突然、胸が締め付けられるような感覚や、訳もなく強い恐怖心に襲われた経験はありませんか?それは「急な不安感」かもしれません。
なぜ、そのような不安感に突然襲われるのでしょうか?もしかしたら、何か病気が隠れているのでしょうか?
この記事では、「急に不安感に襲われる なぜ」という疑問にお答えするため、考えられる原因から、不安に襲われた時の具体的な対処法、普段からできる予防策、そして専門家への相談が必要なケースまで、詳しく解説します。
一人で抱え込まず、この記事を通じてご自身の不安と向き合うヒントを見つけてください。
突然の不安感に襲われる原因とは
急に不安感に襲われる現象は、様々な要因が複合的に絡み合って起こることがあります。これらの要因は、主に心理的なもの、身体的なもの、そして環境的なものに分類できます。それぞれの側面から、不安感が突然発生するメカニズムを理解していきましょう。
心理的な原因
心理的な原因は、過去の経験や現在の精神状態、性格傾向などが関係しています。
- ストレスの蓄積: 日常生活における様々なストレス(仕事、人間関係、経済的な問題など)が解消されずに蓄積されると、心身のバランスが崩れ、突然強い不安感として現れることがあります。常に緊張状態が続いていると、些細な出来事でも過剰に反応しやすくなります。
- 過去のトラウマや嫌な経験: 過去に強い恐怖や苦痛を伴う経験(トラウマ)がある場合、それがフラッシュバックしたり、関連する状況に遭遇したりした際に、当時の感情が呼び起こされ、急激な不安感につながることがあります。特定の場所、音、匂いなどが引き金となることもあります。
- 予期不安: 一度パニック発作などを経験したことがある人は、「また発作が起きるのではないか」という強い不安(予期不安)を抱きやすくなります。この予期不安自体がストレスとなり、実際に不安感や身体症状を引き起こす悪循環に陥ることがあります。
- 性格傾向: 心配性、完璧主義、ネガティブ思考などの性格傾向を持つ人は、物事を悲観的に捉えやすく、小さなことでも過度に心配したり、将来への不安を感じたりしやすいため、突然の不安に繋がりやすい傾向があります。また、感受性が高い人も、周囲の出来事や他人の感情に影響されやすく、不安を感じやすいことがあります。
身体的な原因(セロトニン不足など)
心の状態だけでなく、身体の状態も不安感に大きく影響します。特に、脳内の神経伝達物質のバランスや自律神経の働きは密接に関連しています。
- 神経伝達物質のバランスの乱れ: 脳内には、感情や気分、行動を調節する様々な神経伝達物質があります。特に、セロトニン、ノルアドレナリン、GABA(γ-アミノ酪酸)などが不安と深く関連しています。
- セロトニン不足: セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させ、安心感をもたらす働きがあります。セロトニンの分泌量が低下したり、脳内での働きが不安定になったりすると、気分の落ち込みやイライラ、そして不安感が増強されると考えられています。睡眠不足や不規則な生活、栄養バランスの偏り、日光を浴びる時間の不足などがセロトニン不足に関与すると言われています。
- ノルアドレナリンの過剰: ノルアドレナリンは、覚醒や注意、ストレス反応に関与する神経伝達物質です。危険を感じた時に体を「闘うか逃げるか」の状態にするため、心拍数や血圧を上昇させます。ノルアドレナリン系の働きが過剰になると、理由もなく動悸がしたり、強い不安感や恐怖を感じやすくなると考えられています。
- GABAの機能低下: GABAは、脳の興奮を抑える抑制性の神経伝達物質です。GABAの働きが低下すると、神経細胞が過剰に興奮しやすくなり、不安や緊張が高まると考えられています。
これらの神経伝達物質のバランスが崩れることが、突然の不安感やパニック発作の背景にあるとされています。
- 自律神経の乱れ: 自律神経は、私たちの意識とは関係なく、心臓の動き、呼吸、消化、体温調節などをコントロールしています。ストレスや不規則な生活によって自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れると、動悸、息苦しさ、発汗、めまいなどの身体症状が現れ、これが不安感をさらに増幅させることがあります。急な不安感に襲われる際に伴う身体症状は、自律神経の過剰な反応によるものが少なくありません。
- ホルモンバランスの変化: 女性の場合、月経周期、妊娠、出産、更年期などによるホルモンバランスの変動が、感情の不安定さや不安感につながることがあります。また、甲状腺ホルモンの異常(特に甲状腺機能亢進症)も、動悸や発汗、イライラ、不安感などの精神症状を引き起こす原因となります。
- 生活習慣: 睡眠不足、過労、不規則な食事、カフェインやアルコールの過剰摂取、ニコチンの摂取なども、心身のバランスを崩し、不安感を高める要因となります。特に、カフェインは神経を興奮させる作用があり、多量に摂取すると不安や動悸を引き起こす可能性があります。アルコールの離脱症状としても強い不安が現れることがあります。
- 身体疾患: 不安感は、精神的な問題だけでなく、特定の身体疾患の症状として現れることもあります。例えば、不整脈、狭心症などの心臓病、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、低血糖症、貧血、めまいを引き起こす耳の病気、特定の神経疾患(てんかんなど)、褐色細胞腫のような内分泌疾患などが、不安やパニック発作に似た症状を引き起こすことがあります。これらの身体疾患が原因である場合、適切な治療によって不安感も改善することが期待できます。
環境的な原因
私たちは常に周囲の環境と相互作用しながら生きています。環境の変化や特定の状況が、急な不安感の引き金となることがあります。
- 人間関係の問題: 家族、友人、職場での人間関係における悩みや対立は、強いストレスとなり、不安感を引き起こす大きな要因です。孤立感や疎外感も不安を増幅させます。
- 仕事や学業におけるプレッシャー: 仕事での責任、成績のプレッシャー、職場の雰囲気、過重労働、人間関係などが原因で、強いストレスや不安を感じることがあります。プレゼンテーションや試験など、特定の状況に対する不安も含まれます。
- 環境の変化: 引っ越し、転職、入学、結婚、離婚、近親者の死など、人生における大きな変化は、良いことであってもストレスを伴うことが多く、不安感を引き起こす可能性があります。慣れない環境や予測できない状況は、私たちの安心感を揺るがすため、不安を感じやすくなります。
- 物理的な環境: 騒がしい場所、人混み、閉鎖的な空間(エレベーター、電車など)、特定の場所(過去に嫌な経験をした場所)などが、不安感やパニック発作の引き金となることがあります。これは、その環境が過去の恐怖体験と結びついている場合や、そこから逃れられないという感覚が不安を増幅させる場合に起こりやすくなります(広場恐怖など)。
- 特定の物質への曝露: 化学物質、特定の薬物、大気汚染なども、個人によっては不安感や身体症状を引き起こす可能性があります。
このように、急に不安感に襲われる原因は多岐にわたります。多くの場合、これらの要因が複数組み合わさって影響し合っています。自分がどのような状況や状態の時に不安を感じやすいのかを理解することが、対処の第一歩となります。
急な不安感で考えられる主な病気
急な不安感や強い恐怖が頻繁に起こり、日常生活に支障をきたしている場合、特定の精神疾患や身体疾患が背景にある可能性があります。ここでは、不安感が主な症状として現れる代表的な精神疾患について解説します。
パニック障害
パニック障害は、「パニック発作」と呼ばれる激しい不安や恐怖の発作が突然繰り返し起こる病気です。パニック発作は、しばしば予期せず、明確な引き金がないまま発生します。
パニック発作の主な症状:
パニック発作は通常、数分から30分以内にピークに達し、以下の症状のうち4つ以上が突然現れます。
- 動悸、心臓がドキドキする、心拍数が増加する
- 発汗
- 体の震え、手足の震え
- 息切れ、息苦しさ
- 窒息感
- 胸の痛み、胸部の不快感
- 吐き気、腹部の不快感
- めまい、ふらつき、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
- 現実感の喪失(現実ではないような感じ)、離人感(自分が自分でないような感じ)
- コントロールを失うこと、気が変になることへの恐れ
- 死ぬことへの恐れ
- 感覚異常(手足のしびれやうずき感)
- 悪寒、あるいは熱感
パニック発作を経験した後に、「また発作が起きるのではないか」という強い不安(予期不安)が生じ、発作が起こりそうな状況や場所(人混み、電車、バス、エレベーターなど)を避けるようになることがあります。これを広場恐怖と呼びます。広場恐怖が進むと、外出自体が困難になり、日常生活が著しく制限されることがあります。
全般性不安障害
全般性不安障害(GAD)は、特定の状況だけでなく、様々な事柄(仕事、学業、健康、家族、将来など)に対して、現実的な出来事に見合わない過剰な心配や不安が、長期間(通常6ヶ月以上)にわたって続く病気です。心配をコントロールすることが難しく、常に落ち着かない、緊張しているような状態が続きます。
全般性不安障害の主な症状:
- 様々なことに対する持続的かつ過剰な不安や心配
- 心配をコントロールすることの困難感
- 落ち着きのなさ、いらいら感
- 疲れやすさ
- 集中力の低下、心が空白になる感覚
- 易怒性(怒りっぽい)
- 筋肉の緊張(肩や首のこりなど)
- 睡眠障害(寝つきが悪い、夜中に目が覚める、熟眠感がない)
これらの症状が、日常生活(仕事、学業、社会活動など)に著しい苦痛や機能障害を引き起こします。パニック障害のように突然激しい発作が起こるというよりは、慢性的に低いレベルから中等度の不安が続くのが特徴ですが、ストレスなどによって急に不安感が強まることもあります。
社交不安障害
社交不安障害(SAD)は、特定の社会的状況(人前で話す、食事をする、初対面の人と会う、他人の注目を浴びる可能性のある状況など)において、他者からの否定的な評価(批判される、恥ずかしい思いをする、拒絶されるなど)を過度に恐れ、強い不安や恐怖を感じる病気です。このような状況を避けたり、耐え忍んだりします。
社交不安障害の主な症状:
- 特定の社会的状況に対する強い不安や恐怖
- 不安を感じる状況を回避する
- 回避できない場合は、強い不安や苦痛を伴って耐え忍ぶ
- 不安に伴う身体症状(顔が赤くなる、発汗、体の震え、動悸、吐き気、どもりなど)
- 自分の不安症状を他者に気づかれることへの恐れ
- 社会的状況の後で、自分の言動について繰り返し反芻し、自己否定的な評価をする
この病気も、常に不安を感じているわけではなく、特定の社会的状況に直面した際に急に強い不安感に襲われるのが特徴です。
適応障害
適応障害は、特定の明確なストレス因子(例:仕事での問題、人間関係のトラブル、大きなライフイベント)に反応して、その出来事から3ヶ月以内に生じる情動面または行動面の症状です。症状には、抑うつ気分、不安、心配、イライラ、行動の問題(無断欠勤、けんかなど)が含まれます。ストレス因子が除去されれば、通常は6ヶ月以内に症状が改善します。
適応障害における不安は、ストレス因子に曝されている期間中に起こりやすく、そのストレスに関連して急に強まることがあります。パニック障害や全般性不安障害とは異なり、原因となるストレス因子が明確である点が特徴です。
その他の可能性(身体疾患など)
不安感は、上記のような精神疾患だけでなく、様々な身体疾患の症状として現れることもあります。
- 心臓疾患: 不整脈(発作性上室性頻拍など)、狭心症、僧帽弁逸脱症などが、動悸や胸部不快感とともに不安を引き起こすことがあります。
- 呼吸器疾患: 喘息の発作や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪期に、息苦しさから強い不安を感じることがあります。過換気症候群も、急な息苦しさや手足のしびれとともに強い不安を伴います。
- 内分泌疾患: 甲状腺機能亢進症は、代謝が異常に高まり、動悸、発汗、体の震え、イライラ、不安感などの症状を引き起こします。褐色細胞腫という病気も、血圧の急上昇とともに強い不安やパニック発作に似た症状を起こすことがあります。
- 代謝性疾患: 低血糖症は、血糖値が急激に低下することで、震え、発汗、動悸、空腹感とともに不安感や混乱を引き起こすことがあります。貧血も、倦怠感や息切れとともに不安を伴うことがあります。
- 神経疾患: てんかんの一部の発作が、予兆として急な不安感として現れることがあります。めまいを引き起こす内耳の病気も、転倒の恐怖から不安感につながることがあります。
- 薬物やアルコールの影響: 特定の薬剤の副作用や、アルコール、カフェイン、ニコチン、違法薬物などの摂取や離脱症状として、不安感やパニック発作が起こることがあります。
- うつ病: 不安はうつ病の主要な症状の一つでもあります。気分の落ち込みや興味・関心の喪失とともに、持続的な不安や焦燥感を感じることがあります。
- 強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD): これらの病気でも、不安は中心的な症状の一つです。
急に不安感に襲われた場合、それが一時的なものなのか、それとも何らかの病気のサインなのかを見極めることが重要です。特に、不安感が繰り返し起こる、症状が強い、身体症状を伴う、日常生活に支障が出ているといった場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家による適切な診断を受けることを強くお勧めします。身体疾患が隠れている可能性も考慮し、必要に応じて内科的な検査も行うことが大切です。
急な不安感に襲われた時の対処法
突然強い不安感に襲われた時は、非常に辛いものです。しかし、発作が起きたその場でできる対処法を知っているだけでも、少し落ち着きを取り戻せる可能性があります。また、不安な感情や思考にどのように向き合うか、夜間に不安になった時にどうするかなども、症状の軽減に役立ちます。
発作時の具体的な対処法
急な不安やパニック発作が起きた時に、その場で試せる具体的な対処法をいくつかご紹介します。これは不安を完全に消し去るものではなく、辛い症状を和らげ、落ち着きを取り戻すことを目的としています。
- 呼吸を整える(腹式呼吸):
- まずは、できるだけゆっくりと息を吐き出します。
- 次に、鼻からゆっくりと息を吸い込み、お腹を膨らませます。
- 吸う時よりも時間をかけて、口からゆっくりと息を吐き出します(例:4秒吸って、6秒かけて吐く)。
- この腹式呼吸を数回繰り返します。意識的に呼吸をコントロールすることで、過換気状態を防ぎ、自律神経のバランスを整える助けになります。
- 安全な場所へ移動する:
- 可能であれば、人混みを避け、静かで落ち着ける場所に移動しましょう。
- 座れる場所を見つけ、体を休ませます。
- グラウンディングを行う:
- グラウンディングとは、意識を「今、ここ」に集中させることで、現実とのつながりを感じ、不安から気をそらす技法です。
- 「5-4-3-2-1」法:
- 今、見えているものを5つ挙げる。
- 今、触れているものを4つ挙げる(服の感触、椅子の硬さなど)。
- 今、聞こえる音を3つ挙げる。
- 今、嗅ぐことのできる匂いを2つ挙げる。
- 今、味わえるものを1つ挙げる(口の中の感覚など)。
- 足の裏が地面や床に触れている感覚に意識を集中させる。
- 手に持っているもの(スマートフォン、鍵など)の感触に意識を集中させる。
- 体をリラックスさせる:
- 肩の力を抜き、全身の筋肉を意図的に緩めます。
- 軽いストレッチや、手足をぶらぶらさせるなど、体の緊張をほぐす簡単な動きを試してみましょう。
- 感覚に意識を向ける:
- 冷たい水を飲む、顔や首筋を冷たいタオルで冷やす、アロマの香りを嗅ぐなど、五感に働きかけることで、意識を不安から別の場所へ移すことができます。
- 安心できる言葉を心の中で繰り返す:
- 「大丈夫、これは一時的なものだ」「私は安全だ」「呼吸を続けよう」など、自分を励ます言葉や安心できる言葉を心の中で静かに繰り返します。
これらの対処法は、練習することで効果が高まります。普段からリラックスしている時に練習しておくと、いざという時に役立てやすくなります。
不安な感情や思考への対処
不安に襲われる時は、ネガティブな感情や思考が頭の中を駆け巡りがちです。これらの感情や思考に適切に対処することも重要です。
- 感情や思考を書き出す(ジャーナリング):
- 不安な気持ちや頭の中に浮かんでいる思考を、紙に書き出してみましょう。書くことで、感情や思考を客観的に見つめることができ、整理する助けになります。誰かに見せる必要はありません。
- 思考の癖を認識する(自動思考):
- 不安を感じる際に、どのような思考が自動的に浮かんでいるかに気づくことが重要です。例えば、「もし〇〇になったら最悪だ」「私は何もかも失敗する」といった極端な考え方(自動思考)です。
- 認知を再構成する:
- 書き出した自動思考に対して、「その考えは本当に根拠があるのか?」「別の可能性はないか?」「もし〇〇になったとして、それは本当に『最悪』なのか?」などと問いかけ、より現実的でバランスの取れた考え方(認知)に修正することを試みます。これは認知行動療法(CBT)の基本的な手法です。
- 不安な感情を受け入れる(マインドフルネス):
- 不安な感情を否定したり、無理に抑え込もうとすると、かえって強くなることがあります。マインドフルネスの考え方では、 judgmental にならずに、今感じている感情や体の感覚をただ観察し、受け流す練習をします。
- 不安な状況に段階的に慣れる(段階的暴露):
- 特定の状況で不安を感じやすい場合、その状況を避け続けるのではなく、不安レベルの低い状況から順番に、意図的にその状況に身を置いて慣れていく技法です。例えば、人混みが苦手なら、まずは短い時間、少ない人数の場所にいることから始め、徐々に慣らしていくという方法です。これは専門家の指導のもとで行うのが効果的です。
夜間に不安に襲われた時の対処法
夜中に急に不安になって眠れなくなるのは辛いものです。夜間の不安に対処するためのヒントをご紹介します。
- 無理に寝ようとしない: 不安なままベッドにいても、かえって目が冴えてしまいます。一度ベッドから出て、リラックスできる環境に移りましょう。
- リラックスできる活動をする: 静かな音楽を聴く、温かい飲み物(カフェインフリー)を飲む、軽いストレッチや深呼吸をする、短い瞑想をするなど、心身を落ち着かせる活動を行います。
- 部屋の環境を整える: 寝室を暗く、静かで、快適な温度に保ちます。スマートフォンやパソコンの画面を見るのは避けましょう。
- 不安なことを書き出す: 頭の中でグルグル考えてしまう不安を、紙に書き出してみましょう。書き出すことで、少し心が軽くなることがあります。
- 「また後で考える時間を作る」と決める: 夜間に考えても解決しない問題であれば、「明日の〇時に改めて考えよう」と時間を作ることを決め、今は考えるのをやめる練習をします。
- 安心できるものを手元に置く: 好きなアロマ、手触りの良いブランケット、安心できる写真などを手元に置くことで、少し心が落ち着くことがあります。
- パートナーや信頼できる人に相談する: 可能であれば、家族やパートナーに優しく声をかけてもらったり、話を聞いてもらったりすることで、孤独感が和らぎ、安心感を得られることがあります。
夜間の不安が続く場合は、睡眠障害を伴っている可能性もあります。その場合は、精神科や心療内科の医師に相談し、適切なアドバイスや治療を受けることが大切です。
普段からできる不安感の軽減・予防策
急に不安感に襲われる頻度を減らし、不安になりにくい心身の状態を作るためには、普段からの生活習慣の改善や考え方の見直し、ストレスへの対処が非常に重要です。
生活習慣の改善
心身の健康は密接に関係しています。バランスの取れた生活は、不安感の軽減に直結します。
- 規則正しい生活: 毎日決まった時間に寝て起きるように心がけましょう。体内時計が整うことで、心身の安定につながります。特に睡眠は重要で、睡眠不足は不安感を増強させることが知られています。十分な睡眠時間を確保するように努めましょう。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの偏った食事は、血糖値の急激な変動や特定の栄養素不足を引き起こし、不安感や気分の変動につながることがあります。特に、ビタミンB群、マグネシウム、オメガ3脂肪酸などは精神的な健康に関与すると言われています。加工食品や砂糖が多い食事は避け、野菜、果物、全粒穀物、タンパク質源をバランス良く摂取しましょう。
- 適度な運動: 定期的な運動は、ストレスホルモンを減らし、気分を安定させる効果のあるエンドルフィンなどの神経伝達物質の分泌を促します。特に、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、不安感や抑うつ症状の軽減に効果があるという研究報告が多くあります。週に3回以上、1回30分程度の運動を目指しましょう。ヨガや太極拳のような、呼吸と動きを合わせた運動も、リラクゼーション効果が高くおすすめです。
- カフェイン、アルコール、ニコチンの制限: これらは神経系を刺激したり、依存性があったりするため、不安感を増強させたり、睡眠の質を低下させたりする可能性があります。摂取量を控えるか、できれば避けるようにしましょう。
- 日光浴: 日光を浴びることは、セロトニンの生成を助け、体内時計をリセットする効果があります。日中に屋外で過ごす時間を設けるように心がけましょう。
- リラクゼーションを取り入れる: 毎日の中に、心身をリラックスさせる時間を取り入れましょう。例えば、入浴、音楽鑑賞、読書、アロマテラピー、軽いストレッチなど、自分が心地よいと感じる活動を取り入れます。
考え方の癖を見直す
物事の捉え方や考え方の癖が、不安感を強めていることがあります。自分の考え方のパターンに気づき、柔軟性を持たせる練習をしましょう。
- ネガティブな自動思考に気づく: 「どうせうまくいかない」「自分には無理だ」「きっと嫌われる」といった、自動的に頭に浮かんでくるネガティブな考え方に気づく練習をします。
- 思考の歪みを特定する: 白黒思考(完璧か失敗かの両極端)、過剰な一般化(一度の失敗で全てがダメだと考える)、破局的思考(最悪の事態ばかりを想像する)、個人的化(自分に関係ないことまで自分の責任だと感じる)など、不安を増強させる思考のパターン(認知の歪み)を特定します。
- より現実的でバランスの取れた考え方を練習する: 思考の歪みに気づいたら、それに反証する証拠を探したり、別の可能性を考えたりして、より現実的でバランスの取れた見方に修正することを試みます。例えば、「うまくいかないかもしれないけど、過去には成功したこともある。今回は違う結果になる可能性もある。」のように考えます。
- 完璧主義を手放す: 全てを完璧にこなそうとすると、常にプレッシャーを感じ、失敗への恐れから不安が強まります。「ベターを目指す」「80点でOK」のように、現実的な目標設定をすることを練習しましょう。
- 肯定的な自己評価を高める: 自分の良いところや、これまでの成功体験に目を向けるようにします。自分を認め、褒める習慣をつけることで、自己肯定感が高まり、不安を感じにくくなります。
- 「べき思考」を見直す: 「~すべき」「~ねばならない」といった固い考え方は、理想通りにいかない場合に自己否定や不安につながります。「~できたらいいな」「~という選択肢もある」のように、柔軟な考え方に変えていきます。
ストレスへの対処法
ストレスは不安感の大きな原因の一つです。自分に合った効果的なストレス解消法を見つけ、日頃から実践することが大切です。
- リラクゼーション技法: 筋弛緩法(体の各部分の筋肉に順番に力を入れて緩める方法)、誘導瞑想(心地よいイメージを思い浮かべる方法)、バイオフィードバックなども、心身のリラックスに役立ちます。
- 趣味や楽しみを持つ: 好きなことや夢中になれる時間を持つことは、気分転換になり、ストレスを軽減させます。
- ソーシャルサポートを活用する: 家族、友人、パートナーなど、信頼できる人に話を聞いてもらったり、悩みを相談したりすることは、孤独感を減らし、安心感を得る上で非常に重要です。専門機関のサポートグループに参加することも有効です。
- 問題解決スキルを身につける: ストレスの原因となっている問題に対して、具体的な解決策を考える練習をします。問題を細分化し、一つずつ対処していくことで、圧倒される感覚を減らすことができます。
- アサーティブネス(自己主張)を学ぶ: 自分の気持ちや意見を、相手を尊重しつつも正直に伝えるスキルを身につけることは、人間関係のストレスを減らし、自己肯定感を高める上で役立ちます。
- デジタルデトックス: スマートフォンやパソコンから離れ、情報過多な状態から意識的に休憩することも、心の平穏を保つ上で有効です。
- 自然との触れ合い: 公園を散歩する、森林浴をするなど、自然の中で過ごす時間は、リラックス効果が高いと言われています。
これらの予防策は、すぐに効果が現れるものではありません。日々の積み重ねが大切です。まずは、自分にできそうなことから一つずつ取り入れてみましょう。継続することで、不安を感じにくい心身を作ることができます。
急な不安感について専門家へ相談する目安
急な不安感は誰にでも起こりうる感情ですが、その頻度や強度が高く、日常生活に支障をきたしている場合は、専門家の助けが必要なサインかもしれません。自己判断せずに、医療機関に相談することを検討しましょう。
受診を検討すべきサイン
以下のようなサインが見られる場合は、医療機関の受診を検討することをお勧めします。
サインの種類 | 具体的な状況 |
---|---|
頻度・強度 | 急な強い不安感が繰り返し起こる(例:週に数回以上、または月に数回でも日常生活に大きな影響がある) |
持続期間 | 不安感が数週間~数ヶ月以上にわたって続いている |
日常生活への影響 | 不安のために外出を避けるようになった、仕事や学業に集中できない、家事や育児が困難になった、人間関係に支障が出ているなど、日常生活の質が著しく低下している |
身体症状の有無 | 動悸、息苦しさ、めまい、吐き気、体の震えなど、辛い身体症状を伴う(特に初めて経験した場合や、身体的な病気が心配な場合) |
精神症状の併存 | 不安感とともに、気分の落ち込み、興味・関心の喪失、イライラ、不眠、食欲不振、集中力の低下などの症状も見られる(うつ病の可能性も考慮) |
自分で対処可能か | 本やインターネットの情報、友人や家族のサポート、セルフケアなどを試しても、不安感が改善しない、または悪化している |
自傷・他害念慮 | 不安が強すぎて、「死にたい」と考えたり、自分や他人を傷つけたいという考えが頭をよぎったりする場合(緊急性が高いサインです) |
原因不明の不安 | 明確なストレスや身体的な原因が思い当たらないのに、強い不安感が続く |
身体疾患の心配 | 不安感に加えて、胸痛、呼吸困難、体重の急激な変化など、身体的な病気を疑わせる症状がある(まずは内科を受診することも検討) |
何科を受診すれば良いか
急な不安感について相談する場合、主に以下の科が考えられます。
- 精神科・心療内科: 不安障害、うつ病、適応障害などの精神疾患が疑われる場合、これらの科が専門となります。精神科は精神疾患全般を扱い、心療内科は心理的な要因で生じる身体症状や、心身両面にわたる問題を扱います。まずは精神科または心療内科を受診するのが一般的です。
- かかりつけ医(内科など): 不安感に加えて、動悸、息苦しさ、めまい、体重変化など、身体的な症状も強く伴う場合や、どの科を受診すべきか判断に迷う場合は、まずはかかりつけの内科医に相談するのも良いでしょう。身体的な病気が隠れていないか診察・検査を行い、必要に応じて精神科医や他の専門医を紹介してくれます。
- 専門外来: 医療機関によっては、「ストレス外来」「不安障害専門外来」「睡眠外来」などを設けている場合もあります。
- カウンセリング機関: 医療機関での治療と並行して、または治療が一段落した後に、カウンセリングを受けることも有効です。公認心理師や臨床心理士などの専門家が、認知行動療法やその他の心理療法を用いて、不安への対処法や考え方の癖の見直しなどをサポートしてくれます。ただし、カウンセリングは医療行為ではないため、病気の診断や薬の処方はできません。
初めて受診する場合は、事前に病院のウェブサイトなどで診療内容や予約方法を確認しておくとスムーズです。症状について医師に正確に伝えるために、いつ頃から、どのような状況で、どのような症状(身体症状も含む)が、どのくらいの頻度で起こるかなどをメモしておくと役立ちます。
【まとめ】急に不安感に襲われる経験に一人で悩まないで
「急に不安感に襲われる なぜ」という疑問に対して、心理的、身体的、環境的な様々な原因が考えられることを解説しました。セロトニンなどの神経伝達物質のバランスの乱れ、自律神経の不調、ストレスの蓄積、そしてパニック障害や全般性不安障害などの精神疾患や、一部の身体疾患が背景にある可能性があります。
突然の不安に襲われた時には、深呼吸やグラウンディングなどの具体的な対処法が役立ちます。また、普段から規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスマネジメント、考え方の癖の見直しなどに取り組むことが、不安感の軽減や予防につながります。
もし、急な不安感が繰り返し起こる、症状が辛い、日常生活に支障が出ているといった場合は、一人で抱え込まずに、精神科や心療内科などの専門家へ相談することを強くお勧めします。早期に適切な診断を受け、必要に応じて治療を開始することが、症状の改善と回復への第一歩となります。不安は適切な対処や治療によって乗り越えることができるものです。
免責事項: 本記事は、急に不安感に襲われる原因や対処法に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
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