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アスペルガー症候群はもうない?ASDとの違いをわかりやすく解説

近年、発達障害に関する情報に触れる機会が増え、「ASD」や「アスペルガー症候群」といった言葉を耳にすることがあるかもしれません。かつては異なる診断名として用いられていたこれらは、現在ではどのように位置づけられているのでしょうか。また、両者にはどのような違いがあり、どのような共通の特性があるのでしょうか。

この記事では、ASDとアスペルガー症候群の診断名の変遷とその背景を解説します。さらに、共通して見られるコミュニケーションやこだわりに関する特性、ADHDとの違い、大人のASDの特徴、そして診断や相談を検討する際のポイントについても詳しくご紹介します。この記事を通して、「asd アスペルガー 違い」に関する疑問を解消し、より深く理解を深める手助けになれば幸いです。

目次

ASDとアスペルガー症候群、診断名の違いとは?

かつて発達障害の一種として広く知られていた「アスペルガー症候群」という診断名は、現在では公式な診断基準上は用いられていません。代わりに、「自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)」という診断名に統一されています。この変更には、診断基準の考え方の変化が大きく関わっています。

最新の診断基準DSM-5における位置づけ

精神疾患の診断基準として世界的に広く用いられているものに、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)』があります。このマニュアルは改訂を重ねており、2013年に発行された第5版、通称「DSM-5」において、診断基準が大きく見直されました。

DSM-5では、それまで個別の診断名として扱われていた「自閉性障害」「アスペルガー症候群」「特定不能の広汎性発達障害」「小児期崩壊性障害」などが包括され、「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの診断名にまとめられました。「スペクトラム(Spectrum)」とは、「連続体」や「グラデーション」といった意味を持ちます。これは、自閉症の特性が、一人ひとりの個人によってその現れ方や程度が多様であるという考え方を反映しています。特性の現れ方は、非常に目立つものから、一見気づきにくい軽度なものまで幅広く存在します。

なぜ診断名がASDに統一されたのか

診断名がASDに統一された背景には、主に以下の二つの理由があります。

一つ目は、これらの診断が持つ特性の連続性を重視するためです。以前は個別の診断名が用いられていましたが、実際にはこれらの障害特性は明確に線引きできるものではなく、連続したグラデーションのように繋がっていると考えられてきました。例えば、知的な遅れがない自閉性障害の人と、こだわりが非常に強いアスペルガー症候群の人との間には、診断名ほどの大きな隔たりがないケースが多く見られました。スペクトラムという考え方を採用することで、一人ひとりの特性の多様性をより適切に捉えることができるようになりました。

二つ目は、診断の一貫性と正確性の向上です。これまでの診断基準では、診断医によって同じ特性を持つ人でも診断名が異なるなど、診断にばらつきが生じることがありました。DSM-5で基準を統合し、診断項目をより明確にすることで、診断の信頼性を高めることが期待されています。

したがって、現在「アスペルガー症候群」という診断名が用いられることは公式な場では少なくなりましたが、ASDに含まれる特性の一つとして、あるいは以前の診断基準に基づいた診断名として、広く認知されています。特に、「知的な遅れがない自閉スペクトラム症」を指す場合に、かつてのアスペルガー症候群のイメージとして語られることがあります。

ASDとアスペルガー症候群の共通点と主な特性

前述の通り、アスペルガー症候群は現在ASDに含まれる概念です。そのため、アスペルガー症候群と考えられていた特性は、ASDの主な特性として共通して見られます。ASDの診断基準では、主に以下の2つの領域における特性が定義されています。

1. 社会的コミュニケーションおよび相互作用における持続的な欠陥
2. 限定された反復的な様式の行動、興味、活動

これらの特性は、程度の差こそあれ、ASDのある多くの人に見られる共通点です。

コミュニケーションと相互作用の困難

ASDのある人は、言葉や非言語的なコミュニケーションにおいて、独特なスタイルを持つことがあります。これは、単に話し方が苦手というだけではなく、人との関わり方そのものにおいて、他の人とは異なる感じ方や考え方をする傾向があるためです。

具体的には、以下のような特性が見られることがあります。

  • 言葉を字義通りに受け取る: 比喩や皮肉、社交辞令などが理解しにくいことがあります。「ちょっとそこまで」と言われた際に、本当に「ちょっと」の距離だと思い込んでしまうなど、言葉の裏にある意図やニュアンスを汲み取ることが難しい場合があります。
  • 一方的な話し方: 自分が興味のある話題について、相手の関心や反応に関わらず、一方的に話し続けてしまうことがあります。また、会話のキャッチボールが苦手で、相手の話に適切に応答したり、話題を切り替えたりするのが難しい場合があります。
  • 非言語コミュニケーションの困難: 表情、声のトーン、ジェスチャー、視線などから相手の感情や意図を読み取ることが苦手な場合があります。また、自分の感情を表情や声に出して表現することも苦手なことがあります。例えば、嬉しくても表情に出なかったり、困っているのに助けを求められなかったりします。
  • 暗黙のルールの理解困難: 社会生活における暗黙のルールや常識が理解しにくいことがあります。例えば、初対面の人への話し方、公共の場での振る舞い、友人関係における適切な距離感などが分からず、周囲との摩擦を生むことがあります。
  • 感情の共有や共感の難しさ: 相手の気持ちを推測したり、共感したりすることが難しい場合があります。これにより、人間関係を築く上で困難を感じることがあります。ただし、これは「感情がない」ということではなく、感情の感じ方や表現の仕方が異なるためです。

これらのコミュニケーションや相互作用における困難は、対人関係において誤解やトラブルの原因となることがあります。

限定された興味・こだわり、反復行動

ASDのある人は、特定の物事に対して非常に強い興味や関心を持ち、徹底的に追求する傾向があります。この「こだわり」は、その人の強みとなることもあれば、日常生活に支障をきたすこともあります。

具体的な特性としては、以下のようなものがあります。

  • 特定の分野への強い興味: 恐竜、電車、昆虫、特定の歴史上の人物など、ある特定の分野に対して強い興味を持ち、その知識を深く掘り下げます。他の人から見ると非常にマニアックに思えることもあります。この興味の対象は、年齢や発達段階によって変化することもありますが、一度興味を持つと非常に集中して取り組みます。
  • 反復的な行動や様式: 特定の行動や日課に対して強いこだわりを持ち、変化を嫌う傾向があります。例えば、毎日同じ道を歩く、同じ時間に同じ食事をとる、特定の服しか着ないなど、決まったパターンを好みます。予期せぬ変化に対して強い不安を感じたり、混乱したりすることがあります。
  • 物事の順序や手順へのこだわり: 物事を行う際に、自分なりの厳格な順序や手順があり、それが崩れると強い抵抗を感じることがあります。例えば、着替えの順番、片付けの方法、作業の進め方など、細部にわたってこだわりを持つことがあります。
  • 物の配置や収集へのこだわり: 特定の物を特定の場所に置くことにこだわったり、同じ種類の物を収集することに強い関心を示したりします。物の配置が少しでも変わると落ち着かなくなったり、収集した物を厳格に分類・整理したりします。
  • 常同行動: 体を揺らす、手をひらひらさせる、同じ言葉やフレーズを繰り返す(エコラリア)など、反復的な体の動きや発声が見られることがあります。これらの行動は、緊張や不安を和らげたり、感覚的な刺激を求めたりするために行われると考えられています。

これらのこだわりや反復行動は、一見奇妙に見えることもありますが、ASDのある人にとっては安心感を得るための重要な手段であったり、興味を追求する上での強力な原動力となったりします。しかし、あまりにも強いこだわりは、社会生活を送る上での柔軟性を妨げ、周囲との関係に影響を与えることもあります。

感覚過敏または感覚鈍麻

ASDのある人は、感覚の受け取り方が他の人とは異なる場合があります。特定の感覚刺激に対して過敏であったり(感覚過敏)、逆に鈍麻であったり(感覚鈍麻)、両方が混在したりすることがあります。この感覚特性は、日常生活のあらゆる側面に影響を与えます。

例としては、以下のようなものがあります。

  • 聴覚過敏: 特定の音(掃除機の音、赤ちゃんの泣き声、特定の機械音など)を非常に不快に感じたり、些細な音でも集中を妨げられたりします。複数の音が同時に聞こえると、必要な音を聞き分けるのが困難になることもあります。
  • 視覚過敏: 特定の光(蛍光灯のちらつき、強い日差し)を不快に感じたり、物の細かい部分や模様が目につきすぎて全体を把握するのが難しくなったりします。色の違いに非常に敏感な場合もあります。
  • 触覚過敏: 特定の素材の服を着るのを嫌がったり、タグが当たるのが我慢できなかったり、人に軽く触られるのを嫌がったりします。逆に、特定の触感を強く求め、常に何かを触っていたいと感じる場合もあります。
  • 嗅覚・味覚過敏: 特定の匂いを非常に不快に感じたり、特定の味や食感を極端に嫌がったりします。これにより、食べられるものが限られる偏食に繋がることもあります。
  • 前庭感覚・固有受容感覚: バランス感覚や体の位置感覚に特徴がある場合があります。例えば、めまいを感じやすかったり、逆に極端に高いところが好きだったり、体を激しく動かすことを好んだりします。また、自分の体の強さを調整するのが苦手で、物を壊してしまったり、人に強く触れてしまったりすることがあります。

これらの感覚特性は、日常生活におけるストレスの大きな原因となることがあります。特定の環境(騒がしい場所、明るすぎる場所、人が密集している場所など)で過ごすことが困難になり、学校や職場、外出などで困りごとが生じやすくなります。

知的な遅れの有無による違い(旧診断との関連)

旧診断基準における「アスペルガー症候群」は、知的な遅れがない自閉性障害の一種と位置づけられていました。一方、「自閉性障害」は、知的な遅れを伴うケースが多く含まれていました。この「知的な遅れの有無」が、両者を区別する大きなポイントでした。

現在、ASDに統一された診断基準では、知的な発達の程度は診断名そのものには含まれません。ASDと診断された上で、「知的な発達の遅れを伴う」あるいは「知的な発達の遅れを伴わない」といった形で補足されます。

これは、知的な能力のレベルに関わらず、社会的コミュニケーションや限定された興味・こだわりといった中核的な特性が見られるという考え方に基づいています。知的な発達に遅れがない場合でも、コミュニケーションや対人関係、感覚特性などによって日常生活や社会生活に困難を抱えることは少なくありません。

したがって、現在「asd アスペルガー 違い」という言葉でアスペルガー症候群について言及する際には、かつての「知的な遅れがない自閉スペクトラム症」というニュアンスで使われることが多いと言えるでしょう。

アスペルガー症候群(ASD)の人が抱えやすい日常の困りごと

ASDの特性は、日常生活の様々な場面で困りごとを引き起こす可能性があります。特に、社会生活の中で他の人との関わりや、予測不可能な出来事への対応が求められる場面で顕著になりやすいです。

仕事や対人関係での悩み

職場や友人関係といった対人関係は、ASDのある人にとって特に困難を感じやすい領域です。

  • 職場での困りごと:
    • 曖昧な指示の理解が難しい:「いい感じに」「適当に」といった指示が理解できず、具体的にどうすれば良いか分からなくなる。
    • 報連相(報告・連絡・相談)が苦手:状況を適切に判断し、必要な情報を適切なタイミングで共有することが難しい。
    • 場の空気が読めない:会議中の発言のタイミングを間違えたり、冗談が通じなかったりする。
    • 人間関係の構築が難しい:同僚との雑談に加われなかったり、適切な距離感が分からず孤立したりする。
    • 変化への対応が苦手:部署異動や業務内容の変更、職場のレイアウト変更などで強いストレスを感じる。
    • マルチタスクが苦手:複数の業務を同時にこなしたり、割り込み業務に対応したりするのが難しい。
  • 対人関係での困りごと:
    • 友人を作るのが難しい:共通の話題が見つからなかったり、会話が弾まなかったりする。
    • 人間関係が続かない:無意識のうちに相手を傷つける言動をしてしまったり、関係性を維持するためのコミュニケーションが難しかったりする。
    • 誘いや断り方が分からない:無理な誘いを断れなかったり、逆に誘い方が分からなかったりする。
    • グループ行動が苦手:集団の中での立ち位置や振る舞い方が分からず、居心地の悪さを感じる。

これらの困りごとは、本人の努力不足ではなく、特性からくるものです。周囲の理解や配慮、あるいは本人に合った環境調整によって、これらの困難を軽減できる場合があります。

感覚特性による困りごと

前述の感覚過敏や鈍麻は、生活の様々な場面で直接的な困りごとにつながります。

  • 食事: 特定の食感や匂いがダメで、食べられるものが限られる(偏食)。外食や会食で食べられるものがない。
  • 衣服: 特定の素材が不快で、着られる服が限られる。タグや縫い目が気になって集中できない。
  • 音: 騒がしい場所(電車内、スーパー、オフィスなど)が苦手で、強い疲労を感じる。特定の音が耳障りで耐えられない。
  • 光: 蛍光灯のちらつきや、明るすぎる場所で目が疲れたり、集中力が続かなかったりする。
  • 温度: 極端な暑さや寒さを感じやすく、体温調整が難しい。
  • 混雑: 人が密集している場所が苦手で、強いストレスや不安を感じる。

これらの感覚的な困りごとは、単なる「好き嫌い」や「わがまま」として捉えられがちですが、本人にとっては切実な問題です。ノイズキャンセリングイヤホンを使う、着心地の良い服を選ぶ、休憩できる場所を確保するなど、具体的な対策が必要になります。

アスペルガー症候群(ASD)とADHDの違い

発達障害の中には、ASDの他に「注意欠如・多動症(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)」があります。ASDとADHDは、それぞれ異なる特性を持つ発達障害ですが、一部の特性が似ていたり、両方が併存したりすることもあるため、混同されやすい場合があります。「asd アスペルガー 違い」を考える上で、ADHDとの違いを理解することも重要です。

主な特性の比較(コミュニケーション・こだわり vs 不注意・多動性)

ASDとADHDの主な特性を比較すると、以下のような違いが挙げられます。

特性項目 ASD(アスペルガー症候群に代表される特性) ADHD(注意欠如・多動症)
対人関係 コミュニケーションの質的な問題(言葉の真意理解、空気感など) 一方的に話す、待てない、人の話を遮る、衝動的な言動
興味・活動 限定された特定の興味への強いこだわり、反復行動 興味の対象が移りやすい、飽きっぽい、落ち着きがない
集中力 興味のあることには過集中、それ以外には集中が難しい 不注意(集中力が持続しない、気が散りやすい)
行動 変化を嫌う、決まった手順を好む 多動性(じっとしていられない、動き回る)
衝動性 比較的低い(計画性が高いことも) 高い(考えずに行動してしまう)
感覚特性 感覚過敏・鈍麻など独特の感覚特性がある 通常、感覚特性はASDほど顕著ではない
時間管理・計画 時間の概念が掴みにくい、計画通りに進めるのが難しいことがある 時間管理が苦手、計画を立てたり守ったりするのが難しい

このように、ASDは主に社会的コミュニケーションの困難限定されたこだわりが中核的な特性であるのに対し、ADHDは不注意多動性・衝動性が中核的な特性です。

例えば、会話の場面では、ASDのある人は相手の言葉の裏を読めず、字義通りに受け取って頓珍漢な応答をしてしまうかもしれません。一方、ADHDのある人は、相手の話が終わる前に自分が話したいことを衝動的に口に出してしまったり、会話中に他の刺激に気を取られて上の空になったりするかもしれません。

興味の対象に関しても、ASDのある人は特定の分野に深く没頭し、他のことには見向きもしないことがあります。一方、ADHDのある人は様々なものに興味を持つものの、すぐに飽きてしまい、一つのことを長く続けるのが難しい傾向があります。

ASDとADHDの併存の可能性について

かつては、自閉症とADHDは同時に診断されないと考えられていた時期もありましたが、現在では両方が併存することがあると広く認識されています。DSM-5の診断基準でも、ASDとADHDの併存診断が可能となっています。

ASDとADHDを両方持っている場合、それぞれの特性が複雑に絡み合い、困難さが増すことがあります。例えば、コミュニケーションの苦手さ(ASD)に加えて衝動的な発言(ADHD)が出てしまったり、こだわり(ASD)によって変化を嫌う一方、不注意(ADHD)によって同じ間違いを繰り返してしまったり、といった具合です。

両方の特性を持つ人への支援は、それぞれの特性を理解し、個別に対応していく必要があります。どちらかの特性だけに着目した支援では、十分な効果が得られないことがあります。

軽度のアスペルガー(ASD)に見られる特徴

「軽度のアスペルガー」という表現は、公式な診断名ではありませんが、「知的な遅れがなく、特性が比較的目立ちにくいASD」といったニュアンスで使われることが多いです。このような「軽度」に見える場合でも、本人は日常生活で様々な困りごとを抱えていることがあります。

特性の現れ方は個人差が大きいですが、軽度と言われるASDのある人に見られることがある特徴としては、以下のようなものがあります。

会話や人との距離感の特徴

  • 会話の始め方・終わり方が分からない: 雑談を始めるきっかけが見つけられなかったり、会話をどのように切り上げて良いか分からず、不自然な沈黙になったり急に話を終わらせたりする。
  • 一方的な知識の開陳: 自分が知っている情報や興味のあることについて、相手の反応を見ずに延々と話し続けてしまう。相手がついてきていないことに気づきにくい。
  • 場の空気に合わない発言: その場の話題や雰囲気とは関係のないことを言ったり、不適切と思えるタイミングで発言したりする。
  • 冗談や皮肉が通じない: 言葉を額面通りに受け取るため、相手のユーモアを理解できなかったり、真に受けて混乱したり傷ついたりする。
  • 適切な距離感が分からない: 親しくない相手にも馴れ馴れしく話しかけてしまったり、逆に親しい相手に対してもよそよそしく接してしまったりする。物理的な距離(パーソナルスペース)も、近すぎたり遠すぎたりすることがある。
  • オウム返し: 相手の言葉の一部や全体を無意識に繰り返してしまうことがある(エコラリアの軽度なもの)。
  • 敬語やタメ語の使い分けが苦手: 相手との関係性によって言葉遣いを適切に変えることが難しい。

これらの特徴は、一見すると「少し変わった人」「不器用な人」程度にしか見えないこともあります。しかし、本人はこれらの特性のために、人間関係をスムーズに築くことが難しく、孤独感を感じたり、誤解されたりすることに悩んでいることがあります。

表情や言葉の受け取り方の特徴

  • 表情からの感情の読み取りが苦手: 相手の表情が怒っているのか、悲しんでいるのか、喜んでいるのかといった感情を読み取ることが難しい。そのため、相手が不機嫌になっていることに気づかず、さらに場を悪くしてしまうことがある。
  • 言葉の裏の意味が分からない: 本音と建前、社交辞令、比喩表現、遠回しな言い方などが理解できず、相手の真意が分からない。
  • 自分の感情表現が乏しい: 嬉しい、悲しいといった感情が顔や声に出にくく、周囲からは「何を考えているのか分からない」と思われがち。
  • 白黒思考(ゼロイチ思考): 物事を曖昧な中間色で捉えるのが難しく、「正しいか間違いか」「好きか嫌いか」のように両極端に考えてしまう傾向がある。
  • 視線が合いにくい、または合いすぎる: コミュニケーション中に相手と視線を合わせることが苦手で目が泳いでしまったり、逆に相手の目をじっと見つめすぎてしまったりする。

これらの特性は、他者との円滑なコミュニケーションや相互理解を妨げる要因となります。軽度に見える場合でも、本人にとっては社会の中で生きづらさを感じる大きな原因となることがあります。本人は努力しているのにうまくいかない、なぜ自分だけが周りと違うのか、といった悩みを抱えやすいです。

大人のASD(アスペルガー症候群)の特徴と簡易チェックリスト

ASDは先天的な特性であり、大人になってから「発症する」ものではありません。しかし、幼少期には特性が目立たなかったり、周囲のサポートや環境によって大きな困りごとなく過ごせていたりした場合でも、社会に出てからの複雑な対人関係や環境の変化に適応できず、大人になってから初めてASDの特性に気づくケースが多くあります。「asd アスペルガー 違い」について調べる中で、自分が当てはまるのでは、と感じる方もいるかもしれません。

大人になってから気づくケース

大人になってからASDの特性に気づくきっかけとしては、以下のようなものがあります。

  • 就職・転職: 職場での複雑な人間関係、曖昧な指示への対応、マルチタスクなど、社会的なスキルや柔軟性が求められる場面でうまくいかないことが増える。
  • 結婚・子育て: パートナーや子どもとの関係構築、共同生活、育児における非言語的なコミュニケーションなど、より密接で複雑な関わりの中で困難を感じる。
  • 精神的な不調: 社会生活でのストレスが蓄積し、うつ病や適応障害、不安障害などの二次障害を発症し、医療機関を受診した際にASDの特性が見つかる。
  • 子どもの診断: 自分自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、自分自身の特性に気づく。
  • メディアや書籍の情報: 発達障害に関する情報に触れ、自分自身の幼少期やこれまでの人生で経験してきた困難と共通点が多いことに気づく。

大人になってから自分の特性に気づくことは、それまでの人生で感じてきた「なぜ自分はうまくいかないのだろう」といった疑問や苦しみの理由が分かり、自己理解を深める機会となります。同時に、診断を受けることへの不安や、これまでの人生への後悔など、複雑な感情を抱くこともあります。

簡易チェックリスト(※診断ではありません)

以下のリストは、大人によく見られるASDの特性に関連する項目を挙げたものです。これはあくまで簡易的な自己チェックであり、医学的な診断を行うものではありません。 いくつかの項目に当てはまる場合でも、直ちにASDと診断されるわけではありませんし、専門家による詳細な評価が必要です。

簡易チェックリスト

  • 人との会話で、何を話して良いか分からず困ることがよくある。
  • 相手の冗談や皮肉を真に受けてしまうことがある。
  • 表情や声のトーンから、相手の気持ちを読み取るのが苦手だ。
  • 言葉の裏にある意味や空気を読むのが苦手で、失言してしまうことがある。
  • 曖昧な指示(「適当に」「いい感じに」など)が理解できず、具体的な指示がないと困る。
  • 自分の興味のあることになると、周りが見えなくなるほど集中してしまう。
  • 特定の趣味や関心事に、非常に深く没頭する傾向がある。
  • 日課や手順にこだわりがあり、予定外の変更があると混乱したりイライラしたりする。
  • 特定の音や光、肌触りなどが非常に気になり、不快に感じることがある(感覚過敏)。
  • 逆に、痛みや温度に気づきにくいことがある(感覚鈍麻)。
  • 集団での会話やグループ行動が苦手で、孤立しがちだ。
  • 白黒はっきりさせたい性格で、物事をグレーゾーンで考えるのが難しい。
  • 子供の頃から、友達とうまく遊べなかったり、一人でいることが多かったりした。
  • ルールやマニュアルは厳格に守るべきだと強く思う。
  • 初めての場所や状況に戸惑いやすく、事前に情報がないと不安になる。

これらの項目に多く当てはまり、日常生活や社会生活で困難を感じている場合は、ASDの特性が影響している可能性も考えられます。しかし、繰り返しますが、自己判断はせず、専門機関に相談することが重要です。

診断や相談を検討されている方へ

「asd アスペルガー 違い」について知る中で、自分自身や周囲の人がASDの特性を持っているかもしれない、と感じ、診断や相談を検討したいと思う方もいるかもしれません。発達障害の診断は専門的な知識と経験が必要であり、信頼できる医療機関や専門機関を受診することが大切です。

専門機関の受診について

ASDを含む発達障害の診断は、精神科や心療内科、発達障害専門のクリニックなどで行われます。特に、大人の発達障害を専門とする医療機関も増えています。

受診を検討する際は、以下のような点に注意して情報収集を行うと良いでしょう。

  • 専門性: 発達障害の診断経験が豊富であるか、医師や心理士が発達障害に関する専門知識を持っているか。
  • 診断プロセス: 問診だけでなく、心理検査(知能検査、発達検査など)や本人・家族からの生育歴の聞き取りなど、総合的な評価を行っているか。
  • 予約状況: 発達障害の専門機関は予約が取りにくい場合が多いので、事前に確認が必要。
  • 連携体制: 診断後のフォローアップや、必要に応じて他の支援機関との連携を行っているか。

いきなり診断を受けることに抵抗がある場合は、まず地域の精神保健福祉センターや発達障害者支援センターなどに相談してみるのも良いでしょう。これらの機関では、専門の相談員が話を聞き、適切な情報提供や助言、必要に応じた専門機関の紹介などを行ってくれます。

診断を受けることは、自身の特性を客観的に理解し、適切な支援や工夫に繋げるための一歩となります。診断名がついたからといって、その人の全てが決まるわけではありません。大切なのは、自分の特性を受け入れ、どうすればより生きやすくなるか、という視点を持つことです。

日常生活や就労に関する支援

ASDと診断された場合や、診断がなくとも特性による困難を抱えている場合、様々な支援を利用できる可能性があります。

  • 医療的支援: 診断後のフォローアップ、二次障害(うつ病や不安障害など)に対する治療、特性からくる困難を軽減するためのカウンセリングやSST(ソーシャルスキルトレーニング)など。
  • 福祉的支援: 障害者手帳の取得(条件あり)、障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援など)、地域生活支援事業(相談支援など)。
  • 教育的支援: (成人向けの場合)大学などの高等教育機関での合理的配慮、各種研修や講座。
  • 就労支援: ハローワークの専門窓口、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所など。仕事探しや職場での定着支援、仕事のやり方や人間関係に関するアドバイス。
  • 自助グループ: 同じ特性を持つ当事者同士が集まり、情報交換や交流を行う場。経験を共有することで安心感を得たり、具体的な対処法を知ることができます。

利用できる支援は、診断の有無や特性の程度、年齢、お住まいの地域などによって異なります。まずは、地域の相談窓口(発達障害者支援センター、精神保健福祉センター、保健所など)に問い合わせてみることをお勧めします。専門家と共に、自分に合った支援を見つけていくことが大切です。

まとめ:asd アスペルガー 違いのポイント

この記事では、「asd アスペルガー 違い」という疑問を解消するために、ASDとアスペルガー症候群の診断名の変遷や、共通する特性、そして関連する情報について解説しました。

重要なポイントをまとめると以下のようになります。

  • かつて「アスペルガー症候群」は独立した診断名でしたが、最新の診断基準DSM-5では「自閉スペクトラム症(ASD)」に統合されました。
  • アスペルガー症候群と考えられていた特性は、知的な遅れがないASDの特性として理解されています。
  • ASDの主な特性は、社会的コミュニケーションおよび相互作用の困難と、限定された反復的な様式の行動、興味、活動です。これに加えて、感覚特性も多くのASDのある人に見られます。
  • これらの特性は、仕事や対人関係、日常生活の様々な場面で困りごとを引き起こす可能性があります。
  • ASDとADHDは異なる発達障害ですが、一部の特性が似ており、併存することもあります。ASDはコミュニケーションとこだわり、ADHDは不注意と多動性・衝動性が主な違いです。
  • 「軽度のアスペルガー(ASD)」は、特性が比較的目立ちにくい場合を指すことが多く、本人も周囲も気づきにくいことがありますが、内面的な困難を抱えていることがあります。
  • 大人になってからASDの特性に気づくことも少なくありません。自己チェックリストはあくまで参考とし、気になる場合は専門機関に相談することが重要です。
  • 診断や相談を検討する場合は、精神科や発達障害専門クリニック、地域の相談窓口などを活用しましょう。診断後のフォローアップや、日常生活・就労に関する様々な支援制度があります。

ASDやアスペルガー症候群に関する理解は、社会全体で深まってきています。特性を持つ本人だけでなく、周囲の人々が正しい知識を持ち、お互いを理解し尊重し合うことで、より生きやすい社会が実現していくことでしょう。

【免責事項】

この記事は、自閉スペクトラム症(ASD)に関する一般的な情報提供を目的としています。特定の個人への医学的な診断や治療を推奨するものではありません。ご自身の状態についてご心配がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。この記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当サイトは責任を負いかねますのでご了承ください。

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