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ロラゼパム(ワイパックス)の副作用|主な症状と注意点

ロラゼパムは、主に不安や不眠の治療に用いられるベンゾジアゼピン系の薬剤です。
不安を和らげたり、緊張を和らげたりする作用があり、多くの患者さんの症状改善に貢献しています。
しかし、効果がある医薬品には副作用が伴う可能性があり、ロラゼパムも例外ではありません。
適切に使用するためには、どのような副作用があるのか、また注意すべき点は何なのかを十分に理解しておくことが重要です。

この記事では、ロラゼパム(アチバンなど)の主な副作用から、注意すべき重篤な副作用、多くの方が気になる依存性や離脱症状、さらには服用上の注意点や副作用が出た場合の対応について、詳しく解説します。
ロラゼパムを現在服用されている方、またはこれから服用を検討されている方が、安心して治療を進めるための一助となれば幸いです。

目次

ロラゼパムの主な副作用

ロラゼパムは、脳の中枢神経に作用することで効果を発揮しますが、この作用が意図しない体の反応を引き起こすことがあります。これが副作用と呼ばれるものです。
ロラゼパムで比較的よく見られる主な副作用としては、以下のようなものがあります。
これらの副作用の多くは、薬を服用し始めたばかりの頃や、用量が多い場合に起こりやすく、体が薬に慣れてくると軽減することがあります。

眠気、ふらつき、めまい

ロラゼパムは鎮静作用や催眠作用を持つため、最も多く見られる副作用の一つが眠気です。特に日中の服用では、仕事や学業に支障を来すことがあります。
また、平衡感覚に影響を与え、ふらつきやめまいを感じやすくなることもあります。これは特に高齢者で転倒のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
薬の服用量や個人の感受性によって程度は異なりますが、これらの症状が現れた場合は、日常生活の安全に十分配慮する必要があります。

倦怠感、脱力感

体がだるい、力が入らないといった倦怠感や脱力感も、ロラゼパムの主な副作用として挙げられます。
これは、薬の中枢神経抑制作用によって、体の活動性が低下するために起こると考えられます。
朝起きた時に体が重く感じたり、日中に活動する意欲が低下したりすることがあります。
十分な休息をとることで軽減される場合もありますが、症状が続く場合は医師に相談してください。

口渇、吐き気

ロラゼパムの服用によって、口の中が乾燥する口渇を感じることがあります。
これは、薬が自律神経系に影響を与えることによって、唾液の分泌が減少するために起こると考えられます。
また、人によっては胃腸の不調として、吐き気やむかつきを感じることもあります。
これらの症状は比較的軽度であることが多いですが、不快感が強い場合は医師に相談しましょう。

食欲不振

一部の人では、ロラゼパムの服用によって食欲が低下することがあります。
これは、薬が消化器系の働きに影響を与えたり、精神的な変化(不安の軽減など)によって食に対する関心が変化したりすることが関係している可能性が考えられます。
食事が十分に摂れない状態が続く場合は、栄養状態が悪化する可能性もあるため、医師に相談することが重要です。

発疹

皮膚に赤いブツブツや痒みを伴う発疹が現れることも、稀ではありますが副作用として報告されています。
これは薬に対するアレルギー反応の可能性も考えられます。
発疹が現れた場合は、薬の服用を中止し、速やかに医師の診察を受けてください。

その他の副作用(頻度不明を含む)

上記の他にも、添付文書には様々な副作用が報告されています。
頻度は低いものの、頭痛、かすみ目、便秘、下痢などが起こることがあります。
また、頻度が非常に低い、あるいはデータが少ないために頻度不明とされている副作用も存在します。
これらには、血圧の変動、動悸、排尿障害、発汗、筋肉のぴくつきなどが含まれることがあります。
気になる症状が現れた場合は、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。

ロラゼパムの主な副作用の概要

副作用の種類 一般的な症状 頻度(目安) 対処法(一般的なもの) 注意点
眠気 日中の眠気、集中力低下 比較的高い 薬を服用後の運転・危険作業を避ける、夜間に服用するなど 活動への影響に注意
ふらつき、めまい 体の不安定感、立ちくらみ感 比較的高い 急な立ち上がりを避ける、転倒に注意する 高齢者や運動機能が低下している人は特に注意
倦怠感、脱力感 体のだるさ、力が入りにくい 中程度 十分な休息をとる 日常生活への影響が強い場合は相談
口渇 口の中の乾燥 中程度 水分をこまめに摂る、うがいをする 持続する場合は相談
吐き気 ムカムカ感、嘔吐感 比較的低い 食後に服用する、水分を摂るなど 症状が強い場合は相談
発疹 皮膚の赤み、かゆみ、ブツブツ 服用を中止し、速やかに医師の診察を受ける アレルギー反応の可能性あり
頭痛 頭の痛み 比較的低い 鎮痛剤の使用(医師に相談)、休息など 症状が続く場合は相談
便秘・下痢 排便習慣の変化 比較的低い 水分・食物繊維摂取(便秘)、消化の良い食事(下痢)など 症状が続く場合は相談

*上記の頻度は一般的な傾向であり、個人差があります。
*発疹など、一部の副作用は直ちに医師の診察が必要です。自己判断での中止は危険な場合があるため、必ず医師・薬剤師に相談してください。

ロラゼパムの注意すべき副作用(重篤な副作用)

ロラゼパムの副作用の多くは軽度で一過性ですが、非常に稀ながら、重篤な副作用が発生する可能性もゼロではありません。
これらの副作用は、放置すると生命に関わる場合もあるため、初期症状を見逃さずに、速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。

呼吸抑制

ベンゾジアゼピン系薬剤は、脳の呼吸中枢に作用し、呼吸を抑制する可能性があります。
通常の使用量であれば問題となることは少ないですが、他の薬剤(特に中枢神経抑制作用のある薬剤やアルコール)との併用や、肺機能が低下している患者さん、高齢者などでは、呼吸が浅くなったり、呼吸の回数が減ったりすることがあります。
特に睡眠中に無呼吸状態になるリスクもあります。
息苦しさを感じたり、家族から睡眠中の呼吸がおかしいと指摘されたりした場合は、すぐに医療機関に連絡してください。

肝機能障害、黄疸

稀に、ロラゼパムの服用によって肝臓に負担がかかり、肝機能障害や黄疸(おうだん)が現れることがあります。
肝機能障害が進むと、体がだるい、食欲がないといった症状が現れることがあります。
黄疸は、皮膚や白目が黄色くなる症状で、ビリルビンという色素が体内に蓄積することで起こります。
これらの症状に気づいた場合は、速やかに医師に連絡し、肝機能の検査を受ける必要があります。

興奮、錯乱

ロラゼパムは通常、鎮静作用を持ちますが、ごく稀に、効果が逆に出てしまう「逆説反応」と呼ばれる反応が起こることがあります。
特に高齢者や脳に器質的な障害がある患者さんで起こりやすいとされています。
具体的には、落ち着きがなくなる、興奮する、攻撃的になる、幻覚を見る、錯乱(時間や場所、状況が分からなくなる)といった症状が現れることがあります。
これらの精神的な症状が現れた場合は、すぐに医師に連絡し、薬の変更や中止を検討する必要があります。

注意すべき重篤な副作用とそのサイン

重篤な副作用 早期のサイン・症状 緊急度
呼吸抑制 息苦しさ、呼吸が浅い・遅い、睡眠中の呼吸の異常(無呼吸など)、唇や爪が青紫 緊急度の高いサイン
肝機能障害、黄疸 体のだるさ、食欲不振、吐き気、皮膚や白目の黄色化、尿の色が濃くなる 速やかに医師に相談
興奮、錯乱 落ち着きのなさ、イライラ、攻撃的な言動、幻覚、妄想、場所や時間が分からない 速やかに医師に相談(必要に応じて救急)

*これらの症状は他の病気でも起こり得ますが、ロラゼパム服用中に現れた場合は注意が必要です。
*上記以外にも、添付文書に記載されている重篤な副作用が存在します。

ロラゼパムの依存性について

ロラゼパムを含むベンゾジアゼピン系薬剤は、長期にわたって服用を続けると、薬なしではいられなくなる「依存性」が生じる可能性があります。
これは、薬剤の作用機序と関連しており、適切に管理しないと、薬をやめようとしたときに心身の不調(離脱症状)が現れる原因となります。

なぜ依存性が生じるのか

ロラゼパムは、脳内のGABA(ギャバ)という抑制性の神経伝達物質の働きを強めることで、不安を和らげたり、眠りを深くしたりします。
GABAは、脳の活動を落ち着かせるブレーキのような役割を担っています。
ロラゼパムを長期間服用すると、脳が薬剤によるGABA作用の増強に慣れてしまい、自身のGABAシステムの働きが相対的に弱まってしまうと考えられています。
この状態になると、薬が体内から抜けたときに、脳のブレーキが効きにくくなり、興奮状態になって様々な不快な症状が現れます。これが依存のメカニズムであり、身体的な依存の一種と言えます。
また、薬を飲むことで不安や不眠が解消されるという経験から、「薬がないと大丈夫ではない」と感じる精神的な依存も同時に生じやすい特徴があります。

依存性のリスク要因

ロラゼパムの依存性は、誰にでも起こりうる可能性がありますが、特に以下のような場合にリスクが高まると考えられています。

  • 長期間の服用: 服用期間が長くなるほど、依存性のリスクは高まります。一般的に、数ヶ月以上の連続服用でリスクが高まると言われています。
  • 高用量の服用: 規定量以上の高用量を服用している場合、依存性が生じやすくなります。
  • 自己判断での増量や服用: 医師の指示なく用量を増やしたり、頻繁に服用したりすることは、依存への道を開くことになります。
  • 過去の薬物依存やアルコール依存の既往: 依存しやすい体質や傾向がある場合、ベンゾジアゼピン系薬剤に対しても依存リスクが高まります。
  • 精神疾患の種類: 不安障害やパニック障害など、特定の精神疾患を抱えている場合、症状の再燃を恐れて薬を手放しにくくなり、結果的に依存につながることがあります。
  • 個人の体質や感受性: 薬に対する感受性は個人差があり、比較的短期間や少量でも依存傾向が現れる人もいます。

依存性を避けるためには、漫然とした長期服用を避け、必要最小限の期間・用量で使用することが原則です。
症状が安定してきたら、医師と相談しながら慎重に減量・中止を目指すことが重要です。

ロラゼパムの離脱症状と対処法

ロラゼパムに依存が生じた状態で、急に服用を中止したり、大幅に減量したりすると、「離脱症状」と呼ばれる様々な心身の不調が現れることがあります。
離脱症状は非常に辛く、治療を妨げる要因にもなり得るため、その種類や対処法を知っておくことは非常に重要です。

離脱症状の種類(不安、不眠、震え、けいれんなど)

ロラゼパムの離脱症状は多岐にわたります。よく見られるのは、服用前の症状が強く戻ってくる、あるいは服用前にはなかった症状が現れることです。

精神的な離脱症状:

  • 強い不安感: 服用前よりも激しい不安や焦燥感。
  • 不眠: 服用前よりもひどい、または新たな不眠。
  • イライラ、落ち着きのなさ: 些細なことで怒りっぽくなったり、じっとしていられなくなったりする。
  • 抑うつ気分: 気分が落ち込む、やる気が出ない。
  • 集中力の低下、記憶障害: 物事に集中できない、記憶力が悪くなったと感じる。
  • 悪夢: 鮮明で不快な夢を見る。

身体的な離脱症状:

  • 震え(振戦): 手や体が震える。
  • 発汗: 寝汗や日中の発汗が増える。
  • 吐き気、嘔吐、食欲不振: 胃腸の不調。
  • 頭痛: 締め付けられるような、あるいはズキズキする痛み。
  • 筋肉の痛み、こわばり、ぴくつき: 体が痛い、硬い、勝手に動く感覚。
  • めまい、ふらつき: 体の平衡感覚が保てない。
  • 動悸、頻脈: 心臓がドキドキする、脈が速くなる。
  • 知覚過敏: 光、音、触覚などに過敏になる。
  • 耳鳴り: 耳の中で音が鳴る。
  • 脱力感: 力が入らない感じ。

重篤な離脱症状:

非常に稀ですが、以下の重篤な離脱症状が現れる可能性もあります。これらが現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。

  • けいれん、てんかん発作: 体がガクガクと震える発作。
  • せん妄: 意識が混濁し、幻覚や妄想を伴う状態。
  • 離人感・現実感喪失: 自分自身や周りの世界が現実ではないように感じる。

離脱症状が出るまでの期間(何日で抜ける?)

ロラゼパムの離脱症状が現れ始めるまでの期間は、薬剤の「半減期」(薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間)と関連があります。
ロラゼパムは比較的半減期が短い(およそ10~20時間程度)部類に入ります。半減期が短い薬ほど、血中濃度が早く低下するため、離脱症状も比較的早く現れやすい傾向があります。

一般的に、ロラゼパムを長期服用していた場合、服用中止後24~72時間(1~3日)程度で離脱症状が現れ始めることが多いとされています。
症状のピークは服用中止後数日~1週間程度に現れ、その後、徐々に軽減していくのが typical な経過です。ただし、症状が完全に消えるまでには、数週間から数ヶ月、あるいはそれ以上の期間を要する場合もあります。
離脱症状の程度や期間は、服用していた量、期間、個人の体質、減薬のスピードなどによって大きく異なります。

離脱症状への対処法(医師の指導による減薬)

ロラゼパムの離脱症状を最小限に抑える、あるいは避けるための最も重要で確立された方法は、医師の厳重な管理のもと、非常にゆっくりと段階的に薬の量を減らしていく「漸減法(ぜんげんほう)」です。

自己判断で急に薬を中止したり、一度に大幅に減量したりすることは、離脱症状を重篤化させる危険性が非常に高いため、絶対に避けてください。
医師は、患者さんの症状や服用状況に応じて、最適な減薬スケジュールを立ててくれます。例えば、数週間から数ヶ月、場合によっては1年以上かけて、少しずつ薬の量を減らしていくことがあります。

減薬中に離脱症状が現れた場合は、医師に相談し、減薬のスピードを調整したり、症状を和らげるための他の治療法(非薬物療法や他の薬剤の使用)を検討したりします。
精神的なサポートやカウンセリングも、離脱症状の乗り越えに有効な場合があります。

ロラゼパムの離脱症状とその対応

離脱症状の種類 具体的な例 対処の原則
精神的な離脱症状 不安、不眠、イライラ、抑うつ、集中力低下、悪夢 医師と相談し、減薬ペース調整、心理的サポート、リラクゼーションなど
身体的な離脱症状 震え、発汗、吐き気、頭痛、筋肉痛、めまい、動悸 医師と相談し、対症療法(頭痛薬など)、安静、水分補給など
重篤な離脱症状(稀) けいれん、せん妄、離人感・現実感喪失 直ちに医療機関を受診(救急対応が必要な場合も)
離脱症状が出るまでの期間 服用中止後 1~3日程度で現れ始めることが多い 個人差が大きいことを理解する
最も重要な対処法 医師の指導のもと、ゆっくりと段階的に減量(漸減法) 自己判断での中止・急な減量は絶対に避ける

*離脱症状の経験や程度は個人によって大きく異なります。必ず医師の指示に従ってください。

ロラゼパム服用上の注意点

ロラゼパムを安全かつ効果的に使用するためには、副作用や依存性だけでなく、日常生活や他の疾患、他の薬剤との関連など、様々な注意点を理解しておく必要があります。

運転や危険な機械の操作(ロラゼパムは危ない薬?)

ロラゼパムは、眠気、ふらつき、集中力の低下などを引き起こす可能性があるため、服用中は自動車の運転や、危険を伴う機械の操作を避ける必要があります。
これらの作業中に薬の影響で注意力や判断力が低下すると、重大な事故につながる危険性があるからです。
特に服用初期や用量変更時には、体の反応を慎重に見極めることが重要です。
「ロラゼパムは危ない薬ですか?」という問いに対しては、使い方を誤ったり、注意点を守らなかったりすると危険な状況を招く可能性がある、という意味では注意が必要な薬と言えます。
しかし、医師の指示に従って適切に使用すれば、多くの場合は安全に治療を進めることができます。

アルコールとの併用

ロラゼパムとアルコールを一緒に摂取することは、非常に危険です。
ロラゼパムもアルコールも、どちらも脳の中枢神経を抑制する作用があります。
これらを併用すると、お互いの作用が増強され、過度な眠気、ふらつき、意識の低下、さらには呼吸抑制を引き起こすリスクが著しく高まります。
少量であっても影響が出ることがあるため、ロラゼパム服用中は飲酒を控えるのが賢明です。

高齢者への投与

高齢者は、一般的に薬の代謝や排泄機能が低下しているため、若い人に比べて薬の作用が強く出やすく、体内に薬が留まる時間も長くなる傾向があります。
また、ロラゼパムによる眠気やふらつきは、高齢者の転倒リスクを高める可能性があります。
転倒は骨折などの重篤な怪我につながることがあり、ADL(日常生活動作能力)の低下を招く原因となります。
そのため、高齢者にロラゼパムを投与する場合は、少量から開始し、慎重に経過を観察する必要があります。

妊娠・授乳中の服用

妊娠中や授乳中の女性がロラゼパムを服用することについては、注意が必要です。
妊娠中にベンゾジアゼピン系薬剤を服用すると、胎児に影響を及ぼす可能性(催奇形性、新生児仮死、離脱症状など)が指摘されています。
また、薬の成分が母乳中に移行し、授乳中の赤ちゃんに影響を与える可能性も考えられます。
妊娠中や授乳中の女性、または妊娠の可能性のある女性は、ロラゼパムの服用について必ず医師と相談し、治療の必要性とリスクを十分に検討する必要があります。

他の薬との飲み合わせ

ロラゼパムは、他の様々な薬剤と相互作用を起こす可能性があります。特に注意が必要なのは、以下のような薬剤です。

  • 他の中枢神経抑制薬: 抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬、麻酔薬、鎮痛薬など。ロラゼパムとの併用で、過度な鎮静、呼吸抑制などが起こるリスクが高まります。
  • アルコール: 前述の通り、併用は危険です。
  • 筋弛緩薬: 筋弛緩作用が増強される可能性があります。
  • 特定の抗真菌薬、抗生物質、HIV治療薬など: これらの薬剤がロラゼパムの代謝を妨げ、血中濃度を上昇させる可能性があります。
  • CYP3A4阻害作用のある薬剤: ロラゼパムの代謝に関わる酵素(CYP3A4)の働きを妨げる薬剤(グレープフルーツジュースも含む)は、ロラゼパムの血中濃度を上昇させる可能性があります。

現在服用している全ての薬(処方薬、市販薬、サプリメントなど)を医師や薬剤師に正確に伝えることが、安全にロラゼパムを使用するために非常に重要です。

ロラゼパム服用上の主な注意点

注意点 具体的な内容 なぜ注意が必要か
運転・危険な機械の操作 服用中は避ける 眠気、ふらつき、集中力低下による事故リスク
アルコールとの併用 絶対に避ける 中枢神経抑制作用の過度な増強、呼吸抑制リスク
高齢者への投与 少量から開始、慎重に観察 薬の代謝・排泄低下、転倒リスクの上昇
妊娠・授乳中の服用 医師と相談、リスクと必要性を検討 胎児・乳児への影響の可能性
他の薬との飲み合わせ 服用中の全ての薬を伝える 中枢神経抑制作用の増強、ロラゼパム血中濃度の上昇、効果減弱などの相互作用リスク
長期・高用量での服用 必要最小限の期間・用量で使用、漫然とした継続を避ける 依存性リスクの上昇
自己判断での急な中止・減量 絶対に避ける 重篤な離脱症状のリスク

*離脱症状の経験や程度は個人によって大きく異なります。必ず医師の指示に従ってください。

副作用が現れた場合の対応

ロラゼパムを服用していて、体にいつもと違う変化や気になる症状が現れた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
最も重要なのは、自己判断で対応しないことです。

自己判断での中止は危険

副作用が出たからといって、自己判断でロラゼパムの服用を急に中止したり、量を減らしたりすることは非常に危険です。
特に長期にわたって服用していた場合、前述したように重篤な離脱症状が現れる可能性があります。
離脱症状は、経験したことのない強い不安や体の不調として現れ、日常生活に大きな支障を来すだけでなく、けいれんなどの危険な状態につながることもあります。

副作用なのか、それとも他の原因による症状なのかを自己判断することは困難です。
また、医師は患者さんの病状や体の状態を総合的に判断して、最適な薬の種類や量を決定しています。
自己判断で薬を変更・中止することは、治療計画を狂わせ、かえって病状を悪化させる原因にもなり得ます。

必ず医師・薬剤師に相談を

ロラゼパム服用中に気になる症状が現れた場合は、副作用かもしれないと感じたら、必ず処方した医師または薬剤師に相談してください。

  • どのような症状か: どのような症状が、いつから、どのくらいの頻度で、どの程度の強さで現れているのかを具体的に伝えましょう。
  • 症状が出たタイミング: 薬を飲んでからどのくらいの時間で出たのか、特定の状況(例えば食後、寝る前など)で出やすいのかといった情報も役立ちます。
  • 他の薬やサプリメント: 併用している他の薬やサプリメントがあれば、それも全て伝えてください。
  • 体調や生活の変化: 睡眠不足、ストレス、食事の変化など、最近の体調や生活の変化も伝えることが、原因の特定に役立つことがあります。

医師や薬剤師は、伝えられた情報をもとに、その症状がロラゼパムの副作用の可能性が高いか、他の原因が考えられるか、またどの程度の緊急性があるかを判断します。
その上で、薬の用量調整や変更、他の薬剤での対処、あるいは症状に対する医学的な評価や検査が必要かなどを判断し、適切な指示を出してくれます。

例えば、軽い眠気やふらつきであれば、用量を減らす、飲む時間を変更する、体が慣れるのを待つといった対応が考えられます。
しかし、発疹や呼吸の異常、意識の変化など、緊急性の高い症状の場合は、直ちに薬を中止して医療機関を受診するよう指示されることもあります。

不安な症状があるにも関わらず一人で抱え込まず、必ず専門家に相談して、適切なアドバイスや指示を受けるようにしてください。

ロラゼパムに関するよくある質問

ロラゼパムについて、患者さんやご家族からよく聞かれる質問にお答えします。

ロラゼパムは危ない薬ですか?

「危ない薬」という言葉が何を意味するかによりますが、ロラゼパムは医師の診断に基づき、指示された用量・期間を厳守して使用する限り、安全性が確立された医薬品です。
多くの患者さんの不安や不眠の症状を効果的に改善し、生活の質を向上させています。

しかし、前述したように、眠気やふらつきによる事故のリスク、アルコールや他の薬剤との相互作用、そして特に長期・高用量での使用による依存性や離脱症状のリスクは存在します。
これらのリスクを十分に理解せず、自己判断で使用したり、注意点を守らなかったりした場合には、「危険な状況」を招く可能性があるという意味では、「注意が必要な薬」と言えます。

つまり、ロラゼパム自体が「危ない薬」なのではなく、「使い方を誤ると危険な状況になる可能性がある薬」と理解するのが適切です。
医師や薬剤師の指導に従って正しく使用することが何よりも重要です。

ロラゼパムはどういう時に使う薬ですか?

ロラゼパムは、主に以下のような目的で処方されます。

  • 神経症における不安、緊張、抑うつ、易疲労性、集中困難、愁訴、睡眠障害: 神経症に伴う様々な精神的・身体的な症状の緩和。
  • 心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候並びに不安、緊張、抑うつ: ストレスなど心因性の要因が身体症状を引き起こす心身症の治療における、身体症状および精神症状の緩和。
  • 統合失調症の慢性期における不安、緊張: 統合失調症の経過の中で現れる不安や緊張の緩和。
  • うつ病における不安、緊張: うつ病に伴う不安や緊張の緩和。

これらの疾患において、不安や緊張が強く、日常生活に支障を来している場合などに使用されます。
特に、比較的速やかに効果が現れるため、症状が強い時期の短期的な使用や、他の治療法が十分な効果を発揮するまでの補助的な役割として用いられることが多いです。

ロラゼパムは何日で抜ける?

ロラゼパムの体内からの消失速度は、薬の半減期によって決まります。
ロラゼパムの半減期は、個人差がありますが、おおよそ10~20時間程度です。これは、薬の血中濃度が最高値の半分になるまでにかかる時間を示します。

薬が体内からほぼ完全に消失したと見なせるまでには、一般的に半減期の約4~5倍の時間がかかると言われています。
したがって、ロラゼパムの場合、服用後おおよそ40時間~100時間(約1.5日~4日程度)で体内からほぼ消失すると考えられます。

ただし、これはあくまで目安であり、個人の肝臓や腎臓の機能、年齢、体格、併用している薬剤などによって、薬が体内に留まる時間は変動します。
特に高齢者や肝機能・腎機能が低下している人では、薬の消失に時間がかかる傾向があります。
また、長期にわたって服用していた場合、体内の脂肪組織などに薬が蓄積している可能性があり、完全に抜けるまでにさらに時間がかかることもあります。

ロラゼパムは依存性がありますか?

はい、ロラゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤であり、依存性が生じる可能性があります
特に長期間(一般的に数ヶ月以上)、高用量で服用を続けると、身体的依存と精神的依存の両方が形成されやすくなります。

依存が形成された状態で、急に服用を中止したり減量したりすると、離脱症状が現れます。
離脱症状は非常に辛く、薬をやめることを困難にする大きな要因となります。

このため、ロラゼパムを服用する際は、漫然と長期にわたって継続することを避け、症状の改善に合わせて医師の指導のもと、可能な限り短期間・必要最小限の用量で使用することが推奨されます。
また、薬を中止する際には、必ず医師と相談し、ゆっくりと段階的に減量していくことが非常に重要です。

【まとめ】ロラゼパムの副作用や服用上の注意点

ロラゼパムは、不安や不眠といった症状に対して高い効果を発揮し、多くの患者さんのつらさを和らげるために用いられる重要な薬剤です。
しかし、全ての医薬品と同様に、副作用や注意点が存在します。

主な副作用としては、眠気、ふらつき、倦怠感などが比較的よく見られますが、これらは体の慣れとともに軽減することも多いです。
稀ながら、呼吸抑制、肝機能障害、興奮・錯乱といった重篤な副作用も報告されているため、これらの初期症状を知っておき、異変を感じたら速やかに医師に連絡することが重要です。

また、ロラゼパムは長期・高用量での服用により依存性が生じるリスクがあります。
依存が生じると、薬を中止する際に辛い離脱症状が現れる可能性があるため、漫然とした長期服用は避け、医師の指示に従って適切な期間・用量で使用し、中止する際は必ず医師の指導のもとゆっくりと減量することが極めて重要です。

さらに、服用中は運転や危険な機械の操作を避けること、アルコールとの併用は絶対にしないこと、他の薬剤との相互作用に注意することなど、日常生活における注意点も多数存在します。
特に高齢者や妊婦・授乳婦は、より慎重な対応が必要です。

もしロラゼパムを服用していて、気になる症状や不安な点が出てきた場合は、決して自己判断で薬の量を調整したり、服用を中止したりせず、速やかに処方医または薬剤師に相談してください。
専門家は、患者さん一人ひとりの状態を把握した上で、適切なアドバイスや指示をしてくれます。

ロラゼパムは、その特性を正しく理解し、医師や薬剤師の指導のもとで適切に使用すれば、心身のつらさを和らげ、より穏やかな日常生活を送るための一助となるでしょう。

免責事項:
本記事は、ロラゼパムの一般的な副作用、依存性、注意点に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や個別の治療方針を示すものではありません。
記事中の情報は、専門家による監修を前提としていますが、すべての副作用や相互作用を網羅しているわけではありません。
ロラゼパムの服用に関しては、必ず医師の指示に従い、不明な点や気になる症状がある場合は、直接医師または薬剤師に相談してください。
自己判断での薬の変更や中止は、健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。

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