたり、既存の心臓病の症状を悪化させたりする要因となり得ます。

したがって、「寝不足だから動悸がするだけだろう」と安易に自己判断せず、特に動悸が頻繁に起こる、強い症状を伴うといった場合は、心臓病のリスク評価も含めて医療機関で相談することが賢明です。

何科を受診すべき?

動悸で医療機関を受診する場合、まずは循環器内科を受診するのが最も適切です。循環器内科は、心臓や血管の病気を専門としており、動悸の原因を詳しく調べることができます。心電図検査、ホルター心電図(24時間心電図)、心臓超音波検査、血液検査などを行い、不整脈や心臓の構造的な異常がないかを確認します。

もし、近くに循環器内科がない場合や、動悸以外の症状(めまい、吐き気、息苦しさなど)が強い場合は、内科を受診しても良いでしょう。内科医が必要と判断すれば、専門科である循環器内科やその他の適切な科(呼吸器内科、脳神経内科、精神科など)へ紹介してくれます。

問診の際には、いつから動悸が始まったか、どのような時に起こるか(安静時、運動時、寝不足時など)、どのくらいの時間続くか、他の症状(胸痛、息苦しさ、めまいなど)があるか、寝不足やストレスの状況、既往歴、服用中の薬などを詳しく伝えるようにしましょう。正確な情報提供は、適切な診断に繋がります。

まとめ|寝不足動悸は体のサイン

「寝不足で動悸がする」という経験は、多くの方が一度は感じたことがあるかもしれません。この記事で見てきたように、寝不足による動悸の多くは、自律神経の乱れやストレス、疲労が原因で起こる生理的な反応(洞性頻脈など)であると考えられます。これは、あなたの体が「そろそろ休息が必要だよ」と送っている大切なサインです。

しかし、動悸は心臓病をはじめとする様々な病気のサインである可能性もゼロではありません。特に、強い胸痛、息苦しさ、めまい、失神などの症状を伴う場合や、動悸が頻繁に、あるいは長く続く場合は、安易に自己判断せず、医療機関を受診することが非常に重要です。

日頃から十分な睡眠時間を確保し、質の高い睡眠を心がけ、ストレスを適切に管理することが、寝不足による動悸の予防と改善につながります。規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動を取り入れ、カフェインやアルコールの摂りすぎに注意しましょう。

あなたの体は、様々なサインを通してあなたに語りかけています。動悸を感じたら、それは単なる不快な症状としてではなく、体からのメッセージとして受け止め、ご自身の心身の状態を見直す良い機会と捉えてみてください。そして、もし不安を感じたり、ご紹介した危険なサインに当てはまる場合は、迷わず医療機関で相談しましょう。適切なケアを行うことで、心身ともに健康な状態を保つことができます。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。個々の症状については、必ず医師にご相談ください。

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