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「記憶喪失」とは?原因・種類・認知症との違いを解説

記憶喪失は、過去の出来事や情報、あるいは新しい情報を記憶したり思い出したりする能力が失われる状態を指します。単に「物忘れがひどくなった」というレベルから、日常生活に支障をきたす重度のものまで様々なタイプがあり、その原因も多岐にわたります。一過性のものもあれば、進行性の病気によって引き起こされる場合もあります。記憶喪失は、本人だけでなく、家族や周囲の人々にとっても大きな不安や混乱をもたらすことがあります。この記事では、記憶喪失の基本的な理解から、考えられる原因、具体的な症状、関連する疾患、回復の可能性、そして適切な医療機関の受診について詳しく解説します。

目次

記憶喪失の基本的な理解

記憶は、私たちの経験や知識を蓄え、それを必要に応じて取り出すための複雑な脳の機能です。この機能が障害されると、記憶喪失、すなわち健忘症(けんぼうしょう)として現れます。記憶喪失を理解するためには、まず記憶がどのように作られ、どのような種類があるのかを知ることが役立ちます。

記憶の種類と仕組み

私たちの脳は、情報を符号化(新しい情報を脳が処理できる形に変換する)、貯蔵(符号化された情報を保持する)、そして検索(貯蔵された情報を必要に応じて取り出す)という3つの段階を経て記憶を形成します。このどの段階に問題が生じても、記憶障害が起こり得ます。

記憶は、その保持期間によって大きく二つに分けられます。一つは短期記憶(ワーキングメモリ)で、これは数秒から数分といった短い時間だけ情報を保持する能力です。例えば、電話番号を聞いてすぐにメモを取るまでの間覚えておくのが短期記憶です。もう一つは長期記憶で、こちらは数分から生涯にわたって情報を保持する能力です。長期記憶はさらにいくつかの種類に分けられます。

  • 陳述記憶(宣言的記憶): 言葉で表現できる意識的な記憶です。
  • エピソード記憶: 個人的な経験や出来事に関する記憶です。「昨日の朝食は何を食べたか」「旅行でどこへ行ったか」など、時間や場所といった文脈を伴う記憶です。
  • 意味記憶: 一般的な知識や概念に関する記憶です。「日本の首都は東京である」「りんごは果物である」など、事実や単語の意味といった文脈を伴わない記憶です。
  • 非陳述記憶(非宣言的記憶): 意識することなく想起・使用される無意識的な記憶です。
  • 手続き記憶: 体の動かし方や技能に関する記憶です。「自転車の乗り方」「泳ぎ方」など、繰り返しによって習得される記憶です。
  • プライミング: 先行する刺激(単語など)の提示によって、後続の課題成績(関連する単語の想起など)が向上する現象です。
  • 条件づけ: 特定の刺激と反応を結びつける学習による記憶です。

これらの記憶は、脳の様々な部位が連携して機能することで成り立っています。特に、新しい陳述記憶の形成には海馬(かいば)という部位が重要な役割を果たします。感情を伴う記憶には扁桃体(へんとうたい)が関与し、手続き記憶には大脳基底核小脳が関わります。長期記憶は、最終的に大脳皮質に貯蔵されると考えられています。

記憶喪失の種類や症状は、これらの記憶システムや関与する脳の部位のどこに障害が生じたかによって異なります。

記憶喪失の主な原因

記憶喪失の原因は多岐にわたり、脳への直接的なダメージだけでなく、心理的な要因や全身性の疾患によっても引き起こされることがあります。原因を正確に特定することが、適切な治療やケアにつながります。

生理的な原因

記憶機能に関わる脳の構造や機能に物理的、あるいは化学的な異常が生じることによって起こる記憶喪失です。

脳損傷・外傷による記憶喪失

頭部への強い衝撃(交通事故、転倒、スポーツ中の事故など)によって脳が損傷を受けると、記憶障害が生じることがあります。脳の損傷部位や程度によって、失われる記憶の種類や症状は異なります。例えば、新しい記憶を作るのに重要な海馬や、記憶の整理・想起に関わる前頭葉などに損傷があると、重度の記憶障害を引き起こす可能性があります。脳震盪の後には、一時的に直前の出来事や事故そのものの記憶が曖昧になる脳震盪後健忘が起こることがあります。多くの場合、脳震盪後健忘は時間とともに改善しますが、重度の外傷では永続的な記憶障害を残すこともあります。

脳血管障害(脳卒中など)と記憶喪失

脳卒中(脳梗塞や脳出血)は、脳への血流が途絶えたり出血したりすることで脳細胞がダメージを受ける病気です。脳卒中が記憶に関わる部位(特に海馬、視床、前頭葉など)で発生すると、記憶障害を引き起こします。広範囲にわたる小さな脳梗塞が蓄積すると、記憶障害を含む認知機能の低下を招くことがあり、これは血管性認知症の主要な症状の一つです。血管性認知症による記憶障害は、アルツハイマー型認知症と異なり、「まだら認知症」と呼ばれるように、記憶以外の認知機能は比較的保たれる場合や、障害される機能にばらつきが見られることがあります。

薬物やアルコールの影響による記憶喪失

特定の種類の薬物、特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬などは、副作用として記憶障害(特に新しい記憶の形成障害)を引き起こす可能性があります。これらの薬物は、脳の抑制性神経伝達物質であるGABAの作用を増強し、海馬などの記憶に関わる領域の活動を低下させることが原因と考えられています。

また、慢性的または大量のアルコール摂取は、脳に深刻なダメージを与え、重度の記憶障害を引き起こすことがあります。急性アルコール中毒では、飲酒中の出来事を全く覚えていない「ブラックアウト」と呼ばれる一時的な健忘が起こります。長期間にわたる重度のアルコール依存症では、ビタミンB1チアミンの欠乏を伴い、ウェルニッケ・コルサコフ症候群という重篤な神経障害を引き起こすことがあります。この症候群では、新しい記憶を全く作れない前向性健忘が顕著に現れ、しばしば過去の出来事を事実のように語る作話(コンファビュレーション)を伴います。

栄養不足(ビタミンB12など)と記憶力低下

ビタミンB12や葉酸などの栄養素は、神経系の健康を維持するために不可欠です。これらの栄養素が不足すると、神経細胞の機能が障害され、記憶力や集中力の低下を招くことがあります。特にビタミンB12欠乏症は、貧血だけでなく、手足のしびれや認知機能障害(記憶力低下を含む)を引き起こすことが知られています。これらの栄養不足による記憶力低下は、適切な栄養補給によって改善が見込める場合が多いです。

心理的な原因

脳の物理的な損傷ではなく、強いストレスや精神的な問題によって引き起こされる記憶の障害です。

ストレス・心的外傷による記憶断片(解離性失憶症)

極めて強い精神的ストレスや心的外傷(トラウマ)を経験した場合、その出来事自体やその前後の記憶が思い出せなくなることがあります。これは解離性健忘(かいりせいけんぼう)と呼ばれ、解離性障害の一種と考えられています。脳がトラウマ体験から自分を守るために、記憶を切り離したり、アクセスできないようにしたりする防御反応と考えられています。解離性健忘では、特定の出来事に関する記憶だけが選択的に失われる場合(限局性健忘)や、生涯全体にわたる記憶が失われる場合(全般性健忘)など、様々なパターンがあります。多くの場合、時間の経過や心理療法によって記憶が回復する可能性があります。

憂鬱症と記憶力低下・記憶断片

うつ病は、気分の落ち込みだけでなく、集中力、注意力の低下、思考の鈍化などの認知機能障害を伴うことが少なくありません。これらの認知機能の低下が、記憶力の低下として現れることがあります。特に、新しい情報を覚えるのに時間がかかったり、思い出そうとしてもなかなか思い出せなかったりといった症状が見られます。これは、うつ病によって脳内の神経伝達物質のバランスが崩れたり、脳の特定の領域(前頭葉など)の活動が低下したりすることが影響していると考えられています。うつ病に伴う記憶力低下は、うつ病の治療によって改善することが期待できますが、重症の場合や高齢者では、認知症との区別が難しい仮性認知症と呼ばれる状態になることもあります。適切な診断と治療が重要です。

記憶喪失の種類と症状

記憶喪失は単一の症状ではなく、失われる記憶の種類や影響を受ける期間によって様々なタイプに分類されます。それぞれのタイプによって、日常生活での困りごとや必要なサポートも異なります。

逆向性健忘と前向性健忘

記憶喪失は、障害が起きた時点を基準に、過去の記憶が失われるか、新しい記憶が作れなくなるかによって大きく二つのタイプに分けられます。

  • 逆向性健忘(ぎゃっこうせいけんぼう): 記憶障害が生じるより前に獲得した記憶が失われる状態です。事故による頭部外傷や脳卒中などで見られることがあります。例えば、事故以前数日間の出来事や、場合によっては数ヶ月、数年間の記憶が思い出せなくなることがあります。一般的に、障害が起きた時点に近い過去の記憶ほど失われやすく、遠い過去の記憶ほど比較的保たれる傾向があります(リベットの法則)。
  • 前向性健忘(ぜんこうせいけんぼう): 記憶障害が生じた時点以降の新しい出来事や情報を記憶できなくなる状態です。海馬の損傷や機能不全によって起こりやすく、アルツハイマー型認知症の初期症状として典型的です。例えば、朝食を食べたことを覚えていられない、新しい人に会っても顔や名前を覚えられない、数分前の会話の内容を忘れてしまう、といった症状が現れます。過去の記憶(逆向性記憶)は比較的保たれていることが多いですが、新しいことが覚えられないため、日常生活に大きな支障をきたします。

多くの記憶喪失のケースでは、逆向性健忘と前向性健忘の両方が程度を異にして同時に見られることがあります。

短期記憶喪失・短期失憶の症状

短期記憶喪失は、特に新しい情報を一時的に保持したり処理したりする能力(短期記憶やワーキングメモリ)が障害される状態を指します。「短期失憶」という言葉で表現されることもあります。これは、数秒から数分前に見たり聞いたりしたことをすぐに忘れてしまう症状です。

具体的な症状としては:

  • 相手が言ったばかりの言葉をすぐに聞き返す。
  • 数分前に置いた物の場所が分からなくなる。
  • 複数の指示を一度に聞くと覚えられない。
  • 簡単な計算ができなくなる(数字を一時的に保持できないため)。
  • 話の筋道が追えなくなる。

短期記憶の障害は、前向性健忘の初期症状として現れることが多いですが、注意力や集中の問題(うつ病、ADHDなど)や、一時的な脳機能の低下(睡眠不足、疲労、軽い脳震盪など)によっても起こり得ます。一時的な原因であれば回復が期待できますが、持続的な場合は脳機能の低下を示唆する可能性があります。

記憶断片・記憶混乱の症状

記憶断片(だんぺん)は、特定の期間や出来事に関する記憶が、全体としてではなく、断片的にしか思い出せない状態です。あるいは、記憶の一部が抜け落ちている状態を指します。心理的なストレスやトラウマに関連する解離性健忘で特徴的に見られます。

記憶混乱は、出来事の順序が分からなくなったり、異なる出来事の記憶が混ざり合ったりする状態です。時間や場所、人物などの情報が整理されずに記憶されることで起こります。特に、ウェルニッケ・コルサコフ症候群や一部の認知症、せん妄状態などで見られます。記憶の空白を埋めるために、無意識のうちに作り話をしてしまう作話(コンファビュレーション)を伴うこともあります。これは嘘をついているわけではなく、失われた記憶を埋め合わせようとする脳の働きと考えられています。

自傳式記憶缺失とは

自傳式記憶(自伝的記憶)とは、個人の人生における具体的な出来事や経験(エピソード記憶)と、それに関する知識(意味記憶の一部)を組み合わせた記憶です。例えば、「初めて自転車に乗れた日」や「〇〇さんと△△へ旅行に行ったこと」など、自分自身が経験した個人的な歴史に関する記憶全てを指します。

自傳式記憶缺失(自伝的記憶喪失)は、この自伝的記憶が広範囲にわたって失われる状態です。特にエピソード記憶の障害が顕著で、自分の過去の人生をたどることが難しくなります。「自分がどこで生まれ育ったか」「どのような学校に通ったか」「結婚したかどうか」「子供がいるか」といった、自己を形成する上で重要な個人的な記憶が失われる可能性があります。

原因としては、広範囲な脳損傷、進行性の認知症(特にアルツハイマー病)、重度の解離性健忘などが考えられます。自伝的記憶は自己同一性の感覚と深く結びついているため、この記憶が失われることは、自己認識や人間関係に深刻な影響を与えます。

記憶喪失に関連する疾患

記憶喪失は単独で起こることもありますが、多くの場合、特定の疾患の一症状として現れます。ここでは、記憶喪失が主な症状として現れる、あるいは高頻度で合併する代表的な疾患について解説します。

失智症(認知症)と記憶喪失

認知症(失智症)は、後天的な脳の病気や障害によって、一度獲得した認知機能(記憶、判断力、計算能力、言語能力など)が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態の総称です。記憶障害は認知症の最も代表的な症状の一つであり、特にアルツハイマー型認知症では初期から新しい記憶を覚えられない前向性健忘が顕著に現れます。徐々に過去の記憶も失われていき、最終的には家族の顔や自分の名前も分からなくなることがあります。

血管性認知症では、脳梗塞や脳出血によって脳の一部がダメージを受けることで記憶障害が生じます。障害される部位によって症状は異なり、記憶だけでなく他の認知機能もまだらに障害されることが多いのが特徴です。

レビー小体型認知症では、記憶障害はアルツハイマー型ほど目立たないこともありますが、注意力や視空間認知の障害、幻視などが特徴的に現れます。進行すると記憶障害も顕著になります。

このように、認知症の種類によって記憶障害の現れ方や進行パターンは異なります。

癲癇発作と記憶障害

てんかん(癲癇)は、脳の神経細胞の異常な電気活動によって繰り返し発作が起こる病気です。てんかん発作中や発作後には、意識レベルの低下や混乱が見られることがあり、この間に起きた出来事の記憶がなくなったり(発作中健忘)、発作そのものを思い出せなかったり(発作後健忘)することがあります。特に、側頭葉てんかんでは、記憶に関わる海馬や扁桃体が含まれる側頭葉で異常な電気活動が起こるため、発作前後に一時的な記憶障害や奇妙な感覚、既視感(デジャヴュ)などが現れることがあります。繰り返し発作が起こることで、慢性的な記憶障害につながる可能性も指摘されています。

脳の感染症(梅毒、エイズなど)と記憶力低下

細菌やウイルスが脳に感染すると、炎症や脳組織の破壊を引き起こし、記憶障害を含む様々な神経症状が現れることがあります。

  • 神経梅毒: 梅毒トレポネーマという細菌が脳や神経系に感染することで起こります。進行すると、認知機能障害(記憶力低下、判断力低下など)や精神症状、麻痺などの神経症状が現れることがあります。
  • HIV脳症: HIVウイルスが脳に感染し、脳細胞にダメージを与えることで起こります。進行すると、記憶力や集中力の低下、思考の鈍化、運動障害などの認知機能障害が現れます。抗HIV療法によって進行を遅らせることが可能ですが、完全に回復しない場合もあります。
  • その他、ヘルペス脳炎や日本脳炎なども、記憶に関わる脳の部位に炎症を引き起こし、重度の記憶障害をもたらすことがあります。

これらの感染症による記憶障害は、原因となる感染症の治療によって改善が見込める場合もありますが、脳のダメージが広範囲に及ぶと後遺症として残る可能性もあります。

帕金森氏症(パーキンソン病)と記憶の問題

パーキンソン病(帕金森氏症)は、脳の特定の部位(黒質)の神経細胞が変性・脱落することで、体の動きが遅くなったり、手足が震えたり、体のバランスが悪くなったりといった運動症状が中心の病気です。

しかし、病気が進行すると、運動症状だけでなく、便秘、睡眠障害、うつ症状などの非運動症状や、認知機能障害が現れることがあります。

パーキンソン病における記憶の問題は、アルツハイマー型認知症のような新しいエピソード記憶の形成障害よりも、情報をスムーズに思い出したり、状況に合わせて適切に判断したりといった実行機能注意機能の障害として現れることが多い傾向があります。しかし、進行したパーキンソン病では、記憶障害を含む認知症(パーキンソン病型認知症)を発症することもあり、この場合は記憶障害も顕著になります。

記憶喪失は回復するのか?

記憶喪失が回復するかどうかは、その原因に大きく依存します。一時的な原因によるものであれば回復する可能性が高く、進行性の病気によるものであれば回復は難しいものの、進行を遅らせたり症状を緩和したりする治療法があります。

原因別の回復可能性について

記憶喪失の原因によって、回復の見込みは異なります。

  • 一過性の原因: 脳震盪による一時的な健忘、急性アルコール中毒によるブラックアウト、睡眠不足や疲労による一時的な記憶力低下などは、原因が取り除かれたり回復したりすれば、記憶も回復することがほとんどです。解離性健忘も、原因となったストレスやトラウマが適切にケアされれば、失われた記憶が回復する可能性が高いとされています。
  • 栄養不足、薬物性、感染症: ビタミンB12欠乏症や特定の薬物の副作用、脳の感染症による記憶障害は、原因となっている栄養不足を改善したり、薬物を中止・変更したり、感染症の治療を行ったりすることで、記憶機能が改善することが期待できます。ただし、脳へのダメージが大きかった場合は、完全に回復しないこともあります。
  • 脳損傷・脳卒中後遺症: 頭部外傷や脳卒中によって脳の組織がダメージを受けた場合、失われた脳細胞そのものが再生して記憶が完全に元通りになることは難しいです。しかし、脳の可塑性(変化する能力)によって、残された脳機能や他の脳領域が失われた機能を補うことで、記憶機能が部分的に回復したり、新しい情報を覚えるための代償的な戦略を身につけたりすることは可能です。特に、発症早期からの適切なリハビリテーションが重要です。
  • 進行性の疾患(認知症など): アルツハイマー型認知症や進行性の脳血管性認知症、レビー小体型認知症など、神経細胞の変性や脱落が進行していく病気による記憶喪失は、残念ながら現代の医療では完全に回復させることは難しいとされています。しかし、病気の進行を遅らせるための薬物療法や、症状を緩和するための非薬物療法、適切なケアや環境調整によって、残された機能を最大限に活かし、生活の質を維持・向上させることが可能です。

このように、記憶喪失の回復可能性は原因によって大きく異なります。そのため、正確な診断を受けることが非常に重要です。

記憶力改善のためのアプローチ

記憶喪失の原因が特定された上で、症状の改善を目指すための様々なアプローチがあります。

  • 医学的治療: 原因疾患がある場合は、その治療を優先します。認知症の場合は、進行を遅らせたり症状を緩和したりする薬が処方されることがあります。栄養不足があれば栄養補給を行います。うつ病や不安障害が原因であれば、精神療法や薬物療法が行われます。
  • リハビリテーション: 脳損傷や脳卒中後の記憶障害に対しては、認知リハビリテーションが有効な場合があります。失われた記憶機能を補うための代償的な戦略(例:メモを取る習慣、リマインダー機能の活用、タスクを細分化する)を習得したり、残された記憶能力を訓練したりします。
  • 記憶術トレーニング: 軽度な記憶力低下に対しては、イメージ連結法や場所法(記憶の宮殿)などの記憶術を訓練することで、記憶の効率を高めることが期待できます。
  • 生活習慣の改善: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、脳機能全体を良好に保つために重要です。禁煙や過度な飲酒を控えることも脳の健康に繋がります。ストレス管理も記憶力に良い影響を与えます。
  • 環境調整: 日常生活で記憶障害による困難を軽減するために、環境を調整することも有効です。例えば、重要なことはメモに残す、カレンダーや時計を分かりやすい場所に置く、日課をルーチン化する、持ち物の定位置を決める、家族や周囲の人に協力を求めるなどが挙げられます。

これらのアプローチを組み合わせることで、記憶障害による生活への影響を最小限に抑え、自立した生活を維持することを目指します。

記憶喪失の場合、何科を受診すべきか(短暫失憶看什麼科)

記憶喪失の症状が現れた場合、どのような医療機関を受診すべきか迷うことがあります。「短暫失憶看什麼科(短期記憶喪失は何科で診てもらうか)」といった疑問を持つ方もいるでしょう。記憶喪失の原因は多岐にわたるため、最初に受診する科は症状や疑われる原因によって異なりますが、専門医に相談し、正確な診断を受けることが何よりも重要です。

専門医への相談と診断の重要性

記憶喪失の原因を特定するためには、医師による詳細な問診、神経学的診察、そして様々な検査が必要です。早期に診断を受けることで、適切な治療を開始し、病気の進行を遅らせたり、回復の可能性を高めたりすることができます。また、記憶喪失の原因が治療可能な病気(栄養不足、感染症、一部の脳腫瘍など)である場合、早期発見・早期治療が特に重要になります。

記憶喪失の症状が見られる場合に相談すべき主な専門科は以下の通りです。

  • 神経内科: 脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を専門とする科です。認知症、脳卒中、てんかん、パーキンソン病、脳炎など、記憶障害を引き起こす多くの神経疾患の診断と治療を行います。記憶喪失の原因がこれらの神経系の病気である可能性が高い場合に最初に受診するのに適しています。
  • 脳神経外科: 脳や脊髄の外科的治療を専門とする科です。頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害(手術が必要な場合)など、脳の構造的な問題による記憶喪失の場合に診断や治療を行います。
  • 精神科・心療内科: うつ病、解離性障害、ストレス関連障害など、心理的な原因による記憶喪失や、精神疾患に伴う認知機能障害を専門とします。心身のストレスや精神的な問題を背景に記憶障害が疑われる場合に相談するのが適切です。
  • もの忘れ外来・認知症専門外来: 近年、多くの病院に設置されている専門外来です。記憶障害や認知機能の低下に特化しており、認知症の診断を中心に、様々な原因による記憶障害の評価を行います。どこに相談すべきか迷う場合は、まず「もの忘れ外来」を標榜する医療機関を受診するのも良いでしょう。
  • かかりつけ医: まずは日頃から自身の健康状態を把握しているかかりつけ医に相談するのも良い方法です。症状を聞き、必要に応じて適切な専門医を紹介してくれます。

診断のためには、問診(いつから、どのような症状が出ているか、進行しているか、他に症状はあるか、既往歴、服用中の薬など)、神経学的検査、高次脳機能検査(記憶力、注意力、言語能力などを調べる)、画像検査(MRIやCTで脳の構造を調べる)、血液検査(栄養状態、感染症、甲状腺機能などを調べる)などが行われます。これらの結果を総合的に評価して、記憶喪失の正確な原因が特定されます。

記憶喪失は放置せずに、早めに医療機関に相談することが大切です。

免責事項:

本記事は記憶喪失に関する一般的な情報提供のみを目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や状況については必ず医療機関を受診し、専門医の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる損害に対しても、筆者および公開者は一切の責任を負いません。

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