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あなたのいびきの原因は?簡単チェックで特定!病気の可能性も

いびきは、自分では気づきにくいものですが、一緒に寝ている家族などに指摘されて初めてその存在を知ることも少なくありません。単なる寝相の悪さと思われがちですが、実は体のサインであり、場合によっては健康に関わる重要な警告であることもあります。

いびきがなぜ起こるのか、そのメカニズムや様々な原因を知ることは、ご自身の健康を守る第一歩となります。この記事では、いびきの主な原因から、注意すべき危険なサイン、そして今日から始められるセルフケアや、専門医に相談すべきケースまで、いびきに関するあらゆる情報を詳しく解説します。気になるいびきを改善し、質の高い睡眠と健康的な毎日を取り戻しましょう。

目次

いびきが起こるメカニズムとは?

いびきは、眠っている間に空気の通り道である「上気道(じょうきどう)」が狭くなることによって発生する呼吸音です。通常、起きている間は筋肉に適度な緊張があり、気道は十分に開いています。しかし、眠りに入ると体の筋肉がリラックスし、上気道周辺の筋肉も緩みます。

この筋肉の緩みによって、舌の根元(舌根)、軟口蓋(口の奥の柔らかい部分)、口蓋垂(のどちんこ)などが、重力によって喉の奥に落ち込みやすくなります。これにより上気道が狭くなると、呼吸をする際に空気が狭い場所を通過しようとして粘膜を振動させます。この粘膜の振動こそが、いびきの音の正体なのです。

たとえるなら、風船を膨らませるときに、風船の口を指で狭めると「ブー」という音が出るのと同じ原理です。気道が狭くなればなるほど、空気抵抗が増して粘膜の振動が大きくなり、いびきも大きく、うるさくなります。

上気道の狭窄の度合いは、寝姿勢や体調によっても変化します。例えば、仰向けで寝ると舌根が重力で落ち込みやすいため、気道が狭くなりいびきをかきやすくなります。また、疲労や飲酒によって筋肉がさらに弛緩すると、いびきが悪化することもあります。

いびきは、単に音がうるさいだけでなく、体が必要な酸素を十分に取り込めていないサインである可能性もあります。特に、いびきが途中で止まったり、不規則になったりする場合は、注意が必要です。

いびきの主な原因を知る

いびきは一つの原因だけで起こるのではなく、いくつかの要因が複合的に関わっていることが多くあります。ここでは、いびきを引き起こす主な原因について詳しく見ていきましょう。ご自身に当てはまる原因がないか確認してみてください。

肥満による気道の狭まり

肥満は、いびきの最も一般的な原因の一つです。体重が増えると、首回りや喉の内側にも脂肪が蓄積されます。この脂肪が空気の通り道である上気道を物理的に圧迫し、狭めてしまいます。

特に、首が短い、首が太いといった体型の方は、もともと気道が狭くなりやすい傾向にあります。そこに脂肪が加わることで、さらに気道が圧迫され、いびきが悪化しやすくなります。

肥満による気道の狭まりは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発症リスクも高めます。気道が完全に閉塞してしまうと、呼吸が一時的に止まってしまう無呼吸状態を引き起こすのです。

減量はいびき改善に非常に有効な手段とされています。たとえ数キロの減量でも、首周りの脂肪が減ることで気道が広がり、いびきが軽減されることがあります。ただし、急激な減量は体に負担をかける可能性があるため、無理のない範囲で、継続的に取り組むことが重要です。

アルコールや喫煙習慣の影響

アルコールや喫煙も、いびきを悪化させる大きな要因です。

アルコールには筋肉を弛緩させる作用があります。寝る前にお酒を飲むと、喉や舌の筋肉がリラックスしすぎるため、舌根などが落ち込みやすくなり、気道が狭まってしまいます。特に、普段はいびきをかかない人でも、飲酒後にいびきをかくようになることは珍しくありません。

喫煙は、喉や鼻の粘膜に慢性の炎症を引き起こします。炎症によって粘膜が腫れると、空気の通り道である気道が狭くなります。また、タバコの煙は気道の分泌物を増やし、痰が絡みやすくなることで、さらに気道を塞ぎやすくなります。喫煙は、いびきだけでなく、睡眠時無呼吸症候群やその他の呼吸器疾患のリスクも高めるため、禁煙は健康全般にとっていびき改善も含めた重要な対策となります。

鼻炎や蓄膿症など鼻の病気

鼻の病気もいびきの原因となります。鼻炎(アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎など)や副鼻腔炎(蓄膿症)などにより鼻が詰まると、鼻での呼吸が困難になり、自然と口呼吸になります。

鼻呼吸では、鼻腔を通ることで空気が加湿・加温され、フィルター機能によって異物が除去されます。しかし、口呼吸になると、これらの機能が働かず、冷たく乾燥した空気が直接喉に流れ込みます。これにより、喉の粘膜が乾燥し、炎症を起こしやすくなります。

また、口呼吸では舌が上顎に密着せず、下あごの方に下がりやすくなります。眠っている間に舌が喉の奥に落ち込む「舌根沈下(ぜっこんちんか)」が起こりやすくなり、気道を狭めてしまいます。

鼻の病気による鼻づまりがある場合は、まずその治療を行うことがいびき改善につながります。耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けることで鼻呼吸を促すことが重要です。

口呼吸が引き起こすいびき

前述のように、鼻づまりが原因で口呼吸になるだけでなく、普段から癖として口呼吸をしている人もいます。口呼吸は、日中だけでなく就寝中も続きやすく、いびきの直接的な原因となります。

口呼吸をしていると、舌が正しい位置(上あごに舌全体が密着している状態)になく、下あごの方に落ち込みがちです。特に眠っている間は全身の筋肉が緩むため、舌根が喉の奥にさらに沈下しやすくなり、気道を狭めてしまいます。

また、口呼吸は口の中を乾燥させます。口腔内の乾燥は唾液による自浄作用を低下させ、虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、喉の粘膜を刺激していびきを悪化させる可能性もあります。

口呼吸を改善するためには、日頃から意識して鼻呼吸を心がけることや、口周りの筋肉を鍛えるトレーニングが有効です。

骨格や舌・喉の形状

生まれつきの骨格や、舌、喉の形状もいびきに関係することがあります。

  • 下あごが小さい・後退している: 顎が小さかったり、後ろに引っ込んでいる骨格の場合、舌を支えるスペースが狭いため、舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。
  • 舌が大きい: 舌の体積が大きい人も、気道を圧迫しやすい傾向があります。
  • 扁桃腺が大きい: 特に子供の場合に多いですが、扁桃腺(口蓋扁桃)やアデノイド(咽頭扁頭)が大きいと、物理的に気道が狭くなります。成人でも扁桃腺が大きい方は、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
  • 軟口蓋や口蓋垂が長い・厚い: 喉の奥の柔らかい部分やのどちんこが長すぎたり厚すぎたりすると、呼吸の際に振動しやすく、また気道を狭めやすくなります。

これらの要因は、セルフケアでの改善が難しい場合が多く、いびきが重度である場合は専門医による診断や治療が必要となることがあります。

加齢や疲労による筋力低下

年齢を重ねると、全身の筋肉が少しずつ衰えてきます。これは喉や舌の筋肉も例外ではありません。加齢によって喉や舌の筋肉が緩むと、眠っている間に気道を支える力が弱まり、気道が狭まりやすくなります。これが、高齢者でいびきをかく人が増える一因です。

また、一時的な疲労もいびきを悪化させることがあります。体が非常に疲れているときは、睡眠が深くなりやすく、それに伴って全身の筋肉(喉の筋肉を含む)が通常よりも強く弛緩します。これにより、気道が狭くなりいびきをかきやすくなります。風邪などで体力が落ちている時なども同様です。

睡眠薬や安定剤の服用

一部の睡眠薬や安定剤(精神安定剤)には、筋肉を弛緩させる作用があります。これらの薬剤を服用すると、喉や舌の筋肉が緩みやすくなるため、気道が狭まり、いびきを誘発または悪化させる可能性があります。

特に、初めて服用する場合や、用量が多い場合にいびきが出やすくなることがあります。現在これらの薬剤を服用していていびきが気になる場合は、自己判断で服用を中止したりせず、必ず医師に相談してください。いびきの状況に応じて、薬剤の変更や減量、服用時間の調整などが検討される場合があります。

危険ないびきとは?

いびきは多くの人が経験するものですが、中には注意が必要な「危険ないびき」があります。この危険ないびきは、単なる騒音の問題にとどまらず、健康に深刻な影響を与える可能性のある病気のサインかもしれません。

最も警戒すべきは、「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」に伴ういびきです。SASは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサイン

SASの特徴的なサインは、いびきと無呼吸を繰り返すパターンです。

  • 大きないびきが急に止まり、その後大きなあえぎ声やいびきとともに呼吸が再開する
    「ガーッ」という大きないびきをかいていたかと思うと、数秒から数十秒(時には1分以上)ぴたりと止まり、その後「ハッ」「カクン」といった音や、再び大きないびきとともに呼吸が再開するというサイクルを繰り返します。一緒に寝ている家族やパートナーが気づくことが多いサインです。
  • 不規則ないびき
    常に一定のいびきではなく、大きさが変動したり、途切れ途切れになったりします。
  • 日中の強い眠気
    夜間の睡眠中に十分な酸素が体に取り込まれないため、脳や体が十分に休めず、日中に耐えがたい眠気を感じます。会議中や運転中など、活動中に眠ってしまうこともあります。これは非常に危険なサインです。
  • 起床時の頭痛や倦怠感
    睡眠中に脳が酸素不足に陥るため、目が覚めた時に頭痛を感じたり、体が重く感じられたりします。
  • 熟睡感がない
    長時間眠っても、朝スッキリせず、疲れが取れた感じがしません。
  • 夜間の頻尿
    無呼吸によって胸腔内圧が変動し、心臓に戻る血液が増えることで、体を騙して尿を多く作ってしまうことがあります。
  • 集中力や記憶力の低下
    脳への酸素供給不足が続くと、日中のパフォーマンスが低下します。
  • 性格の変化(イライラしやすくなるなど)
    睡眠不足や酸素不足が、精神的な安定にも影響を与えることがあります。

これらのサインに心当たりがある場合は、単なるいびきではなく、SASの可能性が高いと考えられます。

放置すると危険な病気のリスク

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を放置すると、様々な全身疾患のリスクが著しく高まります。夜間の無呼吸や低呼吸によって、体は慢性的な酸素不足と高炭酸ガス血症に陥り、自律神経のバランスが崩れます。これにより、血管や心臓に大きな負担がかかり続けます。

SASと関連が深い病気には以下のようなものがあります。

  • 高血圧: SAS患者さんの多くが高血圧を合併しており、SASが原因で高血圧になることもあります。SASによる高血圧は通常の高血圧よりも治療が難しい傾向があります。
  • 心血管疾患: 狭心症、心筋梗塞、心不全などのリスクが高まります。夜間の酸素不足や血圧変動が、心臓に直接的なダメージを与えます。
  • 脳血管疾患: 脳梗塞や脳出血のリスクが高まります。血管への負担増が、脳の血管にも影響を及ぼします。
  • 糖尿病: SASはインスリン抵抗性を高め、血糖コントロールを悪化させることがわかっています。
  • 不整脈: 特に夜間の徐脈や頻脈などの不整脈が起こりやすくなります。
  • メタボリックシンドローム: 肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症といったメタボリックシンドロームの各要素とSASは深く関連しており、悪循環に陥りやすいです。
  • 交通事故や労働災害: 日中の強い眠気は、運転中や作業中の集中力低下を招き、重大な事故につながる危険性があります。

このように、危険ないびきであるSASは、単なる睡眠の質の問題ではなく、生命に関わる可能性のある病気です。いびきに加えて日中の眠気や無呼吸を指摘された場合は、決して軽視せず、早期に専門医に相談することが極めて重要です。

いびき改善のための対策

いびきの原因は多岐にわたるため、改善するためにはまずご自身のいびきの原因を特定し、それに合わせた対策を講じることが重要です。ここでは、ご自身でできるセルフケアから、病院での専門的な治療法までをご紹介します。

ご自身でできるセルフケア

比較的軽いいびきや、特定の状況下で起こるいびきの場合は、生活習慣の改善や簡単なセルフケアで軽減できることがあります。ただし、これらの対策を行っても改善が見られない場合や、危険ないびきのサインがある場合は、必ず専門医に相談してください。

寝姿勢を横向きに変える

仰向けで寝ると、舌や軟口蓋が重力によって喉の奥に落ち込みやすくなり、気道が狭まります。これを防ぐためには、横向きで寝るのが効果的です。横向きになると、舌根沈下を防ぎやすくなります。

  • 具体的な方法:
    抱き枕を使って体を支えると、自然と横向きを維持しやすくなります。
    寝間着の背中の部分にテニスボールなどを縫い付ける(またはポケット付きの専用寝具を使用する)ことで、仰向けになると違和感を感じて自然に横向きになるように促す方法もあります。

ただし、横向き寝が必ずしも全ての人にいびき改善効果があるわけではありません。また、肩や腰に負担がかかる場合もあるため、無理のない範囲で試してみてください。

減量に取り組む

肥満がいびきの主な原因である場合は、減量が最も効果的な対策の一つです。首周りや喉の内側の脂肪が減ることで、気道が広がりやすくなります。

  • 具体的な取り組み:
    バランスの取れた食事を心がけ、摂取カロリーを適正にする。
    ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を継続的に行う。
    専門家(医師や管理栄養士)に相談しながら、無理のないペースで減量計画を立てる。

急激な減量はリバウンドしやすく、体にも負担がかかります。月に1~2キロ程度の緩やかな減量を目指しましょう。数キロの減量でもいびきが改善する可能性があるため、諦めずに取り組むことが大切です。

飲酒・喫煙を控える

アルコールや喫煙は、喉の筋肉を弛緩させたり、気道を炎症させたりすることでいびきを悪化させます。いびきを改善するためには、これらを控えることが強く推奨されます。

  • 具体的な取り組み:
    特に寝る数時間前からのアルコール摂取を避ける。
    禁煙に取り組む。禁煙が難しい場合は、専門の医療機関や禁煙外来に相談することも検討しましょう。

鼻づまりを改善する

鼻炎や副鼻腔炎などによる鼻づまりがいびきの原因になっている場合は、鼻の通りを良くすることが重要です。鼻呼吸ができるようになると、口呼吸が減り、いびきが軽減される可能性があります。

  • 具体的な取り組み:
    アレルギー性鼻炎の場合は、原因物質(花粉、ハウスダストなど)を避け、抗ヒスタミン薬や点鼻薬を使用する。
    副鼻腔炎の場合は、医師の指示に従って抗菌薬などの治療を行う。
    生理食塩水を使った鼻うがいは、鼻腔内の洗浄に役立ちます。
    点鼻薬の使用は効果がありますが、長期使用による薬剤性鼻炎のリスクもあるため、医師や薬剤師に相談の上、適切に使用してください。
    慢性的な鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科を受診し、原因を特定して根本的な治療を行うことが最も確実です。

口の周りや舌の体操

口呼吸を改善し、舌の筋肉を鍛えることで、舌根沈下を防ぎ、いびきを軽減する効果が期待できる体操があります。

  • あいうべ体操: 口を大きく開けて「あー」「いー」「うー」と発声し、最後に舌を突き出すように「べー」と行います。これを毎日数セット繰り返すことで、舌や口周りの筋肉を鍛えることができます。
  • 舌回し: 舌を歯茎に沿って大きく回す体操です。左右それぞれ20回程度行うことで、舌の筋肉を鍛えます。

これらの体操は即効性はありませんが、継続することで舌の筋力がつき、睡眠中の舌の位置が安定しやすくなる可能性があります。

いびき対策グッズを活用する

いびき対策として市販されている様々なグッズを試してみるのも一つの方法です。ご自身のいびきのタイプや原因に合わせて選びましょう。

  • 鼻腔拡張テープ: 鼻の穴を広げ、鼻からの空気の通りを良くします。鼻づまりがいびきの原因になっている場合に効果が期待できます。
  • マウステープ(口閉じテープ): 就寝中に口が開くのを防ぎ、鼻呼吸を促します。口呼吸がいびきの原因になっている場合に有効です。ただし、鼻が完全に詰まっている人が使用すると危険な場合があるため注意が必要です。
  • マウスピース(口腔内装置): 下あごを前方に突き出すように固定し、気道を広げる装置です。歯科医師や専門の医療機関で製作してもらいます。比較的軽度から中等度のSASや、いびきそのものに効果があることがあります。市販品もありますが、ご自身の口に合わないと効果がないだけでなく、顎関節などに負担をかける可能性もあるため、専門家による製作が推奨されます。
  • 抱き枕・いびき防止枕: 寝姿勢をサポートし、横向き寝を促したり、首の角度を調整したりすることで気道の確保を助けます。

これらのグッズは、あくまで対症療法的な効果にとどまる場合が多く、根本的な原因解決にはならないことがあります。特に危険ないびき(SAS)の可能性がある場合は、グッズに頼るだけでなく、必ず医療機関を受診してください。

病院での治療法

セルフケアで改善しない場合や、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる場合は、専門の医療機関での検査や治療が必要となります。

睡眠時無呼吸症候群の検査・治療

SASが疑われる場合、まずは精密な検査を行います。

  • 簡易睡眠検査: 自宅で行える検査です。鼻の気流、酸素飽和度、いびきなどを測定し、SASの可能性や重症度を判定します。
  • 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査): 病院に一泊入院して行う精密検査です。脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、心電図、酸素飽和度、いびき、体の動きなど、様々な生理的データを同時に測定し、睡眠の状態や呼吸の状態を詳細に解析します。これにより、SASの診断を確定し、重症度を正確に評価します。

SASと診断された場合、重症度や原因に応じて様々な治療法が選択されます。

治療法 概要 適応 メリット デメリット・注意点
CPAP療法 装置から送り込まれる空気の陽圧で、睡眠中の気道の閉塞を防ぐ治療法です。 中等度〜重度のSAS、いびきにも効果あり。 SASに対する最も確立された標準治療。効果が高い。 装置の装着に慣れが必要。旅行時なども装置が必要。
口腔内装置 歯科医師が製作するマウスピース型の装置で、下あごを前方に出すことで気道を広げます。 比較的軽度〜中等度のSAS、いびきにも効果あり。 CPAPより簡便。携帯しやすい。顎関節症がある人は注意。 全てのSASに有効ではない。顎関節に負担がかかる可能性。
外科的治療 扁桃腺やアデノイドの摘出、軟口蓋の形成、気管切開術(重症の場合)など、気道を広げるための手術を行います。 扁桃腺が大きい、顔面・下あごの骨格に問題がある場合など。 根本的な解決につながる可能性。 手術による負担やリスク。全てのいびき・SASに有効ではない。
生活習慣の改善 減量、禁煙、節酒、寝姿勢の改善など、セルフケアの項目で挙げた内容を継続して行います。 全てのSAS、いびきに関わる原因に有効。 体への負担が少ない。全身の健康にも良い。 効果が出るまでに時間がかかる。重症例では単独では不十分。
その他の治療 薬剤による治療(SASそのものへの特効薬はないが、鼻づまりや日中の眠気に対する薬など)、耳鼻科的治療(鼻の病気)。 原因となる病気や症状がある場合。 原因に対する治療によりいびき・SASが改善する可能性。 SASの根本治療ではないことが多い。

CPAP療法は、中等度から重度のSASに対して最も効果的な治療法とされており、健康保険が適用されます。継続的な使用が重要ですが、これにより無呼吸が改善し、日中の眠気や将来的な合併症のリスクを減らすことができます。

専門医への相談を検討すべきケース

いびきが気になる場合、どのような状況で専門医に相談すべきか判断に迷うかもしれません。以下のケースに当てはまる場合は、積極的に医療機関を受診することを強くお勧めします。

  • いびきが大きく、一緒に寝ている家族に指摘される
  • いびきが途中で止まり、息が止まっている様子が観察される
  • 寝ている最中に息苦しさを感じて目が覚めることがある
  • 日中に強い眠気を感じ、仕事や運転に支障が出ている
  • 熟睡感がなく、朝起きた時に疲れが取れていない
  • 起床時に頭痛を感じることが多い
  • 夜間に何度も目が覚めたり、トイレに行ったりする
  • いびきとともに、高血圧、糖尿病、心臓病などの持病がある、または悪化した
  • ご自身ではいびきに気づかないが、危険ないびきのサイン(日中の眠気など)がある
  • セルフケア(寝姿勢の変更、減量など)を試したが効果がない
  • 子供のいびきが気になる(子供のいびきは扁桃腺肥大などが原因のことが多く、発達に影響する可能性もあるため、特に注意が必要です)

これらの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があるため、早めに検査と診断を受けることが重要です。

何科を受診すべきか?

いびきや睡眠時無呼吸症候群の専門的な診療は、以下の科で行われています。

  • 呼吸器内科: 睡眠時無呼吸症候群の診断やCPAP療法などの管理を行います。
  • 耳鼻咽喉科: 鼻や喉の構造的な問題(扁桃腺肥大、鼻炎など)がいびきの原因となっている場合の診断や治療(手術を含む)を行います。
  • 睡眠外来・睡眠センター: いびきやSASを含む様々な睡眠障害を専門的に扱う診療科です。PSG検査などの精密検査が可能です。
  • 歯科(口腔外科): いびきやSASに対する口腔内装置(マウスピース)の製作や調整を行います。

まずはかかりつけ医に相談してみるか、いびきや睡眠障害を専門に扱っている医療機関を探して受診することをお勧めします。インターネットで「〇〇市 いびき外来」「〇〇病院 睡眠センター」などと検索すると、お近くの専門医療機関が見つかるでしょう。

いびきに関するQ&A

いびきに関してよくある質問とその回答をまとめました。

いびきをかく一番の原因は何ですか?

いびきの一番の原因は、睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることです。この狭窄を引き起こす要因は複数あり、個人によって異なります。ただし、成人で最も一般的な原因としては、肥満による首周りの脂肪の増加や、仰向けで寝ることで舌根が沈下することが挙げられます。その他、アルコール摂取、鼻づまり、生まれつきの骨格や喉の形状なども大きく影響します。多くの場合は、これらの複数の原因が組み合わさって生じていると考えられます。

いびきはどうすれば治りますか?

いびきの治し方は、その原因によって異なります。まずはいびきの原因を特定することが重要です。

  • 軽度の場合: 寝姿勢の変更(横向き寝)、減量、禁煙、節酒、鼻づまりの改善(鼻洗浄や点鼻薬など)、口周りの体操といったセルフケアが有効な場合があります。
  • 重度の場合や睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合: 専門医による検査と診断を受け、原因に基づいた治療が必要です。主な治療法にはCPAP療法、口腔内装置、場合によっては外科的治療などがあります。

ご自身のいびきの原因が分からない場合や、セルフケアで改善しない場合は、必ず医療機関を受診して相談してください。

どんなイビキが危ないですか?

最も危険ないびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴ういびきです。具体的には、

  • 大きないびきが途中で止まり、しばらくしてから大きな音やあえぎ声とともに再び呼吸が始まるというパターンを繰り返すいびき。
  • 不規則で、呼吸が苦しそうな、またはつまったような音を伴ういびき。

このような「呼吸が止まるいびき」に加えて、日中の強い眠気、起床時の頭痛、熟睡感の欠如などの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が非常に高いため、早急に医療機関を受診してください。

いびきをかきやすい人の特徴は?

いびきをかきやすい人にはいくつかの特徴があります。

  • 肥満体型の人: 首周りや喉に脂肪がつきやすく、気道を圧迫しやすい。
  • 下あごが小さい、または後退している人: 舌を支えるスペースが狭く、舌根沈下しやすい。
  • 扁桃腺やアデノイドが大きい人: 物理的に気道が狭くなっている。
  • 首が短い、または太い人: もともと気道が狭くなりがち。
  • 口呼吸をする人: 舌根沈下を招きやすい。
  • 飲酒習慣のある人: アルコールが筋肉を弛緩させ、気道が狭まる。
  • 喫煙者: 喉や鼻の炎症により気道が狭まりやすい。
  • 加齢により喉の筋肉が衰えた人: 気道を支える力が弱くなる。
  • 疲労が蓄積している人: 筋肉が緩みやすくなる。
  • 睡眠薬や安定剤を服用している人: 薬剤の作用で筋肉が弛緩する。

これらの特徴に複数当てはまる人は、いびきをかくリスクが高いと言えます。

まとめ

いびきは、多くの方にとって身近なものですが、その原因は様々であり、単なる睡眠時の騒音として片付けられない場合があることをご理解いただけたかと思います。肥満、生活習慣、体の構造など、複数の要因が複合的にいびきを引き起こしています。

特に注意が必要なのは、「危険ないびき」と呼ばれる、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴うものです。いびきが途中で止まる、日中の強い眠気があるといったサインを見逃さず、放置せずに適切に対処することが重要です。SASを放置すると、高血圧や心疾患、脳血管疾患など、命に関わる重篤な病気を引き起こすリスクが高まります。

ご自身のいびきが気になる場合は、まずこの記事で紹介したセルフケア(寝姿勢、減量、飲酒・喫煙を控える、鼻づまり改善、口周りの体操、いびき対策グッズなど)を試してみることから始めましょう。しかし、これらの対策で改善が見られない場合や、睡眠時無呼吸症候群のサインに心当たりがある場合は、迷わず呼吸器内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来などの専門医に相談してください。

いびきは、あなたの体からの大切なサインかもしれません。原因に応じた適切な対策や専門医による診断・治療を受けることで、いびきを改善し、より質の高い睡眠と健康的な毎日を取り戻すことができるはずです。

【免責事項】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。ご自身のいびきや健康状態については、必ず医療機関を受診し、医師の診断や指導を受けてください。

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