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「休職したい 疲れた」は甘えじゃない?見過ごせないサインと取るべき行動

仕事に追われ、心身ともに「もう疲れた、休職したい」と感じていませんか?
その疲労は、体が発している大切なサインかもしれません。
この記事では、あなたが感じている疲労が単なる疲れではなく、休職を検討すべき限界サインなのかをチェックする方法から、実際に休職する際の手続き、気になるお金のこと、そして休職後のキャリアの選択肢まで、詳しく解説します。
疲れたあなたが、自分を大切にし、一歩踏み出すためのヒントがここにあります。

目次

もう限界かも…仕事に疲れたサインをチェック

仕事による疲労は、誰にでも起こりうるものです。しかし、その疲労が回復せず蓄積し、心身に様々な不調が現れているなら、それは「もう限界」という体からのSOSかもしれません。単なる疲れと見過ごさず、自分の状態を客観的にチェックしてみましょう。

身体的な疲労サイン

体の不調は、目に見えやすく、比較的自覚しやすいサインです。以下のような症状が続いている場合、仕事のストレスや疲労が影響している可能性があります。

  • 睡眠に関する問題:
    • 寝つきが悪い(不眠)
    • 夜中に何度も目が覚める
    • 朝早く目が覚めてしまう
    • 十分寝ても疲れが取れない(過眠、日中の強い眠気)
    • 夢をよく見て、眠りが浅い
  • 食欲や消化器系の問題:
    • 食欲がない、食事が喉を通らない
    • 逆に、過食や衝動的な食事が増える
    • 胃痛、胃もたれ、吐き気
    • 便秘や下痢を繰り返す
  • 体の痛みや不調:
    • 慢性的な頭痛、偏頭痛
    • 肩や首の強いこり、背中の痛み
    • 動悸、息苦しさ(特に仕事中や通勤中)
    • めまい、立ちくらみ
    • 倦怠感、体が鉛のように重い
    • 風邪をひきやすい、一度ひくと治りにくい
    • 蕁麻疹や湿疹など、皮膚のトラブル
  • その他:
    • 声が出にくい、かすれる
    • 涙が止まらなくなる

これらの身体的なサインは、ストレスホルモンの分泌増加や自律神経の乱れが原因で起こることが多いです。単なる体調不良だと軽視せず、仕事の疲労との関連を考えてみることが重要です。

精神的な疲労サイン

体のサインと同様に、心の状態にも変化が現れます。精神的なサインは自分では気づきにくいこともありますが、周囲から指摘されたり、以前との違いに気づいたりすることで自覚できる場合があります。

  • 感情の変化:
    • 些細なことでイライラする、怒りっぽくなる
    • 不安感が強い、理由もなく落ち着かない
    • 憂鬱な気分が晴れない、悲観的になる
    • 楽しいと感じていたことに興味がなくなる(アパシー)
    • 無気力になる、何もする気が起きない
    • 涙もろくなる、突然泣きたくなる
    • 自分を責める気持ちが強い、自己肯定感が低下する
  • 思考力や集中力の低下:
    • 仕事で簡単なミスが増える
    • 物事に集中できない、注意力が散漫になる
    • 判断力が鈍る、物事を決められない
    • 記憶力が低下する、物忘れが増える
    • 考えるのに時間がかかる、頭がぼーっとする
  • 行動の変化:
    • 仕事に行くのが億劫になる、遅刻や欠勤が増える
    • 人付き合いを避けるようになる、引きこもりがちになる
    • 以前はできていた簡単な作業ができない
    • 身だしなみに気を使わなくなる
    • 飲酒量や喫煙量が増える

これらの精神的なサインは、脳が疲労し正常に機能しなくなっている状態を示している可能性があります。特に、感情のコントロールが難しくなったり、思考力が著しく低下したりしている場合は、専門家の助けが必要なサインです。

休職を検討すべき状態とは?

上記の身体的・精神的サインが複数現れており、それが2週間以上続き、かつ日常生活や仕事に支障が出ている場合、休職を検討すべき状態かもしれません。具体的には、以下のような状況であれば、専門家への相談を強く推奨します。

  • 朝起きられない、会社に行こうとすると体が動かなくなる
  • 仕事中に強い不安や動悸に襲われ、業務が遂行できない
  • 家に帰っても何もする気力がなく、食事や入浴もおっくう
  • 休日も心身の疲労が回復せず、ベッドから出られない
  • 「消えてしまいたい」「死にたい」といった考えが頭をよぎる
  • 医師から「このままでは危険」「休養が必要」と診断された

このような状態は、放置すると症状が悪化し、回復に時間がかかるだけでなく、取り返しのつかない事態に至る可能性もあります。疲労が限界を超えているサインを見逃さず、「休む」という選択肢を真剣に考えてみてください。

休職のメリット・デメリット【後悔しないために】

休職は、心身の回復のために有効な手段ですが、メリットだけでなくデメリットやリスクも伴います。休職を決断する前に、両方の側面を理解しておくことが大切です。

休職する最大のメリットは心身の回復

休職の何よりのメリットは、仕事という負荷から一時的に離れ、心身の回復に専念できることです。

  • 疲労の蓄積を断ち切る: ストレス源である仕事から離れることで、疲労の悪循環を断ち切り、心身を休ませることができます。
  • 病状の回復・治療への専念: ストレス性疾患や精神疾患など、病気が原因の場合は、治療に集中できる環境が得られます。通院や服薬、カウンセリングなどを落ち着いて行うことができます。
  • セルフケアの機会: 忙しさにかまけて疎かになっていた、睡眠、食事、運動といった基本的な生活習慣を立て直し、自分自身のケアをする時間を持てます。
  • 客観的な視点の獲得: 仕事から離れることで、自分がなぜ疲れてしまったのか、何に苦痛を感じていたのかを客観的に見つめ直すことができます。自分の働き方やキャリアについて冷静に考える時間にもなり得ます。

デメリットとリスクを知っておく

一方で、休職には以下のようなデメリットやリスクが伴います。これらを理解し、対策を講じることが、後悔しない休職につながります。

「休職したら終わり」は本当か?キャリアへの影響

「休職したらキャリアが終わるのではないか」「もう元の部署には戻れないのではないか」といった不安を感じる人は少なくありません。しかし、休職が必ずしもキャリアの終わりを意味するわけではありません。

  • キャリア中断の可能性: 一時的に現場を離れることで、プロジェクトからの離脱や昇進への影響など、キャリアが中断・停滞する可能性はあります。
  • 復職時の不安: 長期間休んだ後の復職には、仕事についていけるか、人間関係は大丈夫かといった不安が伴います。
  • 転職への影響: 休職中に転職活動を行う場合や、復職後に転職を検討する場合、休職歴について説明を求められることがあります。正直に話す義務はありませんが、隠すことで後々問題になる可能性もあります。採用側が休職歴をどう評価するかは企業によります。

ただし、多くの企業では社員が心身の不調から回復し、再び活躍できるよう、休職制度や復職支援プログラムを用意しています。休職経験を乗り越え、復職後に以前より活躍する人や、休職期間中に自分に合った働き方を見つけて転職に成功する人もいます。休職は「終わり」ではなく、「回復と再スタートのための期間」と捉えることが重要です。

休職中の収入(給料・手当はどうなる?)

休職中の収入に関する不安は大きいでしょう。収入は、会社の規定や加入している健康保険の種類によって大きく異なります。

  • 会社の給与:
    • 多くの企業では、休職期間中の給与支払いはありません(無給)。
    • ただし、企業によっては、最初の数週間~数ヶ月は給与の一部または全額が支払われる「病気休暇制度」や、有給休暇の残日数を使用できる場合があります。
    • まずは会社の就業規則を確認するか、人事部に問い合わせる必要があります。
  • 健康保険の傷病手当金:
    • 健康保険に加入している会社員(任意継続被保険者も含む)であれば、病気や怪我で仕事を休まざるを得ない場合に、健康保険から「傷病手当金」が支給される可能性があります。
    • これは休職中の主な収入源となります。詳細は後述の「傷病手当金の申請と受給」で詳しく解説します。
  • その他:
    • 業務中の事故や業務が原因の病気(うつ病、過労死ラインを超える残業など)の場合は、労災保険の対象となる可能性があります。ただし、精神疾患の場合の労災認定はハードルが高い場合があります。
    • 生命保険や医療保険に加入している場合、就業不能保険や入院給付金などが支払われる可能性があります。契約内容を確認してみましょう。

休職期間中の収入は、現役で働いている時と比べて減少することがほとんどです。生活費の見直しや、利用できる制度の確認をしっかり行う必要があります。

周囲の目や人間関係

休職することに対して、「職場の人にどう思われるだろう」「迷惑をかけてしまう」といった周囲の目を気にする人も多いです。

  • 同僚や上司の反応: 状況を知らない同僚からは心配されたり、あるいは誤解されたりする可能性もゼロではありません。また、自分の業務が他の人に引き継がれることへの罪悪感を感じるかもしれません。
  • 復職後の人間関係: 長期間休むことで、職場での人間関係が変化することへの不安も伴います。

信頼できる上司や同僚がいれば、正直に状況を話すことで理解を得られる場合もあります。また、会社に産業医や相談窓口がある場合は、そこを経由して休職の意思を伝えることで、スムーズな手続きや周囲への配慮をお願いできることもあります。休職中は職場から離れるため、無理に人間関係を維持しようとせず、回復に専念することを優先しましょう。

休職のメリット・デメリットを比較すると以下のようになります。

メリット デメリット・リスク
心身の回復に専念できる 収入が減少する
病状の回復・治療に集中できる キャリアが一時中断する可能性がある
セルフケアの習慣を身につける 復職時の不安やハードル
客観的に自分や仕事を見つめ直す 社内外からの評価への懸念(周囲の目)
再スタートのための準備期間 復職後の人間関係の変化
転職活動における休職歴の影響(企業による)

これらの点を踏まえ、自分にとって休職が最善の選択肢なのか、慎重に判断することが大切です。

疲れて休職したいと思ったら?具体的な進め方

「休職したい」という気持ちが固まってきたら、具体的な行動に移しましょう。感情的にならず、段階を踏んで冷静に進めることが重要です。

まずは信頼できる人に相談する

一人で悩みを抱え込まず、まずは誰かに相談することから始めましょう。話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になったり、状況を整理できたりすることがあります。

  • 家族や友人: 身近な存在に話すことで、精神的な支えになります。
  • 職場の信頼できる同僚や上司: 職場の状況を理解しているため、具体的なアドバイスをもらえることもあります。ただし、相談相手は慎重に選びましょう。
  • 会社の相談窓口: 産業医、カウンセラー、ハラスメント相談窓口など。社内の専門家なので、守秘義務があり、会社の制度についても詳しい情報を持っている場合があります。
  • 会社の健康保険組合: メンタルヘルスの相談窓口を設けている場合があります。
  • 外部の相談機関: 公的な相談窓口(こころの健康相談統一ダイヤルなど)、民間のカウンセリングサービスなど。

相談する際は、「仕事で疲れていて、体調も悪く、休職を考えている」という率直な気持ちを伝えてみましょう。

医師に相談し診断書を検討する

休職するためには、多くの会社で医師の診断書が必要となります。心身の不調を感じている場合は、まず医療機関を受診しましょう。

  • 受診する科: 身体症状が強い場合はかかりつけの内科医に相談し、必要であれば専門医(心療内科や精神科)を紹介してもらうのが一般的です。精神的な不調が主な場合は、直接心療内科や精神科を受診しましょう。受診に抵抗がある場合は、まずはメンタルヘス相談窓口などに相談してみるのも良いでしょう。
  • 医師に伝えること:
    • どのような症状が、いつ頃から続いているか
    • 仕事内容(残業時間、業務内容、人間関係など、ストレスの原因と考えられること)
    • 日常生活への影響(睡眠、食欲、家事ができないなど)
    • 「仕事が原因で体調を崩しており、休職を希望している」という意向
  • 診断書の発行: 医師が診察の結果、休職が必要と判断した場合に診断書を発行してもらえます。診断書には、病名、休職が必要な期間(例:〇ヶ月間の自宅療養が必要)、仕事内容の制限などが記載されます。診断書の記載内容は、会社に提出するためのものなので、医師とよく相談して作成してもらいましょう。
  • 診断書をもらうタイミング: 会社に休職を申し出る前に診断書をもらっておくと、スムーズに手続きを進めやすいです。ただし、まずは体調不良で欠勤し、その間に受診して診断書をもらうというケースもあります。

会社の休職制度・規則を確認する

診断書をもらう準備と並行して、会社の休職制度について確認しましょう。会社の就業規則や給与規定に記載されています。人事部に問い合わせるのが最も確実です。

確認すべき主な内容は以下の通りです。

  • 休職が認められる条件: どのような病気や怪我で休職できるか。
  • 休職期間: 最長でどのくらいの期間休めるのか(例:勤続年数に応じて3ヶ月~1年など)。期間満了後の扱い(復職、または退職)も確認します。
  • 休職中の給与: 支払われるのか、無給なのか。もし支払われる場合は期間や金額はどのくらいか。
  • 休職中の社会保険料: 健康保険料や厚生年金保険料は、原則として休職中も支払い義務があります。会社によっては給与から天引きできないため、自分で納付する必要があるか確認します。
  • 休職中の手続き: 必要な書類(休職願、診断書など)、提出先、手続きの期限。
  • 復職の手続き: 復職の申し出時期、医師の診断書、会社による面談や復職可否の判断プロセス。
  • 休職中の連絡: 会社への定期的な報告が必要か、連絡頻度や手段はどのようなものか。

これらの情報を事前に把握しておくことで、休職中の不安を軽減し、復職に向けた計画を立てやすくなります。

会社への休職申し出と手続き

会社の制度を確認し、医師の診断書が準備できたら、いよいよ会社に休職を申し出ます。このステップは非常にデリケートなので、慎重に進めましょう。

  1. 誰に伝えるか: 基本的には直属の上司に相談します。上司に話しにくい場合は、人事部の担当者や産業医に相談し、間に入ってもらうことも検討できます。
  2. いつ伝えるか: 体調が悪いことを日頃から伝えている場合は、比較的スムーズかもしれません。突然体調不良を訴える場合は、上司も驚く可能性があります。診断書をもらった後、なるべく早いタイミングで伝えるのが良いでしょう。可能であれば、就業時間中にアポイントを取って、落ち着いて話せる場所を選ぶと良いです。
  3. どのように伝えるか:
    • まずは、体調が優れないこと、医師の診断を受け、休職が必要だと診断されたことを伝えます。
    • 診断書を提出し、医師から受けた説明内容(病名、休職期間、仕事ができない理由など)を補足して説明します。
    • 休職を希望する意思を明確に伝えます。
    • 業務の引き継ぎについて、可能な範囲で協力する姿勢を示します(ただし、体調が著しく悪い場合は無理は禁物です)。
    • 会社の休職制度について確認した内容や、手続きについて質問します。
    • 感情的になりすぎず、冷静に、かつ真摯に話すことを心がけましょう。

申し出後、会社側で休職の承認プロセスが進められます。通常、診断書や提出された書類をもとに、人事部などが休職の可否や期間を決定します。休職が承認されたら、正式な休職辞令や通知書が交付されるのが一般的です。

休職申し出の際のポイント:

  • 体調が悪いことを具体的に伝える(抽象的な「疲れた」だけでなく)。
  • 医師の診断があることを伝える(診断書の提出)。
  • 休職という具体的な希望を伝える。
  • 感情的にならない。
  • 質問があれば事前にまとめておく。
  • 会社の制度や手続きについて確認する。

スムーズに進まない場合や、会社との話し合いが難しい場合は、労働組合や弁護士、労働基準監督署などに相談することも視野に入れましょう。

休職期間中の過ごし方とお金の話

休職が承認されたら、心身の回復に専念する期間が始まります。この期間の過ごし方や、お金(傷病手当金など)について理解しておくことが重要です。

回復に専念するための過ごし方

休職中は「休むこと」が最も大切な仕事です。回復を焦らず、自分に合った過ごし方を見つけましょう。

  • 十分な休息をとる: まずは何よりも休息が必要です。まとまった睡眠時間を確保し、昼間も無理せず横になったり、昼寝をしたりして体を休ませましょう。
  • 治療に専念する: 通院、服薬、カウンセリングなど、医師の指示に従い治療を最優先で行います。
  • 規則正しい生活: 毎朝同じ時間に起き、夜は同じ時間に寝るなど、生活リズムを整えることは心身の安定につながります。
  • 心身のリフレッシュ:
    • 軽い運動(散歩、ストレッチ、ヨガなど)は、気分転換や体力回復に役立ちます。
    • 趣味や好きなこと(読書、音楽鑑賞、映画鑑賞、簡単な手芸、料理など)に没頭する時間を持つことで、心の活力が戻ってきます。
    • 自然に触れる(公園に行く、ハイキングなど)こともリフレッシュになります。
    • 信頼できる人と交流する(ただし、無理のない範囲で)。
  • 完璧を目指さない: 休職期間中に「完璧に回復しなければ」「何か生産的なことをしなければ」と焦る必要はありません。まずはゆっくりと休み、何もできない日があっても自分を責めないことが大切です。
  • 仕事から離れる: 業務用のメールや会社のイントラネットは見ない、仕事関連の連絡は最小限にするなど、仕事から物理的・精神的に距離を置きましょう。
  • 復職に向けた準備(回復してきたら): 症状が改善してきたら、徐々に活動量を増やし、リハビリとして簡単な作業や軽い運動を取り入れます。復職について、主治医や会社と相談しながら、段階的に準備を進めます。

休職中の過ごし方で最も重要なのは、自分にとって何が必要かを見極め、無理をしないことです。回復のペースは人それぞれ異なります。周囲と比べたり、焦ったりせず、自分の心と体の声に耳を傾けましょう。

傷病手当金の申請と受給

休職中の生活を支える上で非常に重要なのが、健康保険から支給される「傷病手当金」です。

傷病手当金の条件・期間

傷病手当金を受給するためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 業務外の事由による病気やケガであること: 仕事中や通勤途中の怪我、職業病は労災保険の対象となるため、傷病手当金の対象外です。精神疾患や私生活での病気・怪我が該当します。
  • 仕事に就くことができないこと: 医師の意見書などから、仕事ができないと判断される必要があります。単に体調が優れないというだけでなく、労務不能であることが条件です。
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んだこと: 業務に就くことができなくなった日から、連続して3日間(待期期間)を休み、その後4日目以降にも休んだ日があり、その休んだ日に対して傷病手当金が支給されます。待期期間には有給休暇や土日・祝日も含まれます。
  • 休んだ期間について給与の支払いがないこと: 会社から給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与が支払われていても、その金額が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給されることがあります。

支給される期間:

支給開始日から最長で1年6ヶ月です。支給が開始された日から暦日で計算するため、途中で仕事に復帰した期間があっても、支給を始めた日から通算して1年6ヶ月が上限となります。

傷病手当金の申請方法・金額

申請方法:

  1. 申請書の入手: ご自身が加入している健康保険組合(または協会けんぽ)のホームページからダウンロードするか、会社の担当者(人事部など)から入手します。
  2. 申請書の記入:
    • 被保険者記入用: ご自身の氏名、被保険者証の番号、休職期間、振込先口座などを記入します。
    • 事業主記入用: 会社の担当者が、休職期間中の給与支払い状況などを記入します。
    • 療養担当者記入用: 受診している医師が、病名、休業が必要と判断した期間、労務不能と判断した理由などを記入します。
  3. 提出: 必要事項がすべて記入された申請書を、ご自身が加入している健康保険組合(または協会けんぽ)に提出します。通常は会社経由で提出する場合と、自分で直接郵送する場合などがあります。会社の担当者に確認しましょう。

申請のタイミング:

休んだ期間ごとに申請します。例えば、1ヶ月ごとにまとめて申請するのが一般的です。給与の締め日や会社の指示に合わせて提出しましょう。療養担当者(医師)の記入が必要なため、申請書を持って受診する必要があります。

支給金額:

支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30日で割った金額の約3分の2が、1日あたりの支給額となります。

(例)標準報酬月額の平均が30万円の場合
1日あたりの支給額 = 30万円 ÷ 30日 × 2/3 ≒ 6,667円
休んだ日数に応じて、この金額が支払われます。

注意点:

  • 加入している健康保険組合によって、付加給付(傷病手当金に上乗せして支給される制度)がある場合があります。会社の健康保険組合に確認しましょう。
  • 退職前に1年以上被保険者期間があり、在職中から傷病手当金を受給していた場合、退職後も引き続き受給できる場合があります(任意継続被保険者期間も含む)。
  • 雇用保険の失業給付と同時に受給することは原則できません。

傷病手当金は、休職中の経済的な不安を大きく軽減してくれる制度です。条件を満たしている場合は、必ず申請手続きを行いましょう。

休職からの復職・転職・退職という選択肢

休職期間を経て心身が回復してきたら、今後のキャリアについて考える時期が訪れます。復職、転職、退職という3つの選択肢があります。

復職を目指す場合

休職する多くの方が、まずは復職を目指すでしょう。回復の度合いを見ながら、会社との話し合いを進めます。

  • 回復の目安: 主治医と相談し、仕事に戻れる状態かどうかを判断します。症状が安定しているか、通勤や決められた時間働く体力が回復しているかなどが目安となります。
  • 会社への復職相談: 主治医から復職可能と診断されたら、会社の担当者(上司や人事部)に連絡し、復職したい意向を伝えます。診断書の提出を求められます。
  • 復職面談: 会社との面談が行われます。現在の体調、治療状況、復職への意欲、今後働く上で配慮してほしいことなどを伝えます。会社からは、復職後の働き方(部署、業務内容、勤務時間など)、リハビリ出勤制度の有無、会社のサポート体制などについて説明があります。
  • 試し出社・リハビリ出勤: いきなりフルタイムでの復帰が難しい場合、短時間勤務から始めたり、自宅で簡単な事務作業をしたりする「試し出社」や「リハビリ出勤」の制度を設けている会社もあります。これは、本格的な復帰に向けて心身を慣らすための期間です。主治医や会社と相談して利用を検討しましょう。
  • 復職後のフォロー: 復職後も、定期的に上司や産業医との面談を設定してもらうなど、再休職を防ぐためのフォローアップが重要です。無理のない範囲で業務をこなし、少しでも不調を感じたら早めに相談しましょう。

休職中に転職活動は可能?

休職期間中に、今の会社に戻らず転職したいと考える人もいます。法律上、休職中の転職活動は問題ありません。しかし、現実的にはいくつかの課題があります。

  • 心身への負担: 転職活動は想像以上に体力と精神力を使います。病気療養のために休職しているのに、転職活動によってさらに疲弊してしまうリスクがあります。
  • 休職歴を伝えるか: 採用面接などで休職歴について聞かれた場合、正直に話すか、話さないかという判断が必要です。
    • 伝える場合: 休職の原因、現在の回復状況、休職から学んだことなどを説明する必要があります。正直に話すことで、理解のある企業に出会える可能性もありますが、選考に不利に働く可能性も否定できません。
    • 伝えない場合: 入社後に休職歴が発覚した場合、経歴詐称とみなされ問題になるリスクがあります。また、体調が完全に回復していないまま入社し、再び体調を崩してしまう可能性もあります。
  • 選考への影響: 企業によっては、休職歴を「ストレス耐性が低い」「採用してもすぐに休む可能性がある」とネガティブに評価する場合があります。特に、病状が回復していないと判断されれば、採用は難しいでしょう。

休職中の転職活動を成功させるには?

  • まずは心身の回復を最優先: 体調が回復していない状態での転職活動は避けるべきです。まずは回復に専念し、医師から「活動しても問題ない」という許可を得てから始めましょう。
  • 休職の原因を振り返る: なぜ休職に至ったのかを深く分析し、次の職場では同じことを繰り返さないよう、企業選びの軸を明確にします。
  • 正直に伝える覚悟と準備: 休職歴を伝える場合は、当時の状況、そこから何を学び、どのように回復したのかを説明できるように準備しておきます。正直さや前向きな姿勢を示すことが大切です。
  • 転職エージェントの活用: メンタルヘルス分野に理解のあるエージェントや、休職からの復職・転職支援に特化したサービスを利用すると、適切なアドバイスや求人紹介を受けられる場合があります。
  • 無理のないペースで: 体調を見ながら、活動ペースを調整します。応募数を絞る、オンライン面接を活用するなど、負担を減らす工夫をしましょう。

結論として、休職中の転職活動は可能ですが、慎重に進める必要があり、特に心身の回復を最優先に考えるべきです。

退職を選択する場合

休職期間中に、「今の会社では働き続けるのが難しい」「この機会に全く違う道に進みたい」と考え、退職を選ぶこともあります。

  • 休職期間満了による退職: 会社の休職期間の上限を超えても復職できない場合、会社の規定により自然退職となるのが一般的です。
  • 自己都合による退職: 回復後に、自分自身の意思で退職を選択します。休職期間中に会社に退職の意思を伝えるか、復職後に伝えるかなどを検討します。

退職を選択する際の検討事項:

  • 退職理由: 病気療養のため、キャリアチェンジのためなど、退職理由を明確にします。特に、病気療養が理由の場合は、失業保険の受給において有利になる場合があります(特定理由離職者)。
  • 会社への伝え方: 退職の意思は、会社の規定に従って、通常は1ヶ月前などに直属の上司に伝えます。休職中であれば、電話やメール、書面などで伝えることになります。診断書や現在の体調について説明を求められるでしょう。
  • 失業保険(雇用保険の基本手当): 退職した場合、次の仕事を見つけるまでの生活費として、雇用保険の基本手当(失業保険)を受給できる可能性があります。
    • 受給条件: 離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あることなどが基本的な条件です。
    • 病気で退職した場合の特例: 病気や怪我ですぐに働くことができないため退職した場合、通常の自己都合退職とは異なり、「特定理由離職者」として扱われることがあります。この場合、自己都合退職にある7日間の待期期間に加えて、さらに2ヶ月または3ヶ月間の給付制限期間がなく、すぐに基本手当が支給される可能性があります。また、病気療養のためすぐに働くことができない期間は、本来の受給期間(離職日の翌日から1年間)に加えて、最長3年間、受給期間を延長できる制度もあります。ハローワークで相談しましょう。
  • 次のステップ: 退職後、治療に専念するのか、療養しながら次の仕事を探すのか、全く別の活動をするのかなど、具体的な計画を立てる必要があります。

退職は大きな決断ですが、心身の健康を損ねてまで働き続けることはできません。やむを得ず、あるいは前向きな理由で退職を選ぶ場合でも、利用できる制度や次のステップについてしっかり情報収集することが大切です。

復職、転職、退職の選択肢は、個々の状況(病状、回復度合い、会社の制度、キャリアプラン、経済状況など)によって最適なものが異なります。主治医や会社の担当者、家族、友人、そして専門家(キャリアコンサルタントなど)とよく相談し、自分にとって最も良い道を選びましょう。

以下に、それぞれの選択肢の簡単な比較表を示します。

選択肢 メリット デメリット・リスク 向いている人
復職 今までの経験・スキルを活かせる 復職時の環境への適応、再発のリスク 現在の仕事にやりがいを感じている、会社の制度が整っている
職場の人間関係を維持できる(場合がある) 再び同じストレスに晒される可能性 回復後、同じ職場で無理なく働けると主治医が判断している
比較的スムーズに社会生活に戻れる
転職 環境を変えて新しい働き方ができる 転職活動自体の負担、休職歴の影響 休職の原因が現在の職場環境にある、明確な転職理由がある
自分の価値観やスキルに合った仕事を探せる ゼロからの人間関係構築 体力が回復し、転職活動に耐えうる精神力がある
年収や待遇が改善する可能性がある 入社後のミスマッチリスク 回復後、別の会社で働くことに前向きである
退職 完全に仕事から離れてリフレッシュできる 次の仕事が決まるまでの収入がない(傷病手当金終了後など) 今の会社に戻ることは考えられない、キャリアチェンジしたい
自由に時間を使い、自己投資や療養に専念できる 社会とのつながりが一時的に希薄になる可能性 経済的に一定の余裕がある、あるいは公的制度を活用できる
新しい分野への挑戦がしやすい 再就職活動の負担、キャリア中断期間が長くなる可能性 回復に時間がかかる可能性がある、じっくり将来を考えたい人

まとめ:疲れた時は休む勇気を持とう

仕事の疲労が限界を超え、「休職したい 疲れた」と感じることは、決して甘えではありません。それは、あなたの心と体が「もうこれ以上無理だ」と発しているSOSのサインです。そのサインを見過ごさず、自分を大切にするために「休む」という選択をすることは、非常に勇気のいることですが、長期的な視点で見れば、自分を守り、より良く生きるために必要な一歩です。

この記事で解説したように、仕事の疲労には身体的・精神的な様々なサインがあります。もしあなたが複数のサインに当てはまり、日常生活に支障が出ているなら、まずは信頼できる人や専門家(医師、会社の相談窓口など)に相談してみてください。一人で抱え込まないことが、状況を改善するための第一歩です。

休職にはメリットとデメリットがありますが、適切な手続きを踏み、利用できる制度(特に傷病手当金)を活用することで、経済的な不安を軽減しながら回復に専念することが可能です。休職期間中は、焦らずゆっくりと心と体を休ませ、自分自身の回復に集中しましょう。

休職期間を経て回復したら、復職、転職、退職という選択肢の中から、自分にとって最適な道を選ぶことになります。それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあります。主治医や周囲の人とよく話し合い、自分の価値観や将来のキャリアプランに合った決断をすることが大切です。

「疲れた」と感じた時に休む勇気を持つこと、そして「休むことは悪いことではない」と自分自身に許可を与えること。それが、あなたが再び健康に、そして前向きに社会と関わっていくための基盤となります。

もし今、あなたが「休職したい 疲れた」と感じているなら、まずは一歩踏み出してみましょう。それは、自分自身の心と体を守るための、そしてより良い未来を築くための、尊い行動です。

免責事項:
この記事は、休職を検討されている方へ一般的な情報を提供することを目的としています。個々の状況は異なるため、具体的な診断、治療、休職の可否、手続き、制度の利用については、必ず医師、会社の担当者、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。この記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者および掲載者は一切の責任を負いません。制度に関する情報は記事公開時点のものであり、法改正などにより変更される可能性があります。最新の情報は関係省庁や専門機関でご確認ください。

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