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ADHD女性の「あるある」|これって私だけ?特徴と日々の困りごと

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、発達障害の一つとして広く知られるようになりました。しかし、その特性の現れ方は人それぞれ異なり、特に女性の場合は男性と比べて症状が目立ちにくく、周囲からも本人からも気づかれにくい傾向があると言われています。「もしかして自分もそうかも?」と感じている大人の女性のために、ADHDの女性に「あるある」と共感されやすい特徴や、日常生活や仕事で抱えやすい困りごと、そして生きやすくなるためのヒントについて詳しく解説します。自分自身をより深く理解し、より快適な毎日を送るための手がかりを見つけていただければ幸いです。

目次

大人のADHD女性に多いあるある特徴・症状

ADHDの主な特性は、「不注意」「衝動性」「多動性」ですが、これらの現れ方は性別や年齢、個人の性格によって大きく異なります。特に女性の場合、幼少期に多動性が目立たなかったり、社会生活の中で適応しようと努力したりすることで、診断に至るのが遅れるケースが多く見られます。ここでは、大人のADHD女性が経験しやすい「あるある」な特徴や症状を、具体的なエピソードを交えながら見ていきましょう。

不注意に関するあるある

ADHDの女性に最も多く見られるとされるのが、不注意優勢型に近い特性です。これは、いわゆる「うっかり」「ぼんやり」といった形で現れやすいものです。

  • 物の紛失・置き忘れが日常茶飯事: 財布、鍵、スマホ、書類…大切なものほどなぜか見当たらない。さっきまで手に持っていたはずなのに、どこに置いたか思い出せない。探し物に多くの時間を費やしてしまう。
  • 時間管理が苦手でいつも時間に追われている: 締め切りや約束の時間を意識しているつもりでも、気づけばギリギリか遅刻寸前。「あと5分だけ」が積み重なって大幅に遅れてしまう。「急げば間に合うだろう」と根拠なく楽観視してしまうこともある。
  • 集中力が続かず、気が散りやすい: 一つの作業に集中しようとしても、他のことが気になったり、関係ない考えが頭に浮かんだりして、なかなか進まない。周囲の音や些細な変化にも注意が向きやすい。
  • 作業を最後までやり遂げられない: 複数のタスクを同時に始めたり、新しいアイデアに飛びついたりするのは得意でも、飽きっぽさや持続力のなさから、どれも中途半端になってしまいがち。後片付けも苦手で、作業場所が散らかりやすい。
  • 話を聞き漏らしたり、指示を理解できなかったりする: 会話中に他のことに注意が向いてしまい、相手の話の内容を把握できていないことがある。特に口頭での指示は一度で覚えられず、何度も聞き返したり、間違えたりしてしまう。
  • 細かいミスが多い: 書類の誤字脱字、計算間違い、入力ミスなど、注意していれば防げそうなミスを繰り返してしまう。「詰めが甘い」と言われたり、自分でも「どうしてこんな簡単なことができないんだろう」と落ち込んだりする。
  • 片付けや整理整頓が苦手: どこから手をつけて良いか分からず、物があふれてしまう。一時的に片付けてもすぐに元通りになり、自分でも探し物が多くて困っている。必要な物と不要な物の区別がつけにくく、物を捨てられないことも。
  • 忘れ物・二度手間が多い: 買い物リストを忘れて余計なものを買ったり、必要な書類を家に忘れてきたり。確認を怠ることで、後からやり直しが必要になるケースが多い。

衝動性に関するあるある

衝動性というと、感情的に怒鳴ったりするイメージがあるかもしれませんが、女性の場合は内向的な衝動性として現れることもあります。

  • 衝動買いをして後から後悔する: 欲しいと思ったものを深く考えずに買ってしまう。セール品や限定品に弱く、衝動的に契約してしまったりすることも。「なんであんなもの買ってしまったんだろう…」と自己嫌悪に陥る。
  • 思いついたことをすぐに口にしてしまう: 場をわきまえずに発言してしまい、人間関係で失敗することがある。後から「言うべきじゃなかった」と反省する。
  • イライラしたり、感情的に反応したりしやすい: 些細なことで感情的になり、怒りや不満をストレートに表現してしまいがち。感情の波が大きく、気分にムラがあるように見えることも。
  • 順番を待つのが苦手で、会話を遮ってしまう: 相手の話が終わる前に次の発言をしてしまったり、会話の途中で関係ない話題を振ってしまったりする。
  • 計画性なく行動し、後から困る: 準備や下調べをせずに見切り発車で行動し、途中で問題に直面することが多い。先のことを予測して行動するのが苦手。
  • 新しいことに飛びつきやすいが、すぐに飽きる: 新しい趣味や仕事に興味を持つとすぐに始めたがるが、継続することが難しい。

多動性に関するあるある

男性では落ち着きのなさや動き回る行動として現れやすい多動性ですが、女性の場合、内的な多動性として現れることが多いと言われています。

  • 頭の中で常に考え事が巡っている: アイデアや心配事が次々と頭に浮かび、思考が止まらない。夜眠りにつくのが難しくなることもある。
  • じっとしているのが苦手で、そわそわする: 会議中やじっと座っているべき場面で、貧乏ゆすりをしたり、手や足をいじったり、体の一部を動かしてしまう。
  • 落ち着きがなく、様々な場所に移動してしまう: 家の中でも部屋から部屋へ移動したり、用もないのに立ち上がったり座ったりを繰り返す。
  • 過度に活動的で、疲れ果ててしまう: エネルギーが一時的に爆発的に高まり、色々なことを一気に片付けようとするが、その後に燃え尽きて疲労困憊してしまう。
  • おしゃべりで、早口になることがある: 思考のスピードに言葉が追いつかず、一方的にしゃべり続けたり、話があちこちに飛んだりする。

気分変動・人間関係に関するあるある

ADHDの特性は、感情のコントロールや対人関係にも影響を及ぼしやすいです。

  • 感情の起伏が激しい: 気分がコロコロ変わりやすく、ちょっとしたことでひどく落ち込んだり、逆にハイになったりする。PMDD(月経前不快気分障害)など、ホルモンバランスの影響を受けやすいことも指摘されています。
  • 他人の評価が気になりすぎる: 周囲からどう見られているかを過剰に気にしてしまい、自分を偽ったり、無理をして周りに合わせようとしたりする(カモフラージュ)。
  • 人との距離感が掴みにくい: 初対面の人に馴れ馴れしく接してしまったり、逆に打ち解けるのに時間がかかったり。親しい間柄でも、言動が配慮に欠けると思われたり、感情的なぶつかり合いが多くなったりすることも。
  • 人間関係でトラブルになりやすい: 衝動的な発言や不注意による誤解から、友人や職場の同僚、家族との関係がうまくいかなくなることがある。「悪気はないんだけどね…」と言われがちだが、繰り返すことで自信を失う。
  • 集団行動が苦手で、孤立しやすいと感じる: チームワークを必要とされる場面で、自分のペースで行動できないことや、コミュニケーションの難しさから浮いてしまうように感じることがある。
  • 疲労困憊しやすい: 特性のせいで常に脳や神経をフル稼働させているような状態になりやすく、些細なことでもエネルギーを消耗してしまう。そのため、慢性的な疲労感を抱えやすい。

コミュニケーション・話し方に関するあるある

  • 話があちこちに飛び、結論が見えにくい: 頭の中で次々と関連する(ように思える)ことが浮かぶため、話の筋道が立てられず、聞き手は何が言いたいのか分かりにくいと感じることがある。
  • 人の話を最後まで聞けない: 衝動性から、相手の話が終わる前に自分の言いたいことを話し始めてしまう。
  • 話に具体性が欠け、抽象的になりがち: 状況をうまく整理して説明するのが苦手で、「あれ」「それ」といった指示代名詞が多くなり、相手に伝わりにくいことがある。
  • 冗談や皮肉を額面通りに受け取ってしまう: 言葉の裏にある意図を読み取るのが苦手で、コミュニケーションのニュアンスを理解するのが難しいことがある。
  • 思ったことをストレートに言いすぎてしまう: 悪気はないのに、不用意な一言で相手を傷つけてしまうことがある。

これらの「あるある」は、ADHDの特性が日常生活の様々な側面に影響していることを示しています。これらの経験は、単なる「だらしない」「抜けている」「気分屋」といったレッテルではなく、脳の機能的な特性から来ている可能性があることを理解することが、自分自身を受け入れる第一歩となります。

なぜ女性のADHDは見過ごされやすいのか

ADHDは男性の方が診断される割合が高い傾向がありますが、これは男性に比べて女性のADHDが「見過ごされやすい」ことが一因として考えられています。その背景には、特性の現れ方の違いや、社会的な期待が影響している可能性があります。

多動性や衝動性が目立ちにくい傾向

ADHDの診断基準では、幼少期からの多動性や衝動性が重視される側面があります。しかし、女性の場合、これらの特性が外向的な形で現れにくい傾向があります。

  • 内向的な多動: 男性が体を動かす多動を示すことが多いのに対し、女性は頭の中が常に忙しく回転している、おしゃべりが止まらない、といった内向的・言語的な多動として現れることがあります。これは学校や職場で問題行動として捉えられにくいため、見過ごされがちです。
  • 衝動性の抑制: 女性は社会的な期待から、感情や行動の衝動を抑え込もうとする傾向が強い場合があります。その結果、衝動的な行動が表面化しにくく、診断につながりにくいことがあります。しかし、この抑制は内的な葛藤やストレスにつながりやすく、後述する二次障害のリスクを高めることにもなります。

周囲に合わせようとする努力(カモフラージュ)

多くの女性は、幼い頃から「おとなしくしなさい」「みんなと仲良くしなさい」「ちゃんとしなさい」といった形で、社会的な規範や期待に沿うように教えられて育ちます。ADHDの特性を持つ女性の中には、これらの期待に応えようと並外れた努力をする人が多くいます。これを「カモフラージュ(擬態)」と呼びます。

  • 完璧主義に見える内なる混乱: 物事を完璧にこなそうと過剰な努力をしたり、失敗を恐れて何度も確認したりすることで、ADHDの不注意特性を隠そうとします。外見上は「しっかり者」「几帳面」に見えるかもしれませんが、その内側では膨大なエネルギーを使って混乱を抑え込んでいる状態です。
  • 「普通」を装う疲弊: 周囲に合わせて「普通」であろうとすることで、本来の自分を抑圧し、常に緊張状態に置かれます。これにより、精神的な疲弊が蓄積し、うつ病や不安障害などの二次障害を発症しやすくなります。
  • 困り事を隠してしまう: 失敗やミスを指摘されることへの恐れから、困っていることを周囲に相談せず、一人で抱え込んでしまう傾向があります。「みんなできているのに、なぜ私だけできないんだろう」と自己肯定感が低くなりやすいです。

このような特性の現れ方の違いやカモフラージュの努力により、女性のADHDは学校生活や思春期には大きな問題として表面化せず、成人して社会に出たり、結婚・出産を経て家庭での役割が増えたりした際に、それまでのやり方では立ち行かなくなり、初めて困難を感じて医療機関を受診するケースが多くなります。

ADHD女性が抱えやすい困りごと(仕事・家庭生活)

ADHDの特性は、社会生活における様々な場面で困難を引き起こす可能性があります。特に、複数の役割を同時にこなす必要のある仕事や家庭生活では、その影響が顕著に現れやすいです。

仕事での困りごと

  • 時間管理・納期管理の失敗: 納期が迫っているのに別の作業に手をつけてしまったり、作業時間の見積もりが甘かったりして、納期に間に合わない、あるいは徹夜してなんとか間に合わせるといった状況になりやすい。
  • マルチタスク処理の困難: 複数の業務を同時にこなすのが苦手で、何から手をつけて良いか分からなくなったり、優先順位をつけるのが難しかったりする。一つの作業に集中しすぎて、他の重要なタスクを忘れてしまうこともある。
  • 書類やデータの紛失: 大切な書類をどこに置いたか忘れたり、パソコンのデータを整理できずに見失ったり。必要な情報にすぐにアクセスできず、業務効率が低下する。
  • 会議や研修での集中困難: 長時間の会議や座学での研修中、話に集中できず、内容を把握できないことがある。
  • 対人関係のトラブル: 衝動的な発言や、報連相(報告・連絡・相談)の漏れ、期日管理の甘さなどから、同僚や上司との関係がうまくいかなくなることがある。協調性が求められる場面での立ち振る舞いに悩むことも。
  • ミスの繰り返しと評価への影響: 不注意による細かいミスを繰り返すことで、周囲からの信頼を得にくくなったり、評価に影響したりする。
  • 飽きっぽさによる転職の繰り返し: 一つの仕事に長く集中するのが難しく、飽きてしまったり、困難に直面するとすぐに辞めたくなったりする。結果として転職を繰り返し、キャリアが安定しにくい。

家庭生活・家事での困りごと

  • 片付けられない・家が散らかる: どこから手をつけて良いか分からず、物があふれてしまう。床に物を直置きしてしまい、生活空間が狭くなったり、探し物が増えたりする。
  • 料理や食事の準備の難しさ: 複数の工程を同時に進めるのが苦手だったり、段取りが悪かったりして、料理に時間がかかったり、失敗したりしやすい。食材を腐らせてしまうこともある。
  • 時間管理の困難(家事・育児): 決まった時間に家事をこなすのが難しく、後回しにしてしまいがち。子供の保育園や学校の準備、習い事の送迎など、時間通りに行動することが求められる場面で困難を感じる。
  • 請求書や公共料金の支払いの遅延: 郵送されてきた請求書を紛失したり、支払い期限を忘れたりして、滞納してしまうことがある。
  • 衝動買いによる家計への影響: 衝動買いを抑えられず、予算オーバーしてしまったり、不要なものを溜め込んでしまったりする。
  • 育児の困難: 子供の世話や身の回りのこと、宿題を見るなどが計画通りに進められず、子供にイライラしてしまったり、自己嫌悪に陥ったりする。他の親との比較で落ち込むことも多い。
  • 家族との衝突: 不注意によるミスの繰り返し、衝動的な言動、家事の分担問題などから、パートナーや子供、親との関係が悪化することがある。「なんで言った通りにできないの!」「いい加減にして!」と責められることも。

併存しやすい症状・二次障害

ADHDの特性を抱えながら、診断や適切なサポートがないまま社会生活を送っていると、様々なストレスが蓄積し、他の精神的な問題を併発しやすくなります。これを二次障害と呼びます。

  • うつ病・適応障害: 「どうして自分は人並みにできないんだろう」という自己肯定感の低下や、仕事や人間関係の失敗体験が重なることで、うつ病や適応障害を発症することがあります。特に女性は感情を内に溜め込みやすく、うつ病になりやすい傾向があります。
  • 不安障害: 失敗への恐れ、他人からの評価への過度な懸念、先の見えない不安などから、全般性不安障害や社交不安障害などを併発しやすいです。
  • 摂食障害: ストレスや感情のコントロールの困難さから、過食や拒食といった摂食障害につながるケースも報告されています。衝動性が関与している可能性もあります。
  • 物質依存・行動嗜癖: アルコールや薬物への依存、買い物依存、ギャンブル依存など、衝動性のコントロールの困難さから、特定の物質や行動に依存してしまうリスクがあります。
  • PMS/PMDDの悪化: 女性ホルモンの変動(特に生理前)によって、ADHDの不注意や衝動性、感情の不安定さが増強されることがあります。これはPMDD(月経前不快気分障害)の症状と重なる部分が多く、診断や対処を複雑にする要因となります。
  • 睡眠障害: 頭の中が常に忙しく、考え事が止まらないため、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりといった睡眠の悩みを抱えやすいです。

これらの困りごとや二次障害は、ADHDの特性そのものだけでなく、周囲の理解不足や適切なサポートが得られない環境によって悪化することが多いです。「努力が足りない」「甘えている」と自己否定に陥る前に、専門家の助けを求めることが重要です。

ADHDかも?と感じたら|診断と相談のステップ

これまで見てきた「あるある」に当てはまるものが多く、「もしかしたら自分もADHDなのかもしれない」と感じた場合、次に考えるべきは診断と相談のステップです。自己判断だけで決めつけず、専門家の意見を求めることが大切です。

自己診断の限界

インターネットや書籍にはADHDに関する情報があふれており、チェックリストなども多数存在します。これらの情報を参考に、自分自身に当てはまる特性が多いと感じることは、自己理解の第一歩として有効です。しかし、自己診断には限界があります。

  • 専門的な知識の不足: ADHDの診断は、発達の歴史、現在の症状、生活上の困難さ、他の精神疾患の可能性などを総合的に判断して行われます。一般の人がこれらの要素を正確に評価することは困難です。
  • 他の疾患との区別: ADHDと似たような症状を示す精神疾患は他にも多くあります(例: うつ病、双極性障害、不安障害、適応障害、強迫性障害など)。これらの疾患とADHDを見分けるには、専門的な知識と経験が必要です。誤った自己診断は、適切な対処を遅らせたり、間違った方向へ導いたりする可能性があります。
  • 客観性の欠如: 自分のことを客観的に評価するのは難しいため、症状を過大評価したり、過小評価したりすることがあります。

したがって、「もしかして」と感じたら、まずは専門の医療機関に相談することを強くお勧めします。

医療機関での診断プロセス

大人のADHDの診断は、通常、精神科や心療内科の医師によって行われます。診断プロセスは医療機関によって異なりますが、一般的には以下のようなステップで進められます。

  1. 予約: 発達障害の診断や治療を行っている精神科・心療内科を探し、予約を取ります。初診の予約が取りにくい場合もあるため、複数の医療機関を検討すると良いでしょう。可能であれば、大人の発達障害や女性のADHDに詳しい医師がいるか確認すると安心です。
  2. 予診・問診: 受診の前に、現在の困りごとや生育歴に関する問診票の記入を求められることが多いです。診察時には、医師がこれらの情報をもとに、幼少期からの特性、学業や仕事での状況、家庭生活、対人関係、現在の症状や困りごとについて詳しく聞き取ります。可能であれば、子供の頃の通知表や母子手帳、親御さんからの情報提供があると、診断の参考になることがあります。
  3. 心理検査(必要に応じて): ADHDの診断を補助するために、知能検査(WAIS-IVなど)や性格検査、ADHDの特性を評価する質問紙などが実施されることがあります。これらの検査は、ADHDの特性の程度や、得意なこと・苦手なことの傾向を把握するのに役立ちます。
  4. 他の疾患との鑑別: 医師は、問診や検査結果から、うつ病や双極性障害、不安障害など、他の精神疾患の可能性がないかを確認します。
  5. 診断と説明: これまでの情報をもとに、医師がADHDであるかどうかの診断を下します。診断がついた場合は、特性や今後の治療・サポートについて説明があります。診断がつかない場合でも、困りごとに対してどのような対処法があるかのアドバイスが得られるでしょう。

診断プロセスは一度の診察で終わらず、数回にわたる場合もあります。診断を受けること自体に抵抗を感じるかもしれませんが、自分の特性を正しく理解することは、適切な対処法を見つけ、生きづらさを軽減するための重要なステップとなります。

どこに相談すれば良いか

ADHDかもしれないと感じた際に相談できる場所はいくつかあります。

  • 精神科・心療内科: 大人のADHDの診断と治療の中心となる医療機関です。発達障害専門外来を設けている病院もあります。
  • 発達障害者支援センター: 地域の発達障害のある方やその家族からの相談に応じ、様々な支援機関と連携を取りながらサポートを提供する公的な機関です。医療機関への受診を迷っている段階でも相談できます。
  • 地域包括支援センター: 高齢者向けの窓口ですが、一部の自治体では年齢に関わらず発達障害を含む福祉に関する相談を受け付けている場合があります。
  • カウンセリング機関: 臨床心理士や公認心理師などがカウンセリングを行います。診断はできませんが、特性からくる困りごとに対する対処法を一緒に考えたり、感情の整理をサポートしたりしてくれます。
  • 職場の健康相談窓口・産業医: 勤めている会社に相談窓口がある場合、そこで相談することも可能です。守秘義務があるので安心して話せるでしょう。

いきなり医療機関を受診するのはハードルが高いと感じる場合は、まずは地域の相談支援センターなどに連絡してみるのも良いでしょう。自分の状況や希望を伝え、適切な相談先を紹介してもらうことができます。

大人のADHD女性が生きやすくなるためのヒント

ADHDは生まれつきの特性であり、完治するものではありません。しかし、自分の特性を理解し、適切な対処法を取り入れたり、周囲のサポートを得たりすることで、困りごとを減らし、より自分らしく生きやすくなることは十分に可能です。

環境調整・工夫の具体例

日常生活や仕事における困りごとに対して、環境を調整したり、工夫を取り入れたりすることは非常に有効です。

  • タスク管理の見える化:
    • ToDoリストの作成: やるべきことを全て書き出し、完了したらチェックを入れます。リストを見える場所に貼ったり、スマホのアプリを活用したりすると忘れにくいです。
    • 作業の細分化: 大きなタスクは小さなステップに分解し、一つずつクリアしていくことで達成感を得やすくし、途中で挫折するのを防ぎます。
    • 期日の設定: 各タスクに具体的な締め切りや目標時間を設定します。
  • 時間管理の工夫:
    • タイマーの活用: 作業時間や休憩時間をタイマーで区切ります。集中力が続かない場合は、短時間集中(例: ポモドーロテクニック)を取り入れると効果的なことがあります。
    • スケジュール帳やカレンダーの活用: アポイントメントや締め切りだけでなく、移動時間や休憩時間なども含めて具体的に書き込みます。色分けしたり、アラート機能を活用したりするのも有効です。
    • バッファタイムの設定: 予定と予定の間に余裕を持たせることで、遅刻や焦りを防ぎます。
  • 整理整頓の工夫:
    • 物の定位置を決める: よく使う物(鍵、財布、充電器など)は必ず置く場所を決め、そこに戻す習慣をつけます。
    • ワンアクション収納: 物をしまう際に、フタを開ける、扉を開けるといったアクションをできるだけ減らします。例えば、よく使う書類は投げ込み式のファイルボックスに入れるなど。
    • 定期的な片付けタイム: 毎日5分でも良いので、その日に使ったものを元の場所に戻す時間を作ります。週末にまとめて行うよりも、こまめに行う方が負担が少ない場合があります。
    • 思い切って物を減らす: 不要な物が多いと片付けが難しくなります。定期的に物を整理し、手放すことも検討します。
  • 不注意ミスへの対策:
    • チェックリストの作成: よくミスをする作業(例: メール送信前の確認、戸締まり、持ち物チェック)について、確認項目をリスト化し、毎回チェックします。
    • ダブルチェック: 可能な場合は、重要な作業は誰かに見てもらうか、時間を置いて自分で見直します。
    • 自動化・仕組み化: 忘れがちな作業は、リマインダーアプリを使ったり、定期購入サービスを利用したりするなど、自動化できる仕組みを取り入れます。
  • 集中力維持の工夫:
    • 作業環境の整備: 周囲の刺激が少ない静かな場所で作業したり、集中を妨げる物を視界に入れないようにしたりします。ノイズキャンセリングイヤホンなども有効です。
    • 短い休憩を挟む: 長時間集中するのが難しい場合は、こまめに休憩を挟み、脳をリフレッシュさせます。
    • 興味のあることから始める: 苦手な作業に取りかかるのが難しい場合は、比較的興味を持てる簡単な作業から始め、勢いをつけるのも一つの方法です。

これらの工夫はあくまで一例であり、効果は人それぞれです。自分に合った方法を見つけるために、色々なやり方を試してみることが大切です。

適切なサポートや治療法

環境調整や工夫だけでは困難が解消されない場合、専門家によるサポートや治療が有効な場合があります。

  • 薬物療法: ADHDの症状を改善する薬(主にコンサータ、ストラテラ、インチュニブなど)があります。これらの薬は、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の働きを調整することで、不注意や衝動性、多動性を軽減する効果が期待できます。効果や副作用には個人差があり、医師の診断に基づき、慎重に検討・処方されます。特に成人女性の場合、PMS/PMDDの症状との関連を考慮して、生理周期に合わせた薬の調整が必要となることもあります。
  • 精神療法(カウンセリング):
    • 認知行動療法 (CBT): ADHDからくる否定的な考え方や、衝動的な行動パターンを認識し、より適応的な考え方や行動を身につけることを目指します。問題解決スキルやストレス対処法の習得にも役立ちます。
    • ADHDに特化した心理教育: ADHDの特性について正しく理解し、自分自身の強みや弱みを知ることで、自己肯定感を高め、適切な対処法を学ぶことができます。
  • ペアレントトレーニング: ADHDの特性を持つ親御さん向けに、子供との関わり方や、育児における困りごとへの対処法を学ぶプログラムです。
  • 就労支援: ADHDの特性に合った仕事探しや、職場で困らないためのスキル習得、職場環境の調整についてサポートを受けることができます。
  • 自助グループ: 同じADHDの当事者同士が集まり、経験や悩みを共有したり、情報交換をしたりする場です。一人ではないと感じられ、勇気づけられることがあります。

これらのサポートや治療を組み合わせることで、ADHDの特性とよりうまく付き合い、生活の質を高めることが期待できます。どの方法が自分に合っているか、医師や専門家と相談しながら進めることが重要です。

周囲との理解を深めるコミュニケーション

ADHDの特性は、時に周囲との関係に摩擦を生むことがあります。家族やパートナー、職場の同僚に自身の特性について理解してもらうことは、サポートを得たり、誤解を減らしたりする上で非常に有効です。

  • 特性について説明する: ADHDは脳の機能的な特性であり、本人の「怠慢」や「努力不足」ではないことを、分かりやすい言葉で説明します。書籍や信頼できる情報源を参考にしてもらうのも良いでしょう。
  • 具体的な困りごとを伝える: 「忘れっぽいんです」と言うだけでなく、「大切な書類をよく見失うので、この書類はここに置いてもらえませんか?」のように、具体的な困りごとと、それに対する具体的な要望を伝えます。
  • ヘルプを求める勇気: 苦手なことや一人では難しいことについて、素直に「手伝ってもらえませんか?」「教えてもらえませんか?」とヘルプを求めることも大切です。
  • 感謝を伝える: サポートしてもらったことに対して、感謝の気持ちをきちんと伝えます。
  • 境界線を設定する: 全てを周囲に合わせようとせず、自分ができることと難しいことを明確にし、無理のない範囲で協力関係を築きます。

ただし、周囲にADHDの特性を理解してもらうのは簡単なことではない場合もあります。必ずしも全ての人が理解してくれるわけではないことを心に留めておき、無理強いはしないことも大切です。理解を示してくれる人との関係を大切にし、孤立しないように心がけましょう。

また、PMS/PMDDとADHDの症状の関連について知っておくことも、女性のADHDにとって重要な自己理解の一つです。生理周期によって症状の波があることを自分自身が把握し、パートナーや家族にも共有することで、感情的なぶつかり合いを減らすことにつながる場合があります。必要に応じて婦人科や精神科で相談し、PMS/PMDDとADHDの両方の観点から対処法を検討することも有効です。

まとめ|ありのままの自分と向き合うために

大人のADHD女性にありがちな「あるある」についてご紹介しました。忘れ物が多い、時間管理が苦手、衝動買いをしてしまう、感情の起伏が激しい、片付けられない…これらの経験は、決してあなたの性格の問題や努力不足ではなく、ADHDという脳の機能的な特性から来ている可能性があります。

女性のADHDは、特性が目立ちにくかったり、周囲に合わせようと無理な努力をしたりすることで、見過ごされやすい現状があります。その結果、生きづらさを感じながら一人で悩み、うつ病や不安障害といった二次障害を併発してしまうケースも少なくありません。

もし、この記事を読んで「これって自分のことかも?」と感じたなら、それは自分自身の特性に気づく大切な一歩です。自己診断だけで決めつけず、まずは専門の医療機関や相談支援センターに相談してみることをお勧めします。診断を受けることで、自分の困りごとの背景にある特性を正しく理解でき、適切なサポートや治療につながる道が開けます。

ADHDは治る病気ではありませんが、自分の特性を受け入れ、環境を調整したり、具体的な工夫を取り入れたり、必要に応じて専門家のサポートを得たりすることで、生活上の困難を軽減し、自分らしく生きやすくなることは十分に可能です。また、自分の苦手なことだけでなく、ADHDの特性に伴う強み(例: 発想力豊か、行動力がある、好きなことへの集中力が高いなど)にも目を向け、それを活かせる道を探すことも大切です。

ありのままの自分自身と向き合い、特性を理解することは、より快適で充実した人生を送るための大きな力となるでしょう。一人で抱え込まず、サポートを求める勇気を持つことが、新しい扉を開く鍵となります。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としたものであり、医療的なアドバイスや診断、治療を代替するものではありません。自身の状態について懸念がある場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。

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