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加味逍遥散を飲むと太る?誤解されがちな体重増加の真実

加味逍遥散は、女性特有の様々な不調に対して古くから用いられてきた漢方薬です。イライラやのぼせ、倦怠感、生理不順、冷え性など、幅広い症状に効果が期待できる一方で、「加味逍遥散を飲むと太るのではないか?」と心配される方もいらっしゃるようです。

結論から言うと、加味逍遥散自体に直接的な体重増加を引き起こすような副作用はほとんど報告されていません。しかし、服用によって体質が変化したり、症状が改善した結果として間接的に体重が増加したりするケースは考えられます。この記事では、加味逍遥散と体重増加の関係性について、副作用の観点だけでなく、様々な角度から詳しく解説します。加味逍遥散の服用を検討している方や、服用中に体重の変化を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

加味逍遥散の目的と期待される効果

加味逍遥散(かみしょうようさん)は、漢方の古典である『和剤局方(わざいきょくほう)』に収載されている逍遥散(しょうようさん)に、牡丹皮(ボタンピ)と山梔子(サンシシ)を加えた処方です。主に、心と体のバランスの乱れからくる様々な不定愁訴に用いられます。

漢方医学では、気(エネルギー)・血(栄養)・水(体液)の巡りが滞ったり不足したりすることで、体に不調が現れると考えられています。加味逍遥散は、特に「気」の巡りが滞っている状態、いわゆる「気滞(きたい)」を改善することに重点を置いています。気の巡りが良くなることで、連動して血や水の巡りも改善され、全身のバランスが整えられることを目指します。

期待される主な効果としては、精神的な安定、血行促進、炎症抑制、利尿作用などがあり、これらの効果が複合的に作用することで、多岐にわたる症状の改善につながると考えられています。

加味逍遥散が処方される主な症状

加味逍遥散は、幅広い年代の女性に用いられることが多い漢方薬です。特に以下のような症状に対して処方されることがよくあります。

  • 精神神経症状: イライラ、怒りっぽい、憂鬱感、不安感、不眠、神経症
  • 婦人科系症状: 月経不順、月経困難症、月経前症候群(PMS)、更年期障害による諸症状(のぼせ、ほてり、発汗、冷え、動悸など)
  • 消化器症状: 食欲不振、胃の不快感、腹部膨満感、便秘、下痢
  • その他: 肩こり、頭痛、めまい、疲労感、目の充血、口の渇き、手足の冷え

これらの症状は、ストレスやホルモンバランスの乱れ、生活習慣の偏りなど、様々な要因が複雑に絡み合って生じることが多いものです。加味逍遥散は、これらの原因によって生じた気の滞りを改善し、心身のバランスを整えることで、不調の緩和を目指します。特に、イライラしたり、胸やお腹が張ったりするような「気の滞り」の症状を伴う場合に効果が期待されやすいとされています。

加味逍遥散は体重増加の副作用がある?太る可能性を解説

加味逍遥散を服用すると「太る」という話を耳にすることがあるようですが、これは直接的な副作用として体重が増加するわけではありません。漢方薬の添付文書や医学的な文献において、加味逍遥散の主な副作用として「体重増加」や「肥満」が挙げられることは稀です。

では、なぜ加味逍遥散を飲むと太るのではないかと心配されたり、実際に体重が増えたと感じたりする人がいるのでしょうか。そこには、薬の作用によって引き起こされる間接的な要因や、体質の変化、さらには服用期間中の生活習慣の変化などが関わっていると考えられます。

主な副作用に体重増加や肥満は含まれるか

加味逍遥散の添付文書に記載されている主な副作用としては、食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢などの消化器系の症状や、発疹、かゆみなどの皮膚症状が挙げられます。これらは比較的まれに起こりうる副作用であり、重篤なものではありません。

ステロイド薬のように、直接的に脂肪の蓄積を促進したり、むくみを引き起こしたりすることで体重を増加させる種類の薬剤とは、加味逍遥散の作用機序は根本的に異なります。加味逍遥散に含まれる生薬成分が、直接的に脂肪細胞に作用して増殖させる、あるいは代謝を低下させてエネルギーを貯め込みやすくするといった働きは確認されていません。

したがって、加味逍遥散を服用したからといって、薬の作用として必然的に体重が増加したり肥満になったりすることはない、と言えます。

加味逍遥散の服用で間接的に体重が増加するケース

直接的な副作用ではないとしても、加味逍遥散の服用が間接的に体重増加につながる可能性はいくつか考えられます。これは、薬の効果によって体の状態が変化した結果として起こるものです。

症状改善による食欲増進

加味逍遥散を服用する方の多くは、何らかの不調(イライラ、不安、胃の不快感、疲労感など)を抱えています。これらの不調は、食欲の低下や偏った食事につながることがあります。例えば、ストレスで胃の調子が悪くあまり食べられなかったり、イライラを紛らわせるために甘いものばかり口にしてしまったり、といったケースです。

加味逍遥散によってこれらの不調が改善されると、本来持っていた食欲が正常に戻る、あるいは今まで食欲不振だった反動で食欲が増進するといったことが起こりえます。特に、精神的なストレスや気の滞りが原因で食欲が落ちていた場合、ストレスが軽減されることで食事を楽しむ余裕が生まれ、食欲が回復する可能性は十分にあります。

食欲が増進すること自体は、体が健康な状態を取り戻している証拠とも言えますが、その際に食事の量や内容に気を配らないと、摂取カロリーが必要以上に増えてしまい、結果として体重が増加する可能性があります。これは薬が直接体重を増やしたのではなく、薬によって改善された体の状態が、食事量増加のきっかけになったという側面が強いでしょう。

体質の変化や生活習慣の影響

漢方薬は、その人の体質(証)に合わせて処方されることで効果を発揮します。加味逍遥散は、気の滞りや血の滞り、熱(のぼせやほてり)などがある体質の人によく合います。服用を続けることで、これらの体質の偏りが改善され、心身のバランスが整ってきます。

体質が改善される過程で、体の代謝が変化したり、栄養の吸収効率が変わったりするといった可能性もゼロではありません。しかし、それが直接的に体重増加に結びつく科学的なメカニズムは明確ではありません。むしろ、代謝が改善されればエネルギー消費が高まり、体重が減少しやすい方向に働くことも考えられます。

体重増加の要因としては、服用期間中の生活習慣の変化の方が影響が大きい場合が多いでしょう。例えば、以下のような状況が考えられます。

  • 運動不足: 不調が改善されたことで活動的になる人もいますが、逆に安心感から運動量が減ってしまう人もいるかもしれません。
  • 食事内容の変化: 上述の食欲増進のほか、不調が緩和されたことで外食や間食の機会が増えるなども考えられます。
  • 睡眠不足: 漢方薬の効果で睡眠の質が改善される人もいますが、不眠が続いていたり、睡眠時間が不足していたりすると、食欲を増進させるホルモンが分泌されやすくなり、体重増加につながることがあります。

加味逍遥散の服用と並行してこれらの生活習慣の変化が起こると、それが体重増加の主要な原因となっている可能性が高いです。

逆に体重が減少する可能性はあるか

加味逍遥散の服用によって、逆に体重が減少したり、体重が安定したりする可能性も十分にあります。これは、以下のような理由が考えられます。

  • 胃腸の不調改善: 胃もたれや膨満感、下痢・便秘といった胃腸の不調が改善されると、食事からの栄養吸収が適切に行われるようになり、体が本来の調子を取り戻します。また、不調による偏った食事がなくなり、バランスの取れた食事を摂れるようになることで、結果的に適正体重に近づくことがあります。
  • ストレス軽減による過食抑制: ストレスやイライラが原因で過食に走っていた人が、加味逍遥散によって精神的な不調が緩和されると、無駄な間食や暴飲暴食が減り、自然と摂取カロリーが抑えられる可能性があります。
  • 代謝の改善: 漢方薬によって血行や気の巡りが改善されることで、体の代謝がスムーズになり、エネルギー消費効率が上がる可能性も考えられます。

このように、加味逍遥散は、体重増加を直接引き起こすわけではなく、むしろ体のバランスを整えることで、結果的に適正な体重に戻る方向に働くこともあります。体重の変化は、薬そのものの作用よりも、薬によって体がどのように変化したか、そしてそれに伴う生活習慣がどう影響したかによって大きく左右されると言えるでしょう。

加味逍遥散のその他の副作用や注意点

加味逍遥散は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、すべての人に合うわけではありません。体質や体調によっては、いくつかの副作用や注意すべき点があります。

胃腸の不調(胃の不快感、吐き気、下痢など)

加味逍遥散の副作用で比較的起こりやすいのは、胃腸の不調です。これは、漢方薬の種類にかかわらず、体質に合わなかったり、胃腸がデリケートな人が服用したりした場合に起こりうる症状です。

具体的には、

  • 胃もたれや胃の不快感
  • 吐き気、軽いむかつき
  • 食欲不振(本来の効果とは逆に出る場合)
  • 下痢または便秘

などがあります。特に、普段から胃腸が弱く、冷たいものや油っこいものを食べるとすぐに胃もたれしたり、お腹を壊したりしやすい「胃腸虚弱」の体質の人には合わないことがあります。加味逍遥散に含まれる生薬の中には、人によって胃に負担をかける可能性のあるものも含まれているためです。

これらの症状が現れた場合は、一度服用を中止し、処方してもらった医師や薬剤師に相談してください。体質に合わないと判断された場合は、他の漢方薬に変更するなど、適切な対応を検討してもらえます。

まれな副作用と長期服用のリスク

多くの人にとって安全な加味逍遥散ですが、ごくまれに重篤な副作用が起こる可能性もゼロではありません。また、特定の生薬を含む漢方薬を長期にわたって服用する際には注意が必要な副作用も存在します。

サンシシによる腸管膜静脈硬化症

加味逍遥散に含まれる生薬の一つに「サンシシ(山梔子)」があります。このサンシシを長期にわたり、特に高用量で服用した場合に、ごくまれに「腸間膜静脈硬化症(ちょうかんまくじょうみゃくこうかしょう)」という病気を引き起こす可能性が指摘されています。

腸間膜静脈硬化症は、大腸の血管(静脈)が硬くなり、血流が悪くなることで、腹痛や便秘、下痢、血便などの症状を引き起こす病気です。病状が進行すると、腸閉塞や穿孔などの重篤な合併症につながることもあります。

この病気は、主にサンシシを含む漢方薬を1年以上など比較的長期間、かつ比較的高用量で服用した場合に報告されています。リスクは非常に低いとされていますが、加味逍遥散を長期服用する際には、このようなリスクがあることを認識しておくことが重要です。

サンシシによる腸間膜静脈硬化症の初期症状としては、原因不明の腹痛(特に食後に多い)、腹部膨満感、便秘、下痢などが挙げられます。これらの症状が続く場合は、自己判断せずに必ず医師の診察を受けるようにしてください。漢方薬を服用していることを医師に伝え、必要に応じてCT検査などで診断を受けることが大切です。

加味逍遥散の服用を中止するタイミング(やめどき)

加味逍遥散の服用を中止するタイミングは、主に以下の2つのケースが考えられます。

  1. 症状が改善した場合: 加味逍遥散は対症療法的に用いられることが多いため、つらい症状(イライラ、のぼせ、不眠など)が軽減または消失した場合は、服用を中止しても良いタイミングと言えます。ただし、すぐにやめるのではなく、医師や薬剤師と相談しながら、徐々に減量したり、服用間隔をあけたりして様子を見るのが一般的です。自己判断で急にやめると、症状がぶり返す可能性もあります。
  2. 副作用が現れた場合: 上記で述べた胃腸の不調や、まれな副作用(腹痛の悪化など)が現れた場合は、速やかに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。体質に合わないか、あるいは他の原因による不調の可能性が考えられます。

また、漫然と長期にわたって服用を続けるのではなく、定期的に医師の診察を受け、現在の症状や体調、そして服用継続の必要性について相談することが推奨されます。特にサンシシによる腸間膜静脈硬化症のリスクを考慮すると、長期服用の場合には注意が必要です。

加味逍遥散が体質に合わない人の特徴

漢方薬は、個人の体質(証)に合わせて選ばれることが重要です。加味逍遥散が向いているのは、比較的体力があり、イライラしやすく、のぼせやほてり、手足の冷えなどを伴う「血虚気滞(けっきょきたい)」や「肝鬱化火(かんうつかか)」といった体質の人です。

逆に、加味逍遥散が体質に合わない可能性があるのは、以下のような特徴を持つ人です。

特徴 合わない可能性のある理由
胃腸が極めて虚弱な人 加味逍遥散に含まれる生薬が胃腸に負担をかけ、胃もたれ、吐き気、下痢などの副作用が出やすいことがある。
冷えが非常に強い人 加味逍遥散は熱を冷ます作用(清熱作用)を持つ生薬(特にサンシシ、ボタンピ)を含むため、体を温める力が弱く、冷えがひどい人には合わない場合がある。体質によっては冷えが悪化することも。
体力が非常に低下している人 加味逍遥散は「実証(じっしょう)」または「中間証(ちゅうかんしょう)」向けとされ、体力が著しく落ちている「虚証(きょしょう)」の人には強すぎる場合がある。
むくみが主な症状の人 加味逍遥散には利尿作用のある生薬も含まれますが、むくみが主要な症状で、他の「水滞(すいたい)」を改善する漢方薬の方が適している場合が多い。

これらの特徴に当てはまる人が加味逍遥散を服用すると、期待する効果が得られないだけでなく、かえって体調が悪化したり、副作用が出やすくなったりすることがあります。漢方薬を選ぶ際には、自己判断せずに、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、ご自身の体質に合った処方を選んでもらうことが非常に大切です。

加味逍遥散についてよくある質問

加味逍遥散に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

加味逍遥散は肥満になりますか?

加味逍遥散の直接的な副作用として、体重増加や肥満は報告されていません。漢方薬の成分自体が脂肪の蓄積を促すわけではありません。しかし、加味逍遥散の効果によって症状(イライラ、胃の不調など)が改善された結果、食欲が増進したり、活力が戻って活動量が増えたりすることがあります。この際に、食事量が増えすぎてしまったり、食事内容や運動習慣に変化があったりすると、結果として体重が増加する可能性はあります。これは薬が直接原因ではなく、体調の変化とそれに伴う生活習慣が関係していると考えられます。

加味逍遥散を飲み続けるとどうなりますか?

加味逍遥散を体質に合った状態で適切に飲み続けると、精神的な不調(イライラ、不安など)や身体的な不調(のぼせ、冷え、疲労感、生理不順など)が徐々に改善され、心身のバランスが整っていくことが期待できます。ただし、漫然と長期に服用するのではなく、症状の改善を見ながら、医師や薬剤師と相談して服用期間を検討することが大切ですめなリスクとして、サンシシによる腸間膜静脈硬化症が長期・高用量服用で報告されているため、特に長期服用の場合は定期的な診察を受けるようにしてください。

加味逍遥散のやめどきはいつですか?

加味逍遥散のやめどきは、主に「つらい症状が改善されたとき」または「副作用が現れたとき」です。症状が軽減された場合は、医師や薬剤師と相談し、徐々に服用量を減らすか、完全に中止するかを判断します。副作用が出た場合は、すぐに服用を中止して専門家に相談してください。自己判断で急にやめたり、症状が残っているのにやめたりすると、症状がぶり返す可能性があります。

加味逍遥散が合わない症状はありますか?

加味逍遥散は体質(証)に合わない場合に、効果が得られないだけでなく、かえって不調を感じることがあります。例えば、胃腸が極めて弱い人が服用すると、胃もたれや下痢などの胃腸症状が悪化することがあります。また、非常に冷えが強い体質の人には、体を冷やす作用のある生薬が含まれているため合わない場合があります。服用を開始してから、かえって症状が悪化したり、新たな不調(例: 胃の不快感、だるさの増加、冷えの悪化など)が現れたりした場合は、体質に合っていない可能性が高いので、服用を中止して専門家に相談しましょう。

加味逍遥散の不安は医師や薬剤師に相談を

加味逍遥散の服用に関して、「太るのではないか」「他に副作用はないか」「自分に合っているのか」といった不安や疑問を感じることは自然なことです。インターネット上の情報も参考になりますが、ご自身の体質や現在の症状、他の服用中の薬との兼ね合いなど、個別の状況については、必ず専門家の判断を仰ぐようにしましょう。

漢方薬は、西洋薬と同様に医薬品です。安全に、そして効果的に服用するためには、漢方に詳しい医師や薬剤師の専門的な知識とアドバイスが不可欠です。

  • 医師: 処方してもらう際に、現在の症状、体質、既往歴、アレルギーなどを詳しく伝えましょう。体重の変化についても気になる点があれば相談してください。適切な漢方薬の選定や、服用量、服用期間についてアドバイスがもらえます。
  • 薬剤師: 薬局で加味逍遥散を受け取る際に、飲み方や注意点について説明を受けましょう。副作用の初期症状や、他の薬との飲み合わせについて不安があれば相談できます。服用中に気になる症状が現れた場合も、速やかに相談しましょう。

加味逍遥散は、正しく用いれば多くの女性の不調を和らげる potent な選択肢となり得ます。不安を抱えたまま服用を続けるのではなく、積極的に専門家とコミュニケーションを取り、安心して治療を進めてください。

免責事項

本記事は、加味逍遥散と体重増加に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や体質に関する判断は、必ず医師や薬剤師にご相談ください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる結果についても、当サイトは責任を負いかねます。

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