MENU
コラム一覧

リストカットする自分を責めないで|苦しみを和らげる方法

誰にも言えないつらい気持ちを抱え、リストカット(自傷行為)という形でしか自分の心を表現できない…そんな苦しみの中にいるあなたへ。
また、大切な人がリストカットをしているかもしれないと心を痛めている方へ。

この記事では、リストカットをしてしまう背景にある原因や心理、そして「やめたい」と願ったときにできる具体的な対処法、頼れる相談先について、専門的な視点も交えながら詳しく解説します。

一人で抱え込まないでください。あなたの苦しみを理解し、支えてくれる人や場所は必ずあります。この記事が、回復への第一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。

なぜリストカットをしてしまうのか?

リストカットに至る理由は一人ひとり異なり、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。一般的に、以下のような心理が背景にあると考えられています。

  • 耐えがたい精神的な苦痛を和らげるため: 不安、悲しみ、怒り、虚しさといった、言葉にできないほどのつらい感情を、身体的な痛みに置き換えることで一時的に忘れようとする心理です。心の痛みが強すぎるとき、身体の痛みがそれを上回ることで、精神的な苦痛から解放されたように感じることがあります。
  • 「生きている」という実感を得るため: 現実感がなく、自分が自分ではないような感覚(離人感)に陥ったとき、血を見たり痛みを感じたりすることで、「自分は確かにここに存在している」という実感を取り戻そうとすることがあります。
  • 自分自身を罰するため: 何か失敗したことや、自分を許せないことがあるときに、自分を罰する手段として自傷行為に至るケースです。根底には、低い自己肯定感や強い罪悪感が隠されていることがあります。
  • 助けを求めるサイン(SOS)として: 誰にも苦しみを打ち明けられず、どう助けを求めたらいいかわからないとき、リストカットという行為そのものが「助けてほしい」という悲痛な叫びになることがあります。

これらの心理は、決して特別なものではなく、強いストレス状況下では誰にでも起こりうる心の反応です。

衝動を抑えられない苦痛

リストカットは、一度行うと繰り返しやすいという特徴があります。行為の後に一時的な心の安堵感が得られるため、つらい気持ちになるたびに同じ方法で解消しようとしてしまい、依存的になることがあります。

「やめたいのに、やめられない」
「またやってしまった」

そうした自分を責め、さらに自己嫌悪に陥るという悪循環に苦しんでいる方は少なくありません。これは決して意志が弱いからではなく、それほどまでに強い心の苦痛を抱えている証拠なのです。

精神疾患との関連性

リストカットは、それ自体が病気というわけではありませんが、背景にうつ病、不安障害、境界性パーソナリティ障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、摂食障害といった精神疾患が隠れている場合があります。

これらの疾患の症状の一つとして、感情のコントロールが難しくなり、衝動的に自らを傷つける行為に至ることがあります。もしリストカット以外にも、気分の落ち込みが続く、眠れない、食欲がない、常に不安を感じるなどの症状があれば、専門の医療機関に相談することが重要です。

目次

リストカットをやめたいと思ったとき

「もうやめたい」と少しでも思ったなら、それは回復に向けた大きな一歩です。一人で衝動と闘う必要はありません。ここでは、具体的な対処法や利用できるサポートについてご紹介します。

衝動への具体的な対処法(コーピングスキル)

「切りたい」という強い衝動に駆られたとき、その衝動をやり過ごすための代替行動を「コーピングスキル」と呼びます。自分に合った方法を見つけることが大切です。

  • 身体的な感覚に働きかける方法
    • 氷をぎゅっと握りしめる
    • 冷たいシャワーを浴びる、冷たい水で顔を洗う
    • 輪ゴムを手首にはめ、パチンと弾いて刺激を与える
    • 腕に赤いペンで線を引く
  • 気分転換を図る方法
    • 好きな音楽を大音量で聴く
    • クッションや枕を思い切り殴る
    • 大声を出す(カラオケや安全な場所で)
    • 走る、筋トレなど、息が上がるような運動をする
  • 気持ちを落ち着かせる方法
    • 温かい飲み物をゆっくりと飲む
    • アロマを焚いたり、好きな香りのハンドクリームを塗ったりする
    • ふかふかの毛布にくるまる
    • 信頼できる人に電話やLINEで「つらい」とだけ伝える

衝動は永遠に続くわけではありません。これらの方法で5分、10分と時間を稼ぐうちに、衝動の波が少しずつ引いていくことがあります。

医療機関での治療やケア

リストカットの根本的な解決には、専門的な治療やケアが非常に有効です。精神科や心療内科の受診を検討しましょう。

医療機関では、以下のようなアプローチが行われます。

  • 精神療法(カウンセリング): 専門家との対話を通じて、なぜリストカットをしてしまうのか、その背景にある考え方の癖や感情のパターンを一緒に探っていきます。自分の気持ちを安全な場所で話すことで、少しずつ整理していくことができます。
  • 薬物療法: 不安や気分の落ち込みが強い場合、それを和らげるための薬が処方されることがあります。感情の波が穏やかになることで、衝動的な行動をコントロールしやすくなります。
  • 傷のケア: リストカットによる傷の治療も重要です。感染症などを防ぐためにも、必要であれば皮膚科や形成外科と連携して適切な処置を受けます。

「病院に行くのは怖い」と感じるかもしれませんが、医療機関はあなたの秘密を守り、回復をサポートしてくれる専門家がいる場所です。

サポートを受けながら回復を目指す

回復への道のりは一人ひとり違います。すぐにやめられる人もいれば、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ回復していく人もいます。大切なのは、焦らず、自分を責めず、頼れるサポートを使いながら一歩ずつ進んでいくことです。

周囲の人ができること

もし、あなたの家族や友人、パートナーがリストカットをしていると知ったら、驚き、どうしていいかわからなくなるかもしれません。しかし、あなたの冷静で適切な対応が、本人にとって大きな支えとなります。

リストカットのサインに気づく

本人はリストカットを隠していることが多いため、周囲がそのサインに気づくことが重要になる場合があります。

  • 季節に関係なく、常に長袖やアームカバーなどで腕を隠している
  • 腕や足に不自然な傷やあざ、包帯などが見られる
  • カッターナイフやカミソリなどを持ち歩いている
  • 気分の浮き沈みが激しく、急に引きこもったりイライラしたりする

ただし、これらのサインがあるからといって、必ずしもリストカットをしているとは限りません。決めつけずに、まずは心配しているという気持ちを伝えることが大切です。

本人への適切な声かけと対応

本人に声をかける際は、非難せず、落ち着いて、プライバシーに配慮した場所で話すことを心がけてください。

<適切な声かけの例>
「最近、つらそうだね。何かあった?」
「もしよかったら、話を聞くことしかできないけど、話してくれないかな」
「(傷に気づいた場合)その傷、どうしたの?とても心配だよ」

大切なのは、本人の話を最後まで否定せずに聞く(傾聴)ことです。アドバイスをしたり、解決策を提示したりするのではなく、ただ「そうなんだね」「つらかったね」と受け止める姿勢が、本人の安心感につながります。

避けるべき言動

良かれと思ってかけた言葉や行動が、かえって本人を傷つけ、追い詰めてしまうことがあります。以下の言動は避けましょう。

  • 問い詰める: 「なんでそんなことするの!」「何が不満なの?」
  • 無理にやめさせようとする: 「二度としないで」「今すぐやめると約束して」
  • 驚き、パニックになる: 大声を出したり、泣き叫んだりする。
  • 軽く扱う・冗談にする: 「かまってほしいだけでしょ」「そんなことで」
  • 叱る・責める: 「親を悲しませるな」「馬鹿なことはやめなさい」

これらの対応は、本人に「理解してもらえない」という絶望感を与え、心を閉ざさせてしまう原因になります。

相談先へつなげるサポート

本人を一人で抱え込まず、専門機関のサポートにつなげることが非常に重要です。

「一人で病院に行くのが不安なら、一緒に行こうか?」
「こういう相談窓口があるみたいだけど、一緒に調べてみない?」

このように、具体的な選択肢を示し、本人が行動を起こせるように寄り添ってあげましょう。あくまで本人の意思を尊重し、無理強いはしないことが大切です。

相談先・サポート体制

つらい気持ちを話せる場所、専門的なサポートを受けられる場所は、たくさんあります。一人で悩まず、ぜひ相談してください。

公的な相談窓口(電話、SNSなど)

無料で、匿名でも相談できる窓口です。まずは話を聞いてほしいという場合に適しています。

  • こころの健康相談統一ダイヤル: 全国の精神保健福祉センターにつながる電話相談窓口です。
  • いのちの電話: 24時間体制でさまざまな悩み相談に応じています。
  • あなたのいばしょ: 24時間365日、年齢や性別を問わず誰でも無料・匿名で利用できるチャット相談です。
  • BONDプロジェクト: 10代・20代の生きづらさを抱える女性のための支援を行っています。LINEや電話での相談が可能です。
  • チャイルドライン: 18歳までの子どもがかけることのできる電話です。

精神科や心療内科

心の不調を専門的に診断・治療してくれる医療機関です。根本的な解決を目指す上で、最も重要な相談先の一つです。

専門家によるカウンセリング

臨床心理士や公認心理師など、心の専門家によるカウンセリングを受けることも有効です。医療機関に併設されている場合や、民間のカウンセリングルームなどがあります。

リストカットに関するよくある質問

傷跡を残さない方法はありますか?

この質問の背景には、「傷跡は残したくないけれど、そうせずにはいられない」という切実な悩みがあるのだと思います。

傷跡を心配する気持ちもわかりますが、最も大切なことは、リストカットという行為でしか心を保てないほどのつらい気持ちそのものに目を向けることです。傷跡の方法を考える前に、ぜひ一度、その苦しい気持ちを誰かに相談してみてください。専門の相談窓口や医療機関は、そのための安全な場所です。
なお、すでにできてしまった傷跡については、皮膚科や形成外科で治療の相談ができる場合があります。

一時的な衝動でも相談できますか?

もちろんです。

一度でも「切りたい」という衝動を感じたなら、それはあなたの心が発している重要なサインです。問題の大小は関係ありません。「こんなことで相談していいのかな」とためらう必要はまったくありません。衝動が強くなる前に、早めに相談することで、気持ちが楽になることも多くあります。どんな些細なことでも、気軽に相談してください。


免責事項
本記事は、リストカットに関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。心身の不調や、自傷行為の衝動に悩んでいる場合は、速やかに専門の医療機関や相談窓口にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次