MENU
コラム一覧

PTSDの治し方と治療法|症状改善へのステップを解説

「ptsd 治し方」についてお悩みですね。つらい症状に苦しんでいるとき、
「どうすれば治るのだろうか」と出口が見えないように感じることもあるかもしれません。
しかし、PTSDは適切な治療を受けることで回復を目指すことが十分可能な病気です。
この記事では、PTSDの治し方として、専門的な治療法からご自身でできる対処法、回復の可能性や治療開始のタイミングまで、幅広く解説します。
この記事が、回復への一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

PTSDの治し方とは?克服に向けた治療法を解説

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、非常に恐ろしい、あるいは衝撃的な出来事を体験したり、目撃したりした後に発症する精神疾患です。その「治し方」を知ることは、回復への道のりにおいて非常に重要です。PTSDの治療は、専門的なアプローチとご自身の努力の両輪で進めることが一般的です。効果的な治療法が確立されており、多くの人が症状の改善や回復を遂げています。このセクションでは、PTSDの定義から始まり、具体的な治療法について詳しく見ていきます。

目次

まずはPTSDを知る

PTSDの治し方を理解するためには、まずこの病気そのものについて正しく知ることが大切です。どのような病気なのか、どのような症状が出るのか、なぜ発症するのかを知ることで、適切な治療への理解が深まります。

PTSDとは?トラウマとの違い

PTSDとは、Posttraumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)の略称です。生命の危機を感じるような出来事(災害、事故、犯罪被害、暴力など)を体験したり、目撃したりすることが原因で発症します。このような出来事を「トラウマ(心的外傷)」と呼びます。

「トラウマ」という言葉は、広く「心の傷」という意味で日常的に使われることもありますが、精神医学におけるトラウマは、PTSDを引き起こしうるような、生命や身体の安全を脅かす、非常に強い衝撃を伴う体験を指します。トラウマ体験をした人全てがPTSDを発症するわけではありませんが、その後の心身に大きな影響を与える可能性があります。PTSDは、この強いトラウマ体験に起因する特定の症状群が一定期間以上続く場合に診断されます。

PTSDの主な症状(三大症状など)

PTSDの症状は多岐にわたりますが、主に以下の4つの症状群に分けられます。

  1. 再体験症状(侵入症状): トラウマとなった出来事が、まるで今起きているかのように、意図せず鮮明に思い出されたり(フラッシュバック)、悪夢を見たりします。出来事に関連する場所や物、音などに触れると強い苦痛や身体的な反応(動悸、発汗など)が生じることもあります。
  2. 回避症状: トラウマに関連する思考、感情、場所、人々、活動などを意図的に避けようとします。トラウマについて考えるのをやめようとしたり、関連する話題を避けたりします。
  3. 否定的認知や感情の変化: 自分自身、他人、世界に対して否定的な考えを持つようになります。「自分は価値がない」「誰も信用できない」「世界は危険だ」といった考え方です。また、喜び、愛情、満足感といったポジティブな感情を感じにくくなったり、未来に対して希望を持てなくなったりします。解離症状(現実感の喪失、離人感)が現れることもあります。
  4. 覚醒度と反応性の著しい変化: 常に神経が張り詰めた状態になり、ささいな刺激にも過剰に反応したり(過覚醒)、怒りっぽくなったりします。集中困難、睡眠障害、過度の警戒心などもこのカテゴリーに含まれます。

これらの症状が、トラウマ体験の後、1ヶ月以上持続し、社会生活や職業生活に重大な支障をきたしている場合にPTSDと診断されます。小児では症状の現れ方が異なることもあります。

PTSDの原因と発症しやすい人

PTSDの直接的な原因は、前述の通り、強い心理的衝撃を伴うトラウマ体験です。具体的には、以下のような出来事が原因となり得ます。

  • 自然災害(地震、台風など)
  • 人為的災害(火事、事故など)
  • 犯罪被害(強盗、誘拐など)
  • 暴力や虐待(身体的、精神的、性的虐待)
  • 戦争や紛争
  • 重い病気や怪我
  • 近親者の突然死や悲惨な死

ただし、同じトラウマ体験をしても、PTSDを発症する人としない人がいます。発症のしやすさには、個人の様々な要因が影響すると考えられています。

発症しやすい要因の例:

  • トラウマ体験自体の性質: 出来事の深刻さ、生命の危機を感じる度合い、予測可能性の低さ、被害が意図的であったかなど。
  • 個人の脆弱性: 過去のトラウマ体験、精神疾患の既往、遺伝的要因、ストレスへの対処能力など。
  • 体験後の環境: 家族や友人からのサポートの有無、経済状況の変化、二次的なストレス(法的手続き、補償問題など)の有無。
  • 解離傾向: 出来事の最中に現実感がなくなったり、記憶が途切れたりする傾向がある人。

これらの要因が複雑に絡み合い、PTSDの発症リスクを高めたり低くしたりします。

PTSDの治療方法の種類

PTSDの治し方には、主に専門的な医療機関で行われる治療と、ご自身で取り組めるセルフケアがあります。効果的な治療法が複数存在し、個々の症状や状況に合わせて組み合わせて行われます。重要なのは、一人で抱え込まず、専門家の助けを借りることです。

専門的な医療機関での治療

医療機関での治療は、医師や臨床心理士などの専門家によって行われます。主に心理療法と薬物療法があり、これらを組み合わせて行うことが一般的です。

心理療法(EMDR, TF-CBTなど)

心理療法は、PTSD治療の中心となります。トラウマ体験によって生じた心の傷や歪んだ認知に働きかけ、症状の軽減や克服を目指します。代表的な心理療法には以下のようなものがあります。

  • トラウマ焦点型認知行動療法(TF-CBT: Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy):
    トラウマ体験に関連する思考や感情、行動パターンに焦点を当てた認知行動療法です。安全な環境でトラウマ体験の記憶を段階的に処理し、それに関連する歪んだ考え方(「自分が悪かった」「世界は常に危険だ」など)を修正していくことで、症状を軽減します。主に以下の要素を含みます。
    • 心理教育: PTSDとは何か、症状はなぜ起こるのかなどを理解する。
    • 情動調整法: 不安や恐怖、怒りなどの強い感情をコントロールする方法(呼吸法、リラクゼーションなど)を学ぶ。
    • 認知処理: トラウマに関連する否定的な思考パターンを特定し、現実的でバランスの取れた考え方に修正する。
    • 曝露療法: 安全な状況で、トラウマに関連する記憶や状況に段階的に向き合い、それらに対する恐怖や不安を和らげていく。想像の中でトラウマ体験を追体験する「想像曝露」や、トラウマに関連する場所や状況に実際に近づく「現実曝露」があります。
  • EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing: 眼球運動による脱感作と再処理法):
    トラウマ記憶の処理を促進するための心理療法です。治療者は、患者がトラウマ体験の記憶を思い浮かべている間に、左右に振る指などに合わせて眼球を動かしてもらったり、タッピングを行ったりするなどの両側性刺激を与えます。これにより、トラウマ記憶が脳内で適切に処理され、苦痛が軽減されると考えられています。フラッシュバックや悪夢などの再体験症状に特に効果があるとされています。EMDRは訓練を受けた専門家のみが行える治療法です。
  • 持続エクスポージャー療法(PE: Prolonged Exposure Therapy):
    トラウマに関連する記憶や状況への安全な曝露を繰り返し行うことで、恐怖や不安を和らげることを目指す心理療法です。想像の中でトラウマ体験を語る「想像曝露」と、トラウマに関連する安全な状況に段階的に直面する「現実曝露」を組み合わせます。これにより、トラウマ記憶や関連刺激が危険ではないことを学習し、回避行動を減らしていきます。
  • 認知処理療法(CPT: Cognitive Processing Therapy):
    トラウマ体験に関連する思考や感情に焦点を当て、それらを処理するための認知療法です。特に、安全、信用、力、自己肯定、親密さといった基本的な信念がトラウマによってどのように変化したかに注目し、歪んだ考え方を修正していきます。トラウマ体験について文章を書いたり、話し合ったりしながら進めます。

これらの心理療法は、症状の種類や重症度、患者さんの年齢や状況に合わせて選択されます。いずれも一定の期間(数ヶ月から1年以上)をかけて行われることが多く、継続することが重要です。

薬物療法

薬物療法は、PTSDの中核症状(特に再体験症状、回避、過覚醒)や、併発しやすい抑うつ、不安、睡眠障害などの症状を和らげるために用いられます。単独で行われるよりも、心理療法と併用されることが多いです。

主に用いられるのは、以下の種類の薬です。

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI: Selective Serotonin Reuptake Inhibitor):
    脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きを調整することで、不安や抑うつ、過覚醒などの症状を軽減します。PTSDの第一選択薬とされることが多く、パロキセチンやセルトラリンなどが処方されます。効果が出るまでに数週間かかることがあります。
  • 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI: Serotonin-Noradrenaline Reuptake Inhibitor):
    セロトニンとノルアドレナリンの両方の働きを調整します。SSRIと同様に、不安や抑うつ、過覚醒に効果が期待できます。ベンラファキシンなどが用いられます。
  • その他の薬:
    SSRIやSNRIで効果が不十分な場合や、特定の症状が強い場合に使用されることがあります。
    • 抗不安薬: 不安や緊張が強い場合に一時的に使用されることがありますが、依存性のリスクがあるため慎重に処方されます。
    • 睡眠薬: 睡眠障害が顕著な場合に処方されます。
    • 気分安定薬、非定型抗精神病薬: 再体験症状や易怒性、解離症状などが強い場合に使用が検討されることがあります。

薬物療法は、症状をコントロールし、心理療法に取り組むための基盤を作る助けとなります。どのような薬を、どのくらいの量、どのくらいの期間使用するかは、医師が患者さんの状態を詳しく診察した上で決定します。自己判断での服用中止や増減は危険ですので絶対に行わないでください。

集団療法

集団療法は、複数のPTSD患者さんが集まり、専門家の進行のもとで行われる心理療法の一形態です。他の患者さんと経験や感情を共有することで、孤立感を和らげ、自分だけではないという安心感を得られます。また、他の人の回復の過程から学びを得たり、互いに支え合ったりすることで、自身の回復へのモチベーションを高める効果も期待できます。

集団療法の中で、心理教育、感情調整スキルの練習、トラウマに関連するテーマについての話し合いなどが行われます。ただし、グループの中でトラウマ体験の詳細を語ることは、他の参加者や自分自身にとって負担となる場合があるため、内容には配慮が必要です。

自分でできる対処法(フラッシュバック対処など)

専門的な治療と並行して、あるいは治療の補助として、ご自身でできる対処法に取り組むこともPTSDの治し方の一部です。特に、フラッシュバックや過覚醒などの症状が出た際に、その苦痛を和らげるためのセルフヘルプ技法は非常に役立ちます。

自分でできる対処法の例:

  • グラウンディング(Grounding):
    フラッシュバックや解離によって現実感がなくなった際に、今、ここにいるという感覚を取り戻すための技法です。
    • 「5-4-3-2-1」技法:
      • 今、見えているものを5つ挙げる。
      • 今、触れるものを4つ挙げる。
      • 今、聞こえる音を3つ挙げる。
      • 今、匂うものを2つ挙げる。
      • 今、味わえるものを1つ挙げる。
    • 呼吸に意識を向ける: 深くゆっくりとした呼吸に集中し、吸う息、吐く息の感覚を感じる。
    • 身体の感覚に意識を向ける: 足が地面に触れている感覚、椅子に座っているお尻の感覚など、身体が何かに触れている感覚に意識を集中する。
    • 物を触る: 冷たいもの(氷や水の入ったペットボトル)、手触りの良い布、石など、特定の質感を持つものを触る。
  • 呼吸法:
    不安やパニックを感じたときに、呼吸を整えることで心を落ち着かせます。
    • 腹式呼吸: 鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませます。口からゆっくりと、お腹がへこむのを感じながら息を吐き出します。吐く息を吸う息より長くするとリラックス効果が高まります。
    • 4-7-8呼吸法: 4秒かけて鼻から息を吸い込み、7秒間息を止め、8秒かけて口からゆっくりと息を吐き出す。
  • 安全な場所(Safe Place)イメージ:
    心の中で、自分が完全に安全でリラックスできる場所を具体的にイメージします。その場所の風景、音、匂い、触感などを詳細に思い浮かべ、そこで感じられる安心感を味わいます。つらい気持ちになった時に、このイメージに戻る練習をします。
  • セルフケア:
    心身の健康を保つための基本的なケアも重要です。
    • 規則正しい生活: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がける。
    • リラクゼーション: 入浴、音楽鑑賞、アロマテラピーなど、自分にとって心地よい方法でリラックスする時間を持つ。
    • 趣味や楽しい活動: 好きなことに時間を使い、ポジティブな感情を経験する機会を増やす。
    • ストレス管理: ストレスの原因を特定し、対処法を考える。信頼できる人に話を聞いてもらうことも有効です。
  • 日記をつける:
    感情や思考を書き出すことで、自分の状態を客観的に理解し、整理する助けになります。トラウマ体験そのものに焦点を当てる必要はありません。日々の出来事や感じたことを自由に書くことから始められます。

これらの対処法は、症状が出たときの苦痛を軽減し、自分自身をコントロールしている感覚を取り戻すのに役立ちます。しかし、これはあくまで補助的な手段であり、専門家による治療の代わりにはなりません。困難を感じる場合は、無理せず専門家に相談してください。

治療法の種類と特徴

治療法 主なアプローチ 期待される効果 適している人 特徴・留意点
トラウマ焦点型認知行動療法 (TF-CBT) 認知の修正、段階的な曝露 フラッシュバック、回避、過覚醒、否定的思考の改善 子供から大人まで、トラウマ体験と症状の関連を理解しやすい人 最も広く推奨される心理療法の一つ。構造化されており、特定のスキルを学ぶ。
EMDR 両側性刺激を用いたトラウマ記憶の再処理 フラッシュバック、悪夢の軽減。トラウマ記憶に伴う苦痛の軽減 特定のトラウマ記憶が鮮明で、それが強い苦痛の原因となっている人 他の療法で効果がなかった場合にも有効なことがある。訓練を受けた専門家が必要。
持続エクスポージャー療法 (PE) トラウマ関連の記憶・状況への反復的な曝露 トラウマ関連の恐怖・不安の軽減、回避行動の減少 トラウマ記憶をある程度語ることができる人。曝露療法に抵抗が少ない人 症状の改善に時間がかかる場合がある。不安が高まることがあるため専門家のサポートが必須。
認知処理療法 (CPT) トラウマによる信念の変化に焦点を当てた認知修正 自己否定、他者不信、世界への否定的な見方の改善。罪悪感や羞恥心の軽減 トラウマ体験について考えることや書くことに抵抗が少ない人。トラウマが信念に与えた影響が大きい人 比較的短期間で効果が出ることがある。トラウマ体験を詳細に語る必要はない。
薬物療法 (SSRI, SNRIなど) 脳内物質の調整 不安、抑うつ、過覚醒、易怒性、睡眠障害などの症状緩和 症状が重く、心理療法だけでは対応が難しい人。心理療法に取り組むための基盤が必要な人 症状を直接「治す」のではなく、症状を和らげる補助的な役割。副作用の可能性や効果が出るまでの時間差がある。自己判断での中止は危険。
集団療法 他者との経験共有、心理教育、対人スキル向上 孤立感の軽減、安心感、回復への意欲向上、対人関係の改善 他者との交流から学びを得たい人。自分だけではないと感じたい人 グループ内での安心感が必要。グループの構成や進行によって効果が異なる場合がある。
自分でできる対処法 グラウンディング、呼吸法、セルフケア、リラクゼーションなど 症状が出たときの苦痛軽減、自己コントロール感の回復、心身の安定化 全てのPTSD患者。特に専門治療と並行して行うことで効果が高まる。 専門治療の補助であり、これだけで完治を目指すのは難しい。無理せずできる範囲で行うことが重要。

PTSDは本当に治る?回復の可能性と期間

PTSDは「治る病気」です。適切な治療を受けることで、多くの人が症状の改善を経験し、回復や寛解(症状が目立たない状態)に至ります。PTSDの治し方に取り組むことは、希望を持つことにつながります。

自然回復は期待できる?

トラウマ体験の後、一時的にPTSDのような症状(例えば、出来事を思い出す、不安になるなど)が現れることは多くの人に起こります。これを急性ストレス反応や急性ストレス障害(ASD)と呼びます。ASDは通常、1ヶ月以内に症状が治まることが多いです。

しかし、症状が1ヶ月以上続き、PTSDと診断された場合、自然に完全に回復することは難しい場合があります。特に、症状が重かったり、他の精神疾患(うつ病、不安障害など)や物質依存を併発していたり、周囲からのサポートが不足していたりする場合は、自然回復が期待しにくい傾向があります。

そのため、PTSDの診断を受けた場合は、自然回復に頼るのではなく、早期に専門家による治療を開始することが強く推奨されます。

治療による治癒率は?

PTSDの「治癒率」を明確な数字で示すことは難しいですが、多くの研究で、効果的な心理療法(特にTF-CBT, EMDR, PE, CPTなど)や薬物療法によって、症状の顕著な改善や寛解に至る人が多数いることが示されています。

例えば、トラウマ焦点型認知行動療法を受けた人の約半数から3分の2が、治療後にPTSDの診断基準を満たさなくなるという報告もあります。ただし、これはあくまで平均的な数字であり、個人の症状の重さ、トラウマ体験の種類、併存疾患の有無、治療への取り組み方、治療者の経験など、様々な要因によって結果は異なります。

重要なのは、「治る可能性がある」ということです。全ての症状が完全に消えなくても、日常生活への支障が大幅に軽減され、以前のような生活を取り戻せる可能性は十分にあります。

症状が慢性化する場合

PTSDの症状は、治療せずに放置したり、適切な治療を受けられなかったりすると、長期化し「慢性化」することがあります。慢性化したPTSDは、回復に時間がかかる傾向がありますが、決して治らないわけではありません。慢性化した場合でも、根気強く治療を続けることで改善を目指すことが可能です。

また、複雑性PTSDと呼ばれる、幼少期の長期にわたる虐待など、反復的で人間関係に関連するトラウマによって生じる場合、症状がより複雑で治療に時間を要することがあります。複雑性PTSDの場合、トラウマ記憶への直接的なアプローチだけでなく、感情のコントロールや人間関係の改善などに焦点を当てた治療も重要になります。

症状が慢性化する要因としては、以下が考えられます。

  • トラウマ体験の重症度が高い、または複数回にわたるトラウマ体験がある
  • トラウマ体験後に十分なサポートが得られなかった
  • 他の精神疾患や物質依存を併発している
  • 社会的な孤立
  • 慢性的なストレスにさらされている環境

症状が慢性化していても諦めず、専門家と協力して、ご自身に合った治療法を根気強く続けることが、回復への鍵となります。

治療を開始するタイミングと医療機関の選び方

PTSDの治し方に取り組む上で、いつ治療を開始するか、そしてどの医療機関を選ぶかは非常に重要なポイントです。早期に適切な治療を開始することで、回復を早め、症状の慢性化を防ぐことができます。

いつ専門医に相談すべきか

トラウマ体験の後、強い不安や恐怖、不眠などが一時的に現れるのは自然な反応です。しかし、以下のような状態が続いている場合は、早期に専門医に相談することを強くお勧めします。

  • トラウマ体験から1ヶ月以上経過しても、再体験症状(フラッシュバック、悪夢)、回避、否定的感情、過覚醒などの症状が続いている
  • これらの症状によって、仕事や学業、家事などの日常生活に支障が出ている
  • 症状が辛すぎて、一人で対処できないと感じる
  • 自分でできる対処法を試しても効果がない、または症状が悪化する
  • うつ状態が続いている、または自傷行為や自殺を考えることがある
  • アルコールや薬物に頼るようになった
  • 人間関係がうまくいかなくなった

特に、日常生活への支障が出ている、症状が1ヶ月以上続いている、あるいは自傷行為などのリスクがある場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。早期介入は、PTSDの症状を軽減し、回復を促進するために非常に有効です。

精神科と心療内科の違い

PTSDの治療をどこで受けるか考える際に、「精神科」と「心療内科」のどちらを受診すれば良いか迷うことがあるかもしれません。どちらの科でもPTSDの診療は可能ですが、得意とする領域に若干の違いがあります。

医療機関の名称 主な対象疾患 主なアプローチ
精神科 精神疾患全般(統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害、PTSDなど) 薬物療法、精神療法(カウンセリング、認知行動療法など)、リハビリテーション、入院治療など
心療内科 心身症(ストレスが原因で身体に症状が現れる病気:胃潰瘍、過敏性腸症候群、円形脱毛症など) 薬物療法、心理療法(カウンセリングなど)、生活指導など

PTSDの場合:

  • 精神科は精神疾患全般を専門としているため、PTSDの様々な症状や、うつ病、パニック障害などの併存疾患への対応に長けています。心理療法を専門とする臨床心理士などが在籍している場合も多く、心理療法と薬物療法を組み合わせた専門的な治療が受けやすいでしょう。
  • 心療内科は心身症を専門としていますが、ストレス関連疾患としてPTSDの診療も行っています。しかし、精神科に比べて専門的な心理療法を行える医療機関は限られる場合があります。身体的な症状が強く出ている場合や、まずは身体的な問題がないか確認したい場合に受診を検討するのも良いでしょう。

どちらを受診するか迷う場合は、まずはお近くの精神科または心療内科に問い合わせて、PTSDの診療を行っているか、どのような治療法を提供しているかを確認すると良いでしょう。また、自治体の精神保健福祉センターなどに相談して、適切な医療機関を紹介してもらうことも可能です。

良い医療機関の選び方

PTSDの治療を継続するには、ご自身に合った医療機関を選ぶことが大切です。以下の点を参考に検討してみてください。

  • PTSDの治療経験: 過去にPTSDの治療経験が豊富であるか、最新の治療法(EMDR, TF-CBTなど)を提供しているかを確認しましょう。ウェブサイトで情報公開している場合や、電話で問い合わせてみることができます。
  • 医師やスタッフとの相性: 治療は医師や臨床心理士との信頼関係が非常に重要です。初診で話してみて、安心して相談できる雰囲気かどうか、親身に話を聞いてくれるかなどを感じ取ることが大切です。相性が合わないと感じたら、他の医療機関を検討するのも良いでしょう。
  • 治療方針の説明: 医師が、病状や治療法について、分かりやすく丁寧に説明してくれるかどうかも重要です。納得して治療に進めるように、疑問点は遠慮なく質問しましょう。
  • アクセス: 定期的な通院が必要になる場合が多いので、自宅や職場から通いやすい場所にあるかどうかも考慮しましょう。
  • 口コミや評判: 可能であれば、実際に通院している人の口コミや評判を参考にしてみるのも一つの方法ですが、個人の感想であるため鵜呑みにせず、あくまで参考程度にとどめましょう。
  • 費用: 治療費やカウンセリング費用、薬代などがどのくらいかかるか事前に確認しておきましょう。自立支援医療制度などの医療費助成制度が利用できる場合もありますので、相談してみましょう。

いくつかの医療機関を受診してみて、比較検討するのも良いかもしれません。大切なのは、ご自身が安心して治療を受けられる場所を見つけることです。

PTSDで悩む方へ伝えたいこと

PTSDは、非常に辛い経験から生じる病気であり、一人で抱え込まずに助けを求めることが回復への第一歩です。「ptsd 治し方」を求めているあなたは、すでに回復に向けて動き出しています。希望を失わないでください。

周囲の人ができること(ptsdの人にかける言葉など)

もしあなたの身近な人がPTSDで苦しんでいるなら、その方を支えることは非常に重要です。ただし、どのように接すれば良いか分からない、という方もいるかもしれません。周囲の人ができること、避けるべきことについて考えてみましょう。

周囲の人ができること:

  • 話を「聞く」ことに徹する: 無理に話させる必要はありませんが、話したい気持ちがある時は、ただそばにいて、批判せず、アドバイスもせず、共感的に耳を傾けることが大切です。無理に励まそうとせず、「つらかったね」「大変だったね」と、その人の感情に寄り添う言葉をかけるのが良いでしょう。「ptsdの人にかける言葉」として最も大切なのは、共感と受容の姿勢を示すことです。
  • 安全な場所であると感じてもらう: 落ち着いて過ごせる環境を提供したり、安心できる存在であることを示したりします。予測可能な行動を心がけ、驚かせたり、突然大きな音を立てたりしないように配慮します。
  • 症状への理解を示す: フラッシュバックや回避行動などが本人の意思とは関係なく起こる症状であることを理解し、責めたり否定したりしないことが重要です。「気のせいだよ」「乗り越えなきゃダメだよ」といった言葉は禁物です。
  • 治療を勧める・サポートする: 専門家による治療が有効であることを伝え、受診に付き添ったり、治療を継続するためのサポートをしたりします。ただし、無理強いはせず、本人の意思を尊重します。
  • 情報提供: PTSDや利用できる支援サービスに関する正確な情報を提供します。ただし、情報過多にならないよう、必要に応じて、あるいは求められた際に提供するのが良いでしょう。
  • セルフケアをサポートする: 本人がリラックスできる時間を持てるようにサポートしたり、趣味や楽しい活動に誘ったりします。
  • ご自身も休む時間を持つ: 支える側も大きな負担を感じることがあります。燃え尽きないよう、ご自身の心身の健康にも気を配り、必要であれば相談機関などを利用することも大切です。

避けるべきこと:

  • トラウマ体験の詳細を無理に聞き出そうとする
  • 安易に「忘れた方がいい」「気にしない方がいい」と言う
  • 症状を甘えだと決めつけたり、否定したりする
  • トラウマに関連する冗談を言ったり、軽視したりする
  • 過干渉になる、あるいは突き放す

周囲のサポートは、回復過程で非常に大きな力になります。適切な距離感を保ちつつ、理解と共感をもって寄り添うことが大切です。

相談できる窓口

PTSDかもしれないと感じたり、症状に悩んだりしている場合、一人で抱え込まずに外部のサポートを求めることが重要です。専門的な医療機関以外にも、様々な相談窓口があります。

  • 精神保健福祉センター: 各都道府県や政令指定都市に設置されている公的な機関です。精神的な問題に関する相談に無料で応じてくれます。医療機関の紹介や、社会資源についての情報提供も行っています。
  • 保健所: 地域住民の健康に関する相談を受け付けています。精神科医や保健師による相談会を実施している場合もあります。
  • いのちの電話などの電話相談窓口: 精神的な苦痛や危機にある人が、匿名で話を聞いてもらえる電話相談です。24時間対応している窓口もあります。
  • 心理相談機関(カウンセリングルーム): 臨床心理士や公認心理師などの専門家によるカウンセリングを受けられる機関です。医療機関ではないため診断や薬の処方はできませんが、心理療法に特化したサポートを受けられます。
  • 自助グループ/家族会: 同じような経験をした人同士が集まり、経験や感情を共有する場です。ピアサポート(仲間からの支え)が得られ、孤立感の解消につながります。
  • 職場の産業医/EAP(従業員支援プログラム): 会社によっては、専門家による相談を受けられる制度があります。

これらの窓口は、症状について整理したり、今後の方向性を考えたり、適切な専門機関につなげてもらったりするために役立ちます。まずは気軽に相談してみることから始めてみましょう。

シアリスED治療薬についてよくある質問

※注:このセクションは、提供された競合記事の構成要素を踏まえて作成されていますが、PTSDに関する内容に変更して記述します。

PTSDの治療や症状について、多くの方が疑問に思う点をまとめてみました。

Q: PTSDは薬だけで治せますか?

A: PTSDの治療において、薬物療法は主に症状(不安、抑うつ、不眠、過覚醒など)を和らげるために用いられます。薬だけでトラウマ記憶そのものを処理したり、トラウマによって生じた認知の歪みを根本的に修正したりすることは難しいとされています。そのため、薬物療法は心理療法と組み合わせて行われることが多いです。心理療法によってトラウマ関連の苦痛を軽減し、薬物療法で心理療法に取り組むための精神的な安定を図る、という相乗効果が期待できます。

Q: 心理療法はどのような人が行いますか?

A: 心理療法は、精神科医、臨床心理士、公認心理師などの専門家が行います。特に、トラウマ関連の心理療法(TF-CBT, EMDR, PE, CPTなど)は専門的な訓練が必要なため、これらの資格を持ち、PTSD治療の経験が豊富な専門家を選ぶことが重要です。医療機関に所属している場合や、民間の心理相談機関で活動している場合などがあります。

Q: PTSDの治療期間はどのくらいですか?

A: PTSDの治療期間は、症状の重さ、トラウマ体験の種類、併存疾患の有無、選ばれた治療法、個人の反応などによって大きく異なります。数ヶ月で症状がかなり改善する人もいれば、数年かかる人もいます。特に慢性化している場合や、複雑性PTSDの場合は、より長期間の治療が必要となる傾向があります。治療期間について、担当の専門家とよく相談し、現実的な目標を持つことが大切です。

Q: 治療費はどのくらいかかりますか?

A: 医療機関でのPTSD治療(診察、薬物療法)には、基本的に医療保険が適用されます。ただし、心理療法(カウンセリング)については、保険適用される場合とされない場合があります。医療機関付属の心理相談室や、特定のプログラムに含まれる心理療法は保険適用されることがありますが、民間のカウンセリングルームでは自費診療となることが多いです。また、精神疾患の治療には、医療費の自己負担分を軽減する「自立支援医療制度(精神通院医療)」が利用できる場合があります。これは、指定された医療機関での通院医療費の自己負担額が原則1割になる制度です。詳細については、医療機関の相談窓口や自治体の精神保健福祉センターに問い合わせてみましょう。

Q: 治療を受ければ完全に元通りになりますか?

A: 治療の目標は、トラウマ体験による苦痛を軽減し、日常生活を取り戻すことです。多くの人が症状の顕著な改善を経験し、以前のように生活できるようになります。症状が完全にゼロになる人もいれば、症状が残るもののうまく付き合えるようになる人(寛解)もいます。たとえ症状が完全に消えなくても、トラウマ体験の記憶が以前ほど苦痛を伴わなくなり、人生を前向きに歩めるようになることは十分可能です。再発予防のためのスキルを身につけることも治療の一部です。

【まとめ】PTSDの治し方は多様、専門家との協力が回復への鍵

PTSDの治し方には、心理療法、薬物療法、集団療法といった専門的なアプローチから、グラウンディングなどのご自身でできる対処法まで、様々な方法があります。特に、トラウマ焦点型認知行動療法やEMDRといった心理療法は、PTSDに高い効果が期待できる治療法として広く推奨されています。

PTSDは、適切な治療を受けることで症状を改善し、回復を目指すことが十分に可能な病気です。自然回復に頼るのではなく、症状が辛いと感じたら、あるいは1ヶ月以上続いているようであれば、早期に精神科や心療内科といった専門の医療機関に相談することが大切です。

回復への道のりは一人ひとり異なりますが、専門家と協力し、ご自身に合った治療法を根気強く続けることで、必ず道は開けます。周囲の理解とサポート、そして様々な相談窓口の活用も、回復を後押しする力となります。一人で抱え込まず、希望を持って、回復への一歩を踏み出してください。

免責事項:
本記事は、PTSDに関する一般的な情報提供を目的としており、診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や状況に応じた適切な診断・治療については、必ず専門の医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。本記事の情報によって生じたいかなる損害についても、当方は一切責任を負いません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次