パニック障害は、突然激しい不安や体の不調に襲われる「パニック発作」を特徴とする病気です。
予期しない発作への恐怖から、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになり、日常生活に大きな影響を及ぼすこともあります。
もし、ご自身や大切な方がこのような症状に悩んでいる場合、「パニック障害かもしれない」と感じて、症状について詳しく知りたい、自分で確認できる方法はないか、と思われているかもしれません。
この記事では、パニック障害の主な症状や診断の目安となる基準、ご自身で状態を把握するためのセルフチェック方法について解説します。
また、発作の前触れや似た症状の病気、パニック障害になりやすい人の特徴などもご紹介します。
この記事を通して、ご自身の症状について理解を深め、必要であれば専門家へ相談を検討するきっかけとしていただければ幸いです。
セルフチェックはあくまで目安であり、正確な診断は医療機関で行われることをあらかじめご理解ください。
パニック障害とは?
パニック障害は、不安障害の一種で、突然、強い不安や恐怖とともに、さまざまな身体的な症状が現れる「パニック発作」を繰り返す病気です。
パニック発作は、生命にかかわるような差し迫った危険がない状況で起こり、通常は数分から長くても30分以内にピークを迎え、次第に治まります。
この発作の強烈な体験から、「また発作が起きるのではないか」という強い不安(予期不安)が生じ、さらに発作が起きた際に逃げられない、助けを求められないと感じる場所や状況(電車、人混み、閉鎖空間など)を避けるようになる「広場恐怖」を伴うことも少なくありません。
パニック障害は、決して珍しい病気ではなく、生涯のうちにパニック障害を経験する人の割合は数パーセントにのぼると言われています。
脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、ストレス、体質などが関係していると考えられていますが、その正確な原因はまだ完全に解明されていません。
しかし、適切な治療によって症状をコントロールし、回復することが十分に可能な病気です。
パニック発作の主な症状
パニック発作は、突然始まり、急速に激しさを増す不安や恐怖とともに、さまざまな身体的・精神的な症状が複合的に現れることが特徴です。
一般的に、診断基準では、以下の13の症状のうち、4つ以上が同時に出現し、数分以内にピークに達することが求められます。
身体的な症状一覧
パニック発作中に現れる身体的な症状は多岐にわたり、心臓や呼吸器系の不調、消化器系の症状、神経系の症状など、様々な形で現れます。
これらの症状は非常に苦痛を伴い、まるで重篤な病気にかかったかのように感じられることがあります。
- 動悸、心臓がドキドキする、脈が速くなる: 心臓が強く速く打つのを感じたり、脈が飛ぶように感じたりします。
「心臓が止まるのではないか」という恐怖を伴うこともあります。 - 発汗: 大量の汗をかき、冷や汗であることも多いです。
- 身震い、手足の震え: 体全体や手足が細かく震えることがあります。
- 息切れ感、息苦しさ、窒息感: 十分に息が吸えない、または吐けないように感じ、息が詰まるような感覚に襲われます。
「このまま窒息してしまうのではないか」という強い恐怖を感じやすい症状です。 - 胸痛、胸部の不快感: 胸のあたりに締め付けられるような痛みや圧迫感を感じることがあります。
心臓発作と間違われることも少なくありません。 - 吐き気、腹部の不快感: 胃のむかつき、吐き気、またはお腹の調子が悪くなる感じがします。
- めまい感、ふらつき感、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ: 地面に足がつかないような浮遊感や、今にも倒れてしまいそうな感覚に襲われます。
失神するのではないかという不安を伴います。 - 現実感がなくなる感じ(現実感喪失)、自分が自分ではない感じ(離人感): 周囲の景色や状況が現実ではないように感じたり、自分がまるで傍観者であるかのように、自分の体から切り離されたように感じたりします。
- 体が熱くなる、あるいは寒くなる感じ: 急なほてりを感じたり、逆に体が急激に冷えたりすることがあります。
- しびれ感、うずき感: 手足や体の特定の部分にしびれを感じたり、針で刺されるようなピリピリとした感覚が現れたりします。
精神的な症状一覧
身体症状と同時に、またはわずかに遅れて、強烈な精神的な症状も出現します。
これらは理性的な思考を困難にし、非常な苦痛をもたらします。
- 制御を失うこと、狂ってしまうことへの恐れ: 自分の行動をコントロールできなくなるのではないか、人前で取り乱してしまうのではないか、という強い恐怖感に襲われます。
- 死ぬことへの恐れ: これらの身体症状から、「このまま死んでしまうのではないか」という直接的な死の恐怖を感じます。
特に胸痛や息苦しさが強い場合に感じやすい症状です。
これらの身体的・精神的な症状が突然、同時に、または立て続けに現れるのがパニック発作の特徴です。
発作中は非常に苦痛で、もう二度と経験したくないと感じるほどの強烈な体験となります。
パニック障害の診断基準
パニック障害の診断は、医師が問診や検査を通じて総合的に行います。
国際的な診断基準としては、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版(DSM-5)などが用いられます。
診断基準はあくまで専門家が診断を行う際の指針ですが、ご自身の状態を理解するための一助として参考にすることができます。
パニック発作の診断基準
DSM-5では、パニック発作は、以下の13の症状のうち4つ(またはそれ以上)が突然始まり、数分以内にピークに達するものと定義されています。
- 動悸、心臓がドキドキする、脈が速くなる
- 発汗
- 身震い、手足の震え
- 息切れ感、息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛、胸部の不快感
- 吐き気、腹部の不快感
- めまい感、ふらつき感、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
- 体が熱くなる、あるいは寒くなる感じ
- しびれ感、うずき感
- 現実感がなくなる感じ(現実感喪失)
- 自分が自分ではない感じ(離人感)
- 制御を失うこと、狂ってしまうことへの恐れ
- 死ぬことへの恐れ
パニック障害の診断基準
パニック障害と診断されるためには、パニック発作を繰り返すことだけでなく、発作に関連する特定の状態が見られる必要があります。
DSM-5に基づく主な基準は以下の通りです。
- 以下のいずれかのパニック発作を繰り返していること。
- 少なくとも1つの発作の後、1ヶ月間(またはそれ以上)以下のいずれかまたは両方が続いていること。
- さらなるパニック発作またはその結果(例:心臓発作を起こす、正気を失う)に対する持続的な心配または懸念。
- 発作に関連した行動の著しい変化(例:運動を避ける、慣れない状況を避けるなど、発作を避けるための行動)。
- 障害が物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心肺疾患)の生理学的作用によるものではないこと。
- 障害が他の精神疾患(例:強迫性障害の強迫観念への反応、心的外傷後ストレス障害の出来事の想起、分離不安障害による分離の回避、社交不安障害による社交的状況の回避、特定の恐怖症による特定の対象や状況への曝露)ではうまく説明されないこと。
つまり、パニック障害は単にパニック発作を経験しただけではなく、発作を繰り返すことで「また起きるかもしれない」という強い不安(予期不安)が生じ、それが原因で行動が制限される(広場恐怖など)といった影響が日常生活に出ている場合に診断されます。
診断には、これらの基準を満たしているかを医師が慎重に判断します。
パニック障害のセルフチェック
パニック障害の正確な診断は医師によって行われますが、ご自身の現在の状態を把握し、専門家への相談を検討するきっかけとして、セルフチェックは有効です。
以下のチェックリストは、パニック障害やパニック発作に特徴的な症状や体験に基づいています。
当てはまる項目が多い場合は、一度専門家にご相談することをお勧めします。
チェックリスト活用方法
以下のリストを読み、最近1ヶ月間にご自身の状態に当てはまったと思う項目にチェックを入れてみましょう。
各項目は、パニック発作の症状、予期不安、またはそれらに関連する行動の変化を示しています。
セルフチェックを行う上での注意点:
- このチェックリストは診断ツールではありません。
診断は必ず医師が行います。 - 当てはまる項目があったとしても、すぐにパニック障害と断定する必要はありません。
- 結果にとらわれすぎず、あくまで現在の状態を振り返るための参考にしてください。
- 気になる点がある場合は、自己判断せず、専門家(精神科や心療内科など)に相談することが最も重要です。
セルフチェックリスト
以下の項目のうち、最近1ヶ月間に当てはまったものにチェックを入れてください。
番号 | チェック項目 | 当てはまる |
---|---|---|
1 | 何の前触れもなく、突然、強い不安や恐怖に襲われる発作を経験したことがある。 | □ |
2 | その発作中に、心臓がドキドキと速く打つ、脈が速くなるのを感じた。 | □ |
3 | その発作中に、大量の汗をかいた。 | □ |
4 | その発作中に、体や手足が震えた。 | □ |
5 | その発作中に、息が苦しい、息切れする、窒息するような感覚があった。 | □ |
6 | その発作中に、胸が痛い、または胸部に不快感があった。 | □ |
7 | その発作中に、吐き気がする、またはお腹の調子が悪くなった。 | □ |
8 | その発作中に、めまいがする、ふらつく、気が遠くなるような感覚があった。 | □ |
9 | その発作中に、体が急に熱くなったり、寒くなったりする感じがあった。 | □ |
10 | その発作中に、手足や体の一部にしびれやうずきを感じた。 | □ |
11 | その発作中に、周りの世界や自分が現実ではないように感じた(現実感喪失、離人感)。 | □ |
12 | その発作中に、自分の行動を制御できなくなるのではないか、狂ってしまうのではないかと強く恐れた。 | □ |
13 | その発作中に、このまま死んでしまうのではないかと強く恐れた。 | □ |
14 | 発作が再び起きるのではないかと、日常的に心配したり恐れたりしている(予期不安)。 | □ |
15 | 発作が起きそうな場所や、発作が起きた時に逃げられない・助けを求められない状況(電車、バス、人混み、閉鎖空間など)を避けている。 | □ |
16 | 発作への心配や、発作を避ける行動によって、仕事、学業、社会活動、人間関係などに支障が出ている。 | □ |
17 | 発作や関連する心配のために、特定の行動や習慣(例:常に誰かと一緒にいる、特定の物を携帯する)をするようになった。 | □ |
チェック結果の目安
あくまで目安ですが、上記の項目のうち、特に1~13のパニック発作の症状に複数(4つ以上)当てはまる発作を繰り返し経験し、さらに14~17の予期不安や回避行動に関連する項目にも複数当てはまる場合は、パニック障害の可能性も考えられます。
自己判断はせず、早めに専門家にご相談ください。
パニック障害の前触れは?
パニック発作は「突然」起こることが特徴ですが、全く予兆がないわけではありません。
発作に至る前に、かすかな身体的な違和感や心理的なサインが見られることがあります。
日々のストレスの蓄積や疲労、睡眠不足、体調の変化などが背景にあることも多いです。
具体的な前触れとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 漠然とした不安感: 特定の原因がないのに、なんとなく落ち着かない、そわそわするといった感覚が続く。
- 軽い身体症状: いつもより動悸がしやすい、息苦しさを感じる、頭が重い、といった軽い身体の不調。
- 緊張感: 肩や首の周りが凝り固まる、顎を食いしばるなど、無意識に体に力が入っている状態。
- 過敏になる: 音や光に敏感になる、些細なことが気になるなど、感覚が過敏になる。
- 特定の状況への抵抗感: 過去に発作を経験した場所や状況、あるいはそれに似た場所・状況に対して、近づくのをためらう、軽い嫌悪感や緊張を感じる。
- 疲労感や睡眠の変化: なかなか疲れが取れない、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるといった睡眠の問題。
これらのサインが見られたからといって、必ずパニック発作が起こるわけではありません。
しかし、ご自身の心身の状態に注意を払い、こうしたサインに気づいたときに休息を取る、リラックスできる時間を持つなど、セルフケアを行うことが、発作の予防につながる可能性があります。
パニック障害と似た症状の病気
パニック発作の症状は、心臓病、呼吸器疾患、神経疾患など、他の様々な病気と非常に似ているため、正確な診断には医師による慎重な鑑別が必要です。
特に、初めてパニック発作を経験した際は、心臓発作や脳卒中などの緊急性の高い病気ではないかと疑われることが多く、救急外来を受診するケースも少なくありません。
パニック障害と似た症状を示す主な病気には以下のようなものがあります。
- 心臓の病気(不整脈、狭心症など): 動悸や胸痛は、心臓の病気の典型的な症状です。
これらの症状が現れた場合、まず心臓に問題がないかを確認するための検査(心電図、心エコーなど)が行われます。
パニック発作による動悸や胸痛は、通常短時間で治まるのに対し、心臓病によるものは持続したり、労作時に出現しやすいといった違いが見られることがあります。 - 呼吸器の病気(過換気症候群、喘息など): 息切れや息苦しさは、呼吸器の病気でもよく見られます。
過換気症候群は、不安などから呼吸が速く浅くなり、血液中の二酸化炭素濃度が低下することで、めまいや手足のしびれ、筋肉の硬直などが起こる状態です。
パニック発作中に過換気症候群を合併することもあります。
喘息は、気道が狭くなることで呼吸が困難になる病気です。 - 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、動悸、発汗、手の震え、体重減少、イライラなどの症状が現れます。
これらの症状はパニック発作の一部と似ているため、血液検査で甲状腺ホルモンの値を測定し、鑑別が行われます。 - その他の不安障害(全般性不安障害、社交不安障害、特定の恐怖症など): 不安障害は様々な種類があり、それぞれ特徴的な不安や恐怖の対象、症状があります。
パニック障害は「予期しないパニック発作」が中心的な特徴であるのに対し、全般性不安障害は様々なことに対する持続的な過度の心配、社交不安障害は人前での行動に対する強い恐怖、特定の恐怖症は特定の対象や状況に対する強い恐怖が主な問題となります。 - 低血糖: 血糖値が急激に低下すると、動悸、発汗、手の震え、不安感などの症状が現れることがあります。
糖尿病の治療中などに起こりやすいですが、食事を長時間とらなかった場合などにも起こり得ます。 - カフェインやアルコールの離脱症状: カフェインやアルコールを常用している人が摂取をやめたり減らしたりした際に、動悸、手の震え、不安、吐き気などの症状が現れることがあります。
このように、パニック発作の症状は多くの病気で起こりうるため、自己判断は非常に危険です。
ご自身の症状が何によるものなのかを正確に知るためには、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けることが重要です。
パニック障害になりやすい人の特徴
パニック障害の発症には、特定の性格傾向や生活習慣、ストレスなどが関係していると考えられています。
全ての人に当てはまるわけではありませんが、以下のような特徴を持つ人は、パニック障害を発症するリスクがやや高いと言われています。
- 性格傾向:
- 完璧主義でまじめ: 物事を完璧にこなそうとしすぎる傾向があり、失敗を極度に恐れる。
- 心配性、悲観的: 物事を悪い方向に考えやすく、些細なことでも深く悩んでしまう。
- 責任感が強い: 周囲の期待に応えようとしすぎたり、物事を一人で抱え込んでしまったりする。
- 感情を抑圧しやすい: 自分の感情、特にネガティブな感情を表現するのが苦手で、内に溜め込みやすい。
- 人に頼るのが苦手: 困ったときに他人に助けを求めるのが難しく、孤立しやすい。
- 感受性が豊か、繊細: 他人の感情や環境の変化に敏感で、外部からの刺激を受けやすい。
- 生活習慣・環境要因:
- 慢性的なストレス: 仕事、人間関係、家庭問題など、長期にわたる精神的なストレス。
- 過労、睡眠不足: 体力的な疲労や睡眠時間の不足は、心身のバランスを崩しやすくします。
- 不規則な生活: 食事や睡眠の時間がバラバラなど、体内時計が乱れやすい生活。
- カフェインやアルコールの過剰摂取: これらは中枢神経を刺激し、不安や動悸を引き起こす可能性があります。
- 喫煙: 喫煙もパニック障害のリスクを高めることが示唆されています。
- 大きなライフイベント: 親しい人との死別、離婚、引っ越し、転職など、大きな環境の変化や喪失体験。
- 幼少期のトラウマ体験: 身体的・精神的な虐待やネグレクトなどの経験。
これらの特徴は、あくまでパニック障害になりやすい「リスク因子」であり、これらの特徴がある人が必ずパニック障害になるわけではありませんし、これらの特徴がなくてもパニック障害を発症する人もいます。
重要なのは、これらの特徴があることを自覚し、ストレスマネジメントや健康的な生活習慣を心がけるなど、予防的なアプローチをとることです。
パニック障害かもしれないと感じたら
もし、ご自身で「パニック障害かもしれない」と感じたり、セルフチェックで当てはまる項目が多かったりした場合、最も大切なのは自己判断に頼らず、専門家へ相談することです。
パニック障害は適切な診断と治療によって十分に改善が期待できる病気だからです。
自己判断せず専門家へ相談
パニック障害は、先述したように他の病気と症状が似ているため、正確な診断には医師の専門的な知識と経験が必要です。
インターネットの情報やセルフチェックだけで自己判断し、適切な治療の機会を逃してしまうことは避けるべきです。
専門家に相談することで、症状の原因がパニック障害であるかどうかが明確になります。
もしパニック障害であれば、症状の程度や個々の状況に合わせた適切な治療法(薬物療法、精神療法など)を受けることができます。
早期に適切な治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることが可能です。
また、専門家は、発作時の具体的な対処法や、日常生活で症状をコントロールするためのアドバイスも提供してくれます。
一人で不安を抱え込まず、専門家と一緒に問題に向き合うことが、回復への第一歩となります。
精神科や心療内科の受診を検討
パニック障害の診断と治療は、主に精神科や心療内科で行われます。
- 精神科: 気分障害(うつ病、双極性障害)、不安障害(パニック障害、社交不安障害など)、統合失調症、睡眠障害、摂食障害など、心の病気を専門とする科です。
- 心療内科: ストレスなど、心理的な要因が体の症状(頭痛、腹痛、動悸など)として現れる「心身症」を中心に診る科ですが、パニック障害を含む不安障害なども診療範囲としている場合が多いです。
どちらの科を受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医に相談するか、お住まいの地域の精神保健福祉センターなどに問い合わせてみるのも良いでしょう。
最近では、オンライン診療を提供しているクリニックもあり、通院の負担を軽減できる場合があります。
受診を検討するサインとしては、以下のようなものが挙げられます。
- パニック発作を繰り返し経験している。
- 「また発作が起きるかもしれない」という予期不安が強く、日常生活で常にその心配をしている。
- 発作への恐怖から、特定の場所や状況を避けるようになり、行動範囲が狭まった(広場恐怖)。
- 症状のために、仕事や学業に集中できない、友人や家族との交流が減ったなど、日常生活に支障が出ている。
- 眠れない、食欲がない、気分が落ち込むといった症状も伴っている。
- セルフチェックリストで多くの項目に当てはまった。
これらのサインが見られる場合は、一人で悩まず、専門家への相談を検討しましょう。
受診することは決して恥ずかしいことではありません。
発作が起きた時の対処法
もしパニック発作が起きてしまった場合、以下の対処法を試みることで、症状のピークを乗り越えたり、症状を和らげたりできる可能性があります。
- 安全な場所を確保する: 可能な限り、人目が気にならない、落ち着ける場所に移動します。
椅子に座るか、横になれる場所であればさらに良いでしょう。 - 呼吸を整える: パニック発作中は呼吸が速く浅くなり(過換気)、それが症状を悪化させることがあります。
ゆっくりと、深く呼吸することを意識しましょう。- 鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹を膨らませます。
- 口からゆっくりと、吸う時の倍くらいの時間をかけて息を吐き出します。
- 例えば、4秒かけて鼻から吸い、8秒かけて口から吐く、といったリズムを意識します。
これを繰り返します。 - ビニール袋を使った過換気への対処法は、現在では推奨されていません。
落ち着いてゆっくり呼吸することに集中しましょう。
- 五感に意識を向ける: 発作中は恐怖や体の不調に意識が集中しがちです。
意識を外に向け直すために、五感で感じられるものに注意を向けましょう。- 見る: 周囲の景色を観察する。
壁の色、物の形、床の模様など、具体的なものを見つめる。 - 聞く: 周囲の音を聞く。
時計の音、車の音、人の声など。 - 触る: 自分が触れているものの感触を感じる。
椅子の感触、服の素材、手のひらなど。 - 嗅ぐ: 何か匂いのするものがあれば、その匂いに集中する。
- 味わう: ガムを噛む、水を飲むなどして、味覚に意識を向ける。
- 見る: 周囲の景色を観察する。
- 心の中で安心できる言葉を唱える: 「これはパニック発作だ、命にかかわるものではない」「しばらくすれば治まる」「大丈夫」など、ご自身にとって安心できる言葉を心の中で繰り返します。
- 誰かに連絡する: 可能であれば、信頼できる家族や友人に連絡し、そばにいてもらうか、話を聞いてもらうだけでも安心につながります。
- 頓服薬の使用: 医師からパニック発作を抑えるための頓服薬(抗不安薬など)を処方されている場合は、医師の指示に従って使用します。
頓服薬は発作の症状を和らげるのに効果的です。
これらの対処法を事前に知っておき、練習しておくことで、いざ発作が起きた際にも落ち着いて対応しやすくなります。
ただし、これはあくまで一時的な対処であり、根本的な治療のためには専門家への相談が不可欠です。
まとめ
パニック障害は、突然の激しい不安や身体症状を伴うパニック発作を特徴とする病気です。
動悸、息切れ、めまい、吐き気、死の恐怖など、様々な症状が現れます。
これらの症状は他の病気と似ているため、自己判断せず、必ず専門家による正確な診断を受けることが重要です。
この記事でご紹介したセルフチェックリストは、ご自身の状態を振り返るための一助となりますが、診断の代わりにはなりません。
もし、パニック発作のような症状を繰り返し経験したり、それによって日常生活に支障が出たりしている場合は、早めに精神科や心療内科への受診を検討してください。
パニック障害は適切な治療によって十分に改善が期待できる病気です。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、回復への道を歩んでいくことができます。
発作が起きた時の対処法を身につけることも、不安を和らげる上で役立ちます。
ご自身の心身の変化に注意を払い、不安な症状があれば医療機関に相談することが、健康な毎日を取り戻すための第一歩です。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断、治療を代替するものではありません。
ご自身の健康状態に関して懸念がある場合は、必ず医療専門家にご相談ください。
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